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ロボットとAIの融合が生み出す人材需要

ロボットとAIの融合が生み出す人材需要

日本企業が世界のトップシェアを争っている産業ロボット業界。東洋経済オンラインでは「ファナックの食品ロボ、3年で5倍成長のワケ」という記事を2013年6月の時点で公開しています。
近年では、従来とは異なる業界での需要が高まっているだけでなく、工業分野での成長を目指す途上国での需要も増え続けています。さらに、AIとの融合も摸索されており、この業界でのエンジニアの需要がますます高まりつつあります。

躍進するロボット産業、そしてAI

人の手の代わりにさまざまな作業をこなす産業用ロボット。自動車の生産ラインでアームを器用に動かしながら溶接の火花を散らしたり、精密機器の配線という超微細な作業を正確無比にこなしたり。その活躍ぶりは、すでに多くの方がご存じでしょう。
これらの産業ロボットは、自動車や精密機器の製造というのがよく知られた役どころです。例えば自動車の製造ラインでは、溶接の火花や塗料の微細な粉塵などによる健康被害のおそれがあり、そのためロボットの導入が積極的に進められた分野でもありました。また、精密機器の製造については、人の手ではとても不可能と思われる繊細な作業を安定して行えるロボットは必要不可欠です。そのため、ロボットそのものの機能・性能も大きく進歩しました。現在ではこれらの業界のほか、食品や医薬品、化粧品といった新たな分野にも、その活躍のフィールドが広がってきています。
そして近年、メカトロニクスの極致ともいえる産業ロボットとAI(人工知能)との融合について、盛んに研究開発が行われるようになってきました。ロボット産業はAIとの出会いを経て、新たな地平に向かおうとしているのです。

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グローバルに広がり続ける需要

産業ロボットの需要には、まだかなりの伸びしろが残されています。
そもそもロボットの需要が高まった理由としては、前述したとおり作業者の健康被害への配慮がありました。ですが、それ以外の要因も多々あります。
例えば、単純な作業を延々と繰り返すのは、実はとても難しいことです。気の緩みからミスが増えますし、そうなると生産効率が下がります。それを防ごうとすれば作業者に大きなストレスがかかり、それもまた健康問題に直結してしまいます。
作業の正確さという点でも、人の手には限界があります。ことに溶接や塗装などは、作業そのものに習熟していなくてはならず、人材の教育や技術の継承という問題も発生します。
何よりの問題が人件費です。工業製品の生産は、人件費の安い途上国で行われることが常です。かつての日本がそうでしたし、香港、台湾、インドネシアなど、まさに発展期にある国々が、その時代の「世界の工場」となってきました。そして今、中国がその役割を担っています。そうした国々では、経済成長とともに人件費も高騰し、競争力の維持のために産業ロボットの需要が高まります。
実際、現在のところ、産業ロボットの購入額は中国がトップです。高まりつつある人件費がその背景にあることは、容易に想像できます。そして、この大きなマーケットのうちの7割強のシェアを世界の大手4社が握っており、日本のメーカー2社がその一角を占めています。こうした現象は、今後多くの途上国でも起こることでしょう(中国ロボット市場、外資4強がシェア7割以上を独占―中国紙より)。
国内では新たな分野に、国際的には新たな途上国で、産業ロボットの需要はますます高まっていくことが予想されます。

AIの進歩で高まるエンジニアの価値

産業ロボットの得意分野は、単純作業の繰り返しです。同じ作業を同じ正確さで、ムラなく確実にこなしていく。これはロボットならではの能力でしょう。一定の作業を一定の時間で片付けることができ、疲労することもありません。ですから安定した生産性が得られ、生産計画の精度も確実性も高めることができます。
一方、ロボットだけに任せられない部分もあります。例えば、原料や製品の選別です。仕入れた原料に問題がないか、あるいは出来上がった製品に異常はないかを判別するには、どうしても人の手と目によるチェックが必要です。食品業界などでは、このプロセスは特に重要でしょう。クッキーの焼きムラ、割れや欠けなどはクレームの元ですから取り除かねばなりませんが、そうした作業はロボット任せにはできない部分です。
また、ロボットによる加工工程をメインにしつつも、要所要所での人の目による検品は、ほとんどの生産現場で行われていることです。
ですが、そこにAIが加わることによって、劇的な変化が起こります。人の判断が必要だった部分をAIが代替することで、それまでの「半自動工程」が「完全自動工程」へと進化するのです。
そしてそのときに、大きな役割を果たすのがAIそのものの精度であり、その機能を広げ、能力を高めることのできるAIエンジニアです。

周辺領域への波及効果も発生

非常に幅広いIT分野においても、AIは今、一番ホットな領域だといえるでしょう。産業ロボットがAIを手にしたなら、自分の作業領域に関する認識と判断を自律的に行えるようになります。生産性の向上と人件費の抑制という点で、大きな一歩を踏み出すことができます。
さらに、あらゆるものがつながり制御し合う「IoT」のしくみにAIを組み合わせることで、完全なロボット工場の実現も見えてきます。その流れの中で、AIエンジニアの果たす役割は非常に大きなものになるでしょう。
また一方で、こうした完全自動化を果たすためには、ロボット単体だけではなく、その周辺のハードとソフトの進化も求められます。ことにカメラをはじめとした各種センサーの高精度化、そこから得られた情報の処理能力の向上は不可欠です。
長年にわたって研究が続けられた末、近年になって急速にその存在が注目されているAI。それがロボット技術と融合することで、非常に大きな市場の誕生が見込まれます。そこで必要とされるのは、高度な判断力と学習能力を備えたAIとそれを生み出せるAIエンジニアであり、知恵を持ったロボットたちに敏感な目や耳を与えることのできるエンジニアなのです。

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