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ワーケーションとは?メリット・デメリットや導入企業の成功事例をご紹介!

ワーケーションとは?メリット・デメリットや導入企業の成功事例をご紹介!

働き方改革の普及や新型コロナウイルスの流行によって、企業にも新しい働き方ができる仕組みづくりが求められています。新しい働き方のなかでも賛否が分かれているのが、「ワーケーション」です。本記事では、ワーケーションとはどのような働き方なのか解説します。否定的な意見も聞かれるワーケーションですが、導入する魅力はどこにあるのでしょうか。導入時の課題や実際に導入した企業の成功事例についてもみていきましょう。

ワーケーションとは?

「ワーケーション」とは、「仕事(Work)」と「休暇(Vacation)」を組み合わせた造語です。オフィスや自宅ではなく、リゾート地や地方部など旅行先で業務を行いながら、休暇を取る過ごし方のことを指します。勤務の扱いは、リゾート地や地方部などの旅行先で仕事をしても有給扱いにならず出勤としてみなされます。

オフィスに出社しなければならない、という従来の働き方とは大きく異なるため、自由度が高い新しい働き方として注目されている一方、「休暇中に仕事をしても効率が落ち、成果が出にくいのでは」と言ったネガティブな意見を持たれることも少なくありません。

しかし、ネガティブな意見の背景にはワーケーションという働き方への理解不足や誤解があります。
特に多いのが「休暇中なのに働かなければならないのか」という誤解です。たしかに、ワーケーションでは休暇中に仕事の時間を取りますが、ワーケーション中の仕事も勤務時間にカウントされます。

ワーケーションとブレジャーの違い

ワーケーションは、リゾート地や地方部など旅行先で業務を行いながら、休暇を取る過ごし方のことを指しますが、ブレジャーはBusiness(ビジネス)とLeisure(レジャー)を組み合わせた造語で、ビジネス出張などを活用し、出張の前後で前泊・滞在延長などにより出張先で休暇を楽しむことを指します。
勤務の扱いは、出張の前後で前泊・滞在延長は有給扱い、実際に出張先で業務を行っている間は出勤とみなされます。

ワーケーションとテレワーク・リモートワークの違い

ワーケーションとよく比較されるのが、テレワークやリモートワークです。テレワーク・リモートワークの場合も、会社のオフィス以外で働きます。仕事を行う場所は自宅またはコワーキングスペースなどで、休暇の要素は含みません。一方、ワーケーションは、仕事+休暇という2つの要素を持っています。休暇の要素を含むか否かが、ワーケーションとテレワーク・リモートワークとの大きな違いといえます。

ワーケーションのタイプ

一言でワーケーションといっても、働き方や重視する要素の違いから「休暇活用型」、「地域課題解決型」、「合宿型」、「サテライトオフィス型」の4つのタイプがあるといわれています。企業としては、どのような目的でワーケーションを導入するのかを明確にし、どのタイプを取り入れるのか検討することが大切です。

<休暇活用型>
休暇活用型は、リゾート地や地方部など旅行先で業務を行いながら休暇を取るスタイルとなり、ワーケーションを行う期間が短いという特徴があり、業務を行っている間は出勤として扱われます。

例)木曜日から日曜日までリゾート地に家族で出向き、木曜日と金曜日はリゾート地にて通常業務を行い、土日は家族と観光する。

<地域課題解決型>
地域課題解決型は、企業が連携している地方に出向き地域課題を考えたり、解決に向けてアイディアを出したり、解決に向けて取り組んだりするスタイルです。そのため地方で普段の業務を行うというよりも、地域との交流や地域の課題を知ることが業務となるのが特徴です。地域課題解決型の期間は1週間~1か月と長期的で、課題解決等業務を行っている間は出勤として扱われます。

例)企業が連携している地方に出向き、平日は地域と交流を図りながら、課題解決に向けて会議の開催や現地視察を行い、業務時間外や休日は地方での生活を満喫する。

<合宿型>
合宿型とは、温泉やリゾート地と言った通常の職場から離れた場所で、会議や研修に参加するスタイルとなり、期間は日帰りや1泊2日~1か月の長期滞在まで様々です。会議や研修中は出勤として扱われます。

例)複数企業のメンバーが同じリゾート地に集まり2泊3日の研修を行い、研修後の自由時間はリゾート地を満喫する。

<サテライトオフィス型>
サテライトオフィス型は、企業が提携している、あるいは指定しているサテライトオフィスに出向き業務を行うスタイルとなり、ワーケーションを行う期間は1か月~半年と長期的です。業務を行っている間は出勤として扱われます。

