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ポテンシャル採用とは?若手人材の潜在的可能性をどう見極める?メリット・デメリットも紹介

ポテンシャル採用とは?若手人材の潜在的可能性をどう見極める?メリット・デメリットも紹介

人材獲得競争が激しくなるなか、新たな採用手法として「ポテンシャル採用」を取り入れる企業が増えています。ポテンシャル採用をうまく活用すれば、将来的に企業の中核を担う人材を獲得できる可能性があります。

本記事では、ポテンシャル採用の概要や従来の採用活動との違い、導入のメリット・デメリット、成功させるためのコツについて解説します。伸びしろが大きい人材を採用し、企業の成長に繋げましょう。

ポテンシャル採用とは?

ポテンシャル採用とは、候補者の潜在能力や将来性を重視した採用手法のことを指します。未経験であっても、該当する職務やポジションを将来的に担えるような可能性を持った人材を対象とします。若手のうちから採用することで、経験を積む中で成長し、その才能が開花したときには大きな戦力となるでしょう。

ポテンシャル採用とは?

ポテンシャル採用は何歳までが対象?

ポテンシャル採用を導入する際によくある疑問が、「ポテンシャル採用は何歳まで?」という対象年齢についてです。ポテンシャル採用には明確な年齢制限はありませんが、将来性を重視することから20代の若手人材を対象にするのが一般的。

もちろん、30代でもポテンシャル採用の対象とすること自体は可能です。しかし、通常は30代ともなると社会人歴がそれなりにあるため、即戦力採用が中心となります。30代のポテンシャル採用をするとしても、これまでの経験で得た知見や経歴をふまえた上での採用となるので、20代の採用よりもハードルは高くなるでしょう。

ポテンシャル採用と新卒・中途採用の比較

ポテンシャル採用は、新卒採用や中途採用とは、ターゲットとなる求職者や採用時期などが異なる採用手法です。ここで新卒採用と中途採用との違いを確認しておきましょう。

新卒採用との違い

新卒採用とポテンシャル採用では、対象者や実施のタイミングが異なります。
新卒採用は、大学・専門学校・高校のいずれかを卒業する学生を対象としています。卒業する学生のみとターゲットが限定されているため、基本的に年1回実施されます。

対して、ポテンシャル採用は、新卒・第二新卒・中途のすべての求職者が対象となります。また、ターゲットとなる求職者には社会人も含まれるため、不定期に実施されます。

中途採用との違い

中途採用とポテンシャル採用では、対象者や実施のタイミング、育成工数が異なります。

中途採用は、実務経験がある人材または、類似経験・業界親和性から即戦力となる人材が対象です。そのため、十分なキャリアがない場合でも、短期的な戦力化が見込める人材が対象となります。即戦力となるスキル・経験があれば年齢も問われません。多くが人材不足に対する補充や増員を目的としているため、不定期に実施されます。

一方で、ポテンシャル採用は、経験の有無にかかわらず、将来的に活躍できる潜在的能力・可能性を持った人材が対象です。入社後に育成することを前提としているため、20~30代の若手人材が対象となります。ポテンシャル採用も不定期ですが、通年で実施されるのが一般的です。

ポテンシャル採用が注目されている背景

ポテンシャル採用が注目されている背景
ポテンシャル採用が注目され始めた背景には、日本が慢性的に抱えている「労働人口の減少」があります。少子高齢化が進み、労働人口が少なくなることで、企業間の人材獲得競争は年々激化しています。そのため、多くの企業は採用の窓口を広げ、多様な採用手法の導入に踏み切ることで、従来の採用活動で取りこぼしていた人材の獲得に動いています。

なかでも、ポテンシャル採用は、即戦力人材になる前の段階でアプローチし、自社で育成することで優秀な人材を確保することができます。従来の採用枠には入らなかった優秀な人材を他社に採用される前に確保することができるのです。

ポテンシャル採用に取り組むメリット

中途採用であれば即戦力人材を確保できるにもかかわらず、企業が積極的にポテンシャル採用に取り組むメリットはどこにあるのでしょうか。

  • 採用における応募者が増える
  • 将来の活躍が期待できる
  • 組織の偏った考え方を見直すきっかけになる
  • 多様性のある組織を構築できる

1つずつ確認していきましょう。

採用における応募者が増える

ポテンシャル枠があることで、採用要件の緩和につながり、応募者を増やすことができます。

今の日本では、未経験者ならまっさらな状態の新卒採用を、即戦力なら中途採用を実施するのが一般的です。しかし、多様性が広がる現代においては、新卒採用の枠にも中途採用の枠にも当てはまらない優秀な人材が多くいます。ポテンシャル採用を導入することで、従来の求人募集には応募できなかった潜在的な人材の確保に繋がるのです。

将来の活躍が期待できる

人材獲得競争が激しくなるなか、成長が期待できる優秀な人材を早い段階で採用・育成していくことで、将来的に企業の成長を支える人材の獲得が可能です。潜在能力を上手く引き出せれば、企業の成長や変革の中核を担う「コア人材」への成長も期待できます。

