RPOとは?採用業務を外部委託するメリット・デメリット・連携のポイントを紹介
企業の継続的な成長には欠かせない採用活動。必要不可欠な業務であるからこそ、その難易度は高く、人事部門の重要な役割として位置づけられています。一方で、人事は採用以外の役割もあるため、人事部門の負担が大きくなっているのも事実です。
今回は、アウトソーシングを活用した人事機能の最適化として、RPO(採用代行)について解説します。
目次
RPOとは?
RPOとは、採用業務の代行サービスを指します。Recruitment Process Outsourcing(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)の略であり、「採用代行」とも呼ばれます。
- Recruitment:採用
- Process:過程・手順
- Outsourcing:外部委託
企業の採用活動で必要な業務を外部に委託することで、採用効率を高めたり、採用力を強めたりする目的で活用されます。採用代行は業務委託のなかでも、「委任契約」に該当するサービスです。任された業務の“成果物”に対して報酬が発生する「請負契約」とは異なり、任された業務の“遂行”に対して報酬が発生します。
RPOを活用する企業が増えている理由
RPOを活用して採用業務の切り分けをしている企業が増えている背景には、「人材獲得競争の激化」と「採用手法の多様化」という2つの要因があります。
日本では少子高齢化が加速し、今後も労働人口の減少は続いていくでしょう。そして、多くの企業が人材不足を解消しようと積極的な採用活動に取り組んでいるため、人材獲得競争は激化する一方です。難易度が高まり続ける採用業務に、採用ノウハウを持つ外部の知見を取り入れることで、採用競争力を高めようとする企業も出てきています。
また、売り手市場と言われる現代において、戦略的に採用活動をしなければ欲しい人材を獲得できなくなっています。代表的な人材紹介サービスの他に、ダイレクトリクルーティング・求人広告・リファラル採用・アルムナイ採用・ヘッドハンティングと採用手法は多岐にわたり、これらの手法を駆使して戦略的に活動していく必要があります。さらに、認知向上を目的として採用ブランディング強化の取り組みも重要となるでしょう。
このように、採用活動にかかる業務工数は増え続け、人事部門の人的リソースには限界が見えています。加えて、従来よりも採用活動に専門的なノウハウが必要となり、採用難易度は高まり続けています。こうした背景から、採用における業務の切り分けとしてRPOを活用する企業が増えているのです。
RPOの業務範囲
続いて、採用代行会社に委託できる業務を紹介します。
■採用計画・採用戦略
採用計画とは、採用業務を遂行するベースとなるものです。「人物像」「採用人数」「採用期間」といった会社の方針に沿った計画を立案します。次に、採用戦略とは、計画で定めた人材を獲得するための取り組み方針です。「採用手法」「選考フロー」「採用基準」といった採用業務の具体的な施策を指します。
自社の抱える課題を採用代行会社と共有することで、解決につながる最適な採用計画・採用戦略の立案をしてくれるでしょう。
具体的な活動例
- 募集要件の策定
- 人材紹介会社(転職エージェント)の選定
- 転職ポータルサイト/求人媒体の選定
- 採用スケジュールの検討
- 採用プロセスの確立
■採用業務の遂行①:母集団形成
続いて、 母集団形成を行います。そのためには、自社に興味を持つ人材を集める必要があり、求人の露出を増やしていくフェーズに入ります。企業説明会の企画、選定した求人媒体へ掲載する原稿作成、人材紹介会社との折衝では、会社の魅力を伝える業務を代行できます。高い返信率を見込めるスカウトメールの作成も実施してくれるでしょう。
具体的な活動例
- 採用説明会の企画および実施
- 求人媒体への出稿
- 人材紹介会社との折衝
- ダイレクトリクルーティングによるスカウト送信
■採用業務の遂行②:応募管理
