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DX×自動化で建設業の人材不足解消を担うインパクトプレイヤー

DX×自動化で建設業の人材不足解消を担うインパクトプレイヤー

プロフェッショナルバンクは、“経営や事業課題を解決できる人材”をインパクトプレイヤーと称し、そういった人材の採用支援を果敢におこなっています。今回は、建設業の人手不足や技術承継の課題を解消すべく施工自動化を推進し、人手不足解消だけでなく、安全面での改革も担うインパクトプレイヤーをご紹介していきます。

建設業で注目を浴びるエンジニア

「ガガガァー」「ドゥルルル…」と工事現場で大きな音を出して働くクルマたち。昔から見慣れた光景に思えますが、操縦席に人はいません。ラジコンカーのように人がリモコンで機器を操作するものではなく、プログラムされた作業内容がタブレットから送られて建設機械の自律・自動運転が行われ、無人の建設機械があたかも自分の意志で作業をしているように見えるものです。また、空を見上げるとドローンが飛び回り、短時間で測量を実施し、そのデータの解析と可視化も素早く実施する。今、大手建設会社ではこのような建設現場での自動化を推進しています。

そして、建設機械やプロセスを自動化するために制御設計をしたりプログラムを実装したりするのが今、建設業で注目される“エンジニア”です。建設業の自動化は人材不足、技術継承などの“ヒト”に関する課題を解決できるとして、非常に期待が大きいものです。それに伴って、建設業のインパクトプレイヤーとして期待されているのが自動化を担うエンジニアなのです。

なぜ建設業での採用は難しいのか?

人手が足りない、足りないと言われて久しい建設業ですが、当社にもゼネコン、サブコン、デベロッパーと建設・建築関連の企業からひっきりなしにヘッドハンティングの問合せが来ます。建設業の自動化は、この人手不足の課題解消が期待されているわけですが、そもそも、なぜ建設業では人手不足が長きにわたり課題となっているのでしょうか?まずは、その背景をひも解いていきましょう。

国土強靭化計画と老朽化問題での需要

人手不足の背景のひとつとしてあげられるのは、国土強靭化に向けた需要です。東日本大震災を皮切りに昨今の日本各地での甚大な自然災害で、建設業を取り巻く状況は一変しましたが、政府が2020年に『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』を決定するなど、公共事業の需要は堅調に推移し、今後も旺盛だと予想されています。その為に働き手はおのずと必要となっています。

また、ここ数年来は、建築物の老朽化による建て替え需要も旺盛です。1960年からの高度経済成長期に集中的に建設された、建築物の老朽化は深刻な課題であり、その建て替え需要に応えるべく建設従事者の動員も旺盛なのです。

ビッグプロジェクトでの建設需要

加えて、首都圏においては2030年までは続々と再開発が進められています。東京オリンピック開催前の2020年以前よりも、それ以降のほうがビッグプロジェクトが増え、延床面積が200,000㎡を超える超高層ビルが東京23区を中心にいたるところで建設予定となっています。

プロフェッショナルバンクの本社近くにある帝国ホテルでも、50年来の老朽化に伴う建て替え計画とともに、周辺区画の再開発と合わせて約1,100,000㎡もの国内最大レベルの大規模再開発が進められています。完成は2030年以降のようですが、その頃に窓越しに見える風景は一変するのだと思われます。このように首都圏での人手不足には、この再開発も背景にあるのです。

若手が採れない、中間層が足りない

このような建設需要を背景に人材需要が旺盛なわけですが、そのような中で、依然、建設業の仕事は「きつい」「汚い」「危険」という3Kの典型とされ、特に若者たちにとっては好意的ではない印象が今もなお残っています。実際に、ここ数年の新規入職者数は減少傾向にあり、さらには、元々建設業ではバブル崩壊後に新規採用を大きく絞った結果、現場の管理を担当できる30代から40代の人材が不足しています。そのため、現場監督クラスの層は売り手市場となっており、建設業では若手も中間層も人材不足が深刻化している状況が続いているのです。

自動化で解消される建設業のその他の課題とは?

