人事ねた

経営者/人事の8割超がミドル・シニア人材の採用を「強化したい」と回答/ミドル・シニア人材の“採用”に関する調査

経営者/人事の8割超がミドル・シニア人材の採用を「強化したい」と回答/ミドル・シニア人材の“採用”に関する調査

HR領域の社会的トピックに対する市場調査とデータ分析を実施するプロフェッショナルバンクのHR研究所は、45歳~50代の人材の採用経験がある企業に属する経営者および人事責任者/人事担当者を対象に、「ミドル・シニア人材の採用」に関する意識調査を行いました。


■調査方法:PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
■実施期間:2025年7月8日(火) ~ 2025年7月11日(金)
■調査人数:1,013人
■調査対象:45歳~50代の人材の採用経験がある企業に属する経営者/人事責任者/人事担当者


総務省の労働力調査を見ると、年齢層別の転職者の伸びは45歳以上50代のミドル・シニア人材でも目立つようになってきました。

総務省統計局の労働力調査より、2018年~2024年までの転職者の推移を示した折れ線グラフ

“人口構造の変化”を最たる要因として挙げますが、その他にも“技術革新の加速”や“ジョブ型雇用への移行”といった社会的背景から「35歳転職限界説」は過去の定説と化しています。

転職が一般化された昨今において、企業側が課題解決のカギとしてミドル・シニア人材の活用を推進できるよう、経営者/人事を対象にミドル・シニア人材の採用に対する考え方や意図を探るべく意識調査を実施しました。

ミドル・シニア人材の採用が人的資本経営のこれからを左右する重要な戦略であることが示唆され、社会のイメージよりも遥かに前向きで、かつ戦略的にミドル・シニア人材の活用が進んでいる実態が浮き彫りになりました。

ミドル・シニア人材の採用目的は事業成長のための「攻めの採用」にやや比重が置かれる結果に

まず、ミドル・シニア人材の採用は、「積極的に変化や成長を推進するための“攻めの採用”」なのか、「欠員補充やリプレイスのための“守りの採用”」なのかを聞きました。

結果は、『攻めの採用(45.3%)』『守りの採用(35.7%)』となりました。また、攻めと守りの『両方(19.0%)』が採用目的である企業も存在しています。

ミドル・シニア人材の採用目的を示した円グラフ

『攻めの採用』と『両方』を合わせた“攻めの要素を含んだ採用目的”を掲げる企業割合は64.3%であり、『守りの採用』と『両方』を合わせた“守りの要素を含んだ採用目的”を掲げる企業割合は54.7%でした。

おおよそ半分に回答結果が分かれましたが、“攻めの採用”として取り組む企業がやや多く、ミドル・シニア人材を、企業に変革をもたらす即戦力人材として招聘する企業が多いことが分かります。

約半数の経営者/人事がミドル・シニア人材からの求人応募者数は「以前よりも増えた」と回答

次に、ミドル・シニア人材からの「求人応募者数の変化」について質問しました。

『変わらない(49.2%)』が最多で約半数を占め、次いで『増えた(45.4%)』でこちらも約半数となりました。『減った(5.4%)』と回答した経営者/人事は1割にも満たないという結果になりました。

経営者人事が感じる、ミドル・シニア人材の求人応募者数の変化を示した円グラフ

ミドル・シニア人材からの応募が『減った』と感じる経営者/人事はほとんどおらず、2人に1人が『増えた』と感じていることから、ミドル・シニア人材の転職意欲が高まっていることが経営者/人事の感覚から見えてきます。

ミドル・シニア人材の採用を「強化したい」企業は8割超!

