男性育休を徹底解説!制度の内容、目的、現状の取得率、メリットからお金にまつわる話まで
育児休業は女性のための制度ではありません!近年では、積極的に育児参加する男性も増え、それに伴い、女性のキャリア継続にも好影響を与えています。男性の育休取得率の向上については、国としても制度を拡充しており、ますますの男女共同参画にむけた動きに期待ができます。
私(男性)も2023年の冬、育休を取得しました。本記事では、育児休業の基本的な制度内容を解説したうえで、男性育休の現状とこれから、メリット、気になるお金の話を、私の育休体験談を交えながら紹介していきます。
目次
男性育休とは?
男性育休とは、男性が配偶者の出産に伴い取得する育児休業のことを指します。
父親が育児に積極的に参加することで、子育ての負担を夫婦で分担し、家庭内のジェンダー平等を促進する目的があります。近年、男性の育休取得が注目され、法改正や企業の取り組みにより取得しやすい環境が整備されつつあります。特に、厚生労働省が推進する育児・介護休業法により、男性育休の取得が法的に支援されています。
そもそも育児休業とは?
育児休業(以下「育休」という)は、労働者が子供の出生から一定期間取得できる休業のことを指します。育児・介護休業法の規定によって定められ、育児に専念するための時間を確保することを目的としています。
参照:育児・介護休業法について【厚生労働省】
mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
育休制度をしっかりと理解して活用するためには、基礎知識として産休制度との違いを把握しておくと良いでしょう。
産休と育休の違い
産休(産前産後休業)は、妊娠・出産に直接関わる女性労働者のための休業であり、出産前後の一定期間、身体の回復と育児のために取得されます。
一方、育休は男女ともに取得できます。子供が1歳になるまでの期間、延長すれば最長で2歳まで取得可能です。なかでも男性育休は、父親が育児に参加することを促進するための重要な制度と言えます。
育休の目的
育休の目的は、労働者が育児に専念できる環境を提供することです。母親と父親が共同で育児をすることで、子供の健全な成長と発達を支援し、家族全体の生活の質を向上させることが期待されています。また、男女ともに育休を取得することで、職場における男女平等の推進や、働き方の多様性を尊重する企業文化の醸成にも寄与します。
育休の取得条件
育児・介護休業法に基づく育休の取得条件は、以下の通りです。
■1歳未満の子を養育する労働者(男女不問)
┗特別な事情がある場合、最長で2歳まで延長可能
■無期雇用されている労働者(男女不問)
■有期雇用されている労働者(男女不問)
┗*子が1歳6ヶ月に達する日に、労働契約が存在することが明らかな場合
■育休取得の事前申請
┗*育休を開始する1ヶ月前までに事業主に申請書を提出
以上の条件を満たすことで、労働者は育児休業を取得し、育児に専念することができます。育児休業は、家庭内での育児負担を分担し、働きながら子育てをするための重要な制度です。
男性の育休取得の現状
厚生労働省のデータによると、2022年度の男性の育児休業取得率は17.13%で、前年度(13.97%)から比べると3.16%の上昇が見られました。
しかし、女性の取得率が80.2%であることを考えると、依然として大きな乖離が見受けられます。子供を持つ女性の圧倒的多数が育休を取得している一方で、男性の取得率はまだ低い水準にとどまっていることが厚生労働省の公表するデータから一目瞭然です。
この数値を見ると、育児の負担が女性に偏る傾向は未だに続いており、男女共同参画やジェンダー平等の観点からも改善が求められています。男性育休の取得率を向上させるためには、制度の周知や企業文化の変革が必要になるのです。
参照:令和4年度雇用均等基本調査【厚生労働省】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r04/07.pdf
男性が育休を取得する障壁
男性が育休を取得するにあたっては、いくつかの障壁や課題があります。
職場の文化や風土
多くの企業では、男性が育休を取得することに対する理解やサポートがまだ十分ではなく、育休を申し出ること自体が難しいと感じる男性も多いのでしょう。
経済面での不安
また、育休中の給与が減少するため、家庭の収入が減ることを懸念する男性が多いです。特に、家計における収入の割合が高い場合、その影響は大きくなります。具体的な給与の仕組みや国からの給付金については、【知っておくべき男性育休のお金の話】で後述します。
キャリアへの不安
さらに、キャリアへの影響も懸念される要素として挙げられます。育休を取得することで、昇進や昇給の機会が減少するのではないかという不安があるため、育休取得に踏み切れない男性も多いです。
情報不足
