自動車業界はEVと自動運転で変革期に突入!勝負のカギを握るインパクトプレイヤーは「電装エンジニア」

自動車業界は100年に1度の変革期と言われています。2010年代にEVがトレンドとなり、2020年代はEV技術をエンジン車と融合させたハイブリッド車(HEV)の開発も進みました。このEVシフトの波に乗り遅れないよう、自動車メーカー各社は独自の色を出しながら事業の変革を進めてきました。
自動車業界のクライアントを担当するヘッドハンターに聞いた、EVシフトと自動運転化で変革期を迎える自動車業界の人材動向について取りまとめました。
目次
自動車業界のヘッドハンティング依頼ポジションはEVシフトに伴い変化
弊社に寄せられるヘッドハンティング問合せの推移からも業界の変革が見て取れるほど、EVシフトの波は人材面にも顕著に表れています。『電装エンジニア』のオーダーが増えたことは、自動車業界の変革期を象徴する人材需要と言えます。
弊社はメーカー技術職の案件数が最も多く、とくに自動車業界からの技術職オーダーも長年対応してきました。その中で、直近5年の問合せ推移を見てみると、2020年~2021年にかけて『電装エンジニア』が『機械エンジニア』を逆転し、それ以降の問合せ数の開きを見ると、EVシフトの波が人材ニーズにも表れたことが分かります。
電装エンジニアが機械エンジニアを逆転、その背景とは
自動車は“人を乗せる”ため規制が厳しく、奇抜なデザインや画期的な仕組みを取り入れた開発は多くないと言われます。『機械エンジニア』は、自動車のボディ(車体)やシャーシ(ボディ以外の骨組)を開発する技術職のため、マイナーチェンジの開発も多く“劇的な新開発”は必要としません。自動車の生産には必要不可欠な技術職のため、弊社に寄せられる人材ニーズはありますが、2021年以降は『電装エンジニア』の方が圧倒的に依頼の多い職種となっています。
その『電装エンジニア』は、車体内部の電子機器や電子部品を開発する技術職であり、EVに切り替わることで、「回路設計」「制御設計」「解析エンジニア」「ECU開発」などのニーズが拡大しました。センサーも既に数多く内部搭載されていましたが、自動運転化により、外の動作に対するセンサー技術も必要になり、『電装エンジニア』の人材ニーズは増え続けています。
異業界への人材流出、行き先は…
転職が一般的になった世の中で、かつ、自動車業界の経験が活きる市場が出てくると、人材の流出も当然発生します。新興勢力で自動車業界からの流出が目立ったのは、ドローン、ロボット、宇宙の3業界です。
自動車業界における「機構設計」「ソフトウェア開発」「評価エンジニア」「解析エンジニア」といった職種の技術が、この3業界との親和性があり、とくに多くの流出が見られました。
この振興勢力の影響で、自動車業界で培った技術力を活かして「新しいことをやりたい」と手を挙げる人材がいたことは事実です。しかし、アルムナイで戻ってくる人材も多いとヘッドハンターは言います。
異業界に移ってから分かることもあるのでしょう。とくに日本のモノづくり産業を第一線で支えてきた業界から新興企業に移籍する場合は、そのカルチャーや仕事の進め方の違いにギャップを感じる人材も多かったのではないでしょうか。自動車業界の奥深さや社会的意義を改めて感じ、自動車業界へ出戻りする人材も増えているようです。
参考:【日刊自動車新聞 電子版】自動車メーカーで広がるアルムナイ採用の制度づくり,2024.11.02
https://www.netdenjd.com/articles/-/309043
参考:【日本自動車会議所】自動車業界で広がる「アルムナイ採用」 退社した社員を再雇用,2024.7.12
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/22300/
テクノロジー人材の獲得に向けた布石
自動車のEV化に関する政府目標はあるものの、内燃機関(ガソリンエンジン)がすぐになくなることは見込めず、ハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の需要はなくならないでしょう。とは言え、エンジンメーカーは長期目線での生き残りをかけ、EV関連の新規部品開発/製造を計画する企業も出てきました。最近のヘッドハンティング問合せ傾向においても、新規事業立ち上げに伴うEV関連の技術職オーダーが目立ちます。eAxle*が代表的です。
このEVの流れで「ソフトウェアエンジニア」を求める自動車メーカーも増え、業界を跨った転職も散見されました。SIerやWEBサービス会社といったIT業界にいる人材のニーズが高まり、地方拠点の多い自動車メーカーはソフトウェア人材を獲得するために主要都市に新拠点を作り、ソフトウェア人材の働き方に合わせた事業展開の動きが見られました。
*eAxle:電気自動車の動力源となる電動ユニットのこと。
参照:【アイシン】5分でわかる、電動車のコア部品eAxle(eアクスル)とは?,2022.12.14
https://www.aisin.com/jp/aithink/innovation/blog/005809.html
自動車業界としての確かなプライド
ソフトウェア人材の獲得に動く自動車業界と、その対象となるIT業界を比較すると、モノづくりとWEBプロダクト開発という観点から、「安全意識」「開発期間」「働き方」「処遇」といった根本的なカルチャーの違いが大きな懸念となりました。ソフトウェア人材の採用は各社苦戦しているのが現状です。
だからと言って、要件を緩和したり、カルチャーを変えたりするわけにはいきません。
この自動車業界には、人を乗せて動かすモノづくりのプライドがあります。命を預かる事業を展開しているからこそ、何百回、何千回と試験を重ねて作られる自動車は、他の業界に比べて、安全に対する考え方が圧倒的に高いのです。
我々ヘッドハンターは、日本の超基幹産業である自動車業界の “ダイナミックさ” と “モノづくりの魅力” を伝えることがミッションと言えます。