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社員の多様性を実現する「ブラインド採用」が注目される背景とメリット

社員の多様性を実現する「ブラインド採用」が注目される背景とメリット

近年、採用過程において、学歴などの個人情報を取り除き、実力に重きを置いて評価する「ブラインド採用」が注目を集めています。効果的に活用できれば、社内の人材の多様性を促進し、より時代に即した会社組織を編成できるでしょう。
今回は、ブラインド採用のメリットや注目される背景、導入するうえでの注意点についてご紹介します。

ブラインド採用を活用すればダイバーシティを促進できる

ブラインド採用とは、採用の選考過程において、名前・性別・年齢・学歴といった個人情報を取り除き、能力や実績だけで採用候補者を評価する手法のことです。ブラインド採用の導入によって、従来の採用担当者が無意識に抱いていた先入観や偏見を排除できるため、より公平な採用が実現できます。

採用担当者は無意識の内に、出身地・学歴・経験している職種といった要素が自分と似ている人間を採用してしまいがちだと言われています。しかし、そうすると社内が画一的な人材であふれることになりますので、思考が硬直化してイノベーションが生まれにくい環境が出来上がってしまうのです。ブラインド採用をうまく活用すれば、採用傾向の偏りを是正でき、ダイバーシティを促進できるでしょう。

ブラインド採用が注目される背景に激変するビジネス環境がある

ブラインド採用が注目される背景には、社員の多様性の確保・ダイバーシティの強化が現代のビジネス環境にマッチしており、企業の価値向上に貢献することが挙げられます。少子高齢化と高度情報化などによって現在のビジネス環境は激変しています。雇用環境も効率性を重視する欧米寄りのジョブ型採用へと変わりつつあり、属性にとらわれずに優秀な人材を獲得する価値が高まっているのです。

多様なバックグラウンドを持つ優秀な社員が増えると、多様化し複雑化していく消費者の嗜好や価値観に合わせた商品サービスをいち早く開発・普及できるため、業績の向上と企業競争力の強化が見込めます。
このように、ダイバーシティに配慮した組織を編成することによって、企業は時代の変化にあわせて柔軟に対応していける組織を構築できるのです。

多様性を認める組織文化は、少子高齢化による採用難やグローバル化による多人種化が進んでいく現代日本社会にマッチし、年々激しさを増していく人材獲得競争で有利に働くでしょう。

韓国とアメリカにおけるブラインド採用導入の具体例

ブラインド採用は既に一部の企業で導入が始まっています。
韓国では、文在寅大統領が就任してから政府機関でブラインド採用が導入され、2017年の10月から本格的に運用が開始されました。具体的には、履歴書から学歴・出身地・写真・家族関係といった項目が削除され、より実力重視の選考となりました。韓国は超学歴主義ともいわれ、名門大学卒業者でなければよい職に就けない実情があります。職務とは関係のない個人情報を排除することで、より純粋に能力だけで候補者を評価していく狙いがあるようです。

アメリカでも一部の企業でブラインド採用が導入されています。ブラインド採用を実施したIBMの子会社は、この手法で採用された従業員が業務成績の上位を占めていると報告しています。また、IT大手のGoogleも、かつての学歴主義を重視した採用手法から学歴不問へと変わっています。ブラインド採用がアメリカの大手企業で注目されている理由としては、学歴主義の是正の他にも、自分と容姿が似ている人間や名前を発音しやすい人間を採用する傾向といった、人種問題を抱えているアメリカ特有の課題が背景にあるようです。

ブラインド採用を導入するうえで注意すべき2つの課題

ブラインド採用は企業によい影響を与えますが、残念ながら負の側面も持ち合わせています。ここでは2つの課題を見てみましょう。

(1)社内の年齢・ジェンダーバランスへの配慮ができない
ブラインド採用を徹底すると、社内における年齢層やジェンダーのバランスが望まない結果となる恐れがあります。評価基準を純粋に実力だけにしてしまうと、性別や年齢といった要素が考慮されないため、逆にアンバランスを促進してしまう可能性があるのです。

(2)スクリーニングの期間が長期化する
名前・出身地・性別・学歴といった要素を履歴書から完全に取り除くためのスクリーニングが長期化します。機械的に取り除くツールも開発されていますが、履歴書のなかに個人を特定できる要素が紛れていることもよくあります。公平な採用を実現するため、厳密に個人情報を削除するチェック過程が重要になります。

以上のような負の側面を解消し、ブラインド採用のメリットを享受していくためにも、導入の際には「どこまでブラインドをするのか」「履歴書にはどのようなことを書かせるのか」といった、制度設計が重要となります。

ブラインド採用を上手に活用して社内に多様性を

ブラインド採用は、上手く活用することで社内に多様性をもたらし、新しいカルチャーを育んでいく契機となりえます。新しいアイデアを生み出し、革新的なビジネスを展開していくためにも、このような組織文化の醸成は必須課題といえるでしょう。ブラインド採用の導入は、多くの可能性を秘めているといえます。

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