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リフレクションとは?振り返りがもたらす教育への効果を深掘り!

リフレクションとは?振り返りがもたらす教育への効果を深掘り!

成長するために、常に前を向いて進み続けることは良いことです。しかし、成長のヒントは前だけにあるとは限りません。たまには過去を振り返ることも必要で、経験という宝の山が成長スピードを加速させてくれるでしょう。今回はそんな振り返りの重要性を中心に、リフレクションの効果と実践方法を深掘りしていきます。

リフレクションとは?

英語のreflectionは直訳すると、「反射」「反響」「映像」という意味を持ちますが、ビジネスシーンにおけるリフレクションとは、「内省」という意味を持ちます。日々の業務を客観的に振り返る機会を持つことで、自身の仕事の進め方や行動に新たな気付きを与えて、更なる成長へと繋げる理論です。

人材教育に活用されるリフレクション

“振り返り”を活用した教育は、個人を成長させるのに大きく役立ちます。教育と聞くと、つい「教える」と「教わる」という関係性ができてしまい、“振り返り”の機会を忘れてしまいがちです。しかし、過去の経験は宝の山であり、成長のきっかけが多く埋まっているのです。リフレクション教育をせずに、目の前の業務に忙殺されていると、成長のきっかけを見逃しているかもしれません。

特に、自身の業務を振り返る際には「客観的」な視点を持つことが重要です。自分の仕事への理解度や意義、改善点などが見えてきて、取り組み内容や姿勢に良い変化が生まれるでしょう。「上司に言われて改善する」と「自分で振り返ってみて改善を試みる」では、後者の方が成長の質が高いと言えます。

内省と反省の意味の違い

さて、「内省」と似たような言葉で「反省」がありますが、内省と反省には決定的な違いがあります。それは、“失敗”のみの経験を振り返るか、“すべて”の経験を振り返るか、という点です。反省は、主に失敗やネガティブな面について、同じ過ちを犯さないように改善することを指します。もちろん、反省も重要なことです。

一方で、内省では、失敗も成功も含めたすべての経験を振り返ることで、自身の成長に役立てます。失敗はもちろんのこと、成功体験においても「本当にあの選択で間違いなかったのか」「他にも選択肢はあったのではないか」「異なる選択をしていたら、どうなっていたか」など、リフレクションは個人の考え方に焦点を当てた振り返りなのです。

つまり、同じ過ちを繰り返さないための振り返りだけではなく、アイデアの引き出しを増やす機会も含めた振り返りが、リフレクションの本来の意味になります。

リフレクションにおける3つの重要指標

リフレクションの重要性を理解していても、実際に振り返りのやり方が分からないと意味がありません。外的要因と内的要因をバランスよく振り返り、更なる成長に繋げるために、リフレクションには3つの重要指標があります。

①【出来事】を振り返る

②【外部環境】を振り返る

③【自分自身】を振り返る

この3つの重要指標について、例を用いて解説していきます。

リフレクションにおける3つの重要指標の例

①【出来事】を振り返る

まず、実際に起きた出来事を具体的に振り返りましょう。何が起きたのかを正確に理解しないと結果の分析になりません。出来事の良し悪しを判断せず、単純に事実を思い返すだけで良いのです。

野球で例えると、「2球目を打って、センター前ヒットになった」という結果のことです。つまりビジネスでは、「採用課題の解決策を3つ提案し、契約に繋がった」というような結果だけを振り返ります。

②【外部環境】を振り返る

続いて、出来事が起こったときの外部環境との因果関係を振り返ります。仕事上で経験することのほとんどが、1人では完結しないでしょう。仕事には、上司がいて、取引先がいて、様々な外部環境との関係があって成り立つものです。なぜこの結果になったのかという原因を、外部環境が引き起こす影響から考察することが必要になります。

野球で例えると、「なぜ相手投手は2球目にカーブを投げたのだろう」という考察のことです。つまりビジネスでは、「2つ目の提案だけ取引先の反応が悪かった原因は?」という振り返りを意味します。

③【自分自身】を振り返る

最後に、自分自身の行動を振り返ります。ここがリフレクションで最も重要な指標です。このとき、自分の行動そのものではなく、なぜそのような行動に至ったか、意識や考え方にフォーカスすると良いでしょう。導き出した結果は最適解なのかを冷静に分析することで、似たような場面での対応能力が向上し、多くの成功体験を積むことができるのです。

野球で例えると、「初球のストレートを狙っていれば、ホームランを打てたかもしれない」という自己分析のことを指します。つまりビジネスでは、「2つ目の解決策をスムーズに受け入れてもらうためには、1つ目の提案との関連性を強調すべきであった」と置き換えられます。

この3つの指標を駆使して振り返りを実施することで、過去の経験からの学びを余すことなく収集することができるのです。

リフレクションの効果

リフレクションを実践することで、どのような効果が得られるのでしょうか。本章では、前述した3つの指標に紐づく効果を解説していきます。

①仮説と検証の思考が定着する

②新たな発見・気づきが生まれる

③自身の行動に変化が生まれる

①仮説と検証の思考が定着する

【出来事】を振り返ることで、仮説と検証の思考が身につきます。結果を振り返ることで、自身が望む理想と実際に起きた事実との差異を確認することができます。これにより、“結果論”で物事を考えるのではなく、“過程”を重視した仕事の進め方が定着するようになり、成功への選択肢が増えていくのです。

