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社外監査役とは?社外取締役との違いや要件・役割と人材像を解説

社外監査役とは?社外取締役との違いや要件・役割と人材像を解説

コーポレートガバナンス(企業統治)強化の観点などから、上場会社でかつ大企業では「社外監査役」の設置が義務付けられています。この記事では、なぜ上場する大企業では「社外監査役」が必要とされるのか?その役割と意義、また類似する役職名の「社外取締役」との違いや事例を交えた採用ニーズまでを紹介しています。

社外監査役とは?

上場する大手企業の取締役を監督する役割として、外部より選任されるのが社外監査役になります。業務監査と会計監査の2つ役割を担っており、その為、弁護士や会計士から選ばれることが多いようです。

監査役が必要な理由と役割

会社の取締役には、株主利益を最大化することを目的として、善管注意義務に基づき、正しく経営することが求められます。法を 遵守せず不正な取引を実施したり、会計処理をごまかしたりすることで、私腹を肥やす取締役がいないか監査し、不正があった場合には責任を追及することが監査役の役割と言えます。その監査役の中でも外部から選任されるのが社外監査役です。

社外監査役とは別に「社内監査役」という役職もありますが、社内監査役は元々会社にいた人から選ぶのが基本です。その為、社内を客観的に見たり、意見を述べたりするのが難しい場面もあるでしょう。旧知の仲である取締役に対して寛容な判断を下したり、当たり前とされている文化や慣習が法的には誤っていることに気付かなかったり、その結果、正しい監査が遂行できないこともあり得るのです。

一方で社外監査役は、外部の第三者的な立場で監督できるため、株主に対する利益最大化に向けた重要な役割として機能するのです。

社外監査役の設置が必要な企業の要件

社外監査役はすべての企業で設置が必要なわけではありません。会社法では、監査役会設置会社とされる以下の要件をすべて満たす大手上場会社において、監査役の半数以上が「社外監査役」であることが定められています。

【監査役会の設置義務がある株式会社の要件】

・会社法における大会社であること(資本金5億円以上、または負債総額200億円以上)

・公開会社であること

・監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社でないこと

社外監査役になれる要件

次にどのような人材が社外監査役になれるのでしょうか?社外監査役になれる要件は、会社法により下記すべてを満たす者とされています。

十六 社外監査役 株式会社の監査役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。

イ その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員。ロにおいて同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。

ロ その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。

ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役、監査役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。

ホ 当該株式会社の取締役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

会社法2条16号

社外監査役と社外取締役の職務の違い

社外監査役とよく似た役職名で「社外取締役」があります。コーポレートガバナンスの強化が推進される昨今では、よく聞く役職となってきましたが、その違いがはっきり分からないという方も多いのではないでしょうか。ここでは社外監査役の職務を紹介しながら、社外取締役の違いも解説していきます。

社外監査役の職務

まずは、社外監査役の職務からみていきましょう。監査役の職務は、大きくわけて2つあります。取締役の職務執行を監査する「業務監査」と決算処理などに関わる「会計監査」です。

業務監査

取締役の業務執行に違法性がないか、法令や定款を遵守しているかを監査することが業務監査で、一般的には「適法性監査」と呼ばれています。

会計監査

会計監査は、一般的に定期開催される株主総会の前に行われます。決算書類が「適正な会計処理の基準に則っているか」を監査するものです。

監査役の法律で定められた職務

また、監査役である以上、法律(会社法)で定められた下記の様な監査役の職務を実施することになります。

・ 監査役は、取締役と会計参与の職務の執行を監査し、監査報告を作成する必要があります
・ 取締役会に出席して、必要に応じて意見を述べなければならないとされています
・ 取締役が株主総会に提出する議案・書類などを事前に調査し、法令および定款への違反や不当な事項がある場合には、調査結果を株主総会に報告しなければなりません
・ 会社が取締役相手に訴訟をする場合や、取締役が会社に訴訟をする場合には、監査役は会社を代表して訴訟を受け持つことになります

社外取締役との職務の違い

次に社外監査役と社外取締役との仕事内容は、明確に区分すると以下のようになります。

社外監査役:企業の業務・会計監査を行う
社外取締役:事業に対する監視を行う

どちらも第三者目線で客観的に企業を監視する役割ですが、対象範囲が異なります。社外監査役は業務と会計分野のみですが、社外取締役は事業全体を監視する役割を持ちます。その為、社外監査役は弁護士や公認会計士が選任されることが多く、社外取締役は会社経営全般の知識が必要になるために経営経験がある方が望まれることが多いようです。

また、社外取締役や社外監査役を設置する会社のほとんどで「取締役会」が設置されており、経営における重要な意思決定はここで採決されています。この取締役会を構成する「取締役」は採決に必要な票を持っていますが、社外取締役は「社外」でありながら他の取締役と同様に多数決による採決に必要な1票を持っています。つまり、経営のかじを取る重要な職務を担っているのです。

一方、監査役も取締役会に参加しますが、これはチェックのために参加しているものであり、採決の為の投票権は持っていません。社外取締役と社外監査役はどちらも会社の経営機能を強化するための役割ですが、「重要な経営方針への影響の及ぼし方が異なる」というのが大きな違いのひとつと言えるでしょう。

社外監査役と社外取締役の人物像の違い

次に求められる人物像の違いについて、もう少し詳しくみていきましょう。上述の仕事内容に則して社外監査役と社外取締役では求められる要件も以下のように異なってきます。

■社外監査役に求められる人物像

社外監査役の任務には、企業法務に照らし合わせ、業務が適正に遂行されているかを監査するものがあります。その為に求められる役割や、会社法上の要件を踏まえると、多くの場合で弁護士が適任となります。

