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ダイバーシティとは?多様性社会の到来に伴う新たな経営の考え方を解説!

ダイバーシティとは?多様性社会の到来に伴う新たな経営の考え方を解説!

見聞きしない日はないというほど、仕事でも日常生活でも何かと使われるようになったダイバーシティ(Diversity)。現代社会において、もっとも注目され、重要視されつつあります。

本記事では、ダイバーシティの意味や重視されるようになった背景、企業がダイバーシティを推進することで得られるメリットをまとめました。未来を見据え、成長を加速させたい企業関係者の方が知っておきたい、ダイバーシティという概念についてわかりやすく解説します。

ダイバーシティとは?

ダイバーシティとは、「多様性」を意味する言葉であり、異なる属性・個性を持った人々が共存している状態を指します。異なる属性・個性を守るのではなく、”違いを認め尊重する”ことがダイバーシティの考え方に該当します。

ダイバーシティとは

ダイバーシティの歩み

ダイバーシティの広がりは、1950~1960年代のアメリカで、アフリカ系アメリカ人による法的・社会的平等を求めた公民権運動で注目されたことに始まります。その後、ダイバーシティは性別や人種といった「限定的な属性」を受け入れる社会の実現に対して使われてきました。

しかし現代では、より広義な「あらゆる属性」の尊重を意味するようになっています。現代ビジネスにおいても、広義のダイバーシティが用いられ、企業の経営戦略のカギとなるほど重要視されています。

ダイバーシティの種類

それでは、現代のダイバーシティが意味するところの「あらゆる属性」とはどのようなものなのでしょうか。ここからは、ダイバーシティの種類について解説します。

ダイバーシティは、大きく「表層的ダイバーシティ」と「深層的ダイバーシティ」が存在します。それぞれの概要と具体例をみていきましょう。

表層的ダイバーシティ

表層的ダイバーシティは、生まれ持った属性・普遍的な属性を意味します。表層的と表現されるように、外側から見える部分に関するもので、外見で判断しやすい外面的な多様性です。

  • 性別
  • 年齢
  • 国籍
  • 人種/民族
  • 容姿
  • 障がいの有無

深層的ダイバーシティ

対して、深層的ダイバーシティとは、後天的な属性を意味します。深層的、つまり外見から判断しにくい内面的な多様性です。表層的ダイバーシティと比較すると、非常に複雑で、下記で列挙した例以外にも無数に存在します。

  • 趣味
  • 宗教
  • 価値観
  • 知識
  • 学歴
  • 職歴
  • スキル/能力
  • 働き方
  • 第一言語
  • 組織におけるポジション

企業においては、この深層的ダイバーシティの理解と受容に対する取り組みがとくに重視されます。組織を構成するメンバーが、各々の内面的な多様性を理解し、お互いの個性を活かしながら業務に取り組む環境を構築することで、新たな価値・イノベーションの創出につながるためです。

ダイバーシティが重視されるようになった背景

もともとは限定的な属性に対して平等を求める概念だったものが、なぜあらゆる属性を尊重するというところまで意味の幅が広がったのでしょうか。

ダイバーシティが広く重視されるようになった背景には、国際的な社会情勢の変化が挙げられます。

生産年齢人口の減少

ダイバーシティが注目されるようになった背景には、先進国で共通して問題になっている少子高齢化による生産年齢人口の減少があります。労働者の減少は今後も続いていくことが予想されており、今後は従来の採用活動・雇用条件で獲得してこなかった人材にも雇用対象を広げていかないと、企業は十分な労働力を確保できません。

企業は多様性のある組織を構築することで、多くの人材を受容できる環境を提供し、労働力を確保しなければならないのです。

国際競争力の強化

テクノロジーの発展によるグローバル化もダイバーシティが重視されるようになった要因といえます。グローバル化が進んだ現代で企業が持続的に成長するためには、グローバル視点を持ち、国際競争力を高める必要があります。

今後、さらに多種多様な属性の人々がステークホルダーになっていくことから、企業は否が応でもダイバーシティへの取り組みを進めなければならないのです。

価値観の多様化

日本の終身雇用制度は崩壊し、労働者のキャリアに対する考え方や求める働き方は大きく変化しています。加えて、労働者が膨大な量の情報を発信・収集できるようになったことから、価値観の個人化が進んでいます。このように、人生そのものの価値観が多様化した現代では、採用する側の企業も従業員1人ひとりの価値観に対応できなければなりません。

また、価値観の多様化は社会全体、消費者においても起こっています。多様化した価値観による消費行動に応じた事業を展開するためには、やはりダイバーシティの要素を企業戦略に積極的に取り込まなければいけない状況となっているのです。

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ダイバーシティ&インクルージョンとは?
ダイバーシティの推進を考えるなかで、知っておきたいのが「ダイバーシティ&インクルージョン」という考え方です。ここでは、インクルージョンの意味や、ダイバーシティとインクルージョンの違い、ダイバーシティ&インクルージョンの詳細を解説します。

