ヘッドハンティングねた

コロナを経て変化したヘッドハンティング事情 ~「面談革命」により大きく下がった3つのハードル~

コロナを経て変化したヘッドハンティング事情 ~「面談革命」により大きく下がった3つのハードル~

人事に携わる方々は口をそろえて、人事業務でコロナの影響を受けたのは「採用」と「研修」だと言いますが、なかでも「採用」活動の様変わりは特筆すべきものがあります。

急速に進んだリモートワークとそれに伴う面談のオンライン化は、ヘッドハンティング活動にも大きな影響を与えました。オンラインの商談や面談が日常と化した現在、対面と並行して今後も続けられていくことでしょう。

今回は、コロナ禍前後のヘッドハンティングニーズの変化と現在のオンライン面接の実施状況を照らし合わせ、オンライン面接がヘッドハンティング活動に与えた影響をご紹介します。

コロナ禍前後のヘッドハンティング問合せ推移

まず、コロナ禍前後でヘッドハンティングのニーズがどのように変化したのかをご紹介します。2020年4月に出された1回目の緊急事態宣言を受け、先の見通しが立たずに採用活動を停止した企業が急増した為に、2020年以降のヘッドハンティングの問合せ数の平均を1としたとき、2020年4月、5月は0.44まで激減しました。

当時を振り返ると「感染する恐れから、面接という接触を伴う採用活動を一時見送る判断をした」という人事担当者が多かったように思います。

■参照:コロナ禍前後のヘッドハンティングの問合せ数推移
※数値は2020年以降の問合せ数平均を1とした場合の指数(2021年11月時点)
コロナ禍前後のヘッドハンティングの問合せ数推移

ただ、緊急事態宣言が明けた後、経済活動の再開とともにZOOMやGoogle-Meet、Microsoft-Teamsなどのオンライン面談(会議)ツールが一気に普及したことにより、採用活動も再開されヘッドハンティングのニーズも徐々に回復していきます。

2021年の中盤に差し掛かると人材ニーズはIT系やサービス系を中心にさらに増加してきました。ヘッドハンティング活動もこの2020年4月までと1回目の緊急事態宣言が明けた2020年6月以降で大きく変化したように思います。

オンライン面接実施の現状

コロナ禍で「せざるを得なかった」オンライン面接は、コロナ後には「一般的な採用選考フロー」の位置づけになりました。

Type(株式会社キャリアデザインセンター)が2023年11月に実施した【中途採用活動状況アンケート調査結果】によると、8割以上の企業がオンライン面接を継続して実施しているという結果が報告されています。また、満足度も高く、今後オンライン面接が衰退していくことは考えにくいでしょう。

オンライン面接の実施状況を表した円グラフ
参照:㈱キャリアデザインセンター【2023年11月】中途採用活動状況アンケート調査結果
https://topics.type.jp/mid-career-recruitment/recruitment-survey-202311

コロナ禍以降、ヘッドハンティングの問合せは増加傾向であったものの、オンライン面接の一般化の影響から採用の進め方はまるで異なるものでした。次章では、コロナを経てヘッドハンティング活動にどのような影響があったのかを紐解きます。コロナ前後で異なる3つの変化を見ていきましょう。

【1つ目の変化】候補者の心理的ハードルが下がった

ヘッドハンティング活動の過程では、序盤に候補者へアプローチをします。メールや電話などで突然、ヘッドハンティング会社を名乗るエージェントから連絡があるわけです。その際、ヘッドハンティングされた大体の人は2つことが頭をよぎります。

「なぜ私に声がかかったのか?情報源は?競合のある会社ってどこ?」というようなヘッドハンティングの経緯に関する疑問。そしてもうひとつは、「何かあやしいなあ、このヘッドハンティング会社って本物?詐欺とか罠じゃないよね?」というような懐疑心。

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※候補者心理については、こちらのコラムをご覧下さい

ヘッドハンティングを受けた方の「心の動き」とは?

