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SXとは?企業がサステナブルな事業戦略をすべき理由、DX・GXとの違いを解説!

SXとは?企業がサステナブルな事業戦略をすべき理由、DX・GXとの違いを解説!

インターネットの普及に環境問題の悪化。社会を取り巻く環境は良くも悪くも変化し続け、いまだ想像もつかない未来が待っているかもしれません。その代表例の1つとして挙げられるのがIT技術革新です。デジタル技術の革新が企業経営に大きな影響を与えたDX推進という言葉は世の中に瞬く間に浸透してきました。

地球温暖化や海洋汚染などの環境問題は、どう対処していくべきでしょうか。IT技術が経営にインパクトを与えたように、深刻な環境問題に対しても経営変革が必要とされています。それがSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)です。

SXとは?

SXとは、企業が“持続可能な社会の実現”と“継続的なビジネス活動”を同時に推進するための、経営および事業の変革を指します。

正式には、サステナビリティ・トランスフォーメーションと言い、「持続可能性」を意味するSustainabilityと「変革」を意味するTransformationの頭文字を取ってSTではなく…。ラテン語由来のTransは「交差する」という意味のCrossと同義であり、「交差」を1文字で表す「X」が使われ、SXと略されています。

DXとの違い

DXという言葉は聞きなじみのある言葉ではないでしょうか。DXはデジタル・トランスフォーメーションの略であり、IoTやAIといったデジタル技術からビジネスに革新をもたらす概念として浸透しています。

GXとの違い

GXはグリーン・トランスフォーメーションの略です。地球温暖化の原因の1つである温室効果ガスを生み出す化石燃料から、再生可能エネルギー(太陽光発電・風力発電など)中心の世の中へと転換し、社会経済の仕組みを脱炭素化へ変革しようとする概念です。サステナブルな社会の実現を目指すSXとの連携も密接であることが分かると思います。

SDGsとの関係

SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された国際目標です。持続可能な地球を実現するための17のゴールが掲げられました。国連加盟国が全会一致で採択された世界的な目標ですから、日本も例外なく目標達成に向けて取り組みを進める必要があります。

SXは、この国際目標を達成するために企業が実現すべき経営指標といえます。経済産業省は「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」を契機に、2022年には「伊藤レポート3.0」でSXの考え方と具体的な取り組みを公表しました。さらに、それを踏まえて、経営の強化・効果的な情報開示・建設的かつ実質的な対話を行うためのフレームワークとして「価値協創ガイダンス2.0」を策定しました。

・参照:【経済産業省】伊藤レポート3.0(2022年8月30日)
・参照:【経済産業省】企業と投資家の対話のための「価値協創ガイダンス2.0」
・参照:【経済産業省】参考資料/伊藤レポート3.0・価値協創ガイダンス2.0の概要(2022年8月)

SDGsという国際的な目標があり、その目標達成に向けて世界各国が独自の取り組みを進める中、日本の経済戦略の1つとしてSX推進があります。
SDGsとSXの関係性を表した図

SDGs(持続可能な開発目標)とは?企業が取り組むメリットと取り組み方を紹介

SXの重要性

前章でもお伝えしましたが、重要なことなので改めて。SXとは、企業が“持続可能な社会の実現”と“継続的なビジネス活動”を同時に推進するための経営変革であると前述しました。経済産業省の表現では、<社会のサステナビリティ>と<企業のサステナビリティ>を「同期化」させていくための経営変革であると定義しています。

本章では、<社会のサステナビリティ>と<企業のサステナビリティ>という2つの観点から重要性を紐解いていきます。

CSR活動の要

~社会のサステナビリティを実現するための観点~
CSRとは、持続可能な社会を実現するために、企業が担うべき社会的責任を意味します。この社会的責任には、「事業運営を支える活動」と「持続可能な社会を実現するための活動」という2つの軸があります。とくに、後者の「持続可能な社会の実現」を果たすためには、SXの取り組みが非常に重要です。

なぜなら、人間が安心して暮らせる環境や社会がなければ、企業の存続すら危ぶまれるからです。目先の利益を追求して、短期的な経営戦略からサステナビリティが欠如したビジネスを展開していては、いつの日かそのビジネスを展開する環境すらなくなってしまいます。これまで通り、経済が回り、人々が暮らし、新たな事業が生まれ、また経済が活性化する、この<社会のサステナビリティ>の循環を支えていくのが企業であると強い意識を持つ必要があるのです。

