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パルスサーベイとは?実施の目的や導入の流れから具体的な質問例まで解説!

パルスサーベイとは?実施の目的や導入の流れから具体的な質問例まで解説!

従業員の満足度や会社に対する不満、ストレス状況を把握できれば、従業員エンゲージメントの向上につながる施策を講じることができます。調査方法にはいくつかありますが、「パルスサーベイ」であれば他の調査よりも手軽に導入・実施が可能です。

本記事では、パルスサーベイがどのような調査なのか詳しく解説します。活用できるシーンや類似する調査方法との違い、実施時の流れ、具体的な質問例をみていきましょう。

従業員の満足度を高め、個人・組織のパフォーマンスアップを目指したい場合は、ぜひパルスサーベイの導入を検討してみてください。

パルスサーベイとは?

パルスサーベイとは、短時間で回答できる簡易的な意識調査を高頻度で実施する従業員満足度調査のことです。週1回~月1回の短いスパンで、3問~15問程度の簡単な質問を繰り返します。1~5分で回答できる簡単な調査です。

従来、高頻度での従業員満足度調査を行うことは、実施側にも回答者側にも負担が大きく、実現は難しいとされてきました。しかし、近年のテクノロジーの発達により、パルスサーベイを実施できるツールが登場。高頻度でも実施担当者・回答者の負担を抑えつつ、調査を実施できるようになっています。

パルスサーベイとは

Pulse Surveyの意味

英語の“Palse”は「脈」や「鼓動」という意味を持っています。対して、”Survey”は「調査・検査」「測量」を意味します。

定期的に脈拍を測る健康チェックのように、従業員の満足度を短期間で繰り返し調査することから、パルスサーベイ(Pulse Survey)と呼ばれています。

パルスサーベイを実施する目的

パルスサーベイは、従業員満足度を調査することで下記のような効果が見込まれます。

・従業員のストレスや満足度をタイムリーに把握する
・組織へのエンゲージメントを向上させる
・リフレクション(内省)の機会を醸成する

パルスサーベイを実施する目的を詳しくみていきましょう。

従業員のストレスや満足度をタイムリーに把握する

パルスサーベイは短期間での調査を繰り返し行うため、適時、従業員のストレスや満足度の把握が可能です。

調査の結果、従業員がストレスを抱えていたり、満足度が低かったりすればすぐに原因を究明し、解決・改善に動くことができます。問題が大きくなる前に未然に対策を講じることで、従業員満足度が向上し、モチベーションアップやパフォーマンスアップ、離職防止に役立てられます。

組織へのエンゲージメントを向上させる

会社が従業員のストレスや満足度に気を配り、問題解決のため動いてくれるということがわかれば組織エンゲージメントを向上させることにもつながります。

組織エンゲージメントとは、従業員が組織に対して愛着を持つことで、主体的な貢献が生まれる状態を指します。組織エンゲージメントが向上すれば、離職防止だけでなく、従業員個人と組織全体のパフォーマンスアップまで期待できるでしょう。

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リフレクション(内省)の機会を醸成する

パルスサーベイは短いスパンで繰り返し職場や上司、業務の現状について問われるため、リフレクション(内省)のきっかけを与えることができます。

仕事に限らず、人の成長には、客観的に現状を振り返り、自分自身を見つめなおすことが重要です。内省によって、自分の考え方や感情、価値観について掘り下げ、新たな気づきを得られるため、従業員の成長を促せるでしょう。

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パルスサーベイが活用できるシーン

パルスサーベイが活用できるシーン
ここからは、パルスサーベイを有効に活用できるシーンについてみていきましょう。

・定期的なメンタルヘルスチェック
・新入社員のオンボーディング
・人事異動者のフォロー
・新たな人事施策の効果検証

パルスサーベイは短時間で簡単に回答できる調査なので、ビジネスシーン全般における情報のすべてを得られるわけではありません。そのため、実施の目的を明確にして質問を設定することで、企業側が把握したい情報に絞った回答が得られます。活用するシーンに合わせた調査を行うことが大切です。

定期的なメンタルヘルスチェック

短期的に簡単な質問を繰り返し行うパルスサーベイは、メンタルヘルスチェックとして活用できます。

近年はメンタル不調による休職・退職も珍しくなく、企業による従業員のメンタルヘルス対策が欠かせません。継続的に調査することで早い段階で従業員のメンタルブレイクの兆候に気づき、フォローを行うことができます。

メンタルヘルスには、仕事だけでなくプライベートでの出来事も影響します。プライベートでのストレスは会社側が把握しにくいため、パルスサーベイを活用してこまめにストレス指数をチェックしておきたいところです。

