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『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』 誰にでも平等な24時間を使い切る方法

『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』 誰にでも平等な24時間を使い切る方法

片付けても片付けても、仕事が終わらない。そんな悩みを持つビジネスパーソンは多いはずです。しかし、その原因はあなたの能力ではなく、時間の使い方のせいかもしれません。今回は、中島聡著「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である」(文響社/2016年6月3日発売)を取り上げます。「時間が足りない」とお嘆きの方、必読です。

早熟の天才が生んだ「ロケットスタート時間術」

著者はPC時代が生んだ、早熟の天才といえます。コンピューターとの出会いは高校時代、親に買ってもらったコンピューターキットが最初だったといいます。すぐにその魅力に取りつかれた著者は、公開されていたプログラムを打ち込むだけでは飽きたらず、ほどなく独学でプログラミングを習得します。そして、自作のプログラムが専門誌に掲載されたのをきっかけに、当時業界の中心的存在だったPC総合出版社「アスキー出版」にアルバイトとして出入りするようになります。
高校生活のかたわら、アスキーに月140時間も出社し、ひたすらプログラミングに没頭する高校生。これが当時の著者の姿でした。そのころからすでに、本書で紹介しているような効率的な時間の使い方を習得していたようです。
その後、マイクロソフト日本法人を経て本社勤務となり、そうそうたるメンバーとともにWindows 95、98、さらにはInternet Explorerのソフトウェア・アーキテクトを務めるまでになりました。
世界中から天才が集まるマイクロソフト社で、斬新なグランドデザインを持つWindows 95を生み出した著者。その背景には、スタートダッシュのパワーを最大限に活かす「ロケットスタート時間術」がありました。

最初の2割の時間で8割の仕事を片付けろ

著者の言う「ロケットスタート時間術」では、初速を重要視します。まるでカーレースのように、スタートダッシュをいかに素早くするかということに重きが置かれるのです。少々粗があっても構わない、とにかくスピードが命。これは、マイクロソフト時代の著者の経験が大きく影響しているようです。
その詳しい内容と興味深いエピソードは本書をお読みいただければと思いますが、ここで著者が繰り返し強調しているのが「仕事は前倒しで進めていけ」ということです。
例えば、10日間で仕上げなくてはならない仕事が入ってきた場合、あなたならどのようなスケジュールで片付けていきますか?著者は「最初の2日間で8割を片付けろ」と力説します。まさにロケットスタートですが、それほどスピードにこだわるには理由があります。
私たちはスケジュールに余裕があると、つい作業を先延ばしにしてしまいがちです。ですが、締切日にフィニッシュするような段取りを組んでいては、少しでも作業が延びてしまったら間に合わなくなる危険がありますし、途中で何らかのトラブルが起こったときに対応できません。逆に時間的に余裕があれば、出来上がった仕事の内容を精査して、不具合をチェックすることもできます。
これは、必ずしもプログラマーという著者の職種ならではのことではなく、あらゆる仕事に共通していえることでもあります。

仕事を切り分け、朝の時間を存分に活用する

ですが現実には、私たちが抱えている仕事はひとつだけではありません。一日のうちに片付けなくてはならない仕事はいくつもありますし、数週間、数ヵ月という長期にわたって進めていく仕事もあります。そして、それらの仕事をいくつも掛け持ちし、その上で短期的な仕事をこなしたりもしています。そんな状況で、すべての仕事をロケットスタートで片付けていくというのは、まず不可能でしょう。
そこで著者は「仕事を分割すること」を提案しています。
長期にわたる作業であれば、それをまず3つ程度に切り分ける。さらにそれぞれを、いくつかに切り分ける。数ヵ月という大きな単位から、数日間という小さな単位に落とし込んでいくのです。ここまでくれば「今日はこれをして、明日の夕方までにはこれを終わらせよう」という、よりリアルなスケジューリングが可能になります。
また、限られた24時間を効率良く活用するため、著者は早起きをすすめています。
世間が動き出すまえの朝4時から5時は、デスクワークをするには絶好の時間帯といえるでしょう。電話も鳴らなければメールも来ません。話し掛ける人もおらず、頭はクリアに冴えわたっています。何者にも邪魔をされない状況が、簡単に手に入るのです。こんな環境ならば集中力は嫌でも高まりますし、その分、仕事の効率も飛躍的に高められます。著者はこれを、あるマンガに登場する必殺技「20倍界王拳」になぞらえていますが、まさにそれほどの効果が期待できます。使わない手はありません。
徹底的に時間を管理して使い倒す。そこには執念にも似た、著者の強い意識を感じずにはおれません。

好きだからこそ、その仕事に没頭できる

一日の時間、特に「起き抜けの時間」を有効活用するという点では、以前、当サイトで紹介した書籍「思考の整理学 」(ちくま文庫)でも、同様のアイデアが語られていました。作業効率を追求し、時間の使い方を突き詰めようとすると、同じような方法に行き着くのかもしれません。
世の中には、こうした時間活用術に関する情報が、多数存在しています。本書のような書籍は言うに及ばず。時間効率を語るウェブページは星の数ほどありますし、コンサルタントによるセミナーや塾なども数多くあります。このような情報から得た知恵を使って、人々はこれまで以上に作業の効率化を目指します。
これは本書でも語られていることですが、そこまでして仕事に向き合うのは、前提として「この仕事が好きだから」という大きな理由があります。だからこそ人は、1日十数時間も仕事に向き合い、さらに効率を高めて、より多くの仕事をこなそうとするのです。
「好きなこと」や「やりたいこと」を、「職業」と一致させるのは簡単なことではありません。一致していれば、無理なスケジュールや注文にも積極的に取り組むことができ、乗り越えたときの達成感を味わうことができます。
喜びとともに仕事ができるのは、一部の人だけかもしれません。ですが、現在の仕事の中で、自分のやりたいことや興味をそそられることを見つけ出すことができれば、より前向きに仕事をしていくことができるのです。
そのときこそ、この「ロケットスタート時間術」が本領を発揮してくれるはずです。

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