我々ヘッドハンティング会社では、依頼人であるクライアントの情報は極力伏せながら、ヘッドハンターは候補者との面談の場を設定するために誘導していくわけですが、上記の理由で候補者とヘッドハンターとの面談を設定するハードルはなかなか高いものがあります。

ただ、リモートワークの普及とともに通常化したオンライン面談はそのハードルを随分と下げてくれました。「直接、お会いするのは不安だがまずオンラインで話を聞くくらいなら・・」という感覚です。実際にコロナ禍の影響を受ける前後を比較すると、候補者へアプローチをしてからヘッドハンターとの面談に至る率は上がっています。クライアントからすると、優秀な人材と接する可能性が高まったと言えるでしょう。

【2つ目の変化】制限のあった面談実施数のハードルが下がった

「ヘッドハンターの仕事の半分は候補者と会うこと」と言ってもよいほど、全国津々浦々の候補者と日々面談を重ねているのがヘッドハンターです。正しくは“でした”ですね。

コロナ禍以前は非常に出張が多く、その為にヘッドハンター達がオフィスにいることは稀な状態だったものです。ヘッドハンティングのプロジェクト期間はおおよそ4~6か月間と決まっており、その期間中に候補者に会い尽くして本命人材を探し出しオファー承諾まで進めなくてはなりません。

ヘッドハンターにとってプロジェクト期間の約半年間はあっという間という感覚です。1日1日が非常に大切になるのですが、コロナ禍以前は出張につき移動時間が非常に多く、必然的に1日当たりの面談数は限られていました。例えば早朝の飛行機で東京から広島へ飛び、本日の1件目の面談を実施、新幹線で大阪へ移動して2件目、最後は名古屋で面談して東京へ戻る。といった日本列島の半分を横断するような動きもしばしばでした。

これがオンライン面談の導入で大変革が起きました。移動が発生しない分、スケジュール調整がうまくいけば1時間間隔で面談を組んでいけますから、北海道から沖縄まで全国に点在する候補者と多い日では8名との面談を実施するということも可能になります。
コロナ前後におけるヘッドハンターの1日の活動範囲の比較図
これは期間に限りがあるプロジェクト活動においては非常にアドバンテージになります。短い間に多くの方と会えることによりプロジェクトの短期成約に繋がることもあれば、短期での成約は叶わずとも、より多くの候補者と会えることでプロジェクト品質の向上につながることも。それから、出張費の軽減によるプロジェクト自体の費用削減にもつながりました。

【3つ目の変化】企業面談者の配役のハードルが下がった

ヘッドハンティングの候補者は非転職活動者が大半となるため、求職者との面接時と同じ既定の採用プロセスでは決まりにくいという特徴があります。例えば、1次面接は人事担当や責任者が行い、2次面接は現場責任者、そして最終面接で役員が登場するといった「ルールに則った面接官と順序」ではなく、「候補者一人一人に応じた役者の選出」が重要になってきます。

候補者が経営者から直接に会社のビジョンを聞きたい場合は1次面接から社長に登場してもらうこともあれば、現場の方から実務内容が聞きたいという場合は最終面接でも現場の方をアサインすることも。候補者の意思だけではなく、ヘッドハンターが察知する候補者の人柄や心理状態から企業の配役を提案するのも、ヘッドハンターの重要な役割なのです。口説くために必要な取り組みは細部にわたり徹底して行います。

面談で口説くためのキャスティングをする図
コロナ禍前は企業と候補者との面談はほぼ対面で行われていた為、例えば候補者が遠方から来社して面談をする場合、社長とのスケジュールがなかなか合わない…といったケースが多くありました。一方、オンライン面談の場合は、候補者は居住地で社長も出張先のホテルやサテライトオフィスなどで開催するといった調整幅が大きく広がりました。その為に候補者と面談する対応者の配役が非常に柔軟になったと思います。

主流はハイブリッド型の面談へ

オンラインでの面談がヘッドハンティングでも主流になってきましたが、幸いにもこれによる候補者理解の低下やグリップが弱くなるということは発生していません。面談の回数も場合によっては以前より多く設定できることもあり、互いを理解するという時間の共有は増えているのかもしれません。

もちろん、ケースバイケースでこれまで通りに対面で面談することや会社や工場見学をするなども実際には行われています。つまり、対面でコミュニケーションをする重要性を忘れたわけではなく、「対面でなければならない重要な局面」と「オンラインによる迅速性が求められる局面」を使い分けるハイブリッド型の進め方が主流になりつつあるのです。

通常の採用と同じく、ヘッドハンティング活動においても大きな影響を及ぼしたコロナ禍でしたが、副次的な効果として「面談革命」と言ってよいほど、候補者と企業のハードルを下げました。私たちとしては、今後もオンラインと対面をうまく併用しながら、より精度の高いマッチングを行っていきたいと思っています。

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