続いて、ミドル・シニア人材の「採用強化方針」について尋ねたところ、以下の回答結果になりました。

『強化したいと思う(54.5%)』が最多で過半数、『非常に強化したいと思う(28.3%)』が続き、『強化したいと思わない(15.4%)』『まったく強化したいと思わない(1.8%)』と並びました。

『非常に強化したいと思う』と『強化したいと思う』を合わせると、8割超の企業がミドル・シニア人材の採用を“強化したい”と考えていることが分かりました。

ミドル・シニア人材の採用強化方針を示した円グラフ

ミドル・シニア人材の採用強化の背景は「即戦力・専門性の獲得」が最多で約半数

上記の質問に付随して、ミドル・シニア人材の「採用強化の背景」を聞きました。

最も多い回答は『即戦力・専門性を持つ人材の獲得(48.6%)』で約半数、次いで『採用競争の激化に伴う、採用ターゲットの拡大(37.7%)』と『少子高齢化による若年層の減少(35.6%)』が3割台で続きます。

そして、『多様性のある組織体制の構築(26.8%)』『中高年人材の転職活動者の増加に伴う採用のしやすさ(23.4%)』『経営やマネジメント機能の強化(8.8%)』という順番になりました。

ミドル・シニア人材の採用を強化したい背景を示した棒グラフ

採用目的で“攻めの採用”が多かったことを強調するかのように、採用強化の背景では『即戦力・専門性を持つ人材の獲得』がトップとなりました。それに続くのは「採用競争の激化」や「少子高齢化」といったネガティブな外的環境の影響から数値が伸びたものと推測できます。

しかし、上位3つの項目は、優秀人材の獲得のための意識や取り組みであることは揺るがず、ミドル・シニア人材が会社に与えるインパクトに期待した、積極的な採用方針であることがうかがえます。

ミドル・シニア人材への期待は「即戦力として高度なスキル/経験の発揮」と「管理職として組織マネジメント能力の発揮」

さらに、ミドル・シニア人材の採用後に「最も期待すること」について質問しました。

最多の回答は『即戦力として、高度なスキル/経験の発揮(54.5%)』であり、次いで『管理職として、組織マネジメント能力の発揮(34.5%)』が続きます。この2つの項目が他を圧倒して上位となり、下位には『変革や業務改善をリーダーとして推進(7.6%)』『若手社員・中堅社員の指導/育成を牽引(3.5%)』が並びました。

ミドル・シニア人材の採用において、経営者人事が期待することを示した棒グラフ

適材適所という言葉の通り、経験が豊富で高度なスキルを持つミドル・シニア人材には、任せたいミッションは自ずと重要なものになっていくのでしょう。経営者/人事にミドル・シニア人材への“期待値”を聞いたことで、改めて明らかになりました。

経験がものを言うミドル・シニア人材!採用して良かった点は「知識やノウハウの蓄積」が他を圧倒

ミドル・シニア人材を採用して「良かった」と感じる点を聞きました。

『知識やノウハウの蓄積(45.1%)』が唯一の4割台でトップ、次いで2割台で4項目が並び、『業績/業界競争力の向上(29.4%)』『若手社員の育成による次世代リーダーの輩出(28.8%)』『組織基盤の強化(24.5%)』『業務プロセスの改革や業務効率化(22.0%)』という順番となりました。

下位の4項目は1割以下の回答で、『若手×ベテランの融合によるイノベーション(10.5%)』『企業ブランドの向上(9.8%)』『ダイバーシティ経営の促進(7.0%)』『とくになし(3.7%)』という並びになっています。

ミドル・シニア人材を採用して良かったと感じる点を示した棒グラフ

高い期待が故の落とし穴。「給与や待遇面における他社員とのバランス」が不安な要素トップに

一方で、ミドル・シニア人材の採用において「不安」な点を聞きました。

上位項目は約3割で拮抗する結果となりました。最多は『給与や待遇面における他社員とのバランスの考慮(35.3%)』となり、次いで『柔軟性や新しい技術への適応力(30.7%)』『組織風土/組織文化への適応(30.2%)』『健康面や体力面(29.1%)』『若手社員とのコミュニケーション(24.0%)』と続きます。ここまでが2割台です。

下位項目は1割台以下で『ITスキルやデジタル技術の習得(14.9%)』『人件費の増加(9.5%)』『特になし(4.2%)』の3つが並びました。

ミドル・シニア人材の採用において不安に感じる点を示した棒グラフ

『給与や待遇面における他社員とのバランスの考慮』については、やはり経験値やスキルの高い人材は前職の給与も高いことが多いですから、組織内で軋轢が生じないようにしなければなりません。スキルや経験値は申し分ないが、給与面で折り合いがつかずにオファーを出せないという経験がある経営者/人事も多いのではないでしょうか。

