女性社外役員数は1年間で約1.2倍の伸長、女性社外役員を登用している一都三県の上場企業は7割に到達/上場企業の女性社外役員就任動向・傾向分析レポート

HR領域の社会的トピックに対する市場調査とデータ分析を実施するプロフェッショナルバンクのHR研究所は、上場企業の女性社外役員の属性や志向性をデータベース化した独自の「現役の女性社外役員データベース」をもとに、一都三県の女性社外役員の就任動向・傾向の分析を行いました。
多くの上場企業が2024年度の決算を迎えた今、プロフェッショナルバンクでは2024年度と2023年度の同時期(3月末時点)を比較した、一都三県の上場企業における女性社外役員の就任動向・傾向の分析結果をお伝えします。

国内の上場企業(東証プライム・スタンダード・グロース)に就任している現役の女性社外取締役・監査役が登録されているデータベースです。
その登録されている女性社外役員の数、なんと3,000人!
■情報鮮度:有価証券報告書から毎月更新(全員分)
■情報濃度:名前、年齢、就任先業界、個々のバックグラウンド など
目次
女性社外役員は1年間で414人増加の2,798人、昨対比で約1.2倍に。女性社外役員を登用している企業は63.4%から70.0%へ約1割増加
一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の上場企業における女性社外役員は2025年3月末時点で2,798人でした。2024年3月末時点の2,384人から1年間で414人増加、約1.2倍に伸長しています。
※複数社兼任している役員を重複カウントした延べ人数(実人数は2024年:1,739人/2025年:2,039人)
また、女性社外役員を登用している企業数は1,579社から1,750社と171社増加しており、一都三県の上場企業の中で、女性社外役員を登用している企業の割合は63.4%から70.0%で約1割増加しました。
2025年3月末時点における、東証プライム市場で女性社外役員が就任している企業は90.8%と9割を超えています。
コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改訂が、上場企業の女性社外役員の就任増加を促進しているのは間違いありません。加えて、上場企業の経営者による企業改革意識の高まり、一方の専門知識と豊富な経験を有する女性側も社外役員という重要ポジションへの興味関心が高まり、双方の相乗効果により女性社外役員が増加している良い傾向が見受けられます。
年代別では60代の就任割合が最多、女性社外役員全体の約7割を50代・60代が占める。さらに、40代の女性社外役員就任が増加傾向に
2025年3月末時点での女性社外役員の年代は60代が最も多く34.6%、次いで50代がほぼ同じ割合の33.0%となりました。女性社外役員の約7割を50代と60代が占めています。
2024年3月末からの増加数は、60代が最も多く1.2倍増の134人増加、次いで40代が67人増加、50代が65人増加と続きます。女性社外役員の約7割を占める50代・60代の増加数に加えて、40代の女性社外役員の増加が目立ちました。
コーポレートガバナンス・コードの改訂により、企業の多様性確保が求められていることや女性キャリアを促進する取り組みの効果により専門スキルを有する女性が活躍し、40代の女性社外役員の登用が進んでいることが予想されます。
経験業界は事業会社が3割超でトップ、次いで士業系が続き、この2領域で女性社外役員の7割を占める
2025年3月末時点での経験業界は、事業会社経験者(金融以外)が31.3%で最多となりました。また、弁護士・法律事務所経験者、会計事務所・税理士事務所経験者、監査法人経験者といった士業系専門人材は合計で39.9%となり、女性社外役員の約7割を事業会社経験者と士業経験者が占める結果となりました。
就任先企業の業界比率最多は製造業が24.7%、業界別の就任率最多は情報・通信業で54.4%
就任先企業の業界比率は、製造業が最多で24.7%、次いで情報・通信業19.0%、サービス業15.8%となりました。
また、女性社外役員の業界別の就任率は、情報・通信業が最多で54.4%、次いで卸売業53.8%、不動産業52.7%と続き、この3業界に関しては2社に1社の割合で女性社外役員の登用を行っていることが分かりました。
全業界13分類のうち、女性社外役員の就任している企業が40%を超える業界は10業界も存在します。2024年3月末時点で女性社外役員の就任率が50%を超える業界は、1業界のみ(卸売業)であり、40%を超える業界は6業界であったことから、業界の垣根を越えてガバナンス強化への意識が高まっていると言えます。
約3割が複数の企業で社外役員を兼任、割合の変動は少ないものの女性社外役員の人数は増加
2025年3月末時点では、複数の企業で社外役員を兼任している役員は569人で、女性社外役員全体の27.9%にのぼり、前年同時期と比較すると79人増と社外役員を兼任している方が増加していることが分かりました。
2030年までに東証プライム上場企業の女性役員比率30%以上という政府目標を達成するため、社外役員として女性を登用する企業が増えていることが分かります。
また、1社のみ就任の女性社外役員が1,470人で7割を占めています。増加数においては、1社のみ就任の女性社外役員が最も多く221人の増加、次いで2社・3社兼任の女性社外役員がそれぞれ41人ずつ増加しています。
さらに、2社・3社兼任している女性社外役員が545人と全体の26.7%となり、2023年のデータ(弊社調べ)では462人で全体の27.0%だったことから、2社・3社兼任する方々の全体の割合についての変動はないものの、人数は増加意向にあるということが分かりました。
参照:PR TIMES【プロフェッショナルバンク】2023年「上場企業の女性社外役員就任動向・傾向」分析 2023.12.1.
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000005100.html
就任して4年以内の女性社外役員が全体の約8割を占める
就任期間については、全体の約8割は就任して4年以内ということが分かりました。
中立の視点で経営監督を行う独立的な立場が求められる社外役員という役割において、長期就任というのは望ましい傾向ではないため、来年度の社外役員改選に向けた取り組みが活発になる可能性が高いです。
まとめ
女性役員の登用に対して、2030年までに30%という政府目標があるというのは大前提として、女性社外役員がガバナンスの強化や経営基盤の強靭化にどれほど重要なポストであるかを認識しながら取り組んでいくことで、さらなる企業価値向上に繋がるでしょう。
2025年3月末時点での女性社外役員の就任動向・傾向は、2030年の「女性版骨太の方針」目標達成に向けて総じて良い傾向が伺えました。
上場企業の経営者による企業改革意識の高まり、専門知識と豊富な経験を有する女性側の社外役員という重要ポジションへの興味関心の高まり、この複合効果を受けて「企業」と「女性社外役員」と「世間」の“三方良し”を実現していくのがプロフェッショナルバンクの使命です。