CSRとは?取り組むメリットから具体的な活動・企業事例まで紹介

人的資本経営の土台

~企業のサステナビリティを実現するための観点~
企業がビジネスを持続させていくためには、ヒトが欠かせません。人材を資本として捉え、人材それぞれの価値を引き出し、中長期的な企業価値の向上につなげるという人的資本経営の考え方は、企業活動におけるSX推進の土台となる経営スタンスなのです。

企業のサステナビリティ、つまり継続的なビジネス活動をするための体力(企業の稼ぐ力)の向上には、人的資本の重要性が非常に高く、SXの推進には欠かせない要素です。

人的資本経営とは?開示項目や実現に向けた取り組みを紹介

SX推進がもたらすメリット

続いて、企業がSXを推進することで得られるメリットについて解説します。

企業イメージの向上

SX推進に取り組む企業ということは、自社のビジネスで稼ぐ力を持ちながら、その力は短期的な戦略ではなく社会の持続可能性にも貢献しているという解釈ができます。このような企業はブランドイメージが向上し、社員の定着率向上や採用力の向上が期待できます。ここでも、人的資本経営との繋がりが見えてきます。

ESG投資の拡大

昨今では、機関投資家の投資判断は、財務情報と同様にESG情報も重要な指標とされています。ESGとは、環境(E: Environment)、社会(S: Social)、企業統治(G: Governance)の3つの観点を指し、企業が長期的かつ持続的な成長が見込めるかどうかの重要指標として注目されています。SX推進はESG投資にとって有力な評価項目として考慮され、有効な投資実行およびステークホルダーからの評価向上につながるでしょう。

VUCA時代のリスクヘッジ

短期的な利益を追求する取り組みや環境への配慮が欠けている事業など、企業の存続が危ぶまれる要素を排除していくためにSXの観点は有効なアプローチになります。将来の予測が困難なVUCAの時代、SX推進による稼ぐ力の強化は、環境の変化によって起こる経営リスクに対応できる企業の基礎体力を構築できるのです。

これにより、競合優位性が高まり<企業のサステナビリティ>は保たれるでしょう。不確実性の高いリスクがあっても企業がなくならないことで、<社会のサステナビリティ>も維持できるのです。

企業に求められるダイナミック・ケイパビリティ

SXを推進していくためには、企業にはダイナミック・ケイパビリティが求められます。ダイナミック・ケイパビリティとは、「企業変革力」のことです。

変化の激しい現代社会でビジネスを発展させていくためには、企業がその変化に対して自己変革する必要があります。いわば時代の流れや市場変動に逆らわない柔軟性のある企業経営が求められているのです。

ダイナミック・ケイパビリティは、3つの要素で構成されています。

ダイナミック・ケイパビリティを構成する3つの要素

感知/Sensing

1つ目は「感知」の能力です。顧客ニーズ、業界トレンド、競合動向、社会情勢など、経営環境の変化を察知する能力を指します。

自己変革に取り組むには、まずは外部環境の動向や変化を把握し、変革の必要性の有無から問うべきです。絶対に変革しなければいけないという訳ではありませんから、客観的に分析し自社の方向性を定めましょう。

捕捉/Seizing

2つ目は「捕捉」の能力です。保有する経営資源や独自技術を、変化に応じて再構成・再利用する能力を指します。

そのためには、自社が保有する経営資源や独自技術を把握し、見極められる状態が望ましいです。自社の経営資源だけではSXを十分に取り組めない場合は、取引先や関係会社との連携を深めながら最適な事業運営体制を構築しましょう。

変革/Transforming

3つ目は「変革」の能力です。経営資源や独自技術を再構築・再利用したことで新たに手にした競争力を、持続的に活用するべく最適な組織に姿を変える能力を指します。

たとえば、部署の新設および統合、関係会社との資本構成見直し、人事制度の改定、社内ルールの変更などが挙げられます。変わりゆくビジネス環境の中でも、その時々の強みを最大限に発揮できる組織へと変革し続け、常に最善の状態でビジネスを展開していく必要があるのです。

SX推進を実践する先進的な企業事例

最後に、SXを推進する代表企業として、ユニリーバ社の事例を紹介します。

ユニリーバ社は、長年にわたって持続可能な社会の実現に向けて取り組んできた企業の1つです。長期的な目標を設定し取り組むことはもちろん、持続可能性の進歩を業績に組み込むことで世の中に大きなインパクトを与えています。本章では、SXの観点から4つの取り組み事例を紹介します。

