ナイトタイムエコノミーは日本で成功するか?~人材における課題から~

ナイトタイムエコノミーは日本で成功するか?~人材における課題から~

「今夜の予定はどうします?20時からミュージカルに行きましょうか。それとも22時頃から美術館に行きますか?お酒を飲みながらアート鑑賞、なんて感じで。えっ帰り道?大丈夫ですよ、金曜は朝まで電車が動いていますから、ちゃんと帰れます」——こんな“夜遊び”の提案、いかがでしょうか?といっても、実はこれ、ロンドンのお話。ナイトタイムエコノミー先進国と呼ばれるロンドンでは夜間の娯楽市場活性化に取り組んだ結果、経済規模は4兆円、72万人の雇用を生んでいます。観光において国際的に大きくリードしているこうした取り組みは、日本でも観光庁をはじめ、各自治体の注目を集めているのです。

夜間の活性化は日本の課題

ナイトタイムエコノミーは、直訳すれば「夜の経済」。20:00〜翌3:00頃の時間の消費活動を喚起し、経済を上向きにしようという動きのことで、世界中の観光都市がこぞって盛り上げ施策を打ち出しています。昼間とはまた違った顔を見せる夜の街を楽しみながら、その国の文化を体感できる施設へ出かける。旅先での開放感も手伝ってつい財布の紐がゆるんでしまうというのは容易に想像できるのではないでしょうか。

官公庁がこのナイトタイムエコノミーに着目したのは、いわゆる「爆買い」ブームが落ち着きを見せたあと、2020年のオリンピック・パラリンピック開催に向けてインバウンド商品の拡大を目指しているためです。2016年は約2,400万人、2017年は約2,900万人弱、2018年も上半期だけで約1,600万人弱と訪日外国人の数は伸び続けています。(日本政府観光局「国籍/月別 訪日外客数 2003年~2018年より)しかし、これまで行われた調査で明らかになっているのは、訪日外国人観光客からの「終電が早い」「夜も開いている文化・芸術の場所がない」という不満。日本人の私たちでさえも、ナイトライフ体験ができる施設といってパッと思い浮かべられるものはそう多くはないでしょう。

観光庁が2016年に行った調査によれば、外国人観光客の消費支出の「娯楽・サービス」を見ると、日本はアメリカの10分の1、フランスの7分の1の支出でしかありません。筆者は10年前にアメリカに住んでおり、その頃は日本よりも夜が早い印象を受けたのですが、今は事情が異なるようです。日本はよく言えば「伸びしろがある」、悪くいえば「国際間競争で大きく遅れをとっている」と言えるのです。

一大ビジネスチャンスである夜遊び市場だが、課題も多い

とはいえ、昨今大きな問題となっている人手不足は、ナイトタイムエコノミーにおいても最大の障壁となります。現に、大手外食チェーンが一部の店舗で24時間営業を中止し、売上の大きな落ち込みが見られなかったことを受けてさらに対象店舗を拡大していくというニュースも話題になりました。現状ですでに人が足りず縮小傾向にある業界において、ナイトタイムエコノミーが難しい問題であることは否めません。

もうひとつ大きいのは、治安への懸念です。深夜に人がたくさん集まれば騒音やごみ問題、犯罪の増加などとは無縁ではいられないでしょう。地域や住民どう話し合い、折り合いをつけていくかというのは避けられない課題と言えるでしょう。これについては、ロンドンの「パープルフラッグ制度」が参考になるかもしれません。これは「夜間も安心して遊べる場所」と政府がお墨付きを与える認定制度で、犯罪率現象や治安改善、泥酔者対策などにおいて基準を満たすことが求められます。認定されたエリアでは、警備ボランティアが見回りを行うところもあるそうです。

ナイトタイムエコノミーでニーズが生まれる業種は?働き方の課題は?

ナイトタイムエコノミーの代表例としてよく挙げられるのは、東京都豊島区の「アフター・ザ・シアター」や新宿区の「新宿ミラノ座跡地再開発」など自治体の取り組み。ほか、ホテルや旅行会社が夜遊びスポットを作ったりもしています。宿泊に飲食、交通、買い物など幅広い波及効果があり、企業にとっては一大ビジネスチャンスであることに間違いはないでしょう。ほか、情報通信や防犯対策といった業種でも新たなニーズが生まれることが考えられます。

また、夜遊びをするには“足”も必要。既存の交通インフラを活用して安価な深夜運行を可能にするか、新しい交通網を企画するか。鉄道を動かすとなれば、深夜に行われていたメンテナンスをどうするのか。官民一体となった取り組みが必要となるでしょう。

人が対応する職種は決してなくなることはない

人材という観点から見れば、人手不足は深刻です。就業時間の分散化や副業としての雇用に期待が集まる一方で、これが長期労働の是正をめざす「働き方改革」の流れと逆行する動きなのではないかという見方もなされています。
しかしながら、日本のおもてなし文化において、人が対応する職種は何とどうしても削減できるものではないと思います。たとえばシニアの活用も一つの方法だと考えます。また、ロイヤルホールディングスが導入した完全キャッシュレスファミリーレストランの実験店舗「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町店」のように、ロボット等省力化システムの導入を検討するのもよい方法でしょう。キャッシュレス化については、売上管理の煩雑さや盗難などの危険性を考えても非常にメリットがあると見られています。

労働人口が減少するにまかせて他国に観光客を奪われていては、さらに経済は縮小するでしょう。必要な場所に人材を配置する、その見極めがナイトタイムエコノミーにおいては求められているのかもしれません。
【月井 絵美】

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