弁護士は、法律の専門家として、会社の取締役からは独立した立場と職責を有しています。外部の弁護士に社外監査役を担ってもらうことで、会社法上の社外監査役の要件は満たされるケースがほとんどであり、客観的な立場から公正に取締役の職務執行の監査が行われることが期待できます。

また、社外監査役の役割は業務監査と会計監査で、法律・会計に関する知識が求められることから、公認会計士は適任とされる場合も多くあります。こちらも社外の公認会計士を選任することで、会社法上の社外監査役の要件は満たされ、客観的な立場から公正に決算手続きや関連書類の監査が行われることが期待できます。

■社外取締役に求められる人物像

一方で社外取締役には「このスキルがないと務まらない」という条件はありません。幅広い視野は必要ですが、特定のスキルは不要です。事業全体の監視やアドバイスをおこなう性質上、自らが経営経験を持つ人材が多く選任されるようですが、他取締役の不得意な分野や新たな取り組みに長けた人材を選任することもあるようです。

実態としては、企業の業態や社内取締役のスキルなどによって異なっており、各企業の社外取締役に就任している人のバックグラウンドは下記の様に多様になっています。

・ 会社の経営者、経営者OBの経営経験とノウハウのある人物
・ 弁護士、CROなどの法務・コンプライアンスのスペシャリスト
・ 公認会計士、税理士といった会計や税務に関するスペシャリスト
・ 大学の教授や研究者などの高い専門性を持つ学者
・ 投資機関やコンサルタントなどの経営スペシャリスト
・ 著名人など

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社外取締役とは?設置要件や役割、採用ニーズと人材像を解説

監査等委員会設置会社と社外取締役兼監査等委員の増加

これまで、監査役会設置が必要な上場大手企業の監査役について解説してきましたが、昨今の上場会社では、コーポレートガバナンス(企業統治)を強化する新たな体制として「監査等委員会設置会社」が増えつつあります。

監査等委員会設置会社とは、2015年施行の会社法改正により新たに導入された株式会社の機関設計であり、監査役会に代わって取締役3名以上(過半数は社外取締役) で構成される監査等委員会が、取締役の職務執行の組織的監査を担うというものです。監査等委員会設置会社では、取締役会の中に監査等委員会が置かれ、一方で監査役(監査役会)を設置することはできないと規定されています。

監査等委員会設置会社に移行することで、企業へいくつかのメリットをもたらしますが、中でも社外監査役に関する点では以下が考えられます。

・ 従来では社外監査役から社外取締役への横滑り就任は禁じられていたが、監査等委員の社外取締役へ変更することが可能になった
・ 上記により取締役会での議決権を行使できることでガバナンスの強化がより図れるようになった
・ 上記により経営及び業務執行に関する迅速な意思決定ができるようになった

監査等委員会設置会社で「社外取締役兼監査等委員」として就任する人材は、監査役適任である弁護士や会計士を選任されるケースが多いとも言えますが、昨今の傾向ではその適法性の視点と経営戦略等が合理的であるか否かの妥当性の視点、双方をバランス良く持つ人材であれば、経営経験者やその他事業寄りの専門性を持つ人材も就任するケースが増えており、この傾向は今後も続くことが予想されています。

社外監査役の採用状況

最後に社外監査役の採用状況を紹介していきます。
大手上場企業はもちろんですが、会社法による大手に該当しない上場企業やIPO準備企業、ひいては非上場ながらプライム企業並みのガバナンス構築を目指したいという企業が増えており、社外監査役のニーズは堅調であると言えます。

社外監査役の採用事例

実際に社外監査役を選任した企業の採用背景や報酬のレンジなどの事例をご紹介します。

◆非上場 従業員5,000名 サービス業
*採用背景
ガバナンス強化を中期経営方針に取り入れており、非上場ながら上場企業に類する経営体制を目指しての増員。

*要件
年収:800万円
人材要件:公認会計士、上場企業での社外監査役経験

◆スタンダード上場 従業員1,000名 アパレル
*採用背景
来期の現任の改選。現任が会計士であったため、同等の体制を維持したい。

*要件
年収:700万円
人材要件:大手企業の経理財務または法務経験、会計事務所経験もあると尚可

◆プライム上場 従業員500名 化学メーカー
*採用背景
M&Aや提携を進めて規模の拡張を進める中でのリーガル面の強化。

*要件
年収:500万円
人材要件:弁護士、会社法務や企業訴訟、M&A対応の経験

上記は一例ですが、やはり大半の企業は社外監査役として弁護士または会計士を求める傾向にあります。一方で、他社での社外監査役の経験の有無は問わないことも多いようです。

社外監査役の報酬

当社によせられる案件において、社外監査役に支払われる報酬相場は500~1000万円のレンジに多い傾向があります。大手グローバル企業では数千万円の報酬を受け取っている場合もありますが、いずれにしても社外監査役は本業との掛け持ちや一線を退いた弁護士や会計士が就任することが多く、それを考慮すると受け取る報酬としては高額で、その役割の価値の高さをあらわすものとも言えます。

まとめ

社外監査役の役割と人物像や採用事例や報酬などを解説してきましたが、社外監査役は、高額な報酬に見合うだけの優秀な人材が求められるのも事実であり、その選任に苦労される企業も多く、その為に当社のような外部のエージェントを活用して選任する上場企業が増えているのも事実です。優秀な社外監査役をお求めの際や自社に合う社外監査役が見つからない場合は、ぜひ、プロフェッショナルバンクまでお気軽にお問い合わせ下さい。

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