フォロワーシップとは?事例で分かるリーダーシップとの相乗効果

“リーダーシップ”は聞いたことあるけれど、“フォロワーシップ”って何?と思う方が多いでしょう。実は、組織力を向上させるためには、フォロワーシップを高めていく必要があるのです。
今回は、リーダーを支える「フォロワーシップ」について解説します。リーダーシップとの関係や5つのフォロワータイプから紐解くフォロワーシップの重要性と危険性を分かりやすく紹介し、それを踏まえてフォロワーシップ的行動の事例と実践ポイントをお伝えします。組織的に安定した成果を生み出したい企業は必見の内容です。
目次
フォロワーシップとは?
フォロワーシップとは、組織のリーダーやチームメンバーを自律的にサポートすることを指します。
組織のメンバー全員が同じベクトルを向いて仕事に取り組むことで、健全で強固な組織運営をする事ができますが、その組織運営に必要不可欠なスキルがフォロワーシップです。
組織の全体最適を考えたフォロワーシップの具体例は下記です。
■リーダーが達成したい目標を理解し、メンバーに行動を促す
■リーダーの統率を俯瞰的に観察し、健全な組織運営のための提言を行う
■メンバーからの意見を吸い上げ、リーダーと共に解決に導く
このように、フォロワーシップは組織全体のパフォーマンス向上に欠かせないスキルと言えます。
フォロワーシップの定義
そもそもフォロワーシップという言葉が生まれたのは1992年です。アメリカのカーネギーメロン大学の教授ロバート・ケリー氏が、自著『The Power of Followership』で初めてフォロワーシップについて言及しました。
1990年代以前の組織論においては、リーダーへの研究は進むもののメンバー含む“リーダー以外の要素”への研究が進んでいませんでした。しかし、1990年代初頭にリーダー以外の要素を含めてリーダーシップを研究する必要があるという風潮が高まり、フォロワーシップの重要性が世界に知れ渡るきっかけになるのです。
ロバート・ケリー氏は『The Power of Followership』の中で、フォロワーシップを下記のように定義しています。
「リーダーの言動に対して建設的な批判をし、自発的で担当業務以上の仕事をすること」
“建設的な批判”とは、言動の良し悪しを考察して提言するという意味を持ちます。決して否定的な意味ではなく、フォロワーシップにとって重要な定義の1つです。そして、自発的に組織の後方支援に徹することができるスキルは、担当業務以上の仕事の遂行に繋がり、透明性の高い組織運営に役立っているのです。
フォロワーシップとメンバーシップの違い
フォロワーシップとよく比較される言葉に「メンバーシップ」があります。2つは似た言葉ですが、その意味合いは異なるものです。
メンバーシップとは、組織に属するメンバーがそれぞれの役割を果たし、組織全体に貢献するという行動を意味します。フォロワーシップとの違いは、組織への貢献方法です。フォロワーシップでは、リーダーに提言したり、リーダーを支援したりという側面を持って組織の全体最適を図るのに対し、メンバーシップではそれぞれ与えられた役割を全うすることで組織への貢献を図ります。
組織に貢献しているという点では同義であり、メンバーシップという大枠の中に、リーダーを支援するという役割を任せられたフォロワーシップが存在するという考え方ができます。
フォロワーシップとリーダーシップの関係
フォロワーシップを理解するうえで「リーダーシップ」との関係性は欠かせません。そもそもリーダーシップという概念がなければ、フォロワーシップも存在しないのです。
リーダーシップとは、「統率力」を意味する言葉で、目標達成のための計画を示し組織を牽引する能力を指します。リーダーシップを発揮するためのリーダーの役割には大きく2つあります。1つは「組織の方向性を示して目標を設定する」こと。2つ目は、「決裁権者として意思決定をする」ことです。この2つのリーダーシップにおけるフォロワーシップとしての関わり方を解説します。
リーダーは組織の方向性を示して目標を設定する
1つ目の「リーダーが組織の方向性を示して目標を設定する」ことに対しては、その目標を達成するためのプロセスを計画して実行に移すことがフォロワーシップです。リーダーが成し遂げたい目標に向かって組織メンバー全員が納得感を持って取り組めるための重要な橋渡し役となるのです。
