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メタ認知とは?能力の高い人・低い人の特徴と効果的なトレーニング方法を解説

メタ認知とは?能力の高い人・低い人の特徴と効果的なトレーニング方法を解説

メタ認知能力は、個人の仕事力はもちろん、組織の生産性や組織力を高める能力として注目を集めています。メタ認知能力が高い人材が多い組織は、トラブルが発生しにくく、たとえトラブルが起こっても迅速に解決を図れます。

本記事では、ビジネスパーソンとしてはぜひ身につけておきたい「メタ認知能力」について解説します。

メタ認知とは?

メタ認知とは、自身の認知を客観的な立場から捉えることを指します。もう少し嚙み砕いた表現で分かりやすく言うと、「知っているということを知っている」や「自分には知識がないということを把握している」などと言い換えることができます。自身のことでありながら、俯瞰して自身を認知することで、ビジネスパーソンとしての成長の材料になるのです。

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メタの意味

「メタ」は英語で”meta”と表記し、「高次の」という意味を持ちます。さらに「認知」は”cognition”を和訳した意味が適しており、「知覚・判断・推論・問題解決などの知的活動」を意味します。したがって、メタ認知とは、より高い次元(主観+客観的な視点)で自身の知的活動を捉えるという意味になります。

心理学からビジネス活用へ

メタ認知はもともと、アメリカの心理学者ジョン・H・フラベル氏によって提唱されました。心理学用語として定義された概念ではありますが、教育分野への浸透から人材育成の観点でその重要性が注目されるようになり、近年ではビジネスシーンでも必要な能力として取り上げられることが増えてきました。

2つの要素から成るメタ認知

メタ認知は、「メタ認知的知識」「メタ認知的技能」の2つの要素から成り立っています。それぞれの具体例と併せてみていきましょう。

メタ認知的知識

メタ認知的知識とは、自身について知っていることを指します。

メタ認知的知識は、さらに人・課題・方略といった3つに分類されます。「“人”に関係する知識」は自分の知識や一般的に人間に共通する知識、「“課題”に関係する知識」は、問題・課題スキームに関する知識、「“方略”に関係する知識」は問題を解決するための知識です。

メタ認知知識はあくまでも知識であり、メタ認知知識が高いからといってメタ認知能力が高いとは限りません。

【メタ認知的知識の具体例】

【人間に関係する知識】
★7時間以上の睡眠時間を確保しないと、集中力が落ちてしまう
★人見知りなので、初めて会う人とはなかなか話せない

【課題に関係する知識】
★10時間休まずに仕事を続けると、業務のミスが多くなってしまう
★上司に報告する際は、結論と経緯を明確に伝える必要がある

【方略に関係する知識】
★メールでの誤植を防ぐには、何度も見直す必要がある
★テキストだけではなく、図解やイラストを用いた方が相手に伝わりやすい

メタ認知的技能

メタ認知的技能は、メタ認知的知識をもとに、自分の状態を認知したり対処したりする能力を指します。一般的に、メタ認知的知識よりも、メタ認知的技能のほうがメタ認知能力として重要だといわれています。

メタ認知は、「メタ認知的モニタリング」と「メタ認知的コントロール」に分けられます。

【メタ認知的モニタリング】

メタ認知的モニタリングとは、メタ認知的知識と現在の自分を照らし合わせて、問題点を客観視することです。例えば、今の自分について「正常か」「悪い方向に進んでいないか」「何かできることはないか」などについて確認します。

この時、自分の課題から目を逸らさず、何が問題であったか明確に課題を把握することが大切です。できるだけ無意識な行動に対しても、冷静に分析する必要があります。

【メタ認知的コントロール】

メタ認知的コントロールとは、自分の認知活動を制限することを指します。具体的には、モニタリングでの確認内容を踏まえて、自身の感情をコントロールしつつ、課題の解決に向けて行動を改善することを指します。メタ認知的コントロールでは、前向きな気持ちになれる改善策を冷静に考えられることがポイントです。

