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中途採用者の給与の決め方を解説!試用期間を活用してお互いに納得できる金額の提示を

中途採用者の給与の決め方を解説!試用期間を活用してお互いに納得できる金額の提示を

中途採用において、中途採用者の給与の決定は、採用者側・応募者側双方にとって非常に重要となります。ここで折り合いがつかない場合は、内定辞退に直結するためです。
今回は、中途採用に初めて取り組む人事担当者向けに、中途採用者の給与の考え方や望ましい決定方法についてご紹介します。

中途採用者の給与を決定する時には採用者の価値を見定めていく必要がある

最初に中途採用者の給与の決め方を見ていきましょう。基本的に中途採用者の給与を決定する時は、以下の3つのパターンに従います。

1.前職の給与額を参考にして前職の給与保証などを行うもの
2.自社の年齢別給与テーブルを採用する年功序列型のもの
3.実績によって給与額が決まる成果・能力主義型のもの

給与の設定は、長らく年齢や勤続年数といった年功序列型の制度が一般的でした。しかし、現在では業務を遂行する上での能力やスキルを重点的に評価する企業や、年功序列型であっても中途採用者の場合は前職までの給与やキャリアを考慮して決める企業も多くなっています。

労働者の給与を決める基本的な考え方は、「同一価値同一賃金」の原則です。同一の価値とみなされる労働には同一の賃金を支払うことが、最も公平な給与の決め方とされています。多くの企業が採用ポジションの前任者の給与をモデルにしていますが、本来は業務の価値を評価する基準を整備し、適切に給与の決定をしなければなりません。

少子高齢化による慢性的な人材不足が続く中、多くの企業が中途採用を強化しています。労働政策研究・研修機構が行った採用に関する調査によると、平成28年度には約85.9%の企業が中途採用を実施。多くの企業が中途採用を行い、社員の確保に奔走していることがわかります。[注1]

これから中途採用を本格化させたい企業にとって注意すべきは、新卒採用とは違って、中途採用は「条件交渉」が応募の前提として盛り込まれていることです。そして、条件の中でも「給与交渉」は大きなウェイトを持っています。

[注1]労働政策研究・研修機構 平成29年「企業の多様な採用に関する調査」https://www.jil.go.jp/press/documents/20171226b.pdf

給与交渉は基本的に内定後に行われるが面接中に応募者の希望額を聞いておく

中途採用で重要となる給与交渉が行われるのは、基本的に内定を出した後です。内定後には「採用条件通知書」を内定者に提示し、給与を含めた詳細な条件を提示します。ただし、給与面に関しては、面接時に応募者の希望をあらかじめ聞いておくことが重要です。

給与に関する話題は、応募者にとっては非常に重要である反面、面接官にとっては良い印象を抱きづらい類のものであるため、応募者から非常に話しづらいというのは想像がつくと思います。そこで、面接官から話題を切り出して、条件面を聞き出しておきましょう。

先ほども述べたように、基本的には内定後に条件を通知することになります。ここで内定者が提示金額などに納得いかない時は、条件交渉が行われますが、折り合いがつかない場合は、内定者が内定を辞退してしまい、今までの採用コストがすべて無駄になる可能性があるのです。

応募者としては、「自分を安売りしたくない」「正当に評価してほしい」という気持ちが働くのは当然のことです。採用コストを無駄にしないためにも、条件面でのミスマッチを早期に防ぐことが重要です。

しかし、給与交渉においては、ひとつ大きな問題があります。それは給与交渉の時点では、中途採用者の価値を見定めるのが非常に難しいことです。給与の決定方法が完全な成果主義や年功序列であれば特に問題になることはありませんが、前職の実績やキャリアを考慮する場合は、どの程度それを反映させるべきなのか迷うことがあります。
そこで、活用したいのが新規採用者の「試用期間」です。

試用期間を評価期間と位置づけて給与を決定する方法がある

新規採用者の給与を決定する時には、内定通知書で仮の給与を提示しておき、採用後の「試用期間」を給与の評価期間として位置付け、そこでの働きを考慮して改めて正式に給与を提示する方法があります。

この方法を採用すれば、採用者側にとっては、不相応に高い給与を長期間にわたって支払うことを防止できますし、中途採用者にとっても自分の能力を発揮してから適正な給与を提示されるため、お互いに納得感が高まるメリットがあります。

もちろん、このような方法を行う場合は、内定通知書を提示する時点までに、内定者の了承を得ておく必要があります。また、円滑に評価を実施するために、試用期間の延長やそのための就業規則の変更など、制度面を整備しておく必要も出てきます。

しかし、お互いに納得感のある給与の決定は非常に重要であるため、優先的に制度面を整備しておくべきです。エン・ジャパンが2018年に実施した調査によると、退職を考え始めたきっかけとなった理由で最も多かった回答は「給与が低かった」(39%)というものです。[注2]

採用後の昇給も非常に重要ですが、転職者にとって「給与」がいかに重要なのかが分かります。給与面での納得感は自社への人材定着に欠かせない要素といえます。

[注2]エン・ジャパン 『エン転職』ユーザーアンケート調査                 https://corp.en-japan.com/newsrelease/2018/13174.html

透明性を高めて社内に不満が溜まらないような制度作りを

中途採用者の給与は既存社員と自社との関係にも影響を及ぼすものです。例えば、ポテンシャルを発揮できていない中途採用者が高額な給与をもらっていると、既存社員の不満に繋がる恐れがあります。また、前述の通り、中途採用者の賃金が低すぎると転職の可能性が高まりますし、口コミサイトへの書き込みによるレピュテーションリスクも出てきます。
入社時点での適正な給与設定の方法を含め、人事考査制度の透明度を高めて社員に納得感を持ってもらえる給与制度の設計が重要です。

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