ダイバーシティとインクルージョンとの違い

ダイバーシティの類語として、インクルージョンという考え方があります。インクルージョンとは、企業に属する社員全員が仕事に参画する機会を持ち、各社員の能力を最大限に発揮できる状態を指します。

インクルージョンとダイバーシティの違いは、インクルージョンの方がより社員の“能力開発”に重きを置いた考え方という点です。多様な人材が集まった状態であるダイバーシティがインクルージョンの前提条件であり、インクルージョンはその多様な人材が互いの特徴や強みを活かして組織が活性化している状態を指します。

インクルージョンとは?ダイバーシティとの違い・事例を紹介し、多様性社会に必要な取り組みを紐解く!

ダイバーシティ&インクルージョンという考え方

ダイバーシティとインクルージョンは密に関係する概念であり、それらをかけ合わせた「ダイバーシティ&インクルージョン」という考え方も存在します。その名の通り、人材の多様性(ダイバーシティ)を認めて、個人の能力を最大限に活かす(インクルージョン)という考え方です。

経済産業省は“ダイバーシティ経営”を推進しています。「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義されているため、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方と同義と言えます。

例えば、「女性の活躍推進」「外国人雇用」「シニア人材の活躍」「障がい者の活躍」などは、人材不足と国際競争激化を解決するための手段の1つとして注目されています。ただ単に多様な性質を持った人材の集合体にするだけではなく、その人材が活躍できる環境や組織を提供することが企業には求められているのです。これこそがダイバーシティ経営の基礎であり、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方の根本なのです。

また、近年では個人の特徴に合わせた機能的な能力開発を促進するために、エクイティ(公平性)を加えた「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」という概念も必要とされています。

ダイバーシティ推進におけるメリット

ダイバーシティの広がりを単に時代の流れとして捉え、企業にとっては利益のないもの、むしろ企業側に配慮と対応を迫る厄介な風潮と考えている人もいるでしょう。しかし、企業のダイバーシティ推進は、企業側にも下記のようなメリットをもたらします。

  • 優秀な人材の採用と定着
  • 企業のイメージ向上
  • イノベーションの創出

1つずつメリットの詳細をみていきましょう。

優秀な人材の採用と定着

多様な人材が個性を活かして活躍できる環境は、すべての社員の個性が尊重されていることを意味するため、誰しもが働きやすい職場環境と言えます。そのため、「働きたい!」と思える要素が多くなり、採用を有利に進めることができるのです。

また、社員の満足度が高まることでエンゲージメント向上にも繋がります。それに伴い、定着率が高まり、優秀な人材を採用して定着させる好循環を実現できます。

企業のイメージ向上

経済産業省がダイバーシティ経営を推進していることも後押しして、今後、より一層の多様性社会への変革が行われるでしょう。それに伴い、ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みは、社会から高く評価される重要指標の1つとなります。

転職市場、クライアント、消費者など、幅広いマーケットに対して好印象を与えることが可能です

イノベーションの創出

多様な人材がそれぞれの個性を活かすことで、これまでにない斬新な発想や異なる価値観からのビジネス創出など、イノベーションの創出が期待できます。ダイバーシティ&インクルージョンが浸透した組織では、個々の得意分野を活かすだけで多様なアイデアが生まれ、新たなビジネスチャンスに触れる機会が多くなります。

ダイバーシティ浸透における課題

ダイバーシティ浸透における課題
各方面でダイバーシティの推進が叫ばれるなか、その浸透に伴いトラブルも発生しています。

・無意識の差別や偏見
・社員からの誤解と反発

上記のような企業のダイバーシティ浸透における課題についても触れておきましょう。

無意識の差別や偏見

組織を構成するすべてのメンバーがダイバーシティに対して正しい知識を有していないと、チーム編成やプロジェクトのアサインで無意識的な差別や偏見が発生し、トラブルになる可能性があります。この無意識のうちに発生する偏見は、「アンコンシャス・バイアス」と呼ばれています。

アンコンシャス・バイアスは、ダイバーシティ浸透を妨げる要因です。たとえば、「女性は管理職に向いていない」「シニアはITリテラシーが低い」「男性は育休を取らない」などです。アンコンシャス・バイアスにより、正当な評価・意思決定がなされないことで、トラブルや不平不満の蓄積につながります。

社員からの誤解と反発

多様性を尊重した組織に変えていくには、時間と費用をかけて大幅な制度改革を施す必要があります。これまでの組織風土や制度が変わる可能性も大いにあり、既存社員からの誤解や反発が生じてしまうケースも起こってしまいます。

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組み事例

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組み事例
インクルージョンには、具体的にどのような取り組みがあるのでしょうか。最後は、グローバル企業としてインクルージョンの取り組みを積極的に推進しているデロイト トーマツ グループの事例を紹介します。

