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『世界のエリートがやっている 最高の休息法』働き方ではなく、休み方の指南書

『世界のエリートがやっている 最高の休息法』働き方ではなく、休み方の指南書

今回ご紹介するのは久賀谷亮著「世界のエリートがやっている 最高の休息法」(ダイヤモンド社/2016年7月29日発売)です。発売からすでに十数万部を売り上げているという話題の本です。タイトルに掲げた「最高の休息」とは、果たしてどのようなものなのでしょうか?

脳科学と瞑想の結婚による休息法

著者である久賀谷氏は、ロサンゼルスで開業している精神科医です。プロフィールを見ると、日本で精神薬理を研究したのちにアメリカに渡り、イェール大学で先端脳科学を研究し、8年間臨床医として勤めたとあります。脳のしくみや働きを解き明かす脳科学をバックボーンに持ちつつ、心の問題を解決する精神医療の現場で診療にあたっていた、というわけです。
こうした経歴を持つ著者が提唱し、解説しているのが「マインドフルネス」です。
この言葉をすでにご存じの方もおられるかもしれません。アメリカでは爆発的な流行を見せているそうですが、日本でもここ数年でその名前が知られるようになり、「Googleが採用している」などと、ネットで取り上げられることもしばしばあるようです。テレビで紹介されたり、関連書籍が次々と発行されたりしていますから、これからますます一般に広がっていくでしょう。
ですがこうした広がりとは裏腹に、マインドフルネスはその概念をつかむことが簡単ではありません。著者の表現を借りれば、それは「瞑想などを通じた脳の休息法の総称」ということになりますが、「これだけでは何だかよくわからない」というのが多くの方々の本音でしょう。
いったい、マインドフルネスとは何なのでしょう?睡眠やリラックスと何が違うのでしょうか?

物語とともに脳の疲れが癒されていく

本書はその多くの部分が、架空のストーリー仕立てで展開しています。
ヒロインの名はナツ。京都出身の彼女は、日本の大学院で博士課程を修了したあとアメリカに飛び、イェール大学で脳科学研究に携わることになりました。ところがそこは、日本以上に激しい競争の場。ナツは挫折を味わい、大きな精神的ショックを受けます。人の倍の労力と時間を掛け、がんばり続けてきたのに…。
傷心の彼女は、大学から少し離れたベーグル店「モーメント」に向かいます。そこはナツの伯父が経営する店でした。
若き日の伯父は夢を求めてアメリカに渡り、ビジネスを展開したのですが、その結果は悲惨なものでした。一時は繁盛していた店は、ある時期から売上が激減。スタッフたちは皆、それぞれに個性的ながらも問題を抱えていて、職場の士気は下がるばかり。店には疲れ切った空気が漂っていました。ナツはその店で働き始めますが、やがて「マインドフルネスでこの店とスタッフを救えるのではないか?」と考えます。そして、かつては脳科学の最先端で活躍し、今はマインドフルネスの研究に没頭している脳科学者「ヨーダ」の指導を受けることになります。
マインドフルネスという最高の休息法で疲れ切った人の脳を癒し、人も職場も活気あふれるものに変えていくために…。

確固としたエビデンスと実践的な構成

本文の多くをストーリー仕立てにしたのは、本書の大きな特徴です。好みは分かれるかもしれませんが、理解が難しいマインドフルネスの概念を飲み込むには良い方法でしょう。登場人物それぞれの個性と行動や、過去からつながる問題を解決していくプロセスなど、著者が臨床の中で得てきたであろう知見が丁寧に描かれており、読み応えのあるものになっています。また、ストーリー内に登場する論説や仮説、研究結果については、そのエビデンスが巻末にまとめられています。このあたり、臨床医であり科学者である著者の「作法」なのでしょう。
難しい理屈は抜きにして「今すぐマインドフルネスを実践したい!」という方のために、巻頭に「脳の疲労を解消する7つの休息法」というセクションを設けています。ここに挙げられている休息法は本文で紹介されているもので、このセクションを見ただけでは、何が何だかわからないかもしれません。ですが、本文を読んだあとでこのセクションに戻り実践してみれば、より高い効果が得られるでしょう。
さらに、巻末には特別付録として「5日間シンプル休息法」が掲載されています。これは文字どおり、5日間にわたって脳を休ませるプログラムです。何かとせわしない年末年始は別として、ゴールデンウィークや夏休みなど、まとまった休みが取れる時期に、ぜひ実践したい内容になっています。

「高効率の休息法」がここにある

私たちは何かにつけて、常に効率を追求しています。少ないコストと労力で、最大の結果を得たいと考えます。それ自体は決して悪いことではありません。最小の投資で最大の利益を得ようと考えるのは、ビジネスにおいて当然のことでしょう。
ですが、「休息」についてはどうでしょうか。そもそも私たちは、休息に対してどれだけ効率化を果たしてきたのでしょうか?
休息の取り方は、人それぞれにまちまちです。何もせず、ひたすら部屋でゴロゴロする。本を読む。映画を見る。一日中、ベッドの中で過ごす。スポーツで汗を流す。スパやエステに出掛ける。数日間の休暇が取れたなら、バッグに着替えを詰めて旅に出る。あるいは、飛び切り豪華なリゾートで過ごす…。
果たしてこうした過ごし方が、本当に「効率的な休息」といえるのでしょうか?
体だけでなく脳を休ませ、疲れを癒す。それを実現できるのが、本書で語られているマインドフルネスです。最新の脳科学に裏打ちされ、精神医療の現場にも導入されている最高の休息法。その内容は、とてもここではご紹介しきれません。本書を読んだあなた自身が実践し、その効果を確かめてください。

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