メタ認知が高い人の特徴

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それでは、メタ認知能力が高い人は、どのような特徴があるのでしょうか、

  • 周りの社員への配慮ができる
  • 冷静な対応ができる
  • 業務効率が良い
  • モチベーションが高い

自分や周囲の人間が当てはまるのか、確認してみましょう。

周りの社員への配慮ができる

自分についてよく認知していることから、集団の中の自分の立ち位置を把握できます。そのため、同僚と適切な距離を保てるよう配慮するため、良好な人間関係を築くことを得意とします。協調性が高いとも言い換えられ、周りに配慮しながら仕事を進めることができます。

周りに配慮できると、周囲からの評価も上がり、より良好な人間関係が構築されるという好循環が生まれていることもしばしばです。

冷静な対応ができる

メタ認知能力が高い人は、自身の感情をコントロールすることができるので、何かトラブルが発生しても慌てず冷静に対応できます。さらに、課題を把握したら、課題の解決策まで考えを巡らせるため、タスクの優先順位を付けて効率よく仕事をこなすことも可能です。

冷静な対応ができることから、周囲からも頼られやすく、重要な業務やポジションを任されるようになります。

業務効率が良い

メタ認知能力が高いと、自分の得意・不得意を理解しているため、効率よく物事を遂行できます。不得意な分野についても、自分で対策を考えて勉強をしたり人に頼ったりできるため、不得意ながらも円滑に進めることができます。

また、問題の解決に向けた改善を行えるので、日常業務の中でより正確に、スピーディーに仕事を遂行する方法を考えることができます。失敗やミスが起こっていなくても、業務効率を改善できる点は大きな強みです。

モチベーションが高い

メタ認知能力が高い人は、仕事に対するモチベーションも高い傾向にあります。課題や改善点、やるべきことを認知することで、未来に対する漠然とした不安を感じにくく、前向きに仕事に取り組むことができます。

仕事へのモチベーションが高いことで、必要なスキルの習得を目指したり、新たなミッションに挑戦したりと、成果や実績にも繋がります。

メタ認知が低い人の特徴

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反対に、メタ認知が低い人には下記のような特徴があります。

  • 協調性がない
  • 感情に任せた行動が多い
  • 業務効率が悪い

1つでも当てはまったら、メタ認知能力を高めることで改善する可能性があります。

協調性がない

メタ認知能力が低いと、自分を客観視できていないため、周囲からどう認識されているのかを把握していません。そのため、自分を過大評価して自慢話ばかりしたり、思い込みで人を非難したり、話に割り込んだりと、問題行動を取ってしまいます。そのため、空気が読めない・自己中心的・協調性がないなどとネガティブな印象を持たれることがあります。

感情に任せた行動が多い

メタ認知能力が足りないと自分の感情を上手くコントロールできないため、感情的になる傾向があります。ビジネスパーソンにとって、感情に任せた行動は人間関係の悪化やトラブルの原因となるため、早急に改善したい問題点といえるでしょう。

業務効率が悪い

メタ認知能力が低いと、業務効率が悪いフローで仕事をしていても、自身で効率アップの対策を取ることができません。問題や不足している能力を把握・改善する行動が取れないため、課題解決まで時間がかかる、または課題が解決できない事態に陥ってしまいます。

メタ認知を高めるメリット

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メタ認知を今よりも高めることで、個人にも会社にも様々なメリットが生まれます。

  • 社内外の円滑な連携
  • トラブルへの冷静かつ迅速な対応
  • 計画的な目標管理
  • 課題解決力の向上
  • 根拠に基づいた発信
  • 感情のコントロール

1つずつみていきましょう。

社内外の円滑な連携

社員のメタ認知能力が高まれば、各人が相手と適切な距離感を保てるので、社内における人間関係のトラブルやコミュニケーションエラーが起こりにくくなります。周囲に配慮した対応が当たり前になれば、職場内の雰囲気も良くなり、個人間でも組織全体でもスムーズに連携が取れるようになるでしょう。