例)家族で地方にあるサテライトオフィス付近に1か月ほどお試し移住を行い、平日はサテライトオフィスで業務。休日はお試し移住先での生活を満喫する。
ワーケーション 4つのタイプ

ワーケーション導入企業の成功事例

「休暇中に仕事をしても効率が落ち、成果が出にくいのではないか」と言ったマイナスな意見も多いワーケーションですが、果たして本当に成果が出にくいのでしょうか?ワーケーションを導入し、うまく活用することができれば企業側にとっても、従業員にとっても様々な効果を得ることができる可能性があります。そこで、ワーケーションを導入し様々な効果を得た企業の成功事例4つをご紹介します。

① 日本航空株式会社の成功事例 ワーケーションタイプ:合宿型

日本航空株式会社はワーケーション導入の先駆けともいえる企業の一つで、2017年に導入しています。ワーケーションの内容は主に体験ツアーの実施や合宿型ワーケーションの企画です。ワーケーション導入当初、利用者は夏季推奨期間で11人でしたが翌年78人に増加。2018年度には年間の利用者が174人にまで増加しています。

<ワーケーションにより得られた効果>
・有給消化率が向上
・ワーケーション中は仕事のストレスが37.3%減少
・ワーケーション中は生産性が20.7%向上
※日本航空と株式会社NTTデータ経営研究所が効果検証実験を行った結果より

② ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 の成功事例 ワーケーションタイプ:サテライトオフィス型

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社では、2016年に、働く時間と場所を社員が自由に選ぶことができる「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」という制度を導入しました。この制度は上司に申請することで決められた範囲内なら勤務時間や場所が自由になるというものです。

またより働く場所の範囲を広げることを目的として、2019年「地域deWAA」というオリジナルのワーケーションを導入しました。ワーケーションの内容は、8つの自治体と連携し社員が滞在している間、各地域の施設をコワーキングスペースとして無料で利用できるというものです。

<ワーケーションにより得られた効果>
・社員の幸福度の向上
・社員の生産性の向上
※ワーケーション参加者の声から同社が実感できたと感じた点より

株式会社野村総合研究所の成功事例 ワーケーションタイプ:地域課題解決型

株式会社野村総合研究所では、大手シンクタンクとして地方の課題や価値を見出すきっかけを作る目的で、2017年から「三好キャンプ」という名前で、徳島県三好市にあるサテライトオフィスに従業員を派遣しています。ワーケーションの内容は、年に3回、1度のワーケーションにつき1か月間三好市にあるサテライトオフィスで業務を行いながら、地域の課題解決のきっかけや地域の暮らしを体験するというものです。

<ワーケーションにより得られた効果>
・地方課題に対する視野の広がり
・仕事や時間の使い方における考え方の変化
※ワーケーション参加者の声で多かった声より

株式会社JTBの成功事例 ワーケーションタイプ:休暇型、ブレジャー

株式会社JTBでは2019年3月に、「ワーケーション・ハワイ制度」としてハワイのホノルル支店にワーケーションスペースを設置しました。ワーケーションの内容は出張や休暇で訪れた社員がホノルルにあるワーケーションスペースを利用し、業務を行うというものです。ワーケーションタイプの休暇型とブレジャーに該当するため、家族でハワイを訪れ休暇を楽しみながら同時に業務も行うことができます。

<ワーケーションにより得られた効果>
・開放的な環境で仕事をすることによるストレス解消
・リフレッシュによるアイディア力の向上
※ワーケーション参加者の声で多かった声より

ワーケーション

ワーケーションが注目される理由

ワーケーションが注目されている1つの要因として、日本政府もワーケーションを推進していることが挙げられます。ワーケーションは、実施する企業だけでなく、受け入れる地方や観光地側にも地域活性というメリットがあるため、国からも推奨されているのです。

内閣府・観光庁・総務省・厚生労働省など省庁から、ワーケーションを導入する企業に向けた支援が実施されています。たとえば、観光庁は、ワーケーションに関心がある企業と地域のマッチングや関係の構築を図る事業を実施予定。総務省は、サテライトオフィスの整備費用の助成や、中小企業のテレワーク実施やシステム導入の相談などの支援事業があります。ワーケーションの導入を考える際は、政府からの支援の活用も検討してみるとよいでしょう。