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新入社員のオンボーディング

パルスサーベイを活用すれば、新しく組織にジョインした従業員のオンボーディングにおけるストレスや組織への理解を把握することができます。

新卒でも中途入社でも、慣れない環境での業務や人間関係構築にはストレスを感じるものです。とくに、人間関係が上手く構築できなければ、業務が覚えられなかったり会社への信頼が下がったりと、さまざまな悪影響が生じます。

パルスサーベイで従業員の状態をこまめに把握することで、指導側も相手の状態や理解に合わせた配慮ができるでしょう。

人事異動者のフォロー

同様に、人事異動や転勤によって新しい組織にジョインした従業員も、新しい環境でのストレスを感じています。パルスサーベイは人事異動者の状態把握と必要なフォローにも役立てられます。

また、人事異動でモチベーションが上がるケースもありますが、なかにはモチベーションが下がった人や、異動を不服に感じている人もいるものです。人事異動によるストレスや不満を把握して、従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下を防止しましょう。

新たな人事施策の効果検証

パルスサーベイは、新たな人事施策の効果検証にも有効です。

新しい制度や施策の導入は、必ずしも成功するわけではありません。従業員からの反発を招いたり、現場で混乱が生じていたりと、問題が起きることもあります。そのため、「問題は発生していないか」「期待された効果は得られているか」などをチェックすることが重要です。

パルスサーベイを活用すれば、現場での反応をおおよそ把握することができます。トラブルが発生したら、問題が大きくなる前に対処しましょう。

パルスサーベイと類似する調査方法との違い

パルスサーベイと類似する調査方法との違い
パルスサーベイのほかには、従業員に対する調査方法はいくつかあります。

それでは、パルスサーベイは下記のような他の調査方法と何が違うのでしょうか。

・モラールサーベイ
・センサスサーベイ
・社内アンケート

場合によっては、パルスサーベイ以外の調査方法の導入や、パルスサーベイとの併用を検討しましょう。

モラールサーベイとの違い

モラールサーベイとパルスサーベイは、実施の目的と頻度が異なります。

モラールサーベイは、産業心理学や統計学を応用した科学的な調査で、従業員満足度調査の1つです。従業員のパフォーマンス向上に影響する要素を調べるために用いられ、数ヶ月に1回の頻度で実施されます。

モラール(morale)とは、従業員同士が協働して、組織の目標達成のために積極的に貢献しようとする意欲や態度を意味します。そのため、「士気調査」や「従業員意識調査」とも呼ばれます。

センサスサーベイとの違い

センサスサーベイとパルスサーベイは、調査の規模と頻度が異なります。

センサスサーベイは、年1回程度実施される大規模な従業員満足度調査です。設問数が多く、組織のあらゆる側面から従業員の状態を詳細に確認・分析でき、組織課題や組織風土・組織の特色、組織改善の方向性を探ることができます。

社内アンケートとの違い

「従業員満足度調査(ES調査)」とも呼ばれる社内アンケートは、質問項目の幅と実施頻度についてパルスサーベイと異なります。

社内アンケートでは、労働環境や待遇、福利厚生といった幅広い項目に対する従業員の満足度を調査します。さらに、ストレスチェックや組織エンゲージメントなどの要素も含まれ、パルスサーベイよりもより幅広い質問がなされます。また、数ヶ月に1回~年1回程度と、実施頻度もそう多くありません。

【4ステップ】パルスサーベイの実施方法

【4ステップ】パルスサーベイの実施方法
パルスサーベイを実際に実施する場合は、下記の手順で行います。

1.実施の目的を明確化する
2.質問項目を設定する
3.調査結果を分析する
4.問題解決に向けて施策を実行する

パルスサーベイを実施して的確な効果を得るために、全体の流れと実施時のポイントを確認しておきましょう。

実施の目的を明確化する

まずは、実施の目的を明確にします。パルスサーベイは質問項目が少なく、短時間で回答できる点が特徴です。実施の目的に併せて質問内容を設定しないと、求める情報を集められません。

目的がズレると、質問内容もズレてしまうため、質問項目を設定する前に何を把握したいのかをはっきりさせることが最も重要です。

質問項目を設定する

実施の目的が明確になったら、質問項目を設定します。3~15問程度、1~5分で回答できる内容・難易度の質問を検討しましょう。回答と集計作業の負担を減らすため、記述式ではなく「Yes/No」または「段階評価」で回答できる質問がおすすめです。

具体的な質問については、後述の「【項目別】パルスサーベイで効果的な質問例」で紹介します。

調査結果を分析する

調査を実施したら、集計・調査結果を分析します。そして、過去のデータと照らし合わせながら変化をチェックし、従業員全体にスピーディーにフィードバックを行いましょう。

調査の実施から結果のフィードバックまでのタイムラグが少ないほど、従業員は会社側が現場の状態を気にかけ、真摯に向き合ってくれているという実感を得られます。信頼構築のため、フィードバックは速やかに行ってください。