トラブルへの冷静かつ迅速な対応

たとえ問題が発生しても、冷静に対応できれば、損失を最小限に抑えることができます。どのような仕事においてもトラブルやミスの発生は起きてしまうものです。トラブルやミスを起こしたときに焦って適切に立ち回れないという社員がいる場合は、メタ認知を高めるとよいでしょう。

計画的な目標管理

目標達成のためには、いつまでにどのような課題を解決し、どう動くかの管理が必要です。メタ認知能力を高めると、感情的に動くことがなくなるので、計画的に物事を進めることができます。進捗や結果の取りまとめを含め、目標管理がしやすくなるでしょう。

課題解決力の向上

メタ認知の要素であるメタ認知的技能は、課題を解決できるという能力です。メタ認知的技能が低ければ、業務フローの問題点を見つけ出したり、適切な改善策を導き出せません。メタ認知能力、特にメタ認知的技能の能力を高めることで、より短時間で的確な課題解決を目指せます。

根拠に基づいた発信

メタ認知は、自分を客観的に判断できる状態です。自分の意見が主観的なのか客観的なのかを判断できることから、客観的意見がある時はその理由、つまり意見の根拠が存在します。根拠に基づいた発信は周囲の納得感を高めやすく、意見や提案を受け入れてもらいやすくなるでしょう。

感情のコントロール

先述の通り、メタ認知は、感情的にならずに自分で制御できる状態にあります。感情的な人はトラブルを起こしやすいため、コントロールできるようになれば社内の人間関係や雰囲気の改善が見込めます。感情に振り回されないことで、社員本人の精神的な負担も軽減されるでしょう。

メタ認知を高めるデメリット

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メタ認知能力を高めることで、日常生活や仕事をより良いものにできます。そのため、基本的にはメリットばかりですが、下記についてはデメリットといえるでしょう。

  • 考えすぎて疲れてしまう
  • 過剰な責任感を持ってしまう
  • 周囲に配慮し過ぎて、自分の意見を押し通せない

メタ認知能力を高めることで、周囲に気を遣ったり考えすぎたりすることにより、自分を追い込んでしまう可能性があります。強い負担を感じたときは、周囲に相談するようにしましょう。

メタ認知を高めるトレーニング方法

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最後は、どのようにしてメタ認知能力を高めるのか、トレーニング方法をお伝えします。

  • セルフモニタリング
  • リフレクション

今回は、代表的な2つの方法をみていきましょう。

セルフモニタリング

セルフモニタリングとは、自分を客観的かつ冷静に、そして俯瞰して見る能力を養うトレーニングです。

具体的には、実際に起こったトラブルについて、その場の状況やトラブルになった理由について分析します。「もっと良い対応や解決策がなかったのか」「もし同じようなトラブルが再び起こったらどう行動するか」を考えましょう。

日常生活の小さなミスやトラブルでも、セルフモニタリングを続けていれば、自分への認知を高めることができます。

リフレクション

リフレクションとは、次に同じ失敗をしないよう、振り返りを行って「内省」を繰り返すトレーニングです。自分自身の経験を客観的に振り返る中で、新たな気付きや改善案を得ることができます。

客観的に自分を見る機会を繰り返し待つことで、自分の考えや行動を客観視できる能力が養えるのです。

リフレクションについては、下記の記事で詳しく解説しています。

リフレクションとは?振り返りがもたらす教育への効果を深掘り!

まとめ

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自分を客観的にみることができるメタ認知能力は、周囲と良好な関係を築きつつ、仕事を効率的に進めるために重要なスキルの1つです。メタ認知能力が高い人材は、いわゆる優秀な人材といえるでしょう。

メタ認知能力を高めることは、社員個人にも企業にも大きなメリットがあります。生産性・業務効率を向上させたい場合や、人間関係のトラブルやコミュニケーションエラーが起きている場合は、社員1人ひとりのメタ認知能力の向上を図ることで問題が解決するかもしれません。

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