人事ねた

スキルマップとは?目的と活用事例を詳しく解説!最後に作り方も紹介

スキルマップとは?目的と活用事例を詳しく解説!最後に作り方も紹介

社員のスキルをすべて把握して、適切に人材育成を進めていく。頭では分かっていても、簡単にできることではありません。人材育成や会社の成長を促進するためには、現状を把握し的確なレールの上を走る必要があるのです。そのレールを示してくれるのが、スキルマップです。

今回は、社員の能力を可視化できるスキルマップについて、導入する目的からスキルマップの重要性を説き、スキルマップの導入から高い成長を遂げた企業の活用事例を解説します。最後には、スキルマップのテンプレートと作り方も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

スキルマップとは?

スキルマップとは、業務遂行に必要なスキルと実際に社員の持つスキルを数値で可視化できる一覧表を指します。組織内のスキル状況を把握することで、計画的な人材育成と組織活性化を促進するために活用されます。海外企業では、一般的にスキルマトリックス(Skills Matrix)と呼ばれます。

例えば、野球の監督は、選手の個人成績をスキルとして捉え、調子や経験値を加味しながら起用の判断をしています。
スキルマップの例(プロ野球の個人データ)

このような選手個人のスキルをチーム全体に落とし込んだものが、下図のようなスキルマップです。チーム全体における選手の特徴を瞬時に判断できるようになります。
スキルマップの例(プロ野球の組織データ)

野球でいえば選手、これは会社でいえば社員と置き換えることができます。このような社員のスキルを一覧で見られるツールがスキルマップです。

スキルマップを導入する目的

社員のスキルを可視化できるスキマップを導入する目的は、主に3つあります。

①:的確なスキル管理・評価基準のアップデート

②:会社の人材育成計画・本人の目標設定

③:リスクの洗い出し・組織の全体最適化

①:的確なスキル管理・評価基準のアップデート

スキルマップを作成することで、経営者や部門責任者は仕事を進めるうえでの知識や資格、技術ノウハウをどの社員が持っているか瞬時に可視化できるのです。

これにより、業務内容を整理することができます。技術力や資格、経験年数といった普遍的で可視化しやすいテクニカルスキルに加えて、「社内調整力」「マネジメント力」「発信力」などのヒューマンスキルも評価できる体制を構築すると良いでしょう。組織編制やプロジェクトメンバーの構成には、両スキルのバランスを鑑みたうえで適切な人材を任命することができます。

さらに、スキルマップの導入によって、社員の特徴を最大限に反映させた評価基準を設定できるようになり、社員の仕事に対するモチベーション向上にも影響を与えるでしょう。

②:会社の人材育成計画・社員の目標設定

スキルマップを導入することで、社員が持つスキルの水準を把握できるようになります。これにより、足りないスキルを補うための研修プランや、スキル上級者からの指導など、社員個人の特徴に合わせた効率的な人材育成計画を立てることができます。

また、社員個人も、自身が有するスキルと足りないスキルを客観的に把握できるため、ズレのない明確な個人目標を設定することに役立ちます。

③:リスクの洗い出し・組織の全体最適化

スキルマップから分かる組織のリスクとは、スキルの偏りです。1人の社員にスキル依存していたり、逆に同じスキルを持った社員が固まっていたり、組織のスキルバランスの傾向を把握するのもスキルマップの重要な役割です。

1人の社員にスキルが依存してしまうと、その社員が仮に退職・異動してしまった場合、今までと同じ業務フローを回せなくなってしまいます。リスクヘッジのために、マニュアル作成による標準化や中途採用による人員整備など、早期対策を講じることも目的の1つです。

また、リスクを可視化できることにより、中途採用で獲得すべき人物像や社内異動で新たな活躍の場を提供すべき社員を見極めることができ、組織の全体最適化にも繋がります。

スキルマップの活用が進む業界

スキルマップは全業界に共通して活用できますが、現在の日本では製造業界やIT業界、建設業界で多く活用されています。

特に、製造業界はスキルマップが最も進んできた業界です。日本が世界に誇る“ものづくり”産業を支えてきたのは、紛れもなく専門技術です。そして、製造業界の技術は「日本標準産業分類」だけでも153種類に分類することができ、更に細分化すると数え切れないほどの技術情報を管理することになります。

また、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001の厳しい要求を満たすために、社員のスキル管理は会社の生命線ともいうべきでしょう。製造業界はこのようなスキル管理を徹底的に実施してきた背景から、スキルマップの活用が進んできたのです。

同じ観点から考えると、専門性と技術力を有するエンジニアがいるIT業界、資格と経験を有する施工管理技士のいる建設業界でもスキルマップの活用が進むのは想像に難くないでしょう。

そして、近年のIoT化に伴い、人材の役割分担が明確になってきました。AIに任せるべき業務と人間のスキルが必要な業務の線引きが色濃くなり、特に飲食業界や小売り・サービス業でのスキルマップ導入は増えてくるでしょう。