さらに今後、建設業を待ち受ける課題として懸念されているものに「熟練技術者の不足」や「安全面」、それから「2024年問題」などがあげられます。これらの課題も自動化で少なからず解消されると期待されています。

熟練技能者不足や安全面の課題

ここ数年、建設業では人材の高齢化とともに熟練技能者の大幅な減少傾向が続いています。熟練技能者が高齢により引退してしまう前に技術継承を行いたくとも、継承先となる若手や中間層が不足しているため、技術継承が十分に出来ない企業も増えてきています。業界全体の人手不足の課題と並行して解消が必要な重要な課題なのです。

建設業は労働災害が最多

また、建設業における労働災害件数の全産業における発生率は、年々減少しているとは言え最も高い状況にあります。厚生労働省の令和3年の労働災害発生状況(確定値)まとめによると、建設業の死亡割合は、全産業中で約33%を占めており、安心、安全に働けるとは言い難い環境も大きな課題になります。

建設業2024年問題

建設業はアナログな仕事が多く、また、人力で実施する仕事が多いために労働集約型な産業です。結果、重労働なだけでなく長時間労働が恒常化していて、逆にそれが産業を支える力でもありました。そのような中で、2019年に「働き方改革関連法」が施行されましたが、建設業においては、上記のような労働環境からの改革は早期には困難だとの理由から、この法案の適用には5年間の猶予が与えられています。つまり、建設関連の会社は、2024年には働き方改革に対応できるよう労働環境を整える必要があります。これが建設業における「2024年問題」です。

働き方改革の実現に向け、厚生労働省ではいくつかの取り組みに着手するよう呼び掛けていますが、中でも大きな課題となるのが「長時間労働の是正」です。仮に残業時間を一人当たり10時間削減したとして、1,000人の従業員を抱える企業の場合では、10,000時間もの工数(労働力)を失うことになります。中長期的にその工数をカバーできる取組みが必要なのです。

このように建設業には、全体的な人材不足の他にも

1. 熟練技能者の不足と継承の課題
2. 労働環境の安全面での課題
3. 労働時間短縮をはじめとする2024年問題

などがあると、私たちは認識しています。

自動化を担うエンジニアへの期待

自動建機を操縦する人
建設業が抱えるこれらの課題・問題の解決には、生産性や安全性を飛躍的に向上させる施工システムが必要ですが、それを担えるのが今、建設現場が進める施工やプロセスの自動化になります。

建設現場における施工やプロセスの自動化は、建設DXとも言われますが、この自動化によって、いくつもの 建設機械を最少の人員で同時に稼働させることが可能となり、また危険な現場作業を機械が行うことで人身事故を未然に防ぐことも可能となります。つまり、「省人化」と「安全性」を同時に実現することが可能になるのです。加えて、減少する熟練技術者のノウハウを機械が引き継ぐことで、その課題も解消しようとされています。

エンジニアの役割

これらの自動化を実現するのが、建設機械の制御設計をしたりプログラムを実装したりするエンジニアたちです。これらの人材は、建設機械や各プロセスの自動化を推進するために様々な役割で求められています。

例えば、機械を自動で動かすには、自動機械の制御系設計やプログラムの実装と、その作業状況の計測から施工結果の解析プログラムを構築するエンジニアが必要です。また、自動化された各プログラムのテストを実施するエンジニアやGPSを活用した地図作製や地形検出などのアルゴリズムをプログラムするエンジニアも求められていますし、これら自動化された建設機械やドローンから得る情報を解析し、アウトプットするエンジニアもまた必要とされていて、ひと言でエンジニアといってもポジションは多岐に渡ります。