フィードバックを行うことで、組織の課題や魅力に対する共通認識の形成にも効果的です。

問題解決に向けて施策を実行する

過去のデータと照らし合わせて変化があった従業員は、個別のフォローが必要な状態に陥っている可能性があります。追加の調査や個別面談・1on1を行い、解決に向けた施策を検討・実行しましょう。

順調に働いている従業員に対しても、今後モチベーションやエンゲージメントが下がらないよう働きかけを行います。

パルスサーベイを実施する際の注意点

パルスサーベイを実施する際の注意点
しばしば「パルスサーベイは意味がない」といわれることがあります。しかし、これはパルスサーベイを有効に活用できなかった場合の話で、以下の点に注意をして実施すれば従業員の満足度やエンゲージメントを向上させ、成長の機会を与えられます。

・実施する目的や重要性を社内に周知する
・実施担当者の業務負担となる
・回答が人事評価に影響しないよう配慮する
・マンネリ化すると有効な結果が得られにくい
・詳細の把握には他の調査や面談が必要になる

パルスサーベイ実施時の注意点について確認しましょう。

実施する目的や重要性を社内に周知する

パルスサーベイを実施する目的や重要性は、しっかりと社内に周知しておきましょう。

パルスサーベイは簡単な調査なので、実施の意義を感じられない従業員が出てくることが予想されます。質問文を読まずに回答したり、実際には思ってもいないことを回答したりされると、事実と反する結果が出てしまうため、有効な対処を講じられなくなります。

パルスサーベイの実施を形骸化させないためにも、従業員には結果が組織の問題解決につながることを理解してもらいましょう。

実施担当者の業務負担となる

パルスサーベイは、短いスパンで実施・集計・分析・フィードバックを繰り返すことから、実施担当者の業務負担になりやすい点が特徴です。とくに集計からフィードバックまでは素早く行うことが必要なので、担当者に負担がかかり過ぎないよう調査ツールの導入を検討しましょう。

集計から分析だけでなく、対策に向けた提案やアドバイスまで提示してくれるものだと、フィードバック時の負担も軽減できます。

回答が人事評価に影響しないよう配慮する

社内調査を行うときに共通して気を付けたいのが、回答が人事評価に影響しないよう配慮することです。

調査結果が人事評価に影響する、または評価に影響するのではないかという懸念がある場合、従業員は本音や実情ではなく、会社や管理職の受けの良い回答をするようになります。そこで、調査の目的や質問項目によっては、回答の閲覧権限を設けたり、匿名で回答を募集したりと、素直に本音を回答できる環境を整えましょう。

また、調査結果を共有する範囲についても事前に共有しておくことが大切です。パルスサーベイの調査結果が原因で、社内での立場にマイナスな影響がでると、会社と従業員との信頼関係が崩れてしまいます。

マンネリ化すると有効な結果が得られにくい

繰り返し行うパルスサーベイは、マンネリ化しやすく、形骸化する恐れがあります。マンネリになった調査では、惰性で回答する従業員が出てきます。意味のないパルスサーベイは、回答者にも負担になるだけで何も良い効果を得られず、不信感も生まれるでしょう。

そのため、実施そのものではなく、得られた結果を基にした問題解決やモチベーションアップに向けたフィードバックと対策・施策に重きを置きましょう。従業員にパルスサーベイの実施には意味があると感じてもらうことが重要です。

詳細の把握には他の調査や面談が必要になる

パルスサーベイはあくまでも簡易的な従業員満足度調査です。得られるのは大きな傾向のみで、詳細の把握には追加で他の調査や個別の面談を行う必要があります。

パルスサーベイで何か問題が懸念される場合は、具体的な施策を考える前に、詳細の把握に努めましょう。

【項目別】パルスサーベイで効果的な質問例

【項目別】パルスサーベイで効果的な質問例
それでは、パルスサーベイではどのような質問を設定するのか、具体例を確認しましょう。活用するシーンによって質問項目を変えて、把握したい情報をピンポイントで収集できるよう工夫が必要です。

やりがい・満足度に関する質問項目

・成長できている実感はありますか?
・仕事をしていて嬉しいと感じる瞬間はありますか?
・業務に誇りを感じられますか?
・仕事中、時間の経過が早く感じますか?
・自分の持っているスキルを発揮できる環境ですか?
・自分の意見が尊重されていると感じますか?
・今の立場や任されている仕事は自分のスキルや実力に合っていると思いますか?
・自分の友人や家族に会社の商品やサービスを勧めたいと思いますか?
・自分の友人や家族に入社を勧めたいと思いますか?
・仕事のなかで嬉しいこと・やりがいを感じることはありますか?
・組織に貢献したいと感じますか?
・現在、人に相談できていない会社や上司、同僚に関する不満はありますか?
・今後、やってみたい仕事や目指している役職はありますか?
・今後も働き続けたいと考えていますか?

