ヘッドハンターと転職コンサルタントの違いは?
中途採用において、企業の求人依頼に対し候補人材をスカウトしたりマッチングしたりすることで採用に導くのが人材斡旋業の仕事です。ただ、この人材斡旋業に従事するエージェントは、「ヘッドハンター」、「転職コンサルタント」、「リクルーティングアドバイザー」、「キャリアアドバイザー」など呼ばれ方は多岐にわたり、一体何が違うのか?と思われる企業人事の方も多いのではないでしょうか。
いずれの呼称も法令などで決められた定義はありませんが、今回はヘッドハンティング会社の目線でそれぞれを解説していきたいと思います。
目次
職業紹介事業者の区分は「登録型」と「サーチ型」
今回の話をするにあたり、仲介担当者の呼称が複数出てきますが、それらの総称は「エージェント(代理人・仲介人)」として進めていきます。
さて、エージェントが所属する人材斡旋業者は国の認可を得た「有料職業紹介事業者」と呼ばれます。「人材紹介会社」という呼ばれ方が一般的ですね。人材紹介社は、人材への対応スタイルにおいて「登録型」と「サーチ型」の2つに区分されています。
「登録型」
登録型は、あらかじめ転職希望者の経験やスキル、転職希望条件などを人材紹介会社のデータベースに登録してもらいます。そして求人企業から受け取った求人ニーズにマッチした人材をデータベースから探し出して推薦するものです。既存のデータベースから即座にマッチングできるのでスピードにおいて優位性があります。
「サーチ型」
一方のサーチ型は、企業から受けた求人に対して最適な人材を既存データベース以外から探し、マッチした人材を企業へ紹介するものです。サーチ型では現在転職を希望していない方まで含めて、人材紹介会社のネットワークを駆使して企業が求める人材を探します。そのためヘッドハンティングやスカウトとも呼ばれています。欧米では「エグゼクティブサーチ」と呼ばれ、経営人材や管理職等の中核人材に適した対応と言えます。
この人材への対応の違いが、エージェントの呼称が異なってくる要因のひとつです。
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エージェントの役割は「分業型」と「一気通関型」
もうひとつ人材紹介会社によって対応が異なる点があります。それが「分業型」か「一気通関型」かの違いであり、こちらもエージェントの呼称の違いへ関係していきます。
「分業型」
分業型とは、人材紹介会社のエージェントが企業側と求職者側にそれぞれ分かれて業務を行うスタイルです。双方のエージェントは情報を共有しながら業務を進めていきます。分業にすることで業務を効率化させ、マッチング機会を最大化することが可能となります。また、互いが専業となることで、多数の求人案件や候補者を扱うのが可能になり、規模の大きな人材紹介会社で多くとられているスタイルになっています。
「一気通貫型」
一気通貫型とは、一人のエージェントが企業側と求職者側への対応を一貫して行うスタイルです。双方の情報を直接把握できることでマッチ度高く、手厚いサービスをスピーディーに提供することが可能となります。一人二役となるのでエージェント自身が担当できる案件はさほど多くはなりません。
各エージェントの概要
これまで人材紹介会社の区分とエージェントの役割の違いをお伝えしてきましたが、この区分や役割の兼ね合いでエージェントの呼び方はいくつかに分かれてきます。捉え方としては、転職エージェントとヘッドハンターに分かれて、転職エージェントがキャリアアドバイザーと呼ばれることもあり、キャリアアドバイザーと協業するのがリクルーティングアドバイザーとするのが的確です。それぞれ簡単に紹介していきます。
転職コンサルタント
「登録型」の人材紹介会社のエージェントが、転職コンサルタントまたはコンサルタントと名乗ることが多いようです。後ほど紹介するヘッドハンターとの大きな違いは、企業よりもどちらかというと求職者の転職成功に軸足を置いている点になります。
その為、一人の求職者に対して複数の求人案件を紹介して、そのいずれかの求人企業での内定獲得を目指して伴走していきます。求職者の経歴の棚卸から履歴書や職務経歴書の記載方法までアドバイスしたり、スキルや経験、希望条件に合う企業や職務を提案したりする役目も担います。
キャリアアドバイザー
「登録型」の人材紹介会社が分業制をとっている場合、求職者側を担当する転職コンサルタントを指します。略してCAとも呼ばれますが、求職者のキャリアカウンセリング、求人紹介、書類添削、面接対策など、転職活動中の様々な場面でサポートをしていきます。一気通貫型の転職コンサルタントが求職者と接する時には、「キャリアアドバイザー」と名乗ることもあるようです。
リクルーティングアドバイザー
「登録型」の人材紹介会社で分業制をとっている場合、企業側を担当する営業担当を指します。略してRAとも呼ばれます。求人案件を獲得した後は、企業から求人情報の詳細をヒアリングしたり、求人票を作成し、その情報をCAへ共有したりします。また、求職者に代わって企業との条件交渉を担うこともあります。
ヘッドハンター
「サーチ型」の人材紹介会社で企業、人材両方へコンタクトしたり交渉したりするエージェントが名乗っていることが多いようです。企業の依頼に基づいて、その候補となる人材を求職の有無にかかわらずスカウトしていきます。転職コンサルタントとは異なり、人材よりも企業に軸足を置いていることが多く、人材に対しては複数の求人を提案することは少ないと言われます。求職者の転職支援と大きく異なるのは、転職意向のない人材を口説いて移籍へ導く必要があることです。
ヘッドハンターを名乗るエージェントが増えているわけ
昨今の人材紹介業界における傾向として、にわかにヘッドハンターを名乗るエージェントが増えてきています。その背景にあるのがダイレクトリクルーティングの普及です。
従来のヘッドハンターとは?
