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アルムナイとは?ビジネス上の意味・語源・制度が丸わかり!活用事例も紹介

アルムナイとは?ビジネス上の意味・語源・制度が丸わかり!活用事例も紹介

近年、企業経営においてアルムナイの存在感が増してきています。欧米企業では、アルムナイを貴重な資産として様々な取り組みを進めていますが、果たしてアルムナイとは何でしょうか。

本記事では、アルムナイの意味を解説して、その重要性とメリット・デメリットをお伝えします。最後にはアルムナイを既に積極的に活用している企業の取り組み事例を紹介しますので、実践活用にもお役立てください。

アルムナイとは?

ビジネスシーンにおけるアルムナイとは、企業の「退職者」を指す言葉です。
英語では「alumni」と表記し、直訳すると「卒業生」「同窓生」という意味を持つ用語です。アメリカでは転職が一般的であり、このアルムナイという用語がビジネスシーンでも浸透してきました。

アルムナイの語源

アルムナイの語源はラテン語の“アルマ・マーテル”です。母校を意味する用語であり、数や性別による語形変化の末に「アルムナイ」が欧米では一般的に活用されるようになりました。

アルムナイネットワークの重要性

去る者は追わず。これまでの日本企業は、一度退職した社員との繋がりを継続することに力を入れていませんでした。終身雇用の文化もあり、転職する社員が多くなかったことも影響しているでしょう。

しかし、終身雇用は崩壊し、雇用の流動性が高まっている現代。さらには、ビジネスにおける変化の激しい現代においては、退職者との繋がりからもイノベーションを生み出せることが多くあるのです。本章では、アルムナイネットワークの重要性を解説します。

アルムナイネットワークとは?

アルムナイネットワークとは、企業の退職者で形成されるコミュニティのことです。企業と退職者、または、退職者同士の繋がりを継続できるような人脈ネットワークを指します。

アルムナイネットワークが構築できると、退職者の定義は“過去在籍社員”から“社外資産”へと進化を遂げ、企業と退職者の双方にとってメリットのある関係性を作ることができます。例えば、ビジネス連携、副業支援、オープンイノベーションなどが挙げられ、最近では“出戻り社員”として再雇用する企業も増えてきました。

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成功の秘訣はイグジットマネジメント

アルムナイネットワークを通じた退職後の人脈形成を構築していくには、イグジットマネジメントが重要になります。イグジットマネジメントとは、「雇用の出口管理」のことで、円満退職として社員を送り出せるような仕組み作りのことです。

人材リソースを最大限に活用しながら組織の新陳代謝を高めていくには、人材の採用といった「雇用の入口管理」と併せて、これまで貢献してくれた社員の退職後のキャリアにも目を向けた「雇用の出口管理」の重要性が増しているのです。

このイグジットマネジメントが上手く循環することで、自社のOB・OGとの継続的な繋がりを維持することができ、あらゆるビジネスチャンスを創出してくれる存在になってくれるでしょう。

イグジットマネジメントの取り組み例

アルムナイとの関係構築で活用される雇用の出口管理は、「辞めないで…」ではなく、「辞めた後も良い関係を築こうね!」というスタンスになります。

そのため、イグジットマネジメントにおいて重要になるのは、退職後の“キャリアの提案”をすることです。今の業務内容は、将来のキャリアにおいてどのような役に立つのか。例えば、「社外だったら、こんな職種で活躍できるね」「社内だったら、このポジションに上り詰めることができるよ」といったゴールを示してあげることが大切です。

あくまでも、転職を促すための取り組みではなく、社員のキャリアを第一に考えた提案をすることで、イグジットマネジメントによる円満退職を実現できます。つまり、退職申し出のタイミング以前からイグジットマネジメントの取り組みは始まっているのです。

イグジットマネジメントを通じて、退職後にも卒業生がアルムナイとしての価値を提供していきたい と思ってもらうための取り組みであると理解しましょう。

アルムナイを活用するメリット

雇用の出口管理が人事の役割として重要性を高めているのには、当然大きなメリットがあるからです。ここからは、アルムナイを活用することで得られるメリットを紹介します。

★情報交換が活発化

★身近なインフルエンサーとしての期待

★情報交換が活発化

アルムナイが退職後に身に着けたスキルや知識、または実際に働いて分かる業界トレンドなどは、 企業にとって有益な情報になり得ます。アルムナイからの情報源がきっかけとなり、事業戦略の策定や営業施策の決定における要素にもなるでしょう。

また、情報交換が活発に行われることで、アルムナイは企業が今どのような事業フェーズに成長し、どのような人材を欲しているのかを把握することができます。これにより企業は、アルムナイからの「戻って活躍したい」という意思表示を逃すことなくキャッチできるのです。雇用の出口管理が上手く循環することで、再び雇用の入口管理へと繋がっていくのです。このような、退職者を再び採用する手法をアルムナイ採用と言います。

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★身近なインフルエンサーとしての期待

良好な関係を築けているアルムナイにとっては、過去に在籍していた企業のことはよく理解していますし、愛着もあるはずです。そのため、企業からリリースされる新製品・新サービスの情報はアルムナイも発信してくれる期待が持てます。特に、この新製品・新サービスの検討プロセスにおいて、アルムナイからの有益な情報からヒントを得ていたら、双方の関係性はさらに強固になっていくことでしょう。

また、直接アルムナイとの取引が始まったり、アルムナイから顧客を紹介してもらったり、ビジネスチャンスを与えてくれる影響力を持った社外資産としても存在感を発揮してくれるのです。

アルムナイの活用に関するデメリット

インパクトの大きいメリットを与えてくれるアルムナイですが、退職というセンシティブなシーンとの密接な関係もあり、デメリットを克服していく必要もあるのです。ここからは、アルムナイの活用に関するデメリットを紹介していきます。

