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外国人雇用の注意点とは?メリット・デメリット、採用方法や雇用の流れについて解説

外国人雇用の注意点とは?メリット・デメリット、採用方法や雇用の流れについて解説

少子高齢化によって、ますます日本の労働人口が減る状況の中、外国人労働者を積極的に受け入れる企業は増えつつあります。外国人労働者を雇用する場合、受け入れに必要な手続きや労務管理が煩雑に感じ、外国人雇用はどこか大変なイメージを抱くケースも多いのではないでしょうか。

本記事では、外国人雇用の注意点やメリット・デメリット、採用方法から雇用の流れについて解説します。

外国人雇用のニーズ

株式会社ネオキャリアが2020年2月に行った、「外国人雇用状況に関するアンケートの結果」によると、現在外国人労働者を雇用している企業は68%、過去に雇用したことがある企業は11%となっており、約8割の企業が外国人労働者を雇用した経験があるという結果が出ています。

また、外国人労働者を雇用した経験のある企業のうち32%が「国籍を問わず、優秀な人材を確保するため」、25%の企業が「日本人採用だけでは充足しなかったため」という理由から外国人労働者を雇用しています。これらの回答結果からも外国人雇用に対するニーズの高さがうかがえ、今後日本の労働人口が減少し続ければ、さらにそのニーズは高まるでしょう。

参考:株式会社ネオキャリア【最新】外国人採用状況に関するアンケート結果|企業が抱える課題や採用状況を大解剖!

外国人雇用のメリット・デメリット

外国人労働者の受け入れは人手不足の解消や、グローバル化への対応、助成金の受給など多くのメリットがある一方で、受け入れるために必要な煩雑な手続きや文化、言葉の違いから生まれるコミュニケーションの問題等デメリットもあります。ここではメリット・デメリットについて詳しくご紹介します。

外国人雇用のメリット

メリット1:若い労働力の補充と人手不足の解消

最大のメリットがこれでしょう。少子化によって日本の若い労働力の価値は年々高まるばかりで、新卒採用は完全に売り手市場になっており、なかなか人手不足を解消することができない企業も出てきています。そのような中で海外からの若い人材は、人手不足の穴を埋めてくれます。

メリット2:外国人労働者の雇用時に利用できる助成金、補助金制度

主に助成金は厚生労働省、補助金は経済省が実施しており、地方自治体によっても助成金の支援や補助金が異なってくることもありますが、雇用保険に加入している事業所であれば申請が可能になります。
また、補助金に比べ助成金の支援においては複数支援制度があり、受けるための条件は設けられていますが、国籍問わず使える助成金がほとんどです。

メリット3:グローバル化への対応が可能

会社が海外への進出を考えているのなら、進出予定地域出身の人材を得ることで、大きく貢献してもらえます。市場調査から社員の渡航、現地の商習慣や習俗のレクチャーなど、多くの役割を期待できます。

メリット4:異なる視点からの発想

日本とは異なる文化が背景にあれば、日本人とはまったく違う発想やアイディアが出てくるでしょう。それは、日本人スタッフにとっても強烈な刺激となりますし、新たなものを生み出すきっかけにもなります。

外国人雇用のデメリット

デメリット1:文化や習慣の違い

異文化を背景にした視点や発想の違いは「両刃の剣」です。メリットになることもあれば、マイナスに作用することもあります。そのため異文化に対する理解と配慮が必要になります。また、日本人同士であれば「言わずもがな」「空気を読む」という調子で意思の疎通が図れるとしても、外国人が相手ではそうはいきません。はっきり正確に伝えなければ、コミュニケーションが成り立たないケースもあり、場合によっては法に触れることもあるため注意が必要です。

デメリット2:外国人労働者を雇入れるための届出、ルールの把握

義務化されている「外国人雇用状況届出書」の提出や、雇入れをするための指針をしっかりと理解し、手続きを進めていく必要があります。特に法律に係る問題でもあるため、外国人の雇入れに精通している行政書士などにも相談し双方が不幸にならないよう、情報収集は必要です。

デメリット3:受け入れや手続きに時間がかかる

日本在住の外国人労働者であっても、採用後すぐに働けるということはなく「ビザの発行」、「在留資格の確認」、「ハローワークへの『外国人雇用状況届出書』の提出」等、様々なハードルが待っています。全ての承認が下り初めて働くことができる状況となるので、今すぐに雇入れを行いたいと考えている企業には向いていません。
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外国人雇用の注意点

外国人労働者を雇用する際に、事業者側が注意すべき点が3つあります。

① 就労が認められている在留資格のチェック
② 国籍、人種に対する差別禁止
③ 在留資格によってできる仕事内容が変わる

上記3つについて詳しく説明します。

① 就労が認められている在留資格のチェック

在留資格にも種類があり、就労が認められているもの、条件付きで就労ができるもの、就労の許可が下りないものがあります。在留資格を持っていないにもかかわらず外国人の雇入れを行った場合、不法就労になるため十分な確認が必要になります。