仕事内容・職場環境に関する質問項目

・現在の業務量は適切ですか?
・業務量に対して他者と偏りがあると感じますか?
・仕事内容に対する不満はありますか?
・給与や待遇、労働環境に対する不満はありますか?
・業務に必要な情報は適切に共有されていると感じますか?
・自分がチームや部署に貢献していると感じますか?
・仕事において自分が期待されていると感じますか?
・上司や同僚との人間関係は良好ですか?
・周囲に嫌がらせやハラスメントを受けている人はいませんか?
・社内に悩みや不安を相談できる相手はいますか?
・社内に励まし合える同僚はいますか?
・社内にこの人なら信頼できるといえる人はいますか?
・勤務中、休憩・昼食の時間は確保されていますか?
・ワークライフバランスを実現できていますか?
・睡眠時間は十分に取れていますか?
・個人やチームの目標は達成可能なものだと思いますか?
・働きやすい環境が整えられていると感じますか?
・経営陣は、従業員の労働環境や働きやすさに配慮していると思いますか?
・仕事においてストレスやプレッシャーを感じていますか?
・仕事に対するモチベーションを感じられていますか?
・自分自身の成長やキャリアアップにつながる業務に従事できていますか?

経営理念・ビジョンに関する質問項目

・経営理念は従業員に浸透していると思いますか?
・経営理念・ビジョンやチームの方針を理解していますか?
・会社が掲げるミッションは実現可能だと思いますか?
・経営陣は従業員のことを大切にしていると感じますか?
・経営陣は顧客のことを大切にしていると感じますか?
・経営陣の経営判断に納得していますか?
・経営陣は健全な意思決定ができていると感じますか?
・経営陣は現場の状況を理解したうえで意思決定できていると感じますか?
・会社の将来性に不安はありますか?

パルスサーベイを導入している企業事例

パルスサーベイを導入している企業事例
最後は、パルスサーベイを実際に導入している企業を3例紹介します。

・日清食品ホールディングス株式会社
・ソフトバンク株式会社
・株式会社サイバーエージェント

いずれも大手企業で、多くの従業員を抱えています。どのように活用しているのか参考にしてみましょう。

日清食品ホールディングス株式会社

日清食品は、従業員とのコミュニケーション強化のため、1on1ミーティングとパルスサーベイを実施しています。月に1回、「仕事」「人間関係」「仕事の満足度」に関する3問と1on1ミーティングについての数問に答えるだけというシンプルなものです。

1on1ミーティングと組み合わせることで、1on1ミーティングの形骸化防止と、フィードバックの充実化を実現しています。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社では、月に1回、独自のパルスサーベイを実施。「仕事」「生活」「健康」など12の質問と、総合的な質問を合わせた計13問について調査を行っています。従業員満足度というよりも「ワークライフインテグレーション(人生の充実)」の考えから、生活や健康を中心とした質問が設定されている点が特徴です。

また、新しいプロジェクトを立ち上げるときは、パルスサーベイで従業員の意見をヒアリング。現場の声が、プロジェクトの方針決定に活用されています。

株式会社サイバーエージェント

サイバーエージェントでは、月に1回、固定の質問2問と毎月変動する質問1問に答えるというパルスサーベイを実施。固定の質問は個人やチームのコンディションを把握するもので、変動する質問は毎月役員を入れた調整が行われて決定されています。シンプルな質問で従業員の負担を軽減し、回答の回収率は96%と非常に高い点が特徴です。

また、サイバーエージェントでは、従業員の声を拾い上げて、組織の改善につながる専門組織を結成。運用に重きを置いて、PDCAサイクルを回し続けることで、企業と従業員との信頼関係を強化しています。

まとめ

パルスサーベイ記事のまとめ
今回は、従業員満足度をタイムリーに把握できる調査、パルスサーベイについて詳しく解説しました。パルスサーベイを効果的に実施できれば、従業員や現場の課題を素早く抽出し、早期に解決を図ることができます。

一方で、短期的に繰り返し実施が必要で、スピーディーな対応が求められることから、効果的に実施するにはいくつか注意点もあります。実施の際は、実施者・回答者の負担が大きくなったり、実施が形骸化したりしないよう、専用のツールを導入するなど、シンプルなものにすることが重要です。

従業員との信頼関係を築き、従業員満足度の向上を目指したい企業は、ぜひパルスサーベイの導入を検討してみてください。

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