最後に、情報不足も課題です。多くの男性が育休制度やそのメリットを十分に理解していないため、育休を取得することの意義を感じられない場合があります。こうして本記事や厚生労働省の制度を確認し、男性育休に関する情報を収集することで、制度を適切に活用できるように、育休取得の権利者に促すのも良いでしょう。
男性が育休を取得する重要性
男性が育休を取得することは、男女共同参画やジェンダー平等の推進において非常に重要です。まず、男性が育児に積極的に参加することで、育児の負担を夫婦で分担できるようになります。これにより、女性が職場復帰しやすくなり、キャリアを継続することが可能となります。
また、男性が育休を取得することで、子供との絆が深まり、家庭内での育児に関する父親の存在感が増します。これにより、子供の健全な成長と発達が促進されるとともに、父親自身の育児スキルも向上します。
さらに、男性が育休を取得することは、社会全体に対しても大きな意義があります。男性が育児に参加することで、職場における働き方の多様性が尊重され、柔軟な働き方が普及するきっかけになります。これにより、働きやすい職場環境が整備され、従業員の満足度や生産性の向上にもつながるでしょう。
最後に、男性が育休を取得することは、ジェンダー平等の実現に向けた一歩となります。男性が育児に積極的に関与することで、社会全体のジェンダーに対する意識が変わり、男女共同参画社会の実現が近づくでしょう。
男性育休取得を推進する制度
政府は、男性の育児休業取得率を2025年までに50%に引き上げる目標を掲げています。この目標を達成するために、育児・介護休業法の改正や新たな支援制度が導入されています。
育児休業制度に関する法改正
育児・介護休業法の改正により、育児休業制度は大きく変わりました。これにより、男性が育児休業を取得しやすくなり、育児に参加する機会が増えました。以下では、各年度の法改正の内容について見ていきましょう。
育児休業制度 改正【2022年10月1日~】
2022年10月から施行された改正法では、男性がより育児休業を取得しやすくなるための改正が行われました。特に「産後パパ育休(出生時育児休業)」が新設され、子供の出生後8週間以内に最大4週間の育児休業を取得できるようになりました。この制度では、育児休業を2回に分けて取得することが可能であり、柔軟な働き方ができるようになりました。
産後パパ育休は、子供の出生直後の育児参加を推奨する制度内容になっていることが特徴で、通常の育休とは異なる制度です。ただ、後述する社会保険料の免除や育児休業給付金の支給は受けられますし、産後パパ育休と通常の育休の併用も可能です。
他の改正内容では、企業は従業員に対して育児休業制度の周知を義務付けられ、育児休業の取得が推進されています。
育児休業制度 改正【2023年4月1日~】
2023年4月から施行された改正法では、従業員が1,000人以上の事業主に対して、男性労働者の育休取得率を年に一度、公表することを義務付けました。まず大企業を対象として男性育休の取得状況を公表させることで、さらなる男性育休取得率の向上を図ろうとしています。
育児休業制度 改正予定【2025年4月1日~/2025年10月1日~】
2024年4月および10月から施行される予定の改正法では、「柔軟な働き方の実現に向けた措置」と「男性労働者の育休取得率の公表義務の対象事業主の拡大」が育児に関連する改正内容です。
「柔軟な働き方の実現に向けた措置」の代表的な取り組みとしては、3歳未満の子を育てる労働者に対して努力義務の対象にテレワークを追加したり、仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮を義務化したり、就業面における柔軟性を拡充する動きが見られます。
「男性労働者の育休取得率の公表義務の対象事業主の拡大」に関しては、男性育休取得率の公表義務の対象が、従業員1,000人以上の事業主から、従業員300人以上の事業主まで、公表義務が拡充されました
男性育休を推進するメリット
男性育休の取得を推進することには、個人、家庭、企業、そして社会全体に多くのメリットがあります。以下に、その主なメリットを7つ紹介します。
1. 家庭内のジェンダー平等の促進
男性が育休を取得することで、育児の負担を夫婦で分担することができます。これにより、女性だけが育児や家事を担うという、これまでの悪しき役割分担から解放され、家庭内のジェンダー平等が進みます。育児に積極的に参加することで、父親としての責任感も高まり、子供との絆が深まります。
2. 女性のキャリア継続支援
男性が育休を取得することで、女性が職場復帰しやすくなり、キャリアを継続することが可能となります。これにより、女性の労働市場への参加が促進され、企業にとっても多様な人材を活用する機会が増えます。結果として、企業の競争力が向上し、経済全体の活性化にもつながります。
3. 職場環境の改善と生産性の向上