建設業で求められるエンジニアの人物像

これらの人材は、同業の経験者が最も即戦力となりマッチ度も高いのですが、先端な技術者であるがゆえにまだまだ希少な存在です。その為、他業界であるSIerやソフトウェア会社のエンジニア、または製造業で機械・電気、生産ラインのDXや自動化に携わってきたエンジニアが求められています。とくに建設業も広義でモノづくりと捉えられるため、製造業出身のエンジンニアはとても需要があります。

また、建設業は大きく分けると「土木工事」と「建築工事」からなりますが、これまで土木と建築で全く別々に管理、運用されるものでした。建設業における自動化はプロセスを含めて横串で会社の全体最適を考えていく必要があります。その為、エンジニアとしてのスキルだけでなく、施工やプロセスの自動化に関する企画や社内の各部門、外部パートナーを巻き込みながら実装していける推進力も重要な要素として求められています。

自動化された建設現場

さて、これらのエンジニアがプログラミングして自動化が実現された建設現場は、実際にどのようなものなのでしょうか?先述のように建設業の自動化は大分すると「土木工事の自動化」「建築工事の自動化」からなりますが、それぞれ簡単にご紹介しましょう。

土木工事の自動化

まず、国が掲げる国土強靭化に直結するのが土木工事ですが、道路、橋梁、トンネル、ダムなどインフラ建設の土台となる工事が行われます。土木工事でも土を掘って運んで積み上げる「土工」は道路工事や河川やダム工事で実施されますが、いち早く自動化が進められている工程です。

自動化されたショベルカーが土砂を積込み、同じく自動化されたダンプカーがその土を運び、またまた自動化されたブルドーザーとローラーで土砂をまき散らし、最後に整地していく。これまで熟練した作業者たちが複数人で何日、何時間もかけてこなしていた作業を無人で複数同時に自動機械が作業していくのです。

また、トンネル工事での掘削機械や運搬機械を自動化し、人は遠隔でそれを管理する技術も確立されていますし、橋梁工事や湾港施設の工事においても様々な自動化システムの導入が検討され進められています。土木関連の自動化は一人のオペレーターが複数の機械を同時に管理することが可能な為、省人化が大いに進む分野だと思われます。

建築工事の自動化

一方で建築工事の自動化は、人とロボットが協業しながら働くのが当面の予想図となっています。現在、建築工事において自動化が進められているのは、建築部材を運搬するフォークリフトのようなロボットや柱や鉄筋、壁、天井といった建物の構造にあたる部分の溶接や設置を行うロボットが中心になっています。ただ、例えば外装や内装工事で仕上がりの美しさを求められる緻密な作業については、引き続き人が担当する必要があると言われています。

また、建設現場における広義な自動化・DXという視点で見ていくと、測量はドローンによって収集された3次元点群データを活用することで、これまで手動で測量し計算していた作業の自動化が実現されています。さらに建設施工の自動化は、ソフトウェアベースの設計段階、現場および遠隔管理による建設作業の自動化、竣工した建物から収集するシステムやエネルギー情報にいたるまで、関連したプロジェクトとしてクラウド上で管理し活用されています。これらはスマートビルと言われ、建設会社は新時代の建築構想としてDX化されたビルの建築提案を 施主へ積極的に実施し、商業化する動きが活発になっています。

自動化が進む建設業の行く先とは?

このように人手不足や2024年問題の解決への切り札として期待される、建設業の自動化。今後は、人と自動化される業務を分担しながらより広範囲に適用されていくことと思われます。人はオフィスで遠隔管理し、現場はロボットが。大手建設会社では、それが当たり前になる頃には、地球で人が自動建機を管理し、月や火星でロボットが作業をする世界をも想定していると聞きます。今は、他業界から招聘される事例の多いエンジニアですが、その数が増えて行き、業界内で自動化のノウハウや人材の流動が進んだ頃には、可能性が無限に広がり、現在建設業が抱える様々な課題も解消されているのではと思っています。

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