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コンビニが保育園!大手外食・小売 企業の福利厚生充実へ

コンビニが保育園!大手外食・小売 企業の福利厚生充実へ

「コンビニが保育園」といっても、コンビニエンスストアに保育園が併設されるという話ではありません。コンビニエンスストアでのオーナーや従業員向けの保育園ができるのです。

外食・小売企業の保育園が増えていく

セブンーイレブン・ジャパンは、2017年9~10月に、東京都大田区と広島市の2カ所に、加盟店向けの保育園「セブンなないろ保育園」を開設します。加盟店のオーナーや従業員、セブンーイレブンの社員や地域住民が利用できる保育園で、2018年以降、他の地域でも運営していく予定だということです。実は、イオンは2014年からいち早く「イオンゆめみらい保育園」をショッピングモール内に開設し、2017年には15もの保育園を運営していますし、ビッグカメラ、ゼンショーホールディングスなどの企業も始めており、今後は大手外食・小売企業が競うように保育園をつくっていくことが予想されます。

こうした状況を受けて、今後、大手外食・小売企業が、保育士や店舗開発などの職種を積極募集する可能性が高いでしょう。

また、日本マクドナルドでは、週1回2時間からの勤務も可能なパート募集を行っており、ファミリーマートは1日3時間から働ける体制を組んでいます。他の多くの大手外食・小売企業も、短時間勤務や柔軟なシフトが取れる募集を行ったり、模索したりしています。

福利厚生充実・働き方改革がさらに進む

なぜ大手外食・小売企業が、こうして福利厚生を充実させたり、短時間勤務を可能にしたりしているのかといえば、これらの業界で、特にアルバイト・パート従業員の深刻な人材不足が起こっているからです。厚生労働省の労働経済動向調査によれば、産業別のパートタイム労働者の過不足を判断するD.I.(不足-過剰で計算した指標)は、宿泊業・飲食サービス業(62)と卸売業・小売業(44)が大幅な不足超過に陥っています(平成29年5月調査)。その影響で、外食・小売などの労働組合で構成するUAゼンセンでは、2017年春のパート1人あたりの賃上げ率が2.28%と過去最高に達しました。また最近、リクルートジョブズが発表する3大都市圏のアルバイト・パート募集時平均時給が1000円を超えることが増えており、2017年7月は1010円でした。

この人材不足を背景に、短時間なら働きたいと考えている主婦層を新たな労働力として確保するために、各社が保育園の設置や柔軟な勤務体系の整備に力を入れているのです。つまり、パート主婦の奪い合いが始まっているというわけです。

ところで、これらの企業がアルバイト・パート従業員の人材不足に陥っている最も大きな理由は、もちろん人口減少による若者層の労働力不足ですが、同時に、給与の安さ・接客によるストレスの大きさ・仕事内容が多岐にわたること・拘束時間が長いこと・キャリアアップの可能性が少ないことなども理由に挙げられます。平たく言えば、職場・職業としての人気が高くないために、いち早く人材不足が起こっているのです。パート主婦採用はもちろん、パート高齢者採用やパート外国人採用などももっと競争が激しくなるでしょうが、結局は定着率を上げない限り、採用手法だけを進化させても仕方がありません。ここに、業界特有の大きな課題があります。

そのため、私たちは、外食産業や小売産業では、福利厚生の充実や働き方改革などが今後より一層進むのではないかと考えています。たとえば、「時短正社員」が一般的になったり、従業員の「勤務時間制限」が広まったりする可能性がおおいにあります。アルバイト・パート従業員の働きやすさも、さらに改善されていくでしょう。そして、従業員を大切にする企業に人材が集まり、そうでない企業は人材不足でビジネスを拡大できない、もっと悪い場合にはビジネスを続けられないケースが出てくるかもしれないと見ています。いずれにしても、外食産業・小売産業では、人事面でのドラスティックな改革が求められています。

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