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ハイブリッドワークとは?メリット・課題・導入企業の事例から成功への鍵を解説!

ハイブリッドワークとは?メリット・課題・導入企業の事例から成功への鍵を解説!

2020年以降、社会情勢の変化をきっかけに多くの企業が急速にテレワークへの移行を余儀なくされました。近年では、新たなワークスタイルとして、ハイブリッドワークが注目されています。

本記事では、ハイブリッドワークが導入される時代背景や目的を紐解き、導入に向けて意識すべきポイントと事例を紹介しています。

ハイブリッドワークとは?

ハイブリッドワークとは、オフィスワークとテレワークを併用した働き方です。テレワークの利点と、オフィスワークの利点を兼ね備えた柔軟な働き方で、社員の働きやすさを促進している企業が増えてきています。

Hybrid workの意味

英語の“Hybrid”とは、「混合」「複合」という意味があり、“work”は「働く」という意味です。つまりHybrid workは、「多種多様な働き方を複合させた柔軟な仕事環境の提供」と定義することができます。企業主導で個人主体の先進的な取り組みという訳です。

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ハイブリッドワークが導入される目的

2020年以降、まるで時代が早送りされたかのように各企業が一斉にテレワークの導入に対応した中で、いくつかの発見があったはずです。この発見を「テレワークでもできること」と「オフィスを活用した方が良いこと」に分類して考えてみると、ハイブリッドワークを導入すべき4つの理由が見えてきます。

ハイブリッドワークが導入される4つの目的を表した図

①コミュニケーション

テレワークでのコミュニケーションは、主にTeamsやSlackといったビジネスチャットツールを活用する例が多くあります。テレワークでの仕事では、個人の仕事に集中できるという利点はあるものの、チームでの連携や上司への相談などは、オフィスワークよりもコミュニケーションが取りづらくなるケースも見受けられます。

対面でのコミュニケーションとは異なり、相手の表情や話し方から伝わる熱量などはテキストベースのチャットではなかなか伝わりづらいです。また、ビジネスではタイミングも重要であり、コミュニケーションを取る相手の仕事ぶりが目に見えて把握できる環境も持っていたいものです。

このように、コミュニケーションにおいては、ハイブリッド型の勤務体系を推進することで、業務の効率化に繋がっていくのです。

②社員の健康管理

テレワークの導入から、1人で業務をすることに孤独感を覚える社員もいるでしょう。また、個人差はあると思いますが、食事・睡眠・娯楽といった“やすらぎの空間”であった家に、“仕事の空間”が加わる訳ですから、想像以上にONとOFFの切り替えは難しいことでしょう。

つい長時間労働になってしまったり、会話の数が減ってしまったり、テレワークならではのストレスも考えられます。そんな時にハイブリッド型の勤務体系にすることで、オフィスへの出社が気分転換としての役割も果たしてくれるのです。

③仕事環境の整備

次に仕事環境です。テレワークの導入に伴い、ネットワーク環境の整備やPC周辺機器の調達、自宅用ワークテーブルの確保など、多岐にわたる仕事環境の変化がありました。

このように、家の中で仕事をするための最適な環境作りには、費用と時間がかかります。時には、オフィスにある書類が必要になることもあるでしょう。オフィスワークでやってきた業務のすべてをテレワークでやろうとせず、ハイブリッド型の勤務体系によって、これまでと同様にオフィスワークもできる環境を提供することで、社員がストレスなく働ける仕組み作りに繋がるのです。

④セキュリティ対策

最後にセキュリティ対策です。テレワークでは、自宅だけではなく、オフィス以外のあらゆる場所での就業を可能としました。それゆえ、オフィス以外のネットワーク、特にフリーWi-Fi環境下での仕事は、情報漏洩のリスクが高く、セキュリティ面での不安材料が多く存在しています。

ハイブリッド型の勤務体系にすればセキュリティ対策ができるという訳ではありません。当然、テレワークを組み合わせる以上はシステムトラブルやウイルス感染へのリスクはつきものです。しかし、ハイブリッド型の勤務体系であれば、“事前の防御策”と“事後の解決対応”を迅速に実施することが可能になります。詳しくは【意識すべきポイント4選】で後述していますので、参考にしてください。