環境庁 各省庁のワーケーション推進支援メニュー

ワーケーションの普及率

国土交通省観光庁の調べによると、2021年3月時点で利用者となる従業員のワーケーションに関する認知度は約80%にのぼっていますが、実際にワーケーションを体験した人は全体の4.3%とほとんど普及していないことがわかります。

また、「ワーケーションに対する興味関心」の調査結果では、「どちらともいえない」、「興味がない」という無関心層が64.2%と、関心の低さが目立ちます。ワーケーションが普及しない背景には、企業の導入率の低さだけでなく従業員の興味関心の低さも重なっていることが原因の一つと言えます。

<ワーケーションに対する興味関心>
ワーケーションに関する興味関心調査結果

参考:国土交通省 官公庁 「新たな旅のスタイル」

ワーケーションのメリット・デメリット

ワーケーションには企業側にとっても従業員にとっても多くの魅力がある一方、「休暇を取りながら仕事をすると、効率が落ち成果が出にくいのではないか」と言ったマイナスな意見を耳にすることもあり、なかなか導入に至らない企業が多いのが現状です。では、ワーケーションを取り入れるとどのようなメリットやデメリットがあるのか解説します。

ワーケーションのメリット

<企業にとってのメリット>

メリット① 社員のモチベーション・パフォーマンスがアップする
ワーケーションの実施により、社員のモチベーションやパフォーマンスが向上するといわれています。ワーケーションは決められた時間のみ仕事をして、あとの時間は休暇を楽しめる働き方です。

業務後には温泉や観光など旅行ならではの楽しみがあることから、仕事に対するモチベーションは自然とアップします。また、仕事ができる時間が限られているため、仕事に集中しやすく、パフォーマンスの向上も期待できます。ワーケーションによって開放的な環境に身をおくことで、心身ともにリフレッシュができ、新しい価値観や発想も生まれやすいといえるでしょう。

メリット② 有休取得率が上がる
ワーケーションを活用すれば、社員の有休取得率を上げることもできます。日本のビジネスパーソンの抱える課題の1つに、有給休暇の取得率の低さが挙げられます。厚生労働省が2020年に調査したところ、日本の有休取得率は56.6%程度と先進国のなかでもかなり低く、多くのビジネスパーソンが休み不足を感じています。そのため、企業には、社員の有休取得率を向上させる取り組みが強く求められるようになっています。

社員が有給休暇を取得できない大きな原因は、有休を申請すること自体へのためらいです。自分が有給休暇を取得すると、周囲に迷惑がかかる・あとで多忙になる・取得しづらい雰囲気があるなど、多くのビジネスパーソンが有休取得にためらいを感じています。一方で、ワーケーションでは、2日休暇・2日仕事・3日休暇など、柔軟なスケジュールを組むことが可能。旅行先でも仕事ができることで、有休取得のハードルが下がり、有休取得の促進につながります。

メリット③ 多様な働き方が選べることで企業のアピールになる
働き方改革が浸透し始めた現代、多様な働き方ができることは企業の魅力となります。新型コロナウイルスの影響もあり、新しい生活様式や勤務場所や時間を選ばない働き方が広がっています。オフィス以外で仕事をする人が増え、自由な働き方への需要は一層高まっているのです。そのため、働き方を社員が選択できることは、人手不足に悩む企業のアピールポイントとなります。

もちろんワーケーションを導入するだけで企業の魅力が上がる、というわけではありません。しかし、テレワークや時短勤務などその他の新しい働き方と組み合わせて、多様化した人々の働き方ニーズに対応できれば、社員の離職率の減少や優秀な人材の確保につながるでしょう。

<従業員にとってのメリット>

メリット① 家族と一緒に長期旅行に行きやすい
ワーケーションを上手く活用できれば、社員は家族とゆっくり旅行に行くことができます。家族と一緒に過ごす時間は、ポジティブな思考を持ちやすくなったり、ストレス解消につながったりと、社員の精神状態を安定させる効果が期待できます。

日本のビジネスパーソンの多くは、長期休暇が取得しにくく、海外旅行や家族とゆっくり旅行に行く時間が取れません。連休が取れるタイミングは、世間でも祝日が多く、観光地にも人が多かったり旅行費用が高くなったりと、なかなかゆっくり楽しみにくいもの。混雑するタイミングを避けて家族と旅行が楽しめれば、リフレッシュしやすく、社員の満足度アップも見込めるでしょう。

メリット② ワーケーション補助金制度を受けることができる
「ワーケーション補助金制度」とは、所定の手続きを行えばワーケーションで発生した費用に補助率分をかけて地方自治体が一部負担をしてくれる制度のことです。地方自治体により制度内容は異なりますが、支給対象となった場合、自己負担額が減りお得にワーケーションを始められるかもしれません。

