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高橋みなみ『リーダー論』 人とつながり、人を導くためには?

高橋みなみ『リーダー論』 人とつながり、人を導くためには?

AKB48を卒業した高橋みなみの著書「リーダー論」(講談社AKB48新書/2015年12月22日発売)。AKBには第1期から参加し、その後「AKB48 チームA」のキャプテン、さらに2012年からは300人以上のメンバーをまとめるグループ総監督というポジションを務めた著者が、その経験を踏まえて、人とつながり、導くノウハウを披露しています。

「タレント本」と侮れない内容

「講談社AKB48新書」の2作目(1作目は指原莉乃「逆転力 ~ピンチを待て~」)が本書です。2015年12月に発行されてから順調に増刷を重ね、3ヵ月後には7刷。帯には「11万部突破!」という文字が躍っているところを見ると、今もなお売れ続けているのでしょう。
とはいえ、そこはあのAKB48。そもそも「AKB新書」という名称からして戦略的なニオイがするし、「電子版には限定写真付き」というのがいかにもタレント本だし…。そんな色眼鏡で見られてしまうのは仕方ないところかもしれません。AKBあるいは著者のファンは別として、一般の人々にとっては「ありがちなタレント本」という第一印象しか持てないでしょう。
確かに、これまで世間に氾濫してきたタレント本には、そのネームバリューを販売力に転化しただけ…というものも見受けられます。本人の名前で出版されていても、実際にはそのほとんどがゴーストライターの手によるもので、出版されるまで本人はその内容を読んでもいないというケースも過去にはあったといいます。
ですが、本書はそうした「薄い本」とは一線を画した内容に仕上がっているのです。ページをめくっていくうちに、それまでの色眼鏡がいつのまにか転げ落ち、綴られた文章のあちこちに大きくうなずくことになります。
本書をこの欄で取り上げる理由も、まさにそこにあるのです。

コミュニケーションは「知る」「理解する」から始まる

本書は「リーダー論」というタイトルを冠してはいますが、「コミュニケーション論」というタイトルのほうが、よりふさわしい内容です。個人やグループをいかに導くかというリーディング技術とその理論よりも、「他者との関係をどのように結び、育て、活用していくのか」という部分に、かなりの紙幅が割かれています。
つまり、コミュニケーション技術の教科書なのです。
そもそもリーダーとして組織の上に立ち、そのグループを率いていくためには、メンバー同士はもちろん、メンバーとリーダーのあいだに絶大な信頼がなくてはなりません。このトップなら、このリーダーの言うことならば信じてついていける。そうした強固な信頼関係を構築していなければ、人は簡単について来ません。
世間には「社員がなかなか動かない」と嘆くリーダーも少なくないようですが、その理由は信頼関係の不足によるものだと気付いている人は極めて少数でしょう。逆に、そこに気付いているリーダーたちは、自分の考えを語るより先に、まずメンバー全員の信頼を得ようと動きます。そうすることが、「人を動かす」ことの前提条件であることを知っているからです。
そして、信頼関係を結ぶ第一歩は「相手を知る」ことであり、さらに一歩進んで「理解する」ことだということを、著者は本書の中で語っています。

自分を伝える技術も必要になる

コミュニケーションを円滑にし、お互いの信頼感を高めるためには、「相手を知り理解する」ことと同様に、「自分を知らせ理解してもらう」ことも必要となります。
自分はどういう人間なのか。どんな理想を持ち、どこへ向かって進もうとしているのか。こうしたことが明確でないと、周囲からは「とらえどころのない人」という見られ方をしてしまいます。これではなかなか踏み込んだ交流はできません。
ましてやリーダーであれば、目指す方向をはっきりと示すことが必須です。そうでなければ、ついていくメンバーたちには不安が芽生え、思い切った動きがしにくくなります。これでは、組織としての総合力を十分に発揮することができません。
そこで、著者が提案しているのが「スピーチ術」です。さまざまな「語りのテクニック」を使い分けることで、自分の考えをはっきりと伝え、同時に相手の心をつかむことを著者はすすめています。これは、日常の多くの場面…会議での発言や部下への指導、上司を説得するときなどに活用できるでしょう。著者自身がAKB48での10年の活動の中で身に付けたものであるだけに、とても実践的なテクニックといえます。

「ハウツー」の裏側にひそむ強靱な哲学

考えてみれば、私たちの生活の多くは、他者とのコミュニケーションで成り立っています。それはビジネスの分野でも変わりません。営業マンにとっては「顧客とどのように良い関係を構築するか」は大きな課題ですし、管理職にとっては「部下の状態を把握して、その特性に合わせて管理指導する」という能力は不可欠です。これらの課題をクリアするための能力を身に付けるには、本書は格好の教科書といえるでしょう。
ですが、こうしたノウハウ以上に本書が訴えるメッセージがあります。それは、ところどころで語られている「一人ひとりが集まって『みんな』になる」ということです。
人は誰もが自分自身のドラマを生きており、その中で夢を見て、動いている。そうした「一人ひとり」がつながり合うことで、大きな力が生まれる。だからリーダーは一人ひとりを個々に理解し、つながっていなくてはいけない。では、どうやって?
ここから先は、本書をお読みいただくことにしましょう。ありがちな「タレント本」や「ハウツー本」にはない、実体験に裏打ちされた強靱な哲学を、そこに感じ取ることができます。
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