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【2030年の「働く」を考える】中高年の流動化をどのように進めればいいか?

【2030年の「働く」を考える】中高年の流動化をどのように進めればいいか?

「働く」をテーマとし、調査・レポートを行う、リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所。この度、同所から新たな提言がなされました。それは、2030年問題に伴う「中高年の流動化の推進」です。その内容を噛み砕いてご紹介しつつ、これからの「働き方の変化」を考えてみましょう。

不安の中に取り残されている中高年層

数年前からすでにいわれてきた問題が、ますます現実味を帯びたものになってきました。現在の日本が置かれている少子高齢化が今のままの状態で進行すると、あと十数年のうちに総人口の3分の1が65歳以上という状況になるでしょう。いわゆる「2030年問題」です。
もちろんビジネスの世界では、2030年を待つまでもなく、すさまじいスピードで環境が変化し続けています。現在進められているグローバル化はますます進展していくでしょうし、IT、IoT、ロボット技術、人工知能などの技術の進歩は、とどまるところを知りません。そうした状況の中では、「働き方の形」でさえも、これまでとは違ったものへと変化していきます。
その変化に、「自分は適応できるのだろうか」という不安を抱く中高年キャリアは、決して少なくありません。

「今のままの働き方を続けていて、大丈夫なのか」
「進化する技術や次々に生まれる新たな知識に、どこまでついていけるのか」
「いつになったらリタイア生活に入れるのだろう」

急速に変化していくビジネス環境に戸惑い、翻弄されながら働き続けた中高年キャリアたち。彼らは今、漠然とした不安の中に取り残され、硬直しています。この中高年世代の働き方をサポートし、いかに人材流動性を高めていくのか。それは「働き方の将来像」を考えるとき、真っ先に手をつけるべき課題のひとつでしょう。

中高年の転職を阻む2つの壁

総務省統計局の「平成24年就業構造基本調査」によると、企業規模ごとに社員の年齢構成比率を見ていくと、中小企業よりも大企業のほうが、中高年社員が多いという結果が表れています(2012年10月時点)。また、年齢別の社員数を1987年と比較すると、20代前半の若い社員数が半数以下にまで大きく減少し、逆に40代以上の中高年社員が十数パーセント増加していました。つまり、若い社員が大きく減り、その分中高年ががんばり続けているという図式が見て取れます。
1987年は、すでに「ひと世代前」のことです。若いうちはバリバリ働いて社内での出世を目指し、あるいは独立して一国一城の主となる。そして50代、60代までに十分な財産を築き、リタイアして悠々と老後を過ごす。このような考え方が一般的だったでしょう。
ですが、そうした将来設計は、現在の中高年にとってすでに夢物語です。経済状況はなかなか好転せず、若者の力に頼ることもできません。定年年齢のさらなる延長が取りざたされる中で、彼らはまだまだ働き続けなくてはなりません。
将来を見据えてより良い環境を求めるにしても、中高年の転職には「年齢制限」と「賃金」という、2つの壁が立ちはだかっています。これが、人材の流動化を阻む大きな要因です。

企業規模の違いによる給与格差も大きな障害

世間では「転職の限界年齢は35歳」などといわれています。すべてにあてはまるわけではありませんが、実際に30代半ばを過ぎると転職が難しくなるのは事実でしょう。リクルートワークス研究所による2012年の「ワーキングパーソン調査」では、35歳以上の層で半数以上が、転職を阻む要因として「年齢制限」を挙げています。30〜34歳で38.2%という数字と比較すると、やはり中高年の転職にとって年齢制限は非常に大きな壁です。
また、賃金についてはどうでしょうか?多くの企業では、賃金は20代前半から少しずつ高くなっていき、50代半ばあたりでピークに達します。このパターンは共通なのですが、実際の金額は企業の規模によって大きく異なります。そのため、中高年になってからの転職、しかも大企業から中小企業への転職となると賃金の差が大きく、それがネックとなってしまうケースが多いと考えられます。
中高年の流動化を進めるためには、これらの阻害要因を解決して、壁を乗り越える方策を考えなくてはなりません。
たとえ一時的な賃金の落ち込みはあるにせよ、短期間での回復を果たし、さらに意欲を持って働ける。そのような、企業側も人材側も、ともに納得できるしくみを作っていくことが肝要です。

「働き方」を見直す転機は近づいている

前項でお話ししたように、中高年にさしかかってからの転職は、全般的にきびしい状況にあります。ですが、もちろん「絶望的」というわけではありません。ミドルエイジで転職を成功させる人はいますし、中高年層を対象に求人募集をかける企業もあります。
おおよその傾向として、この年代の転職は「大企業から中小企業へ」というパターンが多く、そのため収入減を招きやすいことは否定できません。ですが、中小企業は大企業に比べると、個々の人材に対する期待が大きく、たとえミドルエイジであっても、結果を出すことで収入アップにつなげることは十分に可能です。そしてそうした人材を得た企業が、中高年の中途採用に対してより積極性を増すことも期待できます。
2030年問題は、すべての働き手に変化を促す、ひとつの転機かもしれません。若手不足がさらに進行すれば、中高年という人材層をいかに活用するかという方向に企業も視点を移していきます。これまで「将来性」という言葉で蓋をされてきた中高年層に、新たなステージが用意されることになるのです。そうなればより良い環境を求めて、人材流動はさらに加速していくでしょう。
中高年のみならず、すべてのビジネスパーソンが自分自身の働き方を再確認し、企業側が環境を整えていく。そのターニングポイントは、着々と近づいています。

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■リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 中高年の流動化#1
https://www.recruit-ms.co.jp/research/2030/report/middle1.html

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