ハイブリッドワークのメリット

ここからは、ハイブリッドワークを導入するメリットを紹介します。

★生産性の向上

★コミュニケーションの活性化

★オフィスの有効活用

★ワークライフバランスの充実

★生産性の向上

ハイブリッドワークでは、自分がパフォーマンスを出しやすい就業環境が複数あると言えます。その日の業務内容や外出先との兼ね合いに合わせて、自分で最善の就業環境を選択することができるため、生産性を高めることができます。

★コミュニケーションの活性化

ハイブリッドワークでは、チャットツールでの連携に加えて、必要に応じて対面での会話もできるため、チーム内でのコミュニケーションが活性化されます。出社したのに、チームメンバーがみんなテレワークだと寂しいですから、チームメンバー内でオフィスワークする日とテレワークする日を決めておくことをお勧めします。

★オフィスの有効活用

オフィスワークをする社員もいれば、テレワークをする社員もいる。つまり、全員分のデスクを用意する必要がなくなったのです。このオフィススペースをどのように使うかが重要です。

例えば、固定費を削減するためにオフィスを縮小したり、オフィスレイアウトを変えてみたり、会議室を減らしてオープンスペースを増やしてみたり、社員の働きやすさと企業の利益を追求すると様々なオフィス活用方法があります。ハイブリッドワークを通じて、様々なオフィスの存在価値を提供することができるのです。

★ワークライフバランスの充実

家族との時間、趣味の時間、休息の時間など、プライベートの時間を十分に確保することで仕事への活力にも繋がります。ハイブリッドワークで働き方を選べるようになると、仕事とプライベートのバランスがとりやすくなり、人それぞれの有効な時間の使い方ができるようになります。

ハイブリッドワークのデメリット

次に、ハイブリッドワークのデメリットも紹介します。

◆不透明な勤怠管理

◆社員の連携頻度に格差

◆不透明な勤怠管理

これはテレワークの課題として挙げられる内容ですが、オフィス以外の場所での勤怠管理は透明性に欠けます。オフィスワークでは、出勤と退勤を物理的な移動を伴うことで担保していた勤怠管理ですが、自宅やカフェなどの目に見える範囲外で行われる勤怠管理では、その透明性を確実に把握することは困難でしょう。

また、働く場所が複数になることで、仕事に関係のない移動時間が出てくる社員もいます。そのため、「出勤」と「退勤」だけでは、社員の勤怠管理が難しくなっているのが現状です。ハイブリッドワークを導入するには、勤怠管理ツールを活用して「出勤」「退勤」以外にも「移動」や「外出/戻り」などの項目を含めて管理することが望ましいでしょう。

◆社員の連携頻度に格差

オフィスワーカーとテレワーカーでは、どうしても連携頻度に差が出てしまいます。オフィスで顔を合わせる社員同士は、すぐにコミュニケーションが取れるため、連携がしやすいという特徴があります。一方で、テレワーカーとの連携はメールやチャットツールが中心となるため、多少なりとも連携頻度とスピードに差が出てしまうのです。

例えば、オフィスで働く上司が緊急の仕事を依頼したいときを考えてみます。口頭ですぐに伝えられる、どのくらいの緊急性かを表情で伝えられる、会話のラリーが少なくて済むといった背景から、同じオフィスにいる社員への依頼が増え、テレワーカーとの連携頻度に差が生じてしまうケースも考えられます。

また、このような連携頻度の差は不公平な評価基準を生み出してしまうかもしれません。オフィスで働くことが多い社員とテレワークすることが多い社員を比較すると、同じ成果を出している両者に対して、緊急時の対応や依頼仕事の多さからオフィスで働くことが多い社員の評価が高くなってしまうというジレンマに陥ります。

「出社することで評価が上がる仕組み」を知らぬ間に誘発してしまうと、テレワークすることの良さが目立たなくなり、ハイブリッドワークが有名無実の取り組みになってしまう恐れがあるので、注意が必要です。

意識すべきポイント4選

ここまでは、ハイブリッドワークの導入目的からメリット・デメリットを紐解いてきましたが、企業はハイブリッドワーク導入に向けてどのような準備をするべきなのでしょうか。本章では、意識すべき4つのポイントをお伝えします。