応募者の1次スクリーニング(書類選考)や面接日程の調整、合否連絡も採用代行会社に任せられる業務です。採用戦略に基づいた判断によるレジュメの確認を実施し、面接選考に進む際には日程調整の連絡をします。合否の最終判断は企業側で決定しますが、合否の連絡は採用代行会社が実施します。つまり、候補者や転職エージェントとの直接的な事務連絡を代行してくれるため、自社ではより重要な採用業務に集中することができるのです。
具体的な活動例
- 応募書類(履歴書/職務経歴書)の回収および管理
- 応募者の1次スクリーニング
- 面接の日程調整
- 質問受付
- 合否連絡
■採用活動の分析
採用代行会社が実施する採用活動の状況は、常に企業側に共有されます。単に業務を任せるのではなく、KPIを設定し進捗状況を可視化できるため、うまくいっている点と改善すべき点を明確にすることができます。
また、採用活動の分析以外にも、応募辞退者へのフィードバック回収や採用決定者へのフォローアップを任せることで、そこから気付きを得て改善することも可能です。改善策の検討や新たな手法の導入にもつながり、再び採用戦略の1つとしてより良い取り組みを実行できるようになるでしょう。
具体的な活動例
- KPI進捗管理
- 応募者辞退理由の分析と改善
- 採用決定者へのフォローアップ
このように、採用代行会社には、採用業務のほとんどを委託することができるのです。だからこそ、自社の採用活動にメリットを与えるサービスでもあり、連携の仕方を誤るとデメリットにもなってしまうのです。次章で詳しく解説していきます。
RPO活用で得られるメリット
RPOを活用することでどのようなメリットがあるでしょうか。人事部門と採用代行との連携で生まれる3つのメリットを紹介します。
採用オペレーションの最適化
採用代行サービスを活用することで、採用業務を「コア業務」と「ノンコア業務」の2つに切り分けて遂行することができます。ルーティン作業や事務手続きといった補助的な業務である「ノンコア業務」を採用代行会社に任せることで、時間とマンパワーをかけてでも対応すべき根幹業務である「コア業務」を人事部門で専念できるようになります。
また、採用のプロフェッショナルとして採用代行会社に採用活動の「コア業務」を任せることもできます。それにより、人事部門は採用以外の人事業務に集中できる環境になり、従業員の育成支援・制度改革といった人事戦略の強化につながります。
自社の組織における人事部門の課題や現状から、「どの業務に力を入れるべきか」「どの業務を採用代行会社に任せるべきか」など、会社によって最適化すべき業務は異なるため、日々の業務を見つめなおすことも採用代行を有効に活用するためには大切です。
パフォーマンスの可視化と改善
採用代行サービスを活用することで、採用活動にかかるパフォーマンスを可視化しやすくなります。採用活動を自社で実施すると、他の業務にどれだけ影響が出ているか、かけた時間と費用に対してどの程度の効果が出ているかなどの判断が曖昧になってしまうケースもあるでしょう。
採用代行会社を活用する際、目標数値を設定して業務委託をすることが可能です。日々の業務に追われながら対応する採用業務と比較して、数値分析から課題を見つけて、改善策を検討することができます。たとえば、採用チャネルを増やしたり、より高度な人材の獲得を目指したりと、次の一手を考えることができるでしょう。
採用力の強化
上記のとおり、採用代行会社を外部の戦略パートナーとして連携することで、他採用チャネルへの力の入れ方も変わってくるでしょう。もしくは、採用代行会社を活用するまでは対応しきれなかった新たな採用チャネルの検討に踏み切るきっかけになり、結果的に採用力の強化につながるでしょう。
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RPO活用で生じるデメリット
続いて、RPOを活用することで生じるデメリットを紹介します。
採用ノウハウが蓄積されにくい
