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アルムナイ採用とは?すぐに実践できるポイントを解説!導入企業の事例も紹介

アルムナイ採用とは?すぐに実践できるポイントを解説!導入企業の事例も紹介

過去の在籍社員(アルムナイ)を社外資産として捉え、ビジネスチャンスを広げる企業が増えてきました。中でも、アルムナイからの「戻りたい!」という声に耳を傾け、採用チャネルの1つとして有効に活用している事例も増えています。

今回は、アルムナイ採用についての基礎知識を解説し、当社で実施した調査データを基にアルムナイ採用の必要性と重要性をお伝えします。最後には、アルムナイ採用を成功に導く4つのポイントと企業事例も紹介していますので、実践での活用にもお役立てください。

アルムナイ採用とは?

アルムナイ採用とは、過去に退職した社員を再び採用する手法です。社員が戻ってくることから、「カムバック採用」「カムバック制度」という名称で実施している企業もあります。

そもそもビジネスにおけるアルムナイとは、「企業の退職者」を指す言葉であり、近年では、退職者との良好な関係構築からビジネスの幅が広がることが増えてきました。このようなアルムナイとの繋がりから成る取り組みの1つとして、優秀な社員が戻ってくる“アルムナイ採用”も活発になってきているのです。

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再雇用制度との区別

一般的に再雇用制度とは、定年退職後に再び同じ会社に雇用される「継続雇用」を目的とした制度です。再雇用という定義は同じですが、アルムナイ採用は、一度は外部の環境での就業を経てから再び採用することを前提とした取り組みであると区別する必要があります。

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社会情勢から紐解くアルムナイ採用

アルムナイ採用が注目されている背景には、「人材の流動」と「人材の不足」という2つの社会情勢が影響していると言えます。

終身雇用は日本企業が持つ特有の制度ですが、世界的な競争力を高めていくには、雇用を守ることに特化した終身雇用では足らず、近年では転職は一般化してきています。

社員は、会社に守られることよりも、競争力の高まる現代に勝ち抜くべく、成長するためのフィールドを求めるようになりました。このように終身雇用の概念が崩壊し、転職が一般化している現代において、「人材の流動」は当然に起きるものと理解しておく必要があるでしょう。

そして、「人材の不足」という側面も日本企業が抱える大きな課題です。採用においても、人材獲得競争は激しさを増すばかりであり、通常の人材紹介や求人媒体だけでは満足のいく採用活動ができない企業が多くあります。

そこで、会社のOB/OGにも目を向けて、積極的に採用していく“アルムナイ採用”が注目されているのです。

アルムナイ採用を必要とする外的要因と内的要因

企業がアルムナイ採用を1つの採用チャネルとして実施するべきである理由を、当社が実施した【再雇用(アルムナイ採用)の実態に関する調査】の結果に基づく、外的要因と内的要因から見解をお伝えします。

外的要因

まずは外的要因から。当社の調査結果より、実はアルムナイ採用で会社に復帰する社員の割合のうち、70%は自己応募ということが分かりました。つまり、アルムナイとの良好な関係を築けていれば、待ちの姿勢であっても一定数の母集団は確保できるということです。企業は、アルムナイからの「戻りたい!」という声に耳を傾け、採用するためのフローを整備する必要があるでしょう。

内的要因

次に内的要因です。経営者や人事担当者は、なるべく金銭的コストや時間的コストを最小限に抑えて採用活動をしたいと考えます。もしくは、採用成功における費用対効果を優先的に考えている傾向にあります。

アルムナイ採用では、初めて会う人材とは異なり、人柄や経験スキルを把握しているケースが多いため、採用面接時における見極めが通常の採用よりも容易となります。実際に調査結果でも選考を簡易的に実施している企業は58%であり、半数以上の会社が採用コストの削減を実現できているのです。

<参照>【再雇用(アルムナイ採用)の実態に関する調査】プロフェッショナルバンク(2023/3/22)