1.オフィス環境の整備

2.徹底したセキュリティ対策

3.社内用の連携チャットツールを統一

4.週間の勤務形態を事前報告

1.オフィス環境の整備

オフィス環境の整備には、2つの取り組みがあります。フリーアドレスの導入とオープンスペースの確保です。

まず1つ目のフリーアドレスとは、社員が固定のデスクを持たず自由な席で働くことができるオフィススタイルです。オフィスワークとテレワークを両立させることで、中には空席になるデスクも出てきます。空間の活用術としてはもったいないスペースと言えます。そこで、決められたデスクではなく、オフィスでは自由に席を選んで働ける環境を提供することも重要です。

ハイブリッドワークが導入される目的】の章でもお伝えした通り、オフィスには気分転換を担う役割もあるのです。そのため、フリーアドレスを活用することでオフィスに来ることを楽しみにする高揚感を演出できる効果も期待できます。

2つ目はオープンスペースの確保です。フリーアドレスを活用することで、固定のデスクがなくなるため、スペースを有効に活用できるようになります。ここには、会議、ランチ、休憩といったような何にでも利用して良い自由な空間を確保するとよいでしょう。

同年代から先輩・後輩との会話の場としても、部署の垣根を超えた会議の場としても、ランチタイムの雑談場所としても、オープンスペースを活用することでコミュニケーションの活性化につながるのです。

オフィス内のオープンスペースを活用した自由な空間の例

2.徹底したセキュリティ対策

社員に対するセキュリティ意識の醸成はもちろん大切ですが、様々な環境で仕事ができるメリットを最大限に活かすには、ツールを活用したセキュリティ対策を徹底すべきです。

備えておくべきセキュリティ対策として下記が挙げられます。
・社員がPCを持ち歩くため、紛失時に遠隔で個人情報データを削除できるツール
・社外ネットワークとの接続によるウイルス感染時のウイルス対策ツール
・不正アクセスから守るサイバー攻撃対策ツール

情報漏洩は企業の信用に関わる深刻な問題に直結します。これらのツールを活用して、徹底したセキュリティ対策を実行しましょう。

3.社内用の連携チャットツールを統一

社内用の連携チャットツールは統一して管理することを推奨します。部署ごとにバラバラのチャットツールを濫用していると、どのチャットに連絡すればよいか分からず、連携不足に陥ってしまいます。

例えば、クライアントからの急な依頼や、テレワークしている社員しかできない属人的な作業が発生した際に、すぐにコミュニケーションが取れるツールを用意していないと業務に支障をきたしてしまいます。全社統一のチャットツールを活用し、用途によってグループ分けをしながら情報を一元管理できるようにしましょう。

これにより、ホウレンソウの漏れを減らすこともできます。忙しいビジネスパーソンにとって、各方面から来るホウレンソウを追いかけ続けることは業務効率が悪く、確認漏れも生じてしまいます。そのため、報告・連絡・相談をするチャットルームを設けて、スムーズな事業運営を心掛けるとよいでしょう。

4.週間の勤務形態を事前報告

ハイブリッドワークとはいえ、誰がどの勤務形態で働いているかという情報は把握しておく必要があるでしょう。メンバーの週間の勤務形態を把握することで、会議設定のタイミングや仕事依頼のスケジュールが組みやすくなり、効率的な業務遂行に役立ちます。

そのため、事前報告を徹底することで、勤務形態の自由を確保しながら社員の勤怠管理と業務管理を実施することが可能になります。

取り組み事例

最後に、ハイブリッドワークの取り組みを3つ解説します。導入企業も紹介しながら、実際にどのような取り組みがあるのかを見ていきましょう。

■オープンスペースを意識したオフィス活用事例

■サテライトオフィスの活用事例

■バーチャル空間での情報共有の事例

■オープンスペースを意識したオフィス活用事例

多目的なコワーキングスペース

コワーキングスペースとは、多様な社員たちが同じ場所に集まりながら仕事ができる共有型の空間を指します。

日本電気株式会社(NEC)では、「BASE」というコワーキングスペースを設置しています。ワークショップやレクリエーションに活用できる空間もあれば、リフレッシュするためのソファスペースもあり、ライブラリーも完備しています。より創造的な仕事ができるような多様な空間を演出しているのです。

開放感のある会議スペースの導入

個室空間の会議室とは別に、オープンな空間に会議スペースを設けることは、社内の動きが自然と分かるようになり、ビジネスにとって非常に効果的です。例えば、テレワーク社員とのビデオ会議や定例の社内会議などが挙げられます。