◆退職に対するハードル低下

◆既存社員からのマイナスイメージ

◆情報漏洩のリスク

◆退職に対するハードル低下

“退職”というのは、個人にとって一大決心になるでしょう。なぜなら、新天地への転職、独立起業、専業主婦への転身など、キャリアのターニングポイントになるからです。しかし、アルムナイネットワークがあることにより、再雇用としていつでも戻れる環境があるという安易な考え方を助長してしまい、キャリアの一大決心であるはずの“退職”という選択肢が軽視されてしまう可能性もあります。

アルムナイネットワークが活発化することで、既存社員の退職が増えてしまうと元も子もありません。企業とアルムナイとの付き合い方を既存社員にも正しく理解してもらう必要があるのです。

◆既存社員からのマイナスイメージ

アルムナイの制度が注目され始めたのは最近の話。既存社員の中には、退職者とやり取りを継続することに抵抗感を持つ社員がいるのは当然です。このような社員は、アルムナイのネガティブな側面が強く印象に残っており、「なぜ一度退職した人に執着するのか」と思っているでしょう。

だからと言って、企業側が密かにアルムナイネットワークを構築していくことは逆効果です。アルムナイネットワークを構築することによる既存社員へのメリットを訴求させることが重要です。さらに言えば、既存社員も巻き込んでアルムナイとの関係性を築いていくと良いでしょう。

既存社員がアルムナイの活躍を見て、「今の業務はこんなことに活かせるのか!」「今のうちにこのスキルを習得しておくべきだ!」といったポジティブな印象を与えることができれば、自社で働くことの意味を再確認してもらう良い機会になるのです。

◆情報漏洩のリスク

アルムナイとの情報交換が活発になることでビジネスチャンスが広がるとお伝えしましたが、あくまでもアルムナイは社外の人材であるという前提を忘れてはいけません。

そのため、メールやチャットでのやり取りが中心になると、発信した情報が思わぬ形で外部に漏洩してしまうリスクがあります。アルムナイだけに発信したつもりであった情報が、アルムナイネットワークを超えて外部に漏洩しないよう、セキュリティ性の高いツールを活用したり、利用するツールにログイン設定をしたりする対策が必要になります。

絶対に外部に漏洩してはいけない機密情報であれば、そもそも本当にアルムナイにも情報発信する必要があるのかを慎重に見極めていくと良いでしょう。

アルムナイを活用している企業事例

最後に、アルムナイを積極的に活用している企業の事例を紹介します。アルムナイネットワークを活用して、実際にどのような取り組みをしているのでしょうか。

デロイト トーマツ アラムナイ

デロイト トーマツ アラムナイは、デロイト トーマツグループの卒業生達の今後の活躍を支援するためのコミュニティ形成です。約5,000人を超えるアルムナイが登録するネットワークになっています。卒業生と在籍社員の親睦と交流を促進すると同時に、あらゆる情報交換を通じて卒業生の事業繁栄に貢献する企画を提供しています。

■取り組み事例1:デロイト トーマツ未来塾

「デロイト トーマツ未来塾」では、デロイト トーマツグループ卒業生および在籍社員に自己研鑽の機会を提供することと、相互の交流機会を設けることを目的として、各界の著名人を招聘して「未来塾」という講演会・交流会を定期的に開催しています。

■取り組み事例2:ナナメのつながり交流会

「ナナメのつながり交流会」では、世代・業種・専門性の垣根を超えた交流の機会を提供しています。デロイト トーマツ在籍時の先輩・後輩といった「タテのつながり」と、デロイト トーマツ入社時の同期・同世代といった「ヨコのつながり」だけではない、卒業後だからこそ大事になる新たな「ナナメのつながり」を構築してもらうことを目的としています。

デロイト トーマツ社という同じ環境で働いたという共通点がある仲間との情報交換を通じて、現在の業務にも役立つ人脈の形成やビジネス機会が創出されています。同じグループにいても様々なバックグラウンドを持つ社員がいて、在籍時には話すことができなかった社員とも話ができて、全参加者にとって有意義な時間になっています。

アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク

アクセンチュア・アルムナイ・ネットワークは、アクセンチュア株式会社が運営するポータルサイトであり、世界78ヶ国30万人以上のアルムナイが在籍している人脈ネットワークです。アクセンチュアにとっては、卒業生も大切な仲間であり、継続した強固な繋がりを維持していく取り組みを実践しているのです。

■取り組み事例1:復職機会の提供

アクセンチュアでは、「Accenture jobs」として公開中の募集ポジションをアルムナイに常に展開しています。人材の入れ替わりが激しいコンサル業界だからこそ、アルムナイとの接点を継続できれば、「戻って貢献したい」と思ったアルムナイに対して常に最新の情報を提供できる環境があるのです。

■取り組み事例2:コラボレーション

アルムナイ同士、または、在籍社員とアルムナイが協業することで、革新的なアイデアやインパクトのある事業開発を促進することができるのです。アルムナイにとっても、アクセンチュアの事業展開や組織構造のアップデート情報をキャッチできることで、思わぬビジネスチャンスに巡り合える可能性も増えるのです。

まとめ

今回は、アルムナイを活用することの重要性についてクローズアップして解説してきました。人的資本経営という言葉が注目されているほど、今後の経営においては、“ヒト”への投資は欠かせない要素となっています。

また、在籍社員だけではなく、アルムナイとの人脈形成を新たに創り上げるとなると、一筋縄ではいかないでしょう。アルムナイとの信頼関係なくしてアルムナイネットワークを活性化することはできません。転職することが一般化される現代において、社員との繋がりを“点”ではなく“線”で捉えて組織を運営していく必要があるのです。

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