アルムナイ採用のメリット

ここからは、アルムナイ採用のメリットを紹介します。現場が喜ぶメリットと、人事が助かるメリットをそれぞれお伝えします。

★現場目線①:即戦力としての活躍

★現場目線②:新たに習得したスキルの還元

★人事目線①:人材不足の迅速な解消

★人事目線②:採用コスト/教育コストの削減

★現場目線①:即戦力としての活躍

事業を推進する現場では、中途入社する社員が1日でも早く活躍できるように、現場での研修や業務経験を重ねて育成をしていきます。アルムナイ採用で入社した社員は、以前経験した業務であることが多く、“即”戦力としての活躍が期待できます。また、会社の文化を知り尽くし、過去在籍時の同僚との関係性もあるため、業務を遂行する上でのハードルはもともと低くなっていると言えるでしょう。

★現場目線②:新たに習得したスキルの還元

さらに、アルムナイ採用で戻ってくる社員は、過去在籍時よりも腕を上げて戻ってくるケースが多いです。他社での業務から、同じスキルを研鑽することもあれば、異なるスキルを習得して戻ってくることもあります。どちらにせよ、現場にとっては貴重な経験には変わりなく、このノウハウを積極的に活用できるのです。

★人事目線①:人材不足の迅速な解消

通常の採用面接では、お互いの理解を深めることやスキルの見極め、自社のアトラクトに比重を置き、時間をかけて採用を行います。一方、アルムナイ採用では、ある程度の人柄やスキルを把握しているため、通常の採用ほどの時間と工数はかかりません。

また、中途社員向けの通常研修を全て実施する必要もなく、過去在籍当時との変更点や留意点を伝えるための研修を行い、すぐに実務の遂行に移すことができるのです。

★人事目線②:採用コスト/教育コストの削減

アルムナイ採用では、自己応募もしくは会社から直接声をかけることができるため、人材紹介会社に支払う成功報酬や求人媒体への月額掲載料はかからず、採用コストを抑えることができます。

また、前述した通り、限定的な研修でも現場への適応は問題なく、教育コストを抑えることも可能になります。

アルムナイ採用のデメリット

次にアルムナイ採用のデメリットを紹介します。出戻りしてきた本人だけではなく、既存社員への影響も考慮しなければなりません。

◆過去在籍時との処遇差

◆最適なポジションが不透明

◆既存社員の退職を助長

◆過去在籍時との処遇差

会社によって評価制度や賃金バランスは異なります。アルムナイが、過去の退職時より給料を上げて転職をした場合、もしくは、次の会社で給料が上がった場合は、アルムナイの希望年収と企業のオファー提示額に乖離が出てしまうケースもあります。

当然、評価基準は全社員共通で運用すべきであり、アルムナイだけを特別扱いすると既存社員からの不満も募ります。過去在籍時から戻ってきた現在までに他社で習得したスキルや経験の見極めと、それに伴うオファー額の設定は、人事が頭を抱える課題の1つです。

◆最適なポジションが不透明

賃金バランスと同様に、組織のバランスも経営する上で重要な要素です。70%が自己応募であるアルムナイ採用では、本来募集しているポジションではないが、優秀な人材から「戻りたい!」と声がかかることもあるでしょう。その際に、今のタイミングでは断るのか、新たにポジションを設置して採用するのか、募集ポジションの採用要件を変えて採用するのか、人事としては悩ましい場面が多くなります。

経営方針と採用戦略に則した活動をしていく上では、アルムナイ採用で戻ってきた社員の最適なポジションを見つけるための組織再編が必要になるかもしれません。

◆既存社員の退職を助長

経営方針を無視した、馴れ合いのようなアルムナイ採用の進め方をすると、既存社員からの会社に対する評価も変わってしまいます。「辞めてもすぐ戻ることができるな」と既存社員に認知されてしまうと、一大決心であるはずの“転職”のハードルが下がり、既存社員の退職を助長してしまうリスクがあるのです。

どうすれば既存社員の理解を得られるかは、後述の「アルムナイを成功させるポイント4選」で詳しく解説しますが、まずは「アルムナイだったら全員採用する」というスタンスではないことを既存社員に認知させる必要があります。

アルムナイ採用を成功させるポイント4選

本章では、アルムナイ採用を成功に導くためのポイントを4つ紹介します。上記のようなデメリットを少しでも軽減させ、優秀なアルムナイの採用を促進するための実践活用にお役立てください。
アルムナイ採用を成功に導くポイントを紹介する図