参照: 科学技術研究調査で用いている産業分類

3つの業界から学ぶスキルマップの活用事例

現時点でスキルマップの導入が進む業界から、広がりを見せている業界まで、各業界特有のスキルマップ活用事例を見ていきましょう。
5115730369fa1b6831e6cf4ee1477960

製造業界の活用事例:トヨタ自動車

製造業界でスキルマップ活用の先駆けとなったのは、トヨタ自動車の「多能工」という仕組みです。多能工とは、1人で“複数”の工程作業を遂行できる社員のことを指します。逆に、“特定”の技術を磨き上げた社員を単能工と言います。

トヨタ自動車のスキルマップ活用目的は、社員の育成です。スキルマップで社員のスキルを可視化することで、足りていないスキルを把握し、そのスキルを習得させるための育成を行っています。様々な技術を持った多能工の社員が社内に多くいることで、たくさんの製品を、どの社員が業務遂行しても同じ品質で、効率的に作り出すことができるようになったのです。

IT業界の活用事例:NTTデータSMS

IT業界でスキルマップが活用される背景には、ITスキル管理の重要性が影響しています。NTTデータSMSの活用事例を見ると、ITスキル標準化を導入の目的として、顧客の要請に即応したハイレベル人材の提供を実現できるように取り組みました。そこで、自社内でのスキル標準化を目指し、スキルマップを活用して育成プログラムを整備したのです。

全社員が別々のスキルを保有するのではなく、足りないスキルを補い、必要なスキルを伸ばすことで、顧客への価値提供をハイレベルで統一することに繋がりました。

また、日々の業務に忙殺される社員は、自身の現時点での能力を可視化できるスキルマップによって、現業務以外にも遂行できる業務があることに気付くきっかけにもなりました。同時に、自分に足りないスキルを補うきっかけにもなり、同社では特にマネジメント力の強化を促し、若年代から管理意識を高める機会にもなったのです。

サービス業界の活用事例:星野リゾート

サービス業界の中でも、並外れた経営手法で注目を集める星野リゾート。同社もトヨタ自動車と同様に、スキルマップの活用で「多能工」を実現しています。星野リゾートがスキルマップを導入する目的は、組織の全体最適化です。

社員は1人で、フロント受付、客室清掃、調理、レストランサービス、ブライダルまで複数の業務を担当します。スキルマップで、全社員が同じスキルを高いレベルで遂行できるよう可視化し、スキルの偏りをなくしているのです。こうして、社員の退職や異動に伴うスキル紛失のリスクもなくなり、結果的に組織の全体最適につながったのです。

テンプレート紹介

実際にスキルマップを導入する場合、1から作成する必要はありません。既にあるテンプレートから自社の業界・職種に合ったフォーマットをカスタマイズして活用すると良いでしょう。スキルマップのテンプレートは厚生労働省が公開しています。

参考:厚生労働省 キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード

厚生労働省のサイトでは、スキルマップという名称ではなく、「職業能力評価シート」と表記されていて、人材育成に有効な示唆を得ることを目的に、個人成績を評価する際に活用されます。また、スキルの可視化とは別にキャリア目標を提示する「キャリアマップ」もダウンロードすることができます。

また、同じ業界であっても職種によって求められるスキルは異なりますから、厚生労働省では職種別に職業能力評価シートの導入・活用マニュアルを展開しています。営業部門であればヒューマンスキルを重視したスキルマップの作成が必要ですし、技術部門であればテクニカルスキルを重視したスキルマップを作る必要があります。事務職であれば、上記2部門とは更に異なる専門的スキルが求められるでしょう。

参考:厚生労働省:キャリアマップ、職業能力シート 導入・活用マニュアル
事務系職種(人事・人材開発・労務管理・生産管理・ロジスティクス)
事務系職種(経営戦略・情報システム・営業・マーケティング・広告)
事務系職種(企業法務・総務・広報・経理・経営管理・国際経営管理・貿易)

他にも、業種別のキャリアマップと職業能力評価シートがダウンロードできます。まずは、厚生労働省の展開するテンプレートを参考に活用してみてください。

スキルマップの作り方

それでは、厚生労働省の職業能力評価シートを参考に、スキルマップの作り方を解説していきます。スキルマップは、エクセルで管理するのが一般的です。ITツールとしてスキルマップのサービスを提供している会社もありますが、厚生労働省はエクセルシートを使っています。おすすめのITツールは後述しています。

まず、エクセルの行には必要技能や資格などのスキル内容、エクセルの列には評価を記載します。そして、行と列の交わるセルにスキルレベルを記載します。

スキルマップで管理できるスキルは?