リーダーは決裁権者として意思決定をする
2つ目の「リーダーは決裁権者として意思決定をする」ことに対しては、メンバーからの意見にも耳を傾けてリーダーがより最適な意思決定ができるように提言することがフォロワーシップに当たります。リーダー1人の決定権だけで物事が進んでしまう組織は、健全な組織とは言えません。リーダーの耳には入りにくい貴重な意見もフォロワーシップを発揮する人がいることで、全体最適に配慮した意思決定のサポートができるのです。
組織にフォロワーシップが求められる背景
現代ビジネスにフォロワーシップが求められる背景には、「組織の多様化」と「変化のスピード」が挙げられます。今日の企業は、グローバル化やテクノロジーの進展に伴い、より柔軟で適応力の高い組織体制を必要としています。従来のようなトップダウンで指示を待つだけの組織では、急速に変化するビジネス環境に対応できなくなっているのです。
フォロワーシップが重要視される理由は、メンバー一人ひとりが「受け身の組織員」から「主体的な協力者」へと変わり、チーム全体の力を最大限に引き出す必要があるからです。この組織的な協働は、リーダー一人で決めるには限界がある複雑な課題にも対応することができ、組織の競争力を高める源泉となります。
さらに、リモートワークの普及やダイバーシティの進展により、チーム内でのコミュニケーションや信頼関係の構築が一層重要になっています。フォロワーシップのあるメンバーは、リーダーと協働しながら、周囲と積極的に関わり合い、チーム全体の調和と成果を追求します。このように、現代のビジネス環境では、フォロワーシップが組織の持続的成長とイノベーションを支える鍵として注目されているのです。
フォロワータイプの5分類
さて、フォロワーシップの意味や役割についてお話してきましたが、実際にはどのようなフォロワーのタイプがあるのでしょうか。メンバーもタイプ別に異なる役割を持っており、フォロワーシップを成果につなげるためには、企業やリーダー側もメンバーのタイプに合った期待役割を与える必要があります。
本章では、5つのフォロワータイプを紹介します。フォロワーシップに向いているメンバーの特性を見つけていきましょう。
★模範的フォロワー
★順応型フォロワー
★孤立型フォロワー
★実務型フォロワー
★消極的フォロワー
★模範的フォロワー
模範的フォロワーは、リーダーに対して建設的な提言をしながら、組織のメンバーとも協調性を持って仕事が進められるメンバーです。このタイプはリーダーの右腕的存在として組織の足りないところを補える理想的な存在です。
組織への貢献度は高く、将来のリーダー候補に挙げられます。組織や仕事に対して積極的な関与を示し、問題解決に向けて他のメンバーの協力を仰ぎながら主体的な働きをしてくれます。リーダーとメンバーの橋渡し役にもなるため、模範的フォロワーの働きで成果が左右されることもあります。
★順応型フォロワー
順応型フォロワーは、リーダーの意見や指示に従順なメンバーです。真面目で素直な性格の持ち主に多いタイプで、基本的にはリーダーへの批判はしません。業務には真面目に取り組むため組織への貢献度は高い傾向にありますが、自律的な行動は乏しく、リーダーに積極的な提言もできません。
したがって、順応型フォロワーが多い組織では、能動的に取り組むメンバーが少なくなり、逆にリーダーの負担を増やしてしまう事態に陥る可能性があります。順応型フォロワーに対しては、会議の場で発言の機会を増やしてみたり、リーダーに近い役割を与えてみたりすることで、責任意識の醸成に繋がり、良いフォロワーシップを発揮できるようになるでしょう。
★孤立型フォロワー
孤立型フォロワーは、自分の意見やリーダーへの批判的思考という観点は持っているものの、主体的に組織に関与しないメンバーを指します。簡単に言うと一匹狼タイプです。自分の意見の発信や批判的な発言が多くなることから、周囲からはチームプレイに不向き・頑固・問題児と認識されやすい特徴を持っています。そのため、組織への貢献度は低くなります。