上述のヘッドハンターの説明でもありますように、ヘッドハンターは候補人材の求職の有無にかかわらずスカウトするものです。従来のヘッドハンターは、転職意向のない人材をあの手この手で探し出して、こちらから一方的にアプローチしていきます。
データベースに頼らずゼロから候補者を探し出す技術やノウハウがヘッドハンティング会社の強みでもあり、また、全く転職意向のない人材を企業代理人として交渉して移籍へ導いていくという交渉術も必要なスキルです。このスカウトから交渉(口説く)にかけてのプロフェッショナルがヘッドハンターと言えます。
ヘッドハンターを名乗る転職コンサルタント?
さて、ダイレクトリクルーティングが日本でも普及してきました。LinkedInをはじめとするSNSを活用したり、BizreachやRecruit Direct Scoutなどのダイレクトリクルーティングサイトを活用したりして、各登録者に対してスカウトをしていく手法です。
これらのデータベースは登録型の人材紹介会社でも活用が非常に進んでいて、登録者の中には「良い求人があれば」とか「今すぐの転職は考えていないがいずれ」といった転職潜在層も登録しているため、これらのデータベースを活用する転職エージェントもヘッドハンターを名乗るケースが増えているのです。
冒頭でもお伝えしたようにエージェントのそれぞれの呼称を法令や資格などで明確に定義したものはありません。その為に、転職エージェントやキャリアアドバイザーがヘッドハンターを名乗ったとしても問題ではありません。ただ、従来のヘッドハンターとの違いはあるので、特に以下の2つにおいては抑えておいた方が良いのではないかと思います。
他社エージェントとも共有可能な人材か?
従来からのヘッドハンターは、独自のルートで候補となる人材をサーチしてスカウトしている為にその人材も独自であることが多く、他のエージェントと接触していないケースがほとんどです。
一方で、SNSやダイレクトリクルーティングサイトのみを活用しているヘッドハンターは、数千人以上のエージェントと共有されているデータベース内でのスカウトが中心になるので、転職意向の有無に関係なく他社エージェントと競合になり、依頼企業に関してもおのずと競合企業が存在する状況となってきます。競合が存在するということは内定承諾率が下がり、選考途中の辞退率は上がる傾向になるので注意が必要です。
すべての可能性を当たり切ることが出来るのか?
競合過多やニッチなポジションなどの難航案件を抱える企業にとっては、出来るだけ候補人材の対象を広げて、採用成功の可能性を広げたいと思うことでしょう。その点でも、SNSやダイレクトリクルーティングサイトを利用するだけでは、そのデータベース内に存在する候補者からの可能性に限られるので限界があります。
一方で従来からのヘッドハンターは、SNSやダイレクトリクルーティングサイト以外からも最大限に可能性を広げたサーチ活動とスカウトを行いますので、より広い対象からの採用が可能となってきます。当社の場合、下記の様なソースを活用してサーチ活動を行います。
1.コンサルタント・リサーチャーが持つ独自のネットワーク
2.業界紙・専門誌などからの情報
3.勉強会やイベントなどの登壇・参加者情報
4.当該業界内や業界に詳しい人物からの評判
5.SNS・インターネット上などの公開情報
6.特許情報
7.独自システム開発による効率的な人物サーチ
8.各社がリリースしている人事情報
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自社でダイレクトリクルーティングを試みたが満足な結果が得られない…という場合は、従来のヘッドハンターへ依頼をしないと堂々巡りに陥る可能性もあります。
まとめ
今回は、人材エージェントのいくつかの呼称について、人材紹介会社の区分や役割などの背景を含めお伝えしてきました。また、日本においてヘッドハンターを名乗るエージェントが増えている理由や従来のヘッドハンターと何が違うのか?もご紹介してきました。
自社にあったエージェントと出会うのは意外と難しいものですが、人材紹介会社のホームページを見た際に、所属するエージェントがどう呼ばれているか?でその会社のタイプや得意な領域が分かってくるかと思います。