人事ねた

現在の「働く」が、10年後になくなる?

現在の「働く」が、10年後になくなる?

リクルートワークス研究所が公開した「2025年 働くを再発明する時代がやってくる」という研究レポート。これは、2015年のデータをベースに、「マイクロシミュレーション」という手法でデータをシミュレートしたものになります。まずは、研究レポートの概略をご紹介しましょう。

「働く」を再発明する必要に迫られる

リクルートワークス研究所は、労働市場や組織としての企業、人事や個人のキャリアなど、働くことに関連したさまざまな研究・調査を行っていますが、本レポートは、2015年から10年後の労働市場の状況を予測し、その概略をまとめたものです。

レポート冒頭で結論的に強調されているのは、「今までどおりの働き方は、2015年の労働市場にはない」ということです。「通用しない」のではなく「ない」のです。これは競争に乗り遅れるとか、効率化が進まないといったことではありません。現在の労働の姿は、「存在しない」「存在できない」となれば、10年後にはそのときの状況に合った「働く」を発明し、導入する必要に迫られる…。

冒頭からかなりショッキングなレポートで、内容も決して愉快なものではありません。それでも、緻密なデータを基に、ある程度の幅を持たせつつも組み立てた未来予測には、理論的な信頼感があります。「それは大げさすぎるだろう」と鼻先であしらえるほど、軽いものではありません。

現在の日本は、まさにタイトロープ

これからの10年、労働市場での人の動きは、その規模が大きく変化します。まずは少子化の影響から、新規就業者数はガクッと落ち込みます。それとともに年間の転職者が減り、定年を迎えて引退していく人数は増えていきます。これだけであれば、さして目新しくない将来像に思えます。「まぁ、人は少なくなるけれども、今とたいして変わりはしないさ」とも感じるでしょう。

テクノロジーが加速度的に進化している現代では、10年というスパンは決して短いものではありませんが、それほど大きな変革が起こる時間にも思えません。果たして、このレポートの冒頭で述べているような、働き方を再発明しなくてはならないほどの大きな変化は起こりうるのでしょうか?

実は少子高齢化が進む日本の労働市場は、極めて危ういバランスの上に成り立っているのです。デフレ傾向から脱しきれない現状では、少々無理をしてでも、個人は安い賃金で働き続けることを受け入れなくてはなりません。とはいえ、一人のパフォーマンスには限界がありますから、多くの作業をこなそうとすれば、企業は無理をしてでも人を雇おうとします。そうした企業に対して、国は各種助成金を用意して、活動をサポートしています。といっても、国もお金が余っているわけではありません。

このように、個人・企業・国の三者それぞれが無理をしつつ成り立っているのが現在の状況です。その一角でも崩れてしまったら、現在の労働市場は成り立ちません。そのため「働くの再発明」が必要になるのです。

質と量、両面での人材不足が起こる

本レポートによれば、10年後に現出する「悲観的将来」はまさに悲観的です。
まず就業者が557万人も減少します。これは、生産工程・輸送などの就業者数減少のほか、業務の海外移転による雇用消失も要因となっています。機械によって代替できる職種は、「雇用の減少」にとどまらず、その職種そのものが、「消失」に近い形の激減を起こす可能性もあるのです。こうなると、一度職を失った人が同じ職に就くことは非常に難しくなるでしょう。

また、企業としては今以上にきびしい競争環境にさらされることになりますから、効率性や収益性がさらに求められるようになります。すると、人材の持つ能力を最大限に引き出そうと、マネジメントを重視するようになるでしょう。ところが、就業する個人からすれば、家事や育児、介護という負担も増えてきますから、余裕のある働き方を求める人が増えてきます。つまり、企業と就業者の「働く」に対するニーズが衝突し、ミスマッチが起こるのです。こうなると就業意欲は削がれ、離職率も上がってしまいます。2025年は、質・量ともに人材不足に苦労する企業が増えるでしょう。

ヘッドハンティングができることは?

このレポートでは、これまでお話しした「バッドエンド」のほか「ハッピーエンド」も提示されていますが、そこに至るためには、さまざまな分野で多くの改善努力が必要だということも強調されています。そのひとつに、個人のニーズと企業のニーズの乖離をどのように解決するのか、という問題があります。
終身雇用という意識が根強く残る日本では、労働市場の流動性は、どうしても低くなります。近年では、求人・求職者情報は、企業にも個人にも大量に流れるようになりました。ですが、情報量がいくら増え、選択肢が増えたとしても、根本的な解決にはならないでしょう。

個人にとっては「自分の望む働き方ができる企業がない」、企業からすれば「社の望む能力を持つ人材がいない」。このようなミスマッチを改善するには、より深い部分の情報を吸い上げ、マッチングを図る必要があります。

個人の現在の生活状況や、自身にとっての「働くこと」のプライオリティと将来設計。企業側は、業務内容の詳細に加えて、教育・研修など、個人の能力開発をどのように考えるのか。単に「人がほしい」「働きたい」という表面的な情報だけを湯水のように流していくのではなく、個人と企業それぞれをより踏み込んだ部分で理解し、マッチングを図る。ヘッドハンティングは、悲観的な将来へと向かっていく労働市場を明るい方向へと軌道修正していく力を持っているのではないかと思います。

■2025年 働くを再発明する時代がやってくる

http://www.works-i.com/pdf/150528_2025yosoku.pdf

■リクルートワークス研究所

http://www.works-i.com/

関連記事としてこちらも併せてご覧ください

ロボットとAIの融合が生み出す人材需要

こんな記事も読まれています