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優秀な人材との出会いを無駄にしない「タレントプール」活用法

優秀な人材との出会いを無駄にしない「タレントプール」活用法

少子高齢化が進み、慢性的な人手不足による売り手市場が続くなか、企業は優秀な人材を確保するために従来とは異なった採用手法を導入しはじめています。今回ご紹介する「タレントプール」もそのひとつです。自社と接点を持った優秀な人材をつなぎとめることができるタレントプールの活用は、今後の採用活動のスタンダードとなる可能性があります。

タレントプールとは優秀な人材を蓄えたデータベース

タレントプールとは、「自社の採用候補となりえる優秀な人材(Talent)を蓄えておく(Pool)ためのデータベース」のことです。大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した概念で、人材領域のバイブルとも呼ばれる“The War for Talent“に初めて登場しました。

従来の人材紹介会社を利用したリクルーティングとは異なり、タレントプールを利用した採用手法は、自社で採用候補者のデータベースを構築し、候補者に対して比較的長期にわたり継続的なアプローチを行うことが特徴。このような手法はデータベース・リクルーティングとも呼ばれます。

欧米では一般的だったタレントプールの活用が日本において注目されはじめた背景には、少子化による慢性的な人手不足とIT・Webサービスの普及による産業構造の変化、そして、日本型雇用慣行から欧米型へのシフトによる人材獲得競争の激化があります。

優秀な人材を確保できることへの懸念が強まり、企業が積極的な採用に打って出るなか、一度接点を持った優秀な人材をデータベースに登録し、候補者としていつでもアプローチできるタレントプールの手法が注目されるようになったのです。

タレントプールを活用することで得られるメリット

タレントプールを活用することで、優秀な人材を採用しやすい環境を構築できます。今までの採用手法では、面接などの採用プロセスが終わり、合否判定で採用の見送りが決まれば、人材との関係がそこで断ち切れていました。ポテンシャルはあるが即戦力が必要で採用できなかった人、優秀だが募集枠が埋まっていたため採用を見送った人など、タイミングが合えば採用されていたであろう優秀な人材をタレントプールに登録しておくことで、次回の採用に備えることができます。

また、これまでの採用手法では、求人広告の用意や掲載媒体の選定、人材紹介会社の利用など、募集の開始までに多くの工数をかける必要がありました。しかし、タレントプールの利用により工数の削減が見込めます。タレントプールに登録した候補者から最適な人材を選び出し、候補者と互いに合意の上で内定を出すだけでよいからです。求人媒体や人材紹介会社を利用しなくてもよいため、採用コストの削減にもつながります。

タレントプールを維持するためには、自社からの情報発信が必要不可欠です。タレントプール登録者向けのニュースマガジンやイベントを用意することで、登録者に自社の仕事や文化を理解してもらうことが可能となります。長期間の交流によって、自社の仕事や文化を理解した人材が入社してくるので、採用のミスマッチを削減できます。

タレントプールは3つのステップで運用できる

タレントプールは、大きく分けて、

*タレントプールの構築
*候補者たちとの関係の構築
*タレントプールの効率化

という3つのステップで運用できます。

まず、タイミングが合わずに採用を見送った応募者や退職した元従業員など、優秀な人材を集めて採用候補者としてデータベースに登録し、タレントプールを構築します。タレントプールは、LinkedIn、Facebook、WantedlyなどのSNS、TalentCloudやEVERYHUBなどの専用サービスを利用して簡単に構築することが可能です。

自社と接点を持っている人材であれば候補者となりえます。「自社サイトでの募集」「自社イベント参加者」「過去の採用応募者」「社員の紹介・推薦(リファラル)」「過去の在籍者」「自社SNS登録者」など、様々なチャネルを利用してデータベースを構築していきましょう。

次に、定期的に登録者向けのニュース配信やイベント開催などを行い、タレントプールにコミュニティを構築していきます。タレントプールの維持には、定期的に採用候補者たちとつながりを保つために継続的なコミュニケーションが必要です。ここで重要なのは、質の高い情報を発信していくこと。質の高い情報発信が自社の魅力になり、転職候補者のエンゲージメントを高めていきます。

タレントプールは長期的なつながりを保つものであるため、維持コストの発生は避けられません。そのため、タレントプールにかかるコストの削減もまた重要課題のひとつです。前述の通り、タレントプールは無料SNSでも可能ですが、専用のウェブサービスもあります。専用サービスには、採用チャネルから面接官の評価などを一元管理したり、特定の条件を満たす候補者だけにメッセージを送信したりと効率よく管理できる機能が備わっています。このようなサービスを利用して、コストを削減し、効率のよい運用を目指します。

以上のステップを経ることで、優秀な人材と自社のつながりを維持し、ポジションが空きしだい、いつでも声をかけられるタレントプールを構築することができます。

タレントプールで変化に強い企業へ

タレントプールはあらゆる業種・企業規模で導入が可能で、採用だけではなく、自社イベントの招待などにも利用できます。

トレンドの移り変わりが速い現代のビジネス環境において、必要となる人材は刻々と変わっていきます。タレントプールを活用すれば「あのとき採用しておけばよかった」という人材と接点を持ち続けることができるので、ビジネス環境の変容にも対応できるようになるでしょう。

求職者から見ても、お気に入り企業とつながりを保てるタレントプールは好都合といえます。
今後は、日本の企業においてもタレントプールの利用がスタンダートになるかもしれません。

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