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即戦力として企業への貢献意欲の高まりが顕著なミドル・シニア人材、転職意欲のある方も8割と高水準/ミドル・シニア人材の“転職”に関する調査

即戦力として企業への貢献意欲の高まりが顕著なミドル・シニア人材、転職意欲のある方も8割と高水準/ミドル・シニア人材の“転職”に関する調査

HR領域の社会的トピックに対する市場調査とデータ分析を実施するプロフェッショナルバンクのHR研究所は、45歳以上で転職または転職活動をしたことのある45歳~50代のビジネスパーソンを対象に、「ミドル・シニア人材の転職」に関する調査を行いました。


■調査方法:インターネット調査
■実施期間:2025年7月24日(木) ~ 2025年7月31日(木)
■調査人数:331人
■調査対象:45歳以上で転職または転職活動をしたことのある45歳~50代のビジネスパーソン


「増えるミドル・シニアの転職者」
総務省の労働力調査を見ると、年齢層別の転職者の伸びは45歳以上50代のミドル・シニア人材でも目立つようになってきました。

どのような理由や目的で、ミドル・シニア人材は転職を考えているのでしょうか。そして、「35歳転職限界説」と言われた数年前と、転職が一般化された現在では、企業からの評価は変わっているのでしょうか。本記事では、45歳以上で転職および転職活動を経験した生の声をまとめたデータをお届けします。

回答者の役職比率は「管理職」が約6割、「役員」「専門職」がそれぞれ1割という分布

まずは属性について。今回の調査にご回答いただいたミドル・シニア人材の役割および業務は以下の通りです。

『役員(10.9%)』
『管理職(59.8%)』
『専門職/スペシャリスト(16.6%)』
『その他(12.7%)』

ミドル・シニア人材のボリュームゾーンは『管理職』で約6割を占めます。そして、最上流のマネジメントや経営に携わる『役員』が1割、特定分野における卓越したスキルを持つ『専門職(スペシャリスト)』が1割超という分布になりました。

ミドル・シニア人材の役割や業務に関する分布を表した円グラフ

ここからは調査データを紹介していきます。

ミドル・シニア人材の企業への貢献意識トップは「即戦力として高度なスキル/経験の発揮」、次いで「管理職として組織マネジメント能力の発揮」

転職する際に、「最も企業に貢献できると思うこと」を聞きました。

『即戦力として、高度なスキル/経験の発揮(44.4%)』が最多の回答となり、次いで『管理職として、組織マネジメント能力の発揮(31.4%)』が続きます。

この2つの項目が3割超であり、下位には『変革や業務改善をリーダーとして推進(19.6%)』『若手社員・中堅社員の指導/育成を牽引(4.6%)』が並びました。

ミドル・シニア人材が転職する際に、最も企業に貢献できると思う点を示した棒グラフ

ミドル・シニア人材の豊富な経験に裏付けられた知識やスキルを他社でも発揮したい、という意欲が読み取れる結果となりました。また、管理職適齢期ともいえるミドル・シニア人材では、組織マネジメントの能力発揮についても高い貢献意欲があることがうかがえます。

ミドル・シニア人材の転職動機は「経験・スキルのさらなる活用」が最多で約6割

直近の転職活動を始めた「動機」を調査しました。

最多の回答は『経験・スキルのさらなる活用(58.3%)』で唯一の過半数超えで約6割、次いで『年収や待遇の向上(47.1%)』と『定年に向けた長期的な就業環境の確保(41.4%)』が4割を超えました。

下位項目は『新たな業務・業界への挑戦(32.0%)』『裁量権の拡大・向上(24.2%)』『ワークライフバランスの改善(22.1%)』となりました。

ミドル・シニア人材が直近の転職活動を始めた動機を示した棒グラフ

企業への貢献意識と、転職活動を始めた動機については、最多となる回答が“経験/スキルの還元意識”で重なる部分があります。ミドル・シニア人材の仕事や企業に対する根底の思いが垣間見える結果となりました。

また、経済面での改善を求めて転職を検討するミドル・シニア人材も多いようです。企業文化や企業規模によって一概には言えませんが、「上が詰まっていて昇進はいつになるのやら」といった悩みから、転職することで待遇の改善を望むミドル・シニア人材もいるかもしれません。良くも悪くも、45歳~50代はこのような社内事情や外的要因とも付き合っていく年代とも言えます。

そして、「人生100年時代」と言われる昨今、現役での時間軸が長くなることに備えて新天地を探しているミドル・シニア人材も多くいるということが判明しました。例えば、45歳で残りの仕事人生を考えるといっても定年まで25年ある世の中にシフトしていく訳ですから、中長期的な視点で転職を考えるのは当然のことです。

ミドル・シニア人材においては転職活動の初期フェーズでの苦労が目立つも、「苦労しなかった」も多数という意外な結果に

直近の転職活動中に「最も苦労したこと」を質問しました。

圧倒的に高い項目はなく、回答が分散されました。なかでも最多は『書類選考の通過率の低さ(23.0%)』で、次いで『特に苦労はしなかった(19.7%)』『年齢に対する偏見(19.0%)』『求人の選択肢が限定的(15.4%)』『条件面での折り合い(13.6%)』『その他(4.8%)』『面接での対応(4.5%)』という結果となりました。

ミドル・シニア人材が転職活動中に最も苦労してことを示した棒グラフ

『特に苦労はしなかった』が2割で上位項目となりました。「35歳転職限界説」という言葉が世に浸透するほどミドル・シニア世代の転職活動は難しいとされていた数年前からすると、驚きの結果と言えるでしょう。