テレワークでは、自分の業務に関係のある限定的な情報のやり取りが主になってしまいがちです。一方、オフィスにオープンな会議スペースがあることで、オフィス空間が活発なコミュニケーションの場としての価値を高めているのです。

当社では、フリーアドレスを導入してオープンな会議スペースを活用しています。ランダムに配置されたデスクがあるオフィスの所々に、円卓でモニター付きのオープンな会議スペースとプレゼンができるシアタースペースを設けています。

オープンな会議スペースとシアタースペース

開放的に会議が実施されることで、部署の垣根を超えたコミュニケーションの活性化に繋がります。また、オフィスの動線を敢えてギザギザにすることで、移動によって偶発的なコミュニケーションが生まれるきっかけにもなります。さらに、個室空間の会議室に余裕ができ、来客対応で利用する部屋の確保がしやすくなるというメリットもあります。

下記は、オープンスペースを意識したオフィス活用を実施している代表的な企業です。

企業名取り組み参照
日本電気株式会社(NEC)コワーキングスペース「BASE」Click
株式会社プロフェッショナルバンク(当社)フリーアドレス・オープン会議空間Click
日本マイクロソフト株式会社「品川2.0」オフィスClick

■サテライトオフィスの活用事例

社内にも、社外にも、サテライトオフィス

サテライトオフィスとは、企業本社から離れた場所に設置されたオフィスを指します。支店や営業所と勘違いされやすいですが、活用の目的に違いがあります。支店は特定地域の営業活動や事業推進を効率的に実施するための拠点であるのに対し、サテライトオフィスは社員の働き方や都合に沿った拠点としての役割があります。

富士通株式会社では、社内と社外にサテライトオフィスを設置しています。前述したサテライトオフィスの説明から、“社内のサテライトオフィス”というワードには違和感を持つ方もいるでしょう。説明します。

複数の事業所を持つ企業では、事業所間の出張も多くあります。しかし、出張先に自分のデスクはないため、主要拠点の往復の時間が発生します。このもったいない移動時間を有効活用するために、本社と事業所にサテライトオフィスを設置して効率良く仕事ができる環境を整備したのです。これが、“社内のサテライトオフィス”です。

また、社外への出張が多い企業もあるでしょう。これは富士通も例外ではなく、“社外のサテライトオフィス”を設置しています。これにより、訪問先の地域のサテライトオフィスでの仕事が可能になりました。訪問先企業の近くのカフェよりも、自社のサテライトオフィスの方がセキュリティ面でも安心できるため、会社のリスク管理にも繋がっていることでしょう。

サテライトオフィスがあることで、ハイブリッドワークにおける働く場所の選択肢が増えるだけではなく、業務効率化とセキュリティ対策にも役立っているのです。

下記は、サテライトオフィスを活用している企業の取り組み内容です。

企業名取り組み参照
富士通株式会社社内サテライトオフィス「F3rd」Click
富士通株式会社社外サテライトオフィス「F3rd+」Click

■バーチャル空間での情報共有の事例

オンライン上に仮想オフィスを設置

考え方としては、オフィスで働いていても、テレワークしていても、仮想オフィス上では全員が本社勤務している状態を指します。

オフィスワークとテレワークで情報格差が生じてしまう原因は、オフィスワーカーとテレワーカーの発信方法にバラつきがあるからです。それを解消するために、サイボウズ株式会社では、情報共有や申請承認などといった全社共通のフローはすべてオンライン上で完結できるような仕組みを取り入れています。これにより、情報格差が勤務形態によって左右されることなく、リアルタイムに把握できるようになります。

下記は、バーチャル空間での情報共有を実践する代表的な企業です。

企業名取り組み参照
サイボウズ株式会社オンライン上の仮想オフィスClick
日本マイクロソフト株式会社「品川2.0」オフィスClick

まとめ

2020年以降に急速に推進されたテレワークと、2020年まではスタンダードであったオフィスワークですが、これからの時代はこの2つの働き方のメリットを活かしたフレキシブルな働き方が求められます。

IT技術革新が進み、変化の目まぐるしい現代。社員が働きやすい就業環境を提供することは企業経営の基盤となるでしょう。その選択肢の1つとして、ハイブリッドワークの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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