デロイト トーマツ グループ【Diversity,Equity&Inclusion】

デロイト トーマツ グループでは、Diversity, Equity & Inclusionを重要経営戦略の一つとして位置付け、「ジェンダー平等」「多文化共生」「LGBT+&アライシップ」「障がい」に対する取り組みを推進しています。

ジェンダー平等(Gender Equality)

まずは、ジェンダー平等に関する取り組みを紹介します。

【SheXO Club】
組織内で活躍する女性エグゼクティブ及び次世代リーダーをサポートするための包括的な取り組みとして、2020年1月よりSheXO Clubを設立しました。

女性リーダー・次世代女性リーダーを対象に、参加型アクティビティを年2回開催しています。日本における社会課題、採用市場、育成、DX関連、ダイバーシティなどのリーダーが関心を寄せるトピックについて、様々なバックグラウンドを持つ方々の考え方に触れる機会を提供しています。

この取り組みへの参加は女性に限定せず、女性の活躍を推進する企業のエグゼクティブの方々にも参加いただき、多角的な意見交換の場となっています。

参照:デロイト トーマツ グループ「SheXO Club 女性リーダーシップの課題解決を支援します」

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女性リーダーの特徴・強みを徹底解説!育成に必要なこと、メリット、課題とは?

【30% Club Japanの設立支援】
30% Clubとは、2010年にイギリスで創立された世界的な取り組みであり、女性役員の向上を目的としています。デロイト トーマツ グループでは、持続可能な社会構造とその発展に寄与するため、30% Clubの日本設立に向けた取り組みを支援しています。

参照:デロイト トーマツ グループ「30% Club Japanの設立支援」

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女性管理職比率30%の壁を超える!女性管理職を増やす取り組みとメリット、採用方法を解説

多文化共生(Multi Culture)

次に、多文化共生に関する取り組みを紹介します。

【Internationalメンバー活躍推進の取り組み】
日本での生活・就労経験のない社員に向けて、日本のビジネス習慣や企業文化を伝えるオリエンテーションを実施しています。さらに、International Networking Partyを開催し、日本での生活・業務に関する情報や苦労をグループ内のメンバーとシェアすることで、日本人メンバーとの交流機会としても定期開催に至っています。

【礼拝スペース設置】
多文化共生の実現には、それぞれの個性や習慣を受け入れ尊重する必要があります。あらゆる信仰を持つメンバーの礼拝スペースを設置することで、多文化共生の礎を築いています。

参照:デロイト トーマツ グループ「インターナショナル・多文化共生」

LGBT+&アライシップ(LGBT+&Allyship)

続いて、LGBT+&アライシップに関する取り組みを紹介します。

【LGBT+を考慮した制度策定・設備改善】
福利厚生における「配偶者出産休暇」「慶弔休暇」「慶弔金」では、同性パートナーも配偶者として定義して制度を運用しています。また、デロイト トーマツ グループ本社のある二重橋オフィスでは、ジェンダーに関係なく誰でも使用できるトイレを設置するといった設備面での取り組みも実施されています。

【相談窓口の設置】
当事者・非当事者を問わず、LGBT+に関する様々な悩みに対応する相談窓口を設置しています。また、当事者を含めた専任サポートチームを設置し、当事者入社時の相談対応やカミングアウト、トランジション時などのサポートを行っています。

【Deloitte Tohmatsu Rainbow】
LGBT+の活動を支援するAllyネットワークとして、Deloitte Tohmatsu Rainbow(DTR)を組成しています。日本各地のグループ間での連携に留まらず、他企業や外部団体との連携を促進していて、企業・業界・地域の垣根を超えた課題解決に向けて活動しています。

参照:デロイト トーマツ グループ「LGBT+・アライシップ」

障がい(Disabilities)

最後に、障がいのあるメンバーの活躍推進に関する取り組みを紹介します。

【合理的配慮】
障害者手帳を持つメンバーに関しては、本人からの申し出および協議と合意に基づき、「採用面接時の支援者の同席」「職場体験実習の実施」「社内専門家・相談窓口の設置」などの配慮を実施しています。

【The Valuable 500への加盟】
The Valuable 500とは、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において立ち上げられた活動です。デロイト トーマツ グループでは、障がいを持つメンバーが社会や経済にもたらす潜在的な価値を発揮できるような社会づくりの推進を目的に、The Valuable 500への参加を表明しています。

参照:デロイト トーマツ グループ「障がいのあるメンバーの活躍推進」

まとめ

今回は、現代社会の企業にとっては欠かせない存在となっている「ダイバーシティ」について詳しく解説しました。

ダイバーシティを推進することで、多くの企業が抱えている経営課題を解決することができます。人材不足や企業イメージの向上、イノベーションの創出など、企業の成長を加速させたい場合は、積極的にダイバーシティを推進していくのが効果的です。

ただし、ダイバーシティの推進には、一部で注意すべき課題も存在しています。すでに取り組みを始めている企業の事例を参考にしながら、ダイバーシティの実現をめざしましょう。

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