② 国籍、人種に対する差別禁止

国籍や人種により勤務条件に差が出てはいけません。また国籍や人種により優遇する求人票の表記は禁止されており、同じ業務を日本人も行う場合、勤務条件についても同等の条件にしなければなりません。

③ 在留資格によってできる仕事内容が変わる

在留資格があるからと言って、すべての職種で働けるというわけではなく、仕事によって在留資格は異なります。在留資格について知識がない状況で、外国人の雇入れをした場合、予定していた仕事に就くことができず雇用できないケースや、在留資格に見合わない仕事に就いた場合は不法就労と判断される可能性もあります。事前にしっかりと在留資格についての基礎知識を持つようにしましょう。

外国人雇用の流れ

外国人労働者の雇用を決めた際、どのような流れで受け入れを行い、どのような準備が必要か解説します。

① 就労ビザ取得に関する調査

面接をする際、あるいは内定を出す前に必ず外国人労働者が就労ビザの取得見込みがあるかどうかの確認を行います。この確認が漏れると、外国人労働者に対し内定を出しても就労ビザの取得が確実ではないため、日本で働くことができません。

② 内定後、雇用契約書の作成

就労ビザの申請時に必要になる書類の一つが雇用契約書になります。雇用形態により内容が異なりますが、基本は日本人と同じ雇用契約書で問題ありません。しかし外国人雇用の注意点でも触れていますが、在留資格によって出来る仕事内容が変わります。そのため雇用契約書の「業務内容」についても在留資格に沿った内容でなければなりません。

③ 就労ビザの申請手続き

会社の所在地を管轄する入国管理局に就労ビザの申請を行います。
申請を行う際に注意すべきポイントは2つあります。
・通常1か月~3か月審査に時間がかかる
・審査の結果許可が下りない場合がある
時間をかけても許可が下りない場合は、就労することができないため注意が必要です。

④ 就労ビザ取得後、「外国人雇用状況届出書」を提出

就労ビザ申請の許可が下りた場合、ハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出する義務があります。届出書は雇用者毎に都度雇入れ時、離職時に必要となり、在留資格などの必要情報を記載し提出を行いますが、提出義務を怠る、虚偽申請をすると雇用対策法第28条に反したとみなされ、30万円以下の罰金が科せられます。

手続きの方法は、外国人労働者が雇用保険の被保険者になるか否かによって提出する資料の様式、届出事項、届出先となるハローワーク、提出期限が異なります。

「外国人雇用状況届出書」の手続き方法
「外国人雇用状況届出書」の手続き方法
出典:厚生労働省 外国人雇用のルールに関するパンフレット

⑤ 雇用開始

ビザの取得、ハローワークへの外国人状況届出書の提出を終え、ようやく外国人労働者は雇用を開始することが可能となります。就労ビザ申請の許可が下りるまでの時間や届出書の準備、提出等時間がかかることが懸念されるため、時間に余裕を持ち、外国人労働者の受け入れを行いましょう。

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外国人労働者の採用方法

外国人労働者を採用する際、どこで募集をかけたらいいのか、どのような方法があるのかを解説します。

求人サイトの利用

海外展開をしている求人サービスWantedly やLinkedInなどを利用し、自社の求人情報や採用に関する案内を発信することで、求人に関心を持つ外国人労働者から連絡がくることがあります。また、直接スカウトすることも可能なため効率的です。

派遣会社、人材紹介会社の利用

派遣会社や人材紹介会社の中にも外国人専門の会社があります。自社の求人情報や、採用したい人物像、解決したい課題を伝えることでよりニーズに合った外国人労働者を派遣、紹介してもらうことが可能です。

特に派遣会社は、外国人労働者を雇用する際に発生する様々な手続きの代行を行ってくれる場合もあるため、煩雑な作業に時間を取ることが難しい、外国人雇用に関する知識がなく不安がある際は便利です。

公的機関の利用

日本での就労を希望する外国人留学生、専門的・技術的分野の外国人労働者の就職支援を行う外国人雇用サービスセンターと呼ばれる機関があります。外国人雇用を検討する事業者へ指導や援助も行っており、相談も可能です。またハローワークでも外国人労働者の支援を行っているため利用することが可能です。

まとめ

本記事では外国人雇用に関する注意点やメリット・デメリット、採用方法から雇用の流れについて解説しました。
外国人労働者の受け入れに関しては、人事担当者としてやるべきことが多々ありますし、受け入れ後のケアも必要になり大変そうなイメージがあるかもしれません。しかし企業にとっては「多様性への対応促進」という側面も持っています。今後少子高齢化が進む日本にとって、外国人労働者は人材不足の解消、優秀人材の確保という点において日本の企業を支える重要な存在になるでしょう。

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