②新たな発見・気付きが生まれる

【外部環境】を振り返ることで、新しい発見や気付きが生まれます。外部環境をコントロールするのは難しいことですが、結果との因果関係を考察することで新たな発見に辿り着くことができるのです。

今回の結果は、多くある解のうちの1つであって、過程を振り返ると、もっと良い結果に繋がったかもしれないし、違うルートから今回の結果に繋がったかもしれません。これが、新たな発見と気付きです。過去の自分の経験から得られる発見は、自分しか知り得ない貴重な財産となります。

③自身の行動に変化が生まれる

前述した発見や気付きを得られると、物事に対する視野が広がります。そして、【自分自身】を客観的に振り返ることで、考え方と行動に変化が生まれます。実際に仕事を進めていた当時と、客観的に振り返っている現在では、物事の捉え方に差が出てきます。冷静に自己分析をすることで、自身の行動に変化が生まれ、更なる成長を促進できるのです。

リフレクションの実践方法

組織で実践するフレームワーク

リフレクション

KPT法

KPT法とは、Keep・Problem・Tryの頭文字であり、「継続」「問題」「挑戦」に取り組む手法です。何かミスやトラブルが発生した際に、原因や問題点が分っても、なかなか改善まで辿り着かないこともあるでしょう。問題点を見つけたら、解決に向けた対策を具体的な行動規範に落とし込む必要があります。

KPT法では、「上手くいっていること」と「改善が必要なこと」を抽出し、「今後どうすべきなのか」という問題点に対する解決策の提示に重きを置いています。そのため、チームでのリフレクションとして多く活用されています。KPT法は組織の改善スピードを高めるのに有効な手段といえるでしょう。

リフレクションミーティング

リフレクションミーティングとは、従業員が個々に実施したリフレクションの結果を、部署やチーム内に共有する方法です。

リフレクションは、客観的に自分自身を振り返るものですが、どうしても人はそれぞれが持つ価値観や固定概念の影響を受けてしまいます。そこで、組織でリフレクションを共有することで、同僚のリフレクションにおける考え方や気付きを知ることができ、自分では見つからなかった新たな気付きや価値観に出会える可能性があるのです。

また、組織的に行った取り組みや計画に対して、チームメンバー全員でリフレクションを行う方法もあります。メンバー同士の結束力や相互理解が高まり、次にやることや問題の解決策を共有できるため、チームの方向性を一致させることにも繋がるでしょう。

そして、リフレクションミーティングの最後にはレポートを書くようにします。レポートとして書き起こすことで、改めて自分の頭の中を整理することができて、振り返るだけで終わらずに実践に移しやすくなるのです。

このリフレクションレポートは、業務ノウハウとしての役割を持たせる必要があります。書き方として、前述した3つの重要指標に加えて、他者の振り返りから得た学びと今後の改善策について記載すると良いでしょう。

個人で実践するフレームワーク

リフレクション

KDA法

KDAとは、Keep・Discard・Addの頭文字です。自分の行動を振り返って「今後も継続すること」「やめること」「新たに始めること」を決める手法です。特に重要なのは、問題が起きた理由を探し出し、今後はそれを“やめる決意”をすることです。新しいことを実践する前に、まずは問題の原因を知って、その問題に繋がった考え方をやめることから始めると良いでしょう。

YWT法

YWT法は、日本能率協会コンサルティングが提唱したフレームワークであり、「(Y)やったこと」「(W)分かったこと」「(T)次にやること」を振り返る手法です。

「やったこと」は挑戦、「分かったこと」は学び、「次にやること」は創造と置き換えることができます。毎日の業務に関して、想定していた結果や予定していた計画と、実態との差を把握することに役立ちます。このYWT法を実践することで、挑戦することで得た学びから自己理解と内省を深めることができ、より良い未来の創造を成し遂げることができるのです。

参照:日本能率協会コンサルティング YWT法

そして、頭の中だけで整理するのは限界がありますから、“記憶”ではなく“記録”する習慣を身につけましょう。個人で振り返る際は、3つの重要指標と照らし合わせた振り返りを紙に書き出します。それをリフレクションシートとして所有し、常に見返せる状態をつくることで仕事の生産性が向上します。

注意すべき間違ったリフレクションの考え方

組織にとっても個人にとっても、リフレクションは成長を促進する効果が期待できます。ただし、リフレクションの考え方を履き違えると、組織にも個人にも悪影響を及ぼすため注意が必要です。

例えば、トラブルになったときに、犯人捜しをすれば、感情的・主観的になりやすく、良い気付きが見つかりにくい傾向があります。リフレクションでは、誰がミスをしたのかという物事の良し悪しよりも、何をどう改善するとより良い結果を得られるのかという解決策を考えることが重要です。チームで実施するリフレクションでは、他人を批判したり責任を追及したりすることで、人間関係が悪化してしまうケースや、学びに繋がらないケースも起こり得ます。

発生した事象から、考え方や行動をどう変えれば良いのか、建設的な振り返りを心がけましょう。

まとめ

リフレクションは、過去から財産を得て成長を加速させるための効果的な方法です。まずは、人事担当者や部門責任者が正しくリフレクションを理解したうえで、組織でリフレクションを実践したり、個人にリフレクションを促したりしましょう。

「過去を振り返るな!」という言葉、よく耳にしますがビジネスの世界ではそうではありません。過去を振り返ることで見つかる気付きが未来を変える。今日という1日もリフレクションの対象です。たまには振り返り、自分を客観的に見つめる機会を設けてみてはいかがでしょうか。

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