男性の育休取得を推進することで、職場における働き方の多様性が尊重され、柔軟な勤務体制が普及します。これにより、従業員のワークライフバランスが改善され、仕事に対するモチベーションや満足度が向上します。結果として、生産性の向上や従業員の定着率の改善が期待できます。
4. 子供の健全な成長と発達
父親が育児に参加することは、子供の健全な成長と発達に大きな影響を与えます。父親の育児参加は、子供に多様な視点や価値観を提供し、社会性やコミュニケーション能力の向上にも寄与します。また、父親と過ごす時間が増えることで、子供の情緒的な安定も促進されます。
5. 企業のイメージ向上
男性育休の取得を支援する企業は、社会的責任を果たしていると評価され、企業イメージが向上します。特に若い世代の求職者は、ワークライフバランスを重視する傾向があるため、育休制度が整備されている企業は優秀な人材から魅力的に思われやすいです。また、育児休業制度の充実は、従業員の満足度やロイヤリティの向上にも寄与します。
6. 社会全体のジェンダー平等の推進
男性が育休を取得することは、社会全体におけるジェンダー平等の実現に向けた重要な一歩です。男性が育児に積極的に参加することで、ジェンダーに関する固定観念が変わり、男女共同参画社会の実現が近づきます。これにより、男女が平等に活躍できる社会が構築され、多様性が尊重される社会が実現します。
7. 経済的支援と安心感の提供
育児休業中には、育児休業給付金が支給されるため、経済的な負担を軽減できます。家庭の経済的安定を保ったまま、育児に専念できる環境が整うのです。これにより、育児中のストレスや不安が軽減され、家族全体の幸福感が向上します。
以上のように、男性育休の取得を推進することには多岐にわたるメリットがあります。家庭内のジェンダー平等の促進から、企業の競争力向上、社会全体のジェンダー平等の実現まで、さまざまな面でポジティブな影響をもたらします。これらのメリットを最大限に活かすために、今後も男性育休の取得を推進する取り組みが重要です。
知っておくべき男性育休のお金の話
男性が育児休業を取得する際には、経済的な面での不安がつきものです。しかし、育休中にも一定の収入を確保できる制度が整備されています。ここでは、社会保険料、給付金、厚生労働省からの助成金についてのポイントを紹介します。
社会保険料
育児休業中は、健康保険や厚生年金保険などの社会保険料が免除される制度があります。これは、育児休業を取得する期間中の経済的負担を軽減するための措置です。具体的には、育児休業の開始日から終了日までの間、社会保険料の支払いが免除されます。ただし、この免除を受けるためには、事前に事業主を通じて所定の手続きを行う必要があります。
育児休業給付金
育児休業中には、育児休業給付金が支給されます。この給付金は、育児休業を取得した労働者が一定の収入を確保できるようにするためのもので、雇用保険から支給されます。育児休業給付金の支給額は、休業開始から180日間は賃金の67%、それ以降は賃金の50%です。給付金の申請は、事業主を通じて行う必要があります。
出生後休業支援給付
育児休業給付金のなかでも、2025年4月から新設される「出生後休業支援給付」では、条件が揃えば、前述した育児休業給付金に13%相当額を上乗せした賃金が支給されます。その条件とは、①子の出生直後の一定期間に、②夫婦そろって14日以上の育休を取得した場合に、③28日間を限度、となります。
*子の出生直後の一定期間/男性労働者:子の出生後8週間以内
*子の出生直後の一定期間/女性労働者:産後休業後8週間以内
厚生労働省からの助成金
厚生労働省は、男性の育児休業取得を推進するために、両立支援等助成金を提供しています。例えば、「出生時両立支援コース」「育児休業等支援コース」「育休中等業務代替支援コース」などがあります。この助成金は、男性従業員が育児休業を取得しやすい環境を整備する企業に対して支給されます。
参照:事業主の方への給付金のご案内【厚生労働省】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html
男性が育児休業を取得する際の経済的なポイントについて理解しておくことは非常に重要です。社会保険料の免除や育児休業給付金、企業に対する助成金など、様々な制度を活用することで、育休中の経済的負担を軽減することができます。これにより、男性が安心して育児休業を取得し、家庭内での役割分担やジェンダー平等の推進に寄与することができます。
まとめ
男性が育休を取得することは、「家事・育児は女性の役割」という固定観念を打破する重要な一歩です。男性が育児に積極的に参加することで、家庭内のジェンダー平等が進み、子の健全な成長や女性のキャリア継続も支援されます。
企業や社会全体で男性育休の取得を推進し、男女共同参画社会の実現を目指しましょう。育休取得が当たり前の社会を作ることで、すべての家庭がより豊かで幸福な生活を送ることができるのです。