この孤立型フォロワーは、元々は模範的フォロワーであったが、リーダーや組織に不満があったり、不当な扱いを受けたりした結果、孤立型フォロワーになる傾向があるといわれています。不満を解消したり、リーダーやその他メンバーと良好な関係を築いたりと環境を改善できれば、模範的フォロワーに復帰できる可能性を秘めています。リーダーや組織に対する批判的思考は持っている訳ですから、それを建設的に提言できるかが肝心です。
★実務型フォロワー
実務型フォロワーは、リーダーから与えられた範囲内で誠実に仕事に取り組みます。リアリストな側面があり、失敗を恐れてリスクを避ける傾向が見られ、柔軟性に欠ける凡庸なタイプです。時に「チャレンジ精神がない」「官僚的」と周囲から否定的にみられることもあります。
一方で、リーダーからの指示があればフォロワーシップを発揮できる存在です。組織への貢献度は低くはありません。実務型フォロワーには、背伸びをしないと届かないような目標を与え、挑戦を促すことで模範的フォロワーに近づけることができます。
★消極的フォロワー
消極的フォロワーは、自分の意見を持たず、批判もしないメンバーです。順応型フォロワーとは異なり、仕事や組織への関与に無気力なタイプで最低限の仕事しかしません。仕事に対するモチベーションや責任感が欠けており、組織への貢献度は低いです。フォロワーシップの概念では役割を果たせないタイプのメンバーと言えます。
消極的フォロワーには、仕事の意義や目的、面白さを伝えて、“やりがい”を感じてもらう必要があります。まずは小さな成功体験を積ませることで、課題を乗り越えたときの達成感や、目標達成したときの喜びを味わい、チームに貢献することの重要性を少しずつ醸成していくと良いでしょう。
以上が、5つのフォロワータイプでした。
フォロワーシップの重要性
前述したとおり、人によって様々なフォロワータイプがあり、リーダーの支え方や組織への帰属意識は多種多様であるとご理解いただけたと思います。ここからは、フォロワーシップを持った「模範的フォロワー」のことを“フォロワー”と定義します。それでは、フォロワーシップの重要性についてお伝えしていきます。
組織の活性化
リーダーとメンバーという組織構成上、双方間の相乗効果によって組織は活性化されます。ロバート・ケリー氏は、組織の成果に与えるリーダーの影響力は1~2割程度であり、メンバーが8~9割の影響力を持つという研究結果も発表しています。組織を活性化するためにはリーダーの育成よりも、適切なフォロワーシップを遂行する方が効果的であると見受けられます。
模範的フォロワーの強みである、“リーダーに対する提言”が組織力を向上させ、“メンバーとの協調”が組織を活性化させるのです。
信頼関係の構築
良いリーダーが率いる組織には、良いフォロワーがいます。逆を言えば、良いフォロワーがいる組織では、上司もリーダーシップを発揮しやすいのです。このような関係性を築ければ、メンバーも自分の意見を伝えやすくなり、透明性の高い組織として納得感を持って日々の業務に取り組めるようになります。
個々のメンバーができることは限られていますが、その強みを最大限に引き出せるのは、模範的フォロワーのなせる業です。それには、信頼関係の構築が必要不可欠と言えるでしょう。
モチベーションの向上
組織の目標を達成するためには、メンバー全員がモチベーション高く仕事に取り組む必要があります。リーダーが独裁的に指示しても成果は上がらないですし、リーダーが方向性を示してくれないとメンバーの不安・不満は募ります。リーダーとメンバーを繋ぐフォロワーがいることで、組織の一体感が増してモチベーションの向上に繋がるのです。
フォロワーシップの危険性
フォロワーは組織のバランスを司る重要ポジションであるがゆえに、リーダーとメンバーとの関わり方に細心の注意を払う必要があります。フォロワーシップの危険性についても理解し、健全な組織運営にお役立てください。
リーダーが感じる疎外感
まずはフォロワーとメンバーの関係性が強くなりすぎて、リーダーとメンバーの関係性が希薄になってしまうケースです。組織のあるべき姿は、リーダーが目的地を定め、フォロワーが道を作り、メンバーが歩みを進めることであると考えます。このとき、目的達成に向けた行動計画の落とし込み(道)とメンバーの実行(歩み)の進捗だけが、フォロワーからリーダーに共有されるフローは、良い状態とは言えません。