ワーケーションのデメリット

デメリット① 労働時間を正確に把握する必要がある
プライベートと仕事の線引きが曖昧なこと・オフィスに出社しないことから、社員の労働時間を正確に把握することが難しくなります。正しい労働時間の把握は企業側の義務であり、生産性の維持や、労災保険の対象となる時間帯を把握するうえでも非常に重要です。また、せっかく休暇を取った社員が仕事に追われることになれば、ワーケーションをするメリットが薄れてしまいます。

たとえば、午前中だけ仕事をして、半日休暇を取れば、半日分の有休消化とカウントしなければなりません。3時間だけ仕事をした日は、1時間単位で実労働時間をカウントする必要があります。

■課題への対策
労働時間の把握方法として、退勤管理システムの導入や業務用パソコンの使用時間のログ、出退勤の報告など、労働時間を記録できるルール作りを行うことで労働時間の管理をスムーズに行うことができます。

デメリット② 情報漏洩のリスクが増える
ワーケーションでは、オフィスでも自宅でもない場所で業務を行います。業務用のパソコンを紛失したり、フリーWi-Fiに接続してしまったりと、機密情報や個人情報が漏洩するリスクが高まるためセキュリティ対策を強化するという課題があります。

■課題への対策
セキュリティ対策が施されたポケットWi-Fiを企業側で用意する、パソコンに最新のセキュリティソフトを入れる、パソコン紛失時に遠隔でデータ消去できるサービスを利用するなど、情報漏洩のリスクに備えましょう。

また、ワーケーションでは機密性がある情報を扱う仕事をしない、そもそもパソコンに機密情報を保存しない、周囲に人がいるところで仕事の通話や会議をしないなど、ワーケーションで働く際のルール作りが必須です。

デメリット③ プライベートと仕事の線引きが曖昧になる
休暇中に仕事をすることは、ワーケーションの基本スタイルですが、プライベートと仕事との間の線引きが曖昧になりやすいという特徴があります。

■課題への対策
企業があらかじめ休暇と仕事をどう区切るのか明確にしておきましょう。ルール作りの際は、業務や部署、役職など導入する範囲を限定しておくのがおすすめです。たとえば、1人で作業できる資料作成やデータ入力・分析やクリエイティブな業務、リモートでも会議や作業が進められる業務担当者に限定するなどです。ワーケーションが実施しやすい部署や業務担当者から試験的に導入し、徐々に範囲を広げていくのもよいでしょう。

デメリット④ ワーケーションに否定的な意見を持っている人もいる
ワーケーションは社員にとってもメリットがある働き方ですが、必ずしも組織全体で好意的に受け取られるわけではありません。仕事と休暇ははっきり明確に切り離したい、と考える社員にとってはそれほど魅力的とはいえないでしょう。

■課題への対策
ワーケーションに否定的な意見を持つ人もいることを前提に、テレワークなどその他自由度の高い働き方も選択できる体制の整備や、有休を申請しやすい雰囲気づくりにも力を入れましょう。

デメリット⑤ ワーケーションができない人との間に不公平が生まれる
どうしてもワーケーションには向いていないという業務や職業も存在します。そのため、「ワーケーションができる人とできない人がいるという状態は、不公平ではないか」という意見が出る可能性があります。

■課題への対策
不公平だという意見が生まれた場合、無理にワーケーションを導入する必要はありません。ワーケーションに向かない場合は、リフレッシュ休暇やファミリーサポート休暇、アニバーサリー休暇などその他の働き方や休暇制度の導入を検討するとよいでしょう。

まとめ

ワーケーションの普及率や人々の興味関心が低いという点において、普及までまだ時間がかかりそうですが、企業や従業員にマッチしたワーケーションがうまく機能すると、成功事例からもわかるように様々な効果を得ることができます。

「休暇中に仕事をしても効率が落ち、成果が出にくいのでは」という意見もありますが、ではどのようなワーケーションであれば効率が上がり成果が出るのか、それを改めて考えることも大切です。確かに企業側にとってワーケーションを導入するとなると、様々なルール設定を行う必要があり、手間も発生します。

しかし、ライフスタイルや働き方の変化によって働く人のニーズが多様化している今、ワーケーションをうまく活用できれば、会社にとって様々なプラスの効果が得られ、働く社員にとってもモチベーションアップに繋がる可能性があるため、一度検討してみてはいかがでしょうか。

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