業務効率化が図れる!とはいえ、すべてを採用代行会社に任せきりにしてしまうと、採用ノウハウが蓄積されません。なぜなら、自社の採用にも関わらず、どのように採用フローが進んだのか、どのようなハードルを乗り越えたのか、どのような紆余曲折のパターンがあるのかといったような、採用ノウハウを蓄積するための過程に携わっていないからです。
採用オペレーションの最適化や採用力強化どころか、採用代行会社なくては採用活動が機能しない組織になってしまう可能性があるのです。そうならないためのポイントは【外部連携で失敗しないためのポイント】で後述しますので、参考にしてください。
業務委託コストがかかる
採用代行会社に業務を委託するためには、費用がかかります。これまで自社で採用業務を行っていた企業では、どうしても検討段階でコスト面の懸念は出てくるでしょう。
一方で、費用がかかったとしても、採用できた優秀な人材が将来的に事業の成長に大きく貢献してくれれば必要コストと言えます。長期的な費用対効果に焦点を当てて検討すると良いでしょう。連携する採用代行サービスによって効果の良し悪しが変わってくるので、連携先の選定から重要となります。
採用ミスマッチが起こる可能性
採用代行会社に業務を任せすぎたり、連携が不足したりすると、採用後にミスマッチが発覚するケースがあります。
採用のプロである採用代行会社とはいえ、社外の担当者がその企業にマッチする人材をすぐに把握することは難しいものです。そのため、人事担当者が自社の求める人物像・必要な経験・スキル・採用基準を細かく共有する必要があります。とくに、採用活動の肝となる面接選考においては、人事担当者も参加したり、綿密な打ち合わせや調整を行ったり、ミスマッチが起こりにくくする対策を講じるべきでしょう。
外部連携で失敗しないためのポイント
外部と連携をしながら業務を進めていくことは、社内のリソースだけで遂行してきた今までとは大きく異なるものです。前章で紹介したデメリットを踏まえつつ、RPOを上手に活用するためのポイントを解説します。
役割の範囲を明確にする
【RPOの業務範囲】の章でお伝えしたとおり、採用に関わるほとんどの業務を採用代行会社に委託することが可能です。一方で、採用業務の各タスクは関連性が強く、1つ委託すると芋ずる式にあれもこれもと委託してしまいがちです。その結果、採用代行会社に採用業務を任せきりになってしまい、必要以上のコストがかかってしまうこともあります。当然、採用ノウハウも蓄積できません。
そのため、RPOを活用する際は、あらかじめ外部委託すべき業務を明確にしておくことが重要です。予算オーバーになると利用が続かなくなり、せっかくのRPOのメリットを活用できなくなってしまいます。
求める人物像・スキル・採用基準を言語化する
求める人物像・必要な経験やスキル・採用基準は、可能な限り具体的に言語化して、採用代行会社に伝えるようにしましょう。採用代行会社が前提条件を誤って理解してしまうと、採用時のミスマッチが多発してしまいます。
たとえば…
「マーケティングの経験がある人」ではなく、「事業会社でマーケティング業務に携わり、とくに広告運用とブランディングに長けた人が良い。ベンダーの管理が必要だから、その経験があると尚良し、コンテンツマーケティングの知見があれば非常にうれしい。」
「30代で採用業務を任せられる人事」ではなく、「事業会社での人事経験があり、とくに中途採用担当として年間採用人数20名以上の経験のある方がベスト。事業会社出身ではなくとも、人材紹介会社に在籍し、RA・CAどちらの業務経験があるコンサルタントにも会ってみたい。逆に、人事コンサルティング会社出身の方は対象にならない。今回は採用業務をメインで任せたいポジションだから。」
このように、経験・スキル・採用基準を明確にすることで、今回の募集ポジションで対象となる人材と対象とならない人材の区別がつき、ミスマッチの低下につながります。採用代行会社の担当者も、要件が定まっているため質問や提案がしやすいでしょう。
スキル面は求人票を用いて明記しても分かりやすいです。この場合、採用代行会社には、スキルの深掘りでヒアリングしてほしい項目を擦り合わせておくとスムーズに自社にマッチした人材との接点が持てるようになります。
採用代行会社と密に連携する