転職が一般化する現代において、求職者の「伸びしろ」に注目することで、将来性のある人材が確保できるのです。

組織の偏った考え方を見直すきっかけになる

若手人材の提案・考え方・知見は、既存の従業員にとって新鮮なものに感じられるでしょう。とくに、同業出身の経験者が入るよりも、ポテンシャルを秘めた未経験・経験浅の若手人材の加入は既存の従業員の刺激になり、組織の活性化にもつながります。

企業は積極的に若手を採用しないと、ミドル層からシニア層の割合が高くなってしまいます。管理職は平均年齢が上がりがちで、長年の経験から価値観や考え方が偏りがちです。これまでとは異なる基準やルートで採用された若手の入社は、組織の偏った考え方を見直すきっかけとなるでしょう。

多様性のある組織を構築できる

従来の選考基準で採用された人材と、ポテンシャルを買われ採用された人材では、物事の価値観や考え方が違うこともあります。ポテンシャル採用による新しいメンバーが入ることで、多様性のある組織の構築が期待できます。

組織は多様性を失うと、議論が起こらずイノベーションを失い、環境の変化にも対応できなくなることから衰退が進むといわれています。現代の企業には、いかに多様性を活かした組織づくりができるかが問われているのです。

個人の意見が尊重される環境で、異なる年齢やバックグラウンドを持つ従業員がさまざまな視点で意見や情報の共有を行う組織は、現代ビジネスに求められる姿といえるでしょう。

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ポテンシャル採用の課題とデメリット

組織に多くのメリットを生み出すポテンシャル採用にも、下記のような課題・デメリットが存在します。

  • 教育コストがかかる
  • 短期間離職の可能性がある
  • 成長度合い・成長スピードを予測できない

導入時にはマイナス要素も考慮して、導入のタイミングや解決策をよく検討する必要があります。

教育コストがかかる

ポテンシャル採用は、採用後に社内で育成することを前提とした採用手法です。そのため、どうしても即戦力人材を採用するよりも教育コストがかかってきます。

成長するまで金銭的コストはもちろん、時間的コストもかかるため、現場の既存社員の負担になる可能性があります。とくに、完全未経験者はゼロからの教育となるため、新卒と同等程度の教育コストを要するでしょう。

短期間離職の可能性がある

ポテンシャル採用で入社した人材は、短期で離職する傾向があるといわれています。これは、教育期間中は活躍している実感が湧きにくく、同期入社の社員がいないことで孤独感を覚えやすいことが原因と考えられます。また、Z世代の間では転職のハードルが低く、採用のミスマッチがあった場合にも早々に離職される可能性があります。

自社で活躍する前に離職されてしまうと、将来的に見込まれた利益も生まれないので、事業側の損失は大きいものとなります。

成長度合い・成長スピードを予測できない

潜在的な能力を見込まれて採用された人材であっても、人事や現場責任者の計画通りに成長してくれるとは限りません。潜在能力はあっても、いつ才能が開花するかは不透明です。

また、従来の採用手法と同様に、選考時にポテンシャルを見誤って採用しているリスクも否定できません。その場合、たとえ成長してくれたとしても、当初想定していたほどの活躍は見込めないでしょう。

ポテンシャル採用を成功させるために必要な準備

ポテンシャル採用を成功させるために必要な準備
ポテンシャル採用の課題とデメリットをふまえ、採用を成功させるために必要な準備を確認しましょう。

  • ポテンシャル基準を明確にする
  • 給与額の適正化を図る
  • ポテンシャル採用であることを明示する
  • 経営ビジョンとキャリアプランの親和性を重視する
  • 社内教育体制を整備する
  • ワークライフバランスを実現できる環境を整える

失敗を回避するために、1つずつみていきましょう。

ポテンシャル基準を明確にする

ポテンシャル採用では、重視する潜在能力が採用基準となります。そのため、「具体的にどのような能力を重視するのか」「将来どのような活躍を見込んでいるのか」まで含めて明確にすることが重要です。ポテンシャル基準の定義が曖昧だと、採否の判断まで曖昧になり、入社後のミスマッチにつながりかねません。

自社がどのようなポテンシャルを重視するのか、定性的・定量的な指標を用いて客観的に示せるようにしましょう。

給与額の適正化を図る

ポテンシャル採用対象者への給与の適正化は重要です。給与が高すぎると現社員が不満を抱えやすく、低すぎると採用母集団を形成できなくなります。

ポテンシャル採用を行うときには、基本的に前職と同レベルの給与が設定されるケースが多くなっています。しかし、未経験でも、前職の経験が活かせそうな場合は、高めに設定することもあるようです。

ポテンシャル採用であることを明示する

求人を行う際には、ポテンシャル採用であることを求職者に対して明示する必要があります。キャリア採用といった採用候補者像とずれている人材の応募を未然に防止するためです。

ポテンシャル採用である旨が明示されていないと、若手の人材も経験者との競合を回避するために求人に応募しない可能性が高まります。採用広告に「第二新卒可」「未経験OK」などの文言を盛り込むことで、ポテンシャル採用と簡単に伝えられます。