■気候変動・自然保護と再生

CO₂排出量、実質ゼロへ

2023年末時点で、全世界の工場およびオフィスから出る温室効果ガス排出量を74%削減(2015年比)し、使用する電力の92%が再生可能エネルギーという驚異的な数字を発表しました。また、製品の原料となる農産物の79%が持続可能な調達となりました。このSXを実現している取り組みは下記です。

・CO₂排出量削減や脱炭素化につながる製品の開発と販売
・森林伐採をしていないサプライヤーからの調達
・原料に使う農産物を自然環境や人に配慮している農園から購入

・参照:【ユニリーバ】気候変動へのアクション
・参照:【ユニリーバ】自然の保護と再生

■プラスチックへの取り組み

Less Plastic/プラスチックの使用量を減らす

パッケージの軽量化、詰め替え用製品・濃縮コンパクト型製品の開発を駆使し、パッケージに使用するプラスチックの量を減らす取り組みです。

Better Plastic/環境負荷を少なく、循環利用しやすく

開発する製品のプラスチックを、再生プラスチックやリサイクルしやすいプラスチックへと移行。製造全体で使用するプラスチックの21%を再生プラスチックへと切り替えが実現しています。

No Plastic/プラスチックを使わない

不要な個包装の廃止、紙・金属・ガラス製のパッケージ開発をすることで、不要なプラスチックの排出を抑制しています。

・参照:【ユニリーバ】プラスチックへの取り組み

■エクイティ、ダイバーシティ、インクルージョン

成長戦略【ユニリーバ・コンパス】

ユニリーバ・コンパスでは、ダイバーシティ(多様性)、インクルージョン(受容)に加え、エクイティ(公正さ)の確保を推進しています。すべての人に機会が与えられ、公正に評価される組織を推進していく指針として、企業行動原則とコード・ポリシーを定めています。

違反および疑わしい行為があれば、いつでも上司、ビジネス・インテグリティ・オフィサー、社外弁護士に匿名可能で相談できる環境が整っています。

・参照:【ユニリーバ】エクイティ、ダイバーシティ、インクルージョン
・参照:【ユニリーバ】企業行動原則とコード・ポリシー

■Be Yourself:キャリアも、働き方も、自分らしく

【WAA】Work from Anywhere and Anytime

働く「場所」と「時間」に制限されることのない、柔軟な働き方を導入しています。育児や介護を含む様々な家庭の事情やキャリアの考え方がある中でも、労働以外の面を考慮した就業機会を提供できるため、従業員の満足度は高まるでしょう。SXの観点からは、人的資本の戦略としてビジネス活動の継続を後押しする取り組みと言えます。

・参照:【ユニリーバ】ワーク・イン・ライフ

ハイブリッドワークとは?メリット・課題・導入企業の事例から成功への鍵を解説!

フレックスタイム制とは?残業時間や有給取得、メリット・デメリットについて解説

【地域 de WAA】

地域課題解決型(ユニリーバ式)のワーケーションを導入しています。ワーケーションとは、「仕事(Work)」と「休暇(Vacation)」を組み合わせた造語です。オフィスや自宅ではなく、リゾート地や地方など旅行先で業務を行いながら、休暇を取る過ごし方のことを指します。

ユニリーバでは、いつもと違う環境でその地域特有のイベントやアクティビティを満喫しながら、地域貢献することで社員のウェルビーイングを高め、イノベーションの創出を目指しています。

・参照:【ユニリーバ】地域 de WAA
https://www.pro-bank.co.jp/saiyo-meister/personnel-story/worcation

ウェルビーイングとは?構成する5つの要素、健康な経営のための新たな概念と取り組み事例を紹介

サステナビリティと人的資本が経営戦略の中心になる時代

画期的な製品やサービスを開発し、様々なサプライチェーンを経て、消費者に届く。こうして企業はビジネス活動を展開し存続してきた訳ですが、今後はそう単純な考え方では生き残れないようです。

長年にわたって提唱されてきた環境問題への取り組みは、ついには国連が動き、世界各国にサステナブルな社会の実現を根幹に据えた事業展開を求めました。そこに日本は、少子高齢化による慢性的な人手不足という課題も重なり、企業経営の持続可能性にまで議論は及んでいます。

より一層の人材戦略が必要となる中、「採用」と「育成」は切り離すことのできない話題です。企業のサステナビリティを維持するべく、「人材採用」のご依頼をいただく我々ヘッドハンターの身も引き締まる思いです。「中途採用の切り札」として、転職市場外の人材にもアプローチし、採用支援の枠を超え、経営戦略の実現を支援する戦略的パートナーとして動いてまいります。

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