ここまで解説してきたとおり、良い採用成果を生むためには採用代行会社との綿密な連携が欠かせません。密にコミュニケーションを取ることで、ノウハウを吸収しながら採用活動を進めることができます。しっかりと協力関係を築ければ、採用活動におけるテクニックや注意事項を学ぶことも、理想となる人材のペルソナを丁寧にすり合わせることも可能です。
進捗管理・ノウハウの吸収・改善策の検討など、定例MTGを開催してコミュニケーションを取れる機会があるとよいでしょう。RPOを活用するときは、単に採用業務の委託先を探すのではなく、自社を理解し、より良い人材確保に協力してくれるパートナーを探すという意識を持ちましょう。
RPOを導入すべきシチュエーション
RPOは現在、そして将来にわたって継続的に陥る人材不足の打開策として必要とされています。最後に、RPOを導入した方が良いシチュエーションを紹介します。もし自社に当てはまるようであれば、採用代行会社との連携を検討してみるのもよいでしょう。
人事の業務過多
「採用活動にかかる業務工数は増え続け、人事部門の人的リソースには限界が見えています。」と前述したとおり、人事の業務過多は課題として挙げられます。また、人事部門の在籍人数が少なく、対応しきれない業務が出てくるケースもあるでしょう。
人材獲得競争の勝者になるためには、人事部門には戦略的な採用活動が求められています。つまり、人事機能のなかでも“採用”における比重は高まり続けているため、採用代行会社を活用した業務の切り分けを実施するとよいでしょう。これにより、業務過多が解消されるため、時間をかけるべきコア業務にしっかりと向き合うことで採用成功数の向上につながるのです。これは、採用代行会社に「ノンコア業務」を委託するケースです。
採用人数の大幅拡大
「既存事業の調子が良く、さらなる成長のために…」「新規事業が軌道に乗り、ここから成長を加速させるために…」「新たな営業所・工場を新設するにあたって…」といったように、各社あらゆる理由で人材を必要としています。ヒトによって経営方針や事業展開が変わるというのは、大袈裟な話ではないようです。
通年の採用人数が多い場合、もしくは、通年採用に追加して採用拡大の計画がある場合、応募者への対応が追い付かなくなってしまうこともあるでしょう。具体的には、「求人媒体の掲載・運用」「応募者との初期連絡」「面接日程の調整」などの業務は、数が多ければ多いほど対応漏れやミスの発生要因になってしまいます。また、人材紹介ではスピードが命。迅速な対応が求められる業務でもあり、優先すべき業務の切り分けが難しくなってしまいます。
採用人数の大幅拡大においても、採用代行会社を活用することで採用オペレーションの最適化につながり、採用計画の達成につながるでしょう。つまり、採用代行会社に「ノンコア業務」を委託するケースとして効果を発揮します。
期待する採用成果が出ていない
「母集団が形成できない」「オファー承諾率が低い」「スキルアンマッチが多い」などの課題を感じていて、期待する採用成果が出ていない企業は、採用代行会社の活用が効果的です。
採用代行会社が蓄積してきたノウハウの還元や他社での成功事例を踏まえた改善策を提案してくれるため、採用課題の解決につながりやすくなります。また、定量的な数値管理を共有することによる活動分析も可能です。
これは、採用代行会社に「コア業務」を委託するケースとなります。注意すべき点は、即効性はあるものの継続性は保証できないことです。継続的な採用活動をするためには、採用代行会社に任せきりにするのではなく、常に連携することで採用代行会社が持つノウハウを吸収するという意識をもって取り組んでいくとよいでしょう。
まとめ
RPOは、現代に欠かせない採用活動を支えるサービスです。企業にとって負担や悩みの種となりやすい採用活動を専門的な視点からサポートしてくれます。一方で、すべての企業でRPOが必要となるわけではなく、その企業によって利用の向き不向きや利用範囲が異なります。
自社の採用課題や人事組織を見つめなおし、効果が出る形で採用代行会社との連携ができるとよいですね。