注意するべきは、フォロワーシップがあることでリーダーとメンバーのコミュニケーション機会を損失してしまうことです。あくまでも最高管理者はリーダーであり、バランスを保つ役割を担うフォロワーだけがメンバーを管理する訳ではありません。
リーダーにはメンバーのモチベーション維持や育成、進捗管理などの役割を担っており、フォロワーがリーダーの役割まで背負う必要はないのです。
連携不足が招く認識の齟齬
次に、フォロワーとリーダーのコミュニケーションが過多になり、メンバーへの意思疎通が乏しくなってしまうケースです。フォロワーはリーダーに対して建設的な提言ができるため、リーダーとフォロワー間でのコミュニケーションが多くなることは当然のことです。
一方で、決定事項や方向性の修正があった際は、リーダーからメンバーに対して周知徹底しないと、メンバーが納得感を持って業務に取り組めなくなります。更に言うと、フォロワーから伝えられた通りの業務を遂行していたら、実は認識に齟齬があり、生産性のない業務をしていたなんて事態も起こり得るでしょう。
重要な決定事項や方向性の修正があった際は、リーダーから「メンバーにも伝えておいて!」と言われても、「それはリーダーからしっかりとお伝えください」と提言することも、フォロワーとして必要な能力です。
フォロワーシップがある行動の事例
組織を活性化させるためには、どのようなフォロワーシップ的行動を促すと良いのでしょうか。本章では、明日からでもメンバーの意識を変えられる、フォロワーシップがある行動の事例を紹介します。
★積極的に仕事を引き受ける
★リーダーに積極的に提言する
★組織全体への貢献を最優先に考える
★上司の最終決定を支持する
★建設的な思考で組織の未来を考える
★積極的に仕事を引き受ける
フォロワーが自身の業務に追加して積極的に仕事を引き受けていくと、リーダーはリーダーにしかできない重要な業務に多くの時間を使うことができます。これにより、組織メンバーの役割も明確になり、組織全体で目標達成に向けた有意義な時間の使い方を実現できるようになります。
★リーダーに積極的に提言する
フォロワーは建設的な提言をすることで、リーダーに気付きを与える存在です。リーダーはすべてを把握できるとは限りません。特に現場の意見にも耳を傾けられるフォロワーからの意見は貴重であり、より良い意思決定に繋がることが多くあります。
リーダーも、フォロワーからの提言があることで健全な議論を展開することができ、良い緊張感を持って組織運営に務めることができます。さらにフォロワーは、リーダーとの議論を重ねるたびにマネジメント側の観点から物事を考える経験が増えて、良い成長機会にもなるのです。
★組織全体への貢献を最優先に考える
フォロワーは、自分だけではなく組織全体の目標達成に向けた行動をとる必要があります。簡単に言うと、「利他主義」です。リーダーの指示の根底にある意図を把握し、組織メンバーに浸透させることで組織全体のパフォーマンス向上に繋げる役割を担っています。
★上司の最終決定を支持する
組織の最終決定権を持つのはリーダーであることを念頭に、最後はフォロワーとしてリーダーの意思決定を支持して全力でサポートすることが大切です。そのためにも、最終決定に至るまでのプロセスにおける議論を活発にする必要があります。
最終決定が、組織全体の意見を加味した上での意思決定なのか、リーダーの独断で意思決定されたのか。フォロワーのポジションは組織の未来を左右する重要ポストなのです。
★建設的な思考で組織の未来を考える
何事も成功に向けて努力をするものの、時には課題に直面することもあるでしょう。そのときにフォロワーは、課題を乗り越えるべく組織全体を巻き込みながら建設的な議論を進めて、解決策をリーダーと共に模索していく役割を担います。
前向きな思考で組織を明るくし、全力でリーダーをサポートし、時にはメンバーを鼓舞し、エネルギッシュに課題解決を推進していく姿が、フォロワーシップのある行動と言えます。
フォロワーシップ実践のポイント
続いて、社員にフォロワーシップを発揮させて成果に繋げるためのポイントを5つ紹介します。
①リーダーの限界の理解を深める