経営ビジョンとキャリアプランの親和性を重視する

求職者は、入社後の仕事や人生に関する計画「キャリアプラン」を持っているものです。求職者のキャリアプランと自社の経営ビジョンがマッチしないと、採用後のミスマッチを生んでしまいます。自社のビジョンと求職者のキャリアプランにズレがあるにもかかわらず、優秀な人材を獲得したいからとズレを隠して採用してしまうと、信頼を損ない、早期離職に繋がります。

自社でのキャリアパスや経営の方針、将来的な待遇・給与などの詳細を伝え、入社前後の働き方のギャップを作らないことが大切です。

社内教育体制を整備する

ポテンシャル採用を行う際は、社内の教育体制の整備も欠かせません。教育体制が整っていないまま採用してしまうと、能力や才能を十分に引き出せず、期待通りの成長が見込めないでしょう。また、明確なキャリアプランを持ち、成長を期待して入社した人材であれば、早期退職につながり、採用コストが無駄になるリスクも考えられます。

ポテンシャル採用では人材の育成・教育が必須であることを十分に理解し、採用する人材が自身の適性や目指すキャリアに合った教育を受けられる環境を整えておきましょう。

ワークライフバランスを実現できる環境を整える

若手を採用するのであれば、多様な働き方が選択できる環境を整える必要があります。働き方改革が進む現代において、若い世代は仕事と私生活のバランスを大切にしています。そのため、「ワークライフバランスが取れない」「ライフステージに応じた働き方ができない」といった企業からは早々に離職してしまいます。

休暇・休業制度や働く場所・時間、福利厚生の見直しを行い、私生活も充実させられる職場づくりを目指しましょう。

求職者のポテンシャルを見極めるにはここを見る!注目すべき4つのポイント

求職者のポテンシャルを見極めるにはここを見る!注目すべき4つのポイント
最後は、潜在的な能力が高い人材を見分けるためのポイントを4つ紹介します。

  • 学習・成長への意欲
  • 目的意識の有無
  • インプット習慣の有無
  • 自社カルチャーとの親和性

ポテンシャル採用を成功させるためには、将来性のある人材を見極め、採用することが必須となります。採用コストを無駄にしないためにも、どのような点を確認すればいいのかみていきましょう。

学習・成長への意欲

ポテンシャル採用の対象となるのは、未経験者や経験が浅い人材です。将来的に活躍できるかは、本人の学習や成長への意欲にかかっています。応募時点で学習や成長に対する意欲が低い場合、入社後に主体的な努力ができないことが想定されます。

具体的には、「応募者が普段どのような学習を何のために行っているのか」「希望している職種の勉強を始めているのか」を確認しましょう。学習に至った経緯まで確認できれば、応募者の熱意がどの程度のものなのか確認できるはずです。

目的意識の有無

優秀な人材は、常に未来を見据え、目的に対して前向きに行動しています。そのため、目的意識についても確認しておきましょう。

新しい業界への転職は、「○○(職種・ポジション)になりたい」「○○を活かしてキャリアアップしたい」というポジティブな理由と、「働けたらどこでもいい」「自分に合う会社がわからない」というネガティブな理由が考えられます。どちらが企業にとって有益な人材かは明白です。具体的には、「入社後のキャリアビジョン」や「新しい業界・職種への転職理由」などを確認しましょう。

目的に向かって行動できるモチベーションとエネルギーがあれば、入社後もモチベーションを保って努力を続けてくれるでしょう。

インプット習慣の有無

優秀な人材は日常的に新しい情報や知識をインプットする習慣があるものです。選考時には、「自社の業界や事業内容、業務への興味・理解を進めているのか」「自身の仕事に関する最新情報やトレンド情報」を確認しましょう。

自社の業界や職種の話題に限らず、ビジネス関連の情報を細かくチェックしている人であれば、普段から多方面にアンテナを張って、情報のキャッチアップに余念がないことがわかります。反対に、入社を希望する企業の選考で、業界や企業について調査していないとなると、本当に自社に興味があるのか怪しいと言わざるを得ません。

自社カルチャーとの親和性

自社のカルチャーとの親和性も要チェックです。成長や情報収集意欲が高く、目的意識もしっかりある優秀な人材であっても、自社とのマッチ度が低ければ、採用しても活躍できる場を作れなかったり早期退職に繋がったりします。

本人の性格や価値観、考え方をヒアリングして、自社で活躍できる人材なのかを見極めましょう。

まとめ

ポテンシャル採用まとめ
本記事では、企業が抱える人材不足を解決する「ポテンシャル採用」について詳しく解説しました。

ポテンシャル採用を活用すれば、従来の採用手法では取りこぼしてしまう優秀な人材の獲得を目指せます。一方で、ポテンシャル採用には課題もあり、社内体制が整っていないと採用にかかったコストが無駄になってしまうリスクもあります。

今回紹介したポテンシャル採用を成功させるための準備や、求職者のポテンシャルを見極めるポイントを参考にして、将来的に組織の中核を担える人材の獲得を目指してみてください。

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