さて、業種・職種によってカスタマイズが必要なスキルマップですが、どのようなスキル管理ができるでしょうか。ここからは、経営者や管理職が知っておくべきスキルマップの作成例を紹介します。

スキルには、「テクニカルスキル」と「ヒューマンスキル」の大きく2つに分類することができます。テクニカルスキルは技術力や専門性を、ヒューマンスキルは人間力を評価できる指標です。

製造業界の技術者や経理・秘書などの事務職は、主に必要な専門知識や資格、技術力を一覧にしたスキルマップを作成すると良いでしょう。一方で、ヒューマンスキルを重要指標とする営業職では、テクニカルスキルとは異なるスキル管理が必要になります。

品質保証職の例

下記は、品質保証で必要とされるテクニカルスキルの評価指標の一例です。
■品質検査
■設計審査
■解析評価
■品質確認試験
■ISO9001 内部監査員

技術職である品質保証のポジションは、上記のようなテクニカルスキルを中心に社員のスキル管理を行い、ミスの許されない業務を管理しているのです。

営業職の例

下記は、営業職で必要とされるヒューマンスキルの評価指標の一例です。
■コミュニケーション力
■交渉力
■自律性
■サービス理解度
■顧客との関係構築力・維持力
■マネジメント能力

営業職では、上記のようなヒューマンスキルを重視したスキル管理をすることで、社員の能力を正確にマネジメントすることができるのです。

スキルレベルの評価基準は?

行(スキル内容)と列(評価)の交わるセルにはスキルレベルを記載します。厚生労働省が設定する評価基準では、〇・△・×の3段階評価を取り入れていますが、業界や職種によってカスタマイズ可能です。

一般的には、5段階評価が多く導入されていますが、中央値をなくす意味でも4段階にすると評価しやすくなります。また、段階設定を変更できるよう数値で管理すると良いでしょう。

・レベル1:補助ができる
・レベル2:指導してもらいながら実践できる
・レベル3:単独で実践できる
・レベル4:指導をすることができる

品質保証のスキルマップ例

このように、スキル内容と評価を記載した職業能力評価シートを、エクセルに一覧化したものがスキルマップです。

スキルマップの活用方法

ここからは、スキルマップが活躍する場面を紹介します。スキルマップで能力を可視化することで、正確な社員育成を計画的に実行することができます。どのスキルを伸ばしていくべきか、社員一人一人の意識が変わり、会社も明確な指標に沿って効率の良い社員教育ができるようになります。

また、評価基準が明確になることで、適切なマネジメントにも繋がります。このような職場環境が整っていると、社員のモチベーションは向上し更なるスキル向上が見込めるでしょう。スキルマップにより、自分の持っているスキルと足りないスキルを把握することで、半ばゲーム感覚で楽しく腕を上げる努力をすることができます。

人材育成・社員評価を戦略として力を入れていきたい企業はまず、スキルマップを導入することで見えてくる課題や発見があるかもしれません。

おすすめのスキル管理サービス

今では、ITツールでスキル管理ができるサービスが増えてきました。それほど、スキル管理は重要であり、効率化が求められているということですね。最後に、おすすめのITツールを4つ紹介します。

タレントパレット

あらゆる人材データを一元化・分析し、組織の力を最大化させるタレントマネジメントシステム。
人事業務を効率化するだけでなく、人材データを分析・活用することで、経営・人事戦略の意思決定の高度化、次世代人材の育成、最適配置、離職防止、採用強化など科学的人事戦略を実現します。

■料金体系:初期費用 + 月額費用
■導入ステップ:問合せ → デモンストレーション → 提案 → 導入

≫詳しくはこちら

カオナビ

多様化する社員の個性も一目で把握、活用が進む人材マネジメントシステム。
社員のスキルや評価履歴、さらに性格やモチベーションも一元管理。今まで管理していなかった個々の能力や特性を有効活用することで、会社が抱える様々な課題の解決に繋がります。

また、一元化された情報をそれぞれのポジションにあわせて適切に共有し、社員の「今」の情報を活かしたマネジメントを支援。さらに、個々の情報を充実させ、有効活用して課題解決に取り組むことで、生産性が上がり組織の活性化に繋がります。

■機能プラン:ストラテジープラン・パフォーマンスプラン・データベースプラン
■料金体系:月額料金制(機能プラン&利用人数)

≫詳しくはこちら

SKILL NOTE

製造業界を中心に技術スキルの管理に強みを持ったスキルマネジメントシステム。
現場の技術者目線にこだわったサービス設計と、厳格な国際規格に完全対応できる仕組みが強みです。資格情報の一元管理や粒度の細かい技術スキルの管理など、製造業界ならではのスキル管理に特化した機能を揃えていて、ものづくりの技術力と品質向上を実現しています。

■料金体系:ライセンス費用 + 初期導入費用
■有料オプション:多言語対応、分析機能
■基本サポート:サポートセンター、個別相談会、オンラインマニュアル

≫詳しくはこちら

COCOREPO

ITエンジニアのスキル管理に適した、クラウド型のスキル管理サービス。
複数あるプログラミング言語やソフトウェアをどの社員が使えるのか。ITスキル管理に加えて、それぞれの経験年数や自己評価、外部評価などを一覧表示させることで、プロジェクトごとのアサインメンバーをシステム上で一元管理することが可能になります。

■機能プラン:ライト・スタンダード・エンタープライズ
■料金体系:月額料金制(初期費用0円)

≫詳しくはこちら

こんな記事も読まれています