いかに優秀なリーダーであっても、その能力には限界があります。特にテクノロジーの進化が劇的に進み、ビジネスを取り巻く環境が急速に変化する現代において、組織を指揮するリーダーへの負担は大きくなっていることでしょう。
リーダーにも限界があり、フォロワーがその理解を深めることで、最適なサポート体制を整えることができるのです。
②客観的な視点から健全な批判を行うことを前提とする
リーダーに対して、メンバーがアイデアを提案したり、批判したりすることは、フォロワーシップの重要な要素です。なぜなら、「リーダーの意思決定に思考の偏りはないか」「問題の本質を見誤っていないか」など、敢えて“批判的な視点”から考察することで、より良い解決策や発想が生まれることがあるからです。
しかし、メンバーからの意見や批判が単なる悪口や文句で終わり、生産的な意見が出ないことも多く見られます。成果を出すためには、単純に批判すれば良いというわけではなく、客観的な視点でリーダーの意見を考察し、批判できるかが重要です。
これは「クリティカルシンキング」と呼ばれ、日本語では批判的思考と訳されます。物事の本質を見極めて論理的に考察することがフォロワーには求められるのです。
③社員それぞれに自分のフォロワータイプを知ってもらう
組織としてフォロワーシップを高めるためには、それぞれのメンバーがどのフォロワータイプなのかを自覚してもらうことが重要です。メンバーのタイプが分かれば、リーダーや企業側もどうような対応をすれば模範的フォロワーに近づくことができるのか、把握しやすくなるでしょう。
ただし、フォロワータイプの確認は、タイプによって優劣を付けるために行うのではありません。企業が、メンバーの現在の貢献度や、どの程度の批判的思考を持っているのかを知ったうえで、各人をサポートすることが目的です。各タイプに合わせた研修を実施したり、目標を設定させたりして、組織への貢献度を高めていきましょう。
④メタ認知能力を高める
メタ認知とは、自分の思考や行動を客観的に把握し、適切に修正・改善する能力のことを指します。リーダーシップと同様、フォロワーシップにおいても自分の行動や考え方を冷静に見つめ、チーム全体の目標やリーダーの意図に照らし合わせて最適な行動を選択することが重要です。
たとえば、会議中に自分の意見や主張に過剰な偏りがあると気付いた場合、その意見がチームの利益にどのように貢献するかを考え、バランスをとる行動が求められます。メタ認知によって、フォロワーは自己中心的な行動を控え、他者の視点やチームの状況に合わせて柔軟に行動を調整できるようになります。
さらに、メタ認知能力は、自身の強みや改善点を的確に把握し、自己成長に結びつけるための重要な基盤でもあります。フォロワーシップを発揮する際には、単に指示を受けるだけでなく、主体的に学び、より効果的にチームメンバーとしての役割を果たす姿勢が求められるのです。
⑤社員同士のコミュニケーションの機会を増やす
リーダーを十分にサポートするためには、リーダーの人柄や性格、思考癖、意思決定時の判断基準などを理解しておく必要があります。リーダーや企業側は、フォロワーに対してサポートを求めるだけでなく、リーダーや他のメンバーを知る機会を設けるようにしましょう。
社員同士のコミュニケーションが少なければ、お互いを理解する機会が不足してしまいます。企業側は、リーダーから積極的にコミュニケーションを取るように促しましょう。リーダーやメンバー間で信頼関係が築ければ、自然とお互いを支援したり、能動的に業務に取り組めたりといった効果が期待できます。リーダーやメンバーの考えを理解するためのノウハウや、コミュニケーションの取り方に関する研修を実施するのもよいでしょう。
⑥フォロワーシップを発揮できる環境を作る
最後に最も重要なことは、リーダーがフォロワーの1番の理解者であることです。フォロワーが健全な提言をしたときに、リーダーが撥ね退けてしまえば、フォロワーシップは上手く機能しません。メンバーの力を活かしきれず、組織として良い成果を残すことも難しくなるでしょう。
企業がフォロワーシップとリーダーシップについて考えるとき、「リーダーとフォロワーの役割は別物」という認識を持つことが重要です。それぞれが自分の役割を果たせるような研修の実施や、評価体制を取り入れることを意識してください。