また、転職活動のプロセスを大きく3つに分類(初期フェーズ|中期フェーズ|最終フェーズ)してみると、『書類選考の通過率の低さ』『年齢に対する偏見』『求人の選択肢が限定的』といった転職活動の初期フェーズでの苦労が目立つ傾向が見受けられました。

  • 転職活動 初期フェーズ:求人の選択肢が限定的、年齢に対する偏見、書類選考の通過率の低さ
  • 転職活動 中期フェーズ:面接での対応、年齢に対する偏見
  • 転職活動 最終フェーズ:条件面での折り合い、年齢に対する偏見

ミドル・シニア人材の7割以上が「想定以上」の求人数の紹介があったと回答

転職活動における「求人数の感覚」を聞いてみました。

最多の回答は『想定通りだった(31.4%)』でした。次いで、『想定よりも多くの紹介があった(24.8%)』『想定よりも非常に多くの紹介があった(15.7%)』『想定よりも非常に少ない紹介だった(14.5%)』『想定よりも少ない紹介だった(13.6%)』という結果になりました。

ミドル・シニア人材の45歳を超えてからの転職活動における求人数の感覚を示した円グラフ

『想定よりも非常に多くの紹介があった』と『想定よりも多くの紹介があった』と『想定通りだった』の3項目を合わせた、“求人数が想定以上”と感じたミドル・シニア人材は7割を超えています。企業側のミドル・シニア人材の採用意向が高まっていることが、ミドル・シニア人材の転職活動時の感覚からも見えてきました。

具体的な紹介企業数で調査しなかったのは、多いか少ないかの感覚は個人差があるという点と、職種やポジションによっては市場規模の関係で印象が異なるためです。「3社の求人紹介」を、多いと捉える方もいれば、少ないと感じる方もいるでしょう。「求人数の感覚」を聞くことで、ミドル・シニア人材の意識を正確に反映した市場調査となっています。

6割以上のミドル・シニア人材が企業からの「高い評価」を感じている!

転職活動全体を通じて、「各選考企業からの評価」をどのように感じたかを尋ねました。

過半数を超えて最多となったのは『高い評価に感じた(53.2%)』です。次に『低い評価に感じた(26.9%)』『非常に高い評価に感じた(12.4%)』『非常に低い評価に感じた(7.5%)』と続きました。

45歳を超えてからの転職活動全体を通じて、ミドル・シニア人材が感じる選考企業からの評価を示した円グラフ

『非常に高い評価に感じた』と『高い評価に感じた』を合わせると、6割以上のミドル・シニア人材が選考企業からの評価を高く感じたと回答しています。

ミドル・シニア人材は豊富な経験とスキルを持つため高い評価を得るポテンシャルを持っているわけですが、企業の採用ニーズがなければマッチングは成り立たないところ、今回の結果は企業側のミドル・シニア人材の採用意向の高まりを明確に示唆していると言えます。

ミドル・シニア人材の転職による年収の変化は「年収アップ」が約4割、「年収ダウン」が約2割、「変化なし」が約3割

45歳以上での直近の転職による「年収の変化」を聞きました。

『変化なし ±10万円以内(33.2%)』が最も多く、次いで『100万円以上アップした(27.5%)』『100万円以上ダウンした(17.5%)』『10万~99万円アップした(16.0%)』『10万~99万円ダウンした(5.8%)』という結果になりました。

ミドル・シニア人材の直近の転職による年収の変化を示した円グラフ

年収変化の幅を考慮せずに、「年収アップ」「年収ダウン」「変化なし」の3分類で見ると、以下のようになります。

・年収アップ:43.5%
・年収ダウン:23.3%
・変化なし:33.2%

「年収アップ」が最多ではありますが、過半数は超えません。「変化なし」が3割超で少々目立つグラフとなりました。

ミドル・シニア人材の8割が希望の叶う企業があれば「転職したい」と回答

最後に、ミドル・シニア人材の「転職意欲」を調査しました。今後も希望の叶う企業(求人)があった際は「転職したいか」と質問しています。

結果は『積極的に転職したい(40.8%)』と『転職したい(39.3%)』が約4割でトップ2となり、他を圧倒しています。そして、『あまり転職したくない(15.1%)』と『転職はしない(4.8%)』と続く結果となりました。

ミドル・シニア人材の今後の転職意欲を示した円グラフ

『積極的に転職したい』と『転職したい』を合わせた8割のミドル・シニア人材が“転職意欲”を示しています。ミドル・シニアの流動は活況を呈しています。

まとめ

今回の調査から、ミドル・シニア人材の仕事に対する思いや転職活動時の実感、そして将来の転職意欲が明らかになりました。

即戦力としての高度なスキルや経験、組織マネジメント能力の発揮を通じて、企業への貢献意識が非常に高い点が印象的です。転職活動の動機としては、自身の経験・スキルをより活かしたいという前向きな思いが最多となり、加えて年収・待遇や長期的な就業環境への意識も高まっています。

一方で、転職活動の初期フェーズでは書類選考の通過率や年齢に対する偏見などの壁も存在しますが、求人数や企業からの評価に対するポジティブな実感も広がりつつあり、企業側のミドル・シニア層への採用意欲の高まりも把握できる結果となりました。

「人生100年時代」に突入する昨今、中長期的な視点でのキャリア形成や転職意欲の高まりが、今後の労働市場に新たな活力をもたらすことが期待されます。

今回の調査と合わせて、45歳~50代の人材の採用経験がある企業に属する経営者/人事 約1,000人を対象とした《ミドル・シニア人材の“採用”に関する調査》と比較することで、企業側のミドル・シニア人材の採用方針を把握することができ、現代ビジネスにおける転職市場の変化を実感できるかもしれません。

経営者/人事の8割超がミドル・シニア人材の採用を「強化したい」と回答/ミドル・シニア人材の“採用”に関する調査

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