ポイント1.既存社員への周知・理解の徹底

何のために採用するのか。特に中途採用においては、明確な期待役割を与えて採用決定をするでしょう。この考え方は、アルムナイ採用でも同様です。

アルムナイ採用は中途採用の中の1つの手法であり、アルムナイだからと言って特別な周知方法を設定する必要はありません。既存社員には、「中途採用で会社に必要な社員だから採用した」という事実が分かれば、既存社員からの不満分子が出ることはないでしょう。

ポイント2.選考基準の明確化

既存社員からアルムナイ採用に対する正当な理解を得るためには、アルムナイ採用の選考基準を曖昧にしないことです。

少なくとも、アルムナイの“過去在籍時”と“現在”では、会社のフェーズや社員構成も異なるため、現行の選考基準で採用の見極めをすることが望ましいです。アルムナイが、「退職後にどのような経験を積んできたのか」「仕事への取り組み方は以前と変わっていないか」など、“現在”のアルムナイの姿から採用可否を判断する必要があるのです。

これにより、給料・ポジション・労働条件・業務内容などの待遇面におけるトラブルは防ぐことができるでしょう。

ポイント3.退職理由となった問題の改善

アルムナイ採用では、在籍時の活躍に加えて異なる環境で経験を積んできた優秀な社員を受け入れることができます。しかし、アルムナイは、一度は退職を経験した社員であると忘れてはなりません。

戻ってきても、以前の在籍時と同様の問題で再退職をしてしまう可能性も当然あります。そのため、退職理由や問題点を精査し、必要があれば改善しておく必要があります。

ここで注意すべきは、アルムナイで採用した人材を特別扱いしないことです。あくまでも全社共通で改善できる制度の整備をしましょう。例えば、給料に不満があり退職したアルムナイが戻ってくる際に、現在の人事評価基準と照らし合わせずに戻ってきてほしいという思いだけで、高めのオファー額を設定してしまうと、人事評価制度や昇給のバランスが崩れてしまいます。

一方で、長時間労働や休日出勤が原因で退職した場合、既存社員も同じ不満を抱えている可能性があるため、全社的な改善が必要です。退職理由をしっかりとヒアリングし、継続的で働きやすい職場環境の構築に努めましょう。自然と優秀な社員が戻ってくるようになります。

ポイント4.受け入れ体制の構築

受け入れ体制は“意識”の問題です。経営者や人事担当者は、既存社員がアルムナイの受け入れを“許す”ではなく、“歓迎する”という雰囲気を醸成する必要があります。

一番の近道は、既存社員からの不満をなくすことです。前述した3つのポイントを実践できれば、自然と既存社員からの不満が生じる可能性は低くなります。受け入れ体制は、会社全体のカルチャーから変えていくことが重要なポイントです。

アルムナイ採用を実施している企業事例

最後に、アルムナイ採用を積極的に活用している企業の事例を紹介します。

JALの事例に見立てた飛行機のイラスト

JAL(日本航空)/即戦力人財の確保へ

JALでは、コロナ禍で停滞した人材採用を3年ぶりに再会し、JALと入社希望者を繋ぐプラットフォーム「JAL Next Career GATE」を開設しました。それに伴い、“即戦力人財”としての活躍を期待して、アルムナイ採用の実施を公表しました。

<参照>【JAL GROUP NEWS】3年ぶりに業務企画職の経験者採用を再開

博報堂デジタルイニシアティブ/合同採用による母集団

博報堂デジタルイニシアティブでは、博報堂・博報堂DYメディアパートナーズ・DACの3社合同のキャリア採用を実施しています。その中で、通常のキャリア採用ルートに加えて、母集団形成の確保を目的として、リファラル採用とアルムナイ採用を実施しています。

<参照>【HAKUHODO digital initiative recruit】三社合同キャリア採用

みずほフィナンシャルグループ/異なるフィールドでの経験値を活用

みずほフィナンシャルグループでは、「カムバックアルムナイ採用」を取り入れています。様々なフィールドでの経験やスキルを、みずほフィナンシャルグループで活かしてもらうために、再び活躍していただける環境を提供する制度です。

<参照>【みずほフィナンシャルグループ】カムバックアルムナイ採用

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