また、フォロワーシップは組織メンバー全員に求められるスキルです。フォロワーシップの研修には、必ずリーダーも参加してもらい、メンバーが安心して意見できる環境づくりについて学んでもらいましょう。
現代ビジネス環境におけるフォロワーシップの役割
リモートワークの普及、人工知能(AI)の台頭、ダイバーシティの促進と、2020年代のビジネス環境の変革は著しく、それに伴いフォロワーシップの役割は進化が求められています。
リモートワーク × フォロワーシップ
従来のフォロワーシップは、直接的なコミュニケーションが基本でしたが、リモートワークでは物理的な距離がある中でのチーム運営になります。対面でのコミュニケーションが限られる環境下では、リーダーが逐一指示を出すのではなく、フォロワーが自身の判断で主体的に動く場面が増えています。これにより、フォロワーシップは単なる指示の受け手から、プロジェクトの成果に向けて能動的に行動し、リーダーシップを補完する役割へと進化しています。
リモートワーク下でフォロワーシップを発揮するためには、以下4つのポイントが重要です。
自己管理能力の向上
リモート環境では、上司の直接的な監督が少ないため、タスクやスケジュールを自ら管理する能力が欠かせません。タスクの優先順位を付け、計画的に作業を進めることで、チームが達成すべき成果を上げるためのフォロワーシップが発揮されます。
積極的なコミュニケーション
リモートワークでは、対面での会話が難しいため、コミュニケーションの頻度と質が重要になります。チャットやビデオ会議、メールなどを活用し、情報共有を意識的に行うことで、チーム全体が同じ方向を向き、業務の連携がスムーズになるでしょう。
進捗管理の細分化
リモート環境では、他のメンバーの作業状況や進捗が見えにくいため、対面で仕事をしていたときよりも進捗報告の頻度を多くすると良いでしょう。「完了報告」だけではなく、「中間報告」として途中経過や完了目途を伝えることも重要です。
問題解決能力と柔軟性
リモートワークでは、突発的な問題が発生することも多く、迅速な対応が求められます。自分で問題を解決する意識を持つとともに、状況の変化に柔軟に対応できる姿勢が必要です。自己解決が難しい場合は、すぐにリーダーやチームメンバーに相談することで、スムーズな対応が可能になります。
人工知能(AI) × フォロワーシップ
人工知能(以下AI)の発展により、業務プロセスや意思決定の多くが自動化されるようになり、職場環境にも大きな変化が生じています。この変化は、フォロワーシップの役割にも影響を及ぼします。
AIがルーティン作業やデータ分析などの業務を担うことで、フォロワーにはより高度な判断力と柔軟な対応力が求められるようになりました。AIが担うのはあくまで定型的なタスクが主であり、ビジネスの現場では、突発的な問題や状況に応じた判断が欠かせません。こうした場面でこそ、フォロワーの主体性や迅速な意思決定が重要となり、AIと協働しながら状況に適した行動を取るフォロワーシップが必要とされています。
また、AIがデータをもとにした分析結果を提供することで、フォロワーはより戦略的な視点から業務に取り組むことが可能になります。データを活用して業務の改善や新たな提案を行うことが、フォロワーシップの新たな役割となり、AIが補完する情報をもとにチームの成果に貢献する姿勢が求められます。
AIの発達によって業務内容が変化する中で、フォロワーは単なる補助的な存在ではなく、プロジェクトの成功を支える中心的な役割を担うようになっています。AIと共存し、デジタルスキルを活用してチームの成果に貢献するフォロワーシップは、これからの組織において欠かせない存在と言えるでしょう。
AIを活用したフォロワーシップの具体例として、以下のようなシーンが考えられます。
データ分析を用いた、リーダーの意思決定サポート
AIを活用して分析されたデータや予測結果をもとに、フォロワーがリーダーに対して効果的な提案や改善策を提供する場面です。たとえば、営業部門において、AIが顧客の購買履歴や行動データを分析し、次に注力すべき顧客や提案内容をリストアップした場合、フォロワーはこのデータを活かしてリーダーにアプローチの戦略を提案することで、業績向上に寄与できます。データに基づく提案によって、フォロワーはより戦略的な行動をとることができ、リーダーの意思決定を補完する役割を果たします。
