ヘッドハンターお薦め本

人はどんなとき、働きがいを感じるのか?『「働きがい」の伝え方』

人はどんなとき、働きがいを感じるのか?『「働きがい」の伝え方』

あなたは「働きがい」について考えることがありますか? 忙しい毎日を過ごすなかで、ともすれば見過ごされがちな働く喜びや意義。人事や経営に携わる方であれば、メンバーに働きがいを感じてもらうにはどうしたら良いのか、頭を悩ませているかもしれません。組織のなかでイキイキと働くにはどうしたらいいのか、そのヒントがたくさん詰まった1冊が『「働きがい」の伝え方』(海野忍/クロスメディアパブリッシング/2017年12月21日発売)です。

海野氏は1975年に日本電信電話公社(現NTT)に入社以降、NTTデータ、NTTコミュニケーションズ代表取締役副社長、NTTコムウェア代表取締役社長を経て現在、相談役を務めておられます。日本を代表する大企業のトップが、40年間かけて研ぎ澄ませた「働きがい」とは、どのようなものでしょうか。

赤字部署が黒字に。メンバーに愛された社内ブログ

『「働きがい」の伝え方』は、海野氏がある赤字の事業部に本部長として配属された際、皆を元気づけたいと思って週に1回、社内ブログに書き続けた内容がまとめられた本です。ビジネスの性質上、黒字化しにくいその事業部の仕事そのものにメスを入れつつも、海野氏は働きがいを伝え続けました。結果的に4年で黒字化するという、素晴らしい成果につながったといいます。

テーマは多岐にわたり、働く上での心構えやコミュニケーションといった日々の仕事に関するものから、効率化や数字などビジネスの本質と実践、マネジメントやマーケティングなど合わせて114本。”やらされ仕事”を”やる仕事”に変えていく方法、仕事が辛いと思ったときの考え方、自分の市場価値……およそ仕事において抱えがちな悩みが相当数、網羅されているのです。パラパラとめくっているうちに、自分でも気づいていなかった仕事の課題が見えてくる人も多いでしょう。

「わかっているけど上手く言えない」は、実はとてもシンプル

本書のサブタイトルは「わかってはいるけど、上手く言えない大切なこと。」です。上司や先輩という立場にある人であれば、どうやったら部下や後輩が働きがいを感じてくれるのか、常に頭を悩ませていることでしょう。それなのになぜか、うまく伝えられない。海野氏はそういうとき、「自分が上司の言うことを理解できないことがなかったか思い出してみるのがいい」と述べています。自分がヒラ社員だった頃に嫌だと思ったことを今の部下にはしない、嬉しかったことをやってあげる。その行動そのものが、働きがいを伝えることだと言うのです。

若手に向けてイキイキと働く方法を伝える内容でありながら、「伝え方」というタイトルを冠した本書。何をどうすると嬉しいのか、逆に嫌な気持ちになるのか。どういう説明をすれば納得してもらえるのか。さまざまな事例から、伝え方を学ぶことができます。

たとえば、部下が苦手な仕事を依頼するときのことを考えてみましょう。海野氏ははっきりと「上司の役目は、『やらせること』ではなく、『やりたくなるメカニズムをつくり出すこと』と書いています。部下が「これをやったら得だな」と思えるような仕組みをつくり、自主的にやりたくなるようにしてあげる。それでこそ上司だというのですね。

一方、同じページには「部下が上司にしてもらいたいことがあるとき、どうやってお願いするか」というテクニックも書かれています。曰く、上司が「これをすると自分が得をするな」と思える仕組みを作ってお願いすればいい、ということになります。

上司も部下も、いかに楽しく充実した仕事をするか

上司であっても部下であっても、相手のことを考えることはそれだけ深く相手にコミットするということです。それは自分の働きがいにもつながるでしょうし、コミットされた相手としても嬉しく感じることになるでしょう。上司がただ部下に働きがいを教えるだけでなく、お互いに伝え合う循環ができるのであれば、組織のなかで働く価値もあろうというものです。

働きがいをただ自分で考えるだけでなく「伝え方」に主眼を置いた本書。上司から部下まで読む対象を選ばない内容からは、社内ブログを書き続け、組織全体を見守った海野氏の優しいまなざしが感じられます。あとがきによれば、海野氏がNTTデータ、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアと所属が変わっても若手を中心に編集チームが結成され『本部長語録』『本部長ノート』『うみノート』と名前を変えて12年もの間、愛されてきたのだとか。このエピソードそのものが、働きがいを”伝えられた”人がいかに多かったかを物語るようです。

さて、海野氏は何を働きがいと考え、どう伝えてきたのでしょうか? 働きがいとは何かわからなくなってしまった人も、働きがいの伝え方に迷っている人も、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

こちらも併せてご参照ください

海野 忍氏-「働きがい」は自分6割、上司4割。大きな組織で皆がイキイキと働く秘訣は何か

こんな記事も読まれています