また、異なる視点として、即戦力としての期待が非常に高い分、成果への要求水準も高くなる故、給与に見合った成果を出せるのか?といったリスク意識も同時に強くなるという心理も、経営者/人事の方の胸中では当然働くと思います。

採用選考時のミドル・シニア人材の見極めポイントは“即戦力”としての貢献度として「スキルや経験」「職務経歴や実績」が上位に

ミドル・シニア人材の「採用選考時に重視する要素」を質問しました。

最多の項目は『スキルや経験の詳細な確認(41.2%)』であり、次いで3割台の項目が3つ『職務経歴や実績の詳細な確認(36.1%)』『賃金や役職などの組織バランスの調整(31.8%)』『社内文化への適応可能性(31.4%)』と続きます。

下位項目は『健康状態や体力面のリスクの確認(26.6%)』『デジタルスキルやITリテラシーの確認(14.5%)』『仕事に対するモチベーションの把握(11.6%)』となりました。

ミドル・シニア人材の採用選考時に重視する要素を示した棒グラフ

ミドル・シニア人材は“即戦力”としての貢献が求められる以上、選考時には『スキルや経験』『職務経歴や実績』といった点が深掘りされる傾向がうかがえます。また、不安な点の解消として『賃金や役職などの組織バランス』や『社内文化への適応可能性』を選考時に重視している企業があることも分かりました。

意外な点は『仕事に対するモチベーションの把握』が最下位項目だったことです。もし若手社員や中堅社員を対象とした調査であれば結果は大きく異なるのかもしれません。つまり、“やる気”はもちろん大事な要素ですが、ミドル・シニア人材に求められているのは“やる気”よりも“即戦力”としてのスキル/経験の発揮であると、この結果からも強調できるので特記しました。

「適応」に弱そうという先入観は未だに根強く、年齢×高年収が採用意欲を阻害する要因になることも…

最後に、ミドル・シニア人材に対するネガティブな「社会的イメージ」や「先入観」を調査しました。

圧倒的トップは『新しいことに適応できなそうという先入観(46.7%)』で約半数となり、次いで『年齢で能力を推し量られる(32.8%)』『高年収でしか採用できないと思われている(31.1%)』『指示に従ってくれなそう・扱いづらそうという先入観(21.9%)』『とくになし(4.2%)』と続きました。

ミドル・シニア人材に対するネガティブな「社会的イメージ」や「先入観」を示した棒グラフ

まとめ

今回の調査で最も強調したいのは、8割超の企業がミドル・シニア人材の採用を「強化したい」という方針を掲げている点です。さらに、企業におけるミドル・シニア人材の採用が「攻めの採用」として位置づけられ、即戦力や専門性への高い期待が寄せられていることが明らかになりました。

少子高齢化や採用競争激化などの外部環境の変化を背景に、ミドル・シニア人材の転職意欲も高まっており、企業の採用方針はより多様化・積極化しています。採用後も知識・ノウハウの蓄積や業績向上など、その貢献は多岐にわたります。

一方で、給与バランスや組織適応、柔軟性への不安も明らかになりました。今後は、即戦力としての価値と組織との調和を両立し、ミドル・シニア人材が最大限活躍できる環境づくりが重要となるでしょう。面接での見極めや自社のアトラクト(魅力提案)もより一層、重要性が増してきます。面接対応者のキャスティング、面接内容なども緻密に設計していくことが求められます。

今回の調査と合わせて、45歳以上で転職または転職活動をしたことのある45歳~50代のビジネスパーソンを対象とした《ミドル・シニア人材の“転職”に関する調査》と比較することで、企業とミドル・シニア人材のニーズが合致する部分が見えてきて、今後の採用戦略を立てていく上での重要指標になるでしょう。

即戦力として企業への貢献意欲の高まりが顕著なミドル・シニア人材、転職意欲のある方も8割と高水準/ミドル・シニア人材の“転職”に関する調査

こんな記事も読まれています