プロジェクトの進捗管理とリスク予測のサポート
AIはプロジェクトの進行データをリアルタイムで追跡し、リスクやボトルネックの予測を行うことが可能です。フォロワーは、AIが示す進捗やリスクに基づいて必要なアクションをリーダーに提案し、プロジェクトの円滑な進行を支援できます。
たとえば、プロジェクトマネジメントツールでAIが進捗遅延の可能性を検知した場合、フォロワーは早期にリソースの再配分を提案したり、リーダーに対して対策を提案したりすることで、問題が大きくなる前に解決策を講じることができます。フォロワーはAIを活用して、チームの目標達成に向けて能動的にサポートできるのです。
人材育成やスキルギャップの把握と改善提案
AIが従業員のパフォーマンスデータやスキルデータを分析し、各メンバーのスキルギャップや成長の余地を特定することで、フォロワーはリーダーに対して適切な育成計画やスキルアップの提案を行えます。たとえば、AIが分析した結果、特定のスキルが不足していると判明した場合、フォロワーはそのメンバーに適したトレーニングや学習機会をリーダーに提案し、チーム全体のスキル向上に貢献できます。
ダイバーシティ × フォロワーシップ
ダイバーシティ(多様性)を尊重する企業文化が広がる中で、フォロワーシップの役割もより複雑かつ重要になっています。多様なバックグラウンドや視点を持つメンバーが集まるチームにおけるフォロワーは、チーム全体が一体となって成果を上げるための橋渡しや調整役としての役割が求められます。
ダイバーシティ環境では、異なる文化や価値観を持つメンバー同士が協働することになるため、時には考え方やアプローチが異なり、意見がぶつかることもあるでしょう。こうした環境下では、フォロワーが積極的にコミュニケーションを取り、相互理解を促すことが非常に重要です。このような役割を担うフォロワーシップは、チームの結束力を高めるとともに、メンバー一人ひとりが自身の強みを発揮できる環境を築くための基盤となります。
また、ダイバーシティ環境ではフォロワーが積極的に異なる意見や視点を尊重し、リーダーの意思決定を多角的にサポートすることも重要です。多様な視点が交わることで、より包括的かつ創造的な解決策が生まれやすくなります。このような場面では、リーダーに自らの意見を伝えつつ、他者の意見を踏まえて議論を促進する役割を担うことが求められます。こうしたフォロワーの行動が、組織の意思決定をより強化し、最適な方向に導く助けとなるのです。
多国籍な組織におけるフォロワーシップの具体例として、以下のようなシーンが考えられます。
リーダーの指示を明確化する
多国籍な組織では、フォロワーがリーダーの意思決定やメッセージをメンバーにわかりやすく伝える役割を果たすことが求められます。たとえば、リーダーの指示が抽象的だった場合、フォロワーがリーダーの意図を理解し、他のメンバーに具体的なタスクとして解釈・説明することで、メンバーの理解を助け、実行をスムーズに進めることができます。
チームメンバーの意見を尊重する
多国籍な組織では、意図せずして異なる文化の価値観が影響し合い、無意識のうちに摩擦が生じることもあるでしょう。フォロワーがこうした状況を察知し、お互いが気付かない価値観や行動の違いを説明・調整する役割を担うことが重要です。
たとえば、フォロワーが、意思決定プロセスが一方的に進んでいると感じた場合、各メンバーに意見を求めるようリーダーに提案し、異なるバックグラウンドの意見を取り入れられるよう支援することで、チームの協力体制が強化されます。
まとめ
変化が激しい現代で企業が生き残るためには、変化への適応が必要不可欠です。しかし、膨大な情報が溢れ、刻々と変わる状況にリーダーだけでは適応しきれません。つまり、結果を出すためには、リーダーを支えるフォロワーの存在が重要になるのです。
フォロワーシップを持ったメンバーが揃えば、リーダーが力を発揮しやすい環境づくりやプロジェクトの進行が行えます。リーダーシップとフォロワーシップが噛み合うことで相乗効果を生み、より良い成果に繋がっていくのでしょう。