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利益を追求するために人事部門が果たすべき2つのリスクマネジメント

利益を追求するために人事部門が果たすべき2つのリスクマネジメント

現代社会は「リスク社会」と呼称されるほど、あらゆる面々でリスクが生じています。企業経営においてリスクを合理的に操作するためには、リスクの回避・軽減で損失を最小化する「リスクマネジメント」が必要不可欠です。部署ごとにリスク管理法が異なる中で、今回は人事部として対応すべき「労働関係法違反リスク」・「人権問題発生リスク」に焦点を当て、リスクマネジメントのプロセスをご紹介いたします。

企業制度の変化・複雑化に伴い重要性が高まるリスクマネジメント

リスクマネジメントとは、将来起こりうるリスクを想定してリスクが起こった場合の損失を回避または低減することにより最小化を図るプロセスのことで、企業経営におけるリスクを合理的にコントロールするための経営管理手法です。

リスクマネジメントはこの概念が一般化する前から経営判断などにおいて当たり前に行われてきましたが、近年では経済のグローバル化・IT化を背景として、規制緩和の進展による企業制度の変化や業務内容の複雑化、コンプライアンスやアカウンタビリティを重視する経営環境への変容を受けてリスク管理の重要性が高まり、明示的に行われるようになっています。

人事部が取り組むべき2つのリスクマネジメント

従来は部署ごとにリスク対応が行われていましたが、リスクが多様化・複雑化しており、全社的な視点でリスク管理を行うことが重要視されてきています。それにともない人事部が取り組むリスクも変わってきました。ここでは人事部として対応すべき2つのリスクについて見ていきます。

1. 労働関係法違反リスク
過去においても重要視されてきた基本的なものですが、働き方改革が進んでいる現在においては殊更に注視すべきリスクです。過剰な長時間労働やサービス残業、あるいは残業代未払いなどの法令違反は直ちに是正すべき重大なリスクとなります。「ブラック企業」というレッテルを貼られる可能性もあり、そうなると社会的なイメージの低下は必至です。

また、こうしたリスクを放置すると人材の流出、鬱病などのメンタルヘルス問題が発生し、過労死や損害賠償請求などの裁判などに発展して企業の社会的評価を著しく毀損する可能性もあります。

最近では長時間労働が若い労働者に忌避される傾向がみられ、人材採用にも悪影響を及ぼすことで後々大きな経営リスクとなる恐れもあります。

2. ハラスメントなど人権問題発生リスク
昨今はMeToo運動などで女性の人権意識が高まっていますが、企業内部においてもセクシャル・ハラスメントをはじめ、各種ハラスメント対策が重要視されています。パワー・ハラスメント、マタニティ・ハラスメント、エイジ・ハラスメントなど、企業内で行わるハラスメントは多岐にわたります。

ハラスメント行為は、被害者に精神的・肉体的なダメージを与えるばかりでなく、職場の雰囲気を悪化させ、就業意欲やモラルの低下を招き、職場の秩序を崩壊させます。被害者が大きな損害を被った場合は損害賠償請求に応じる必要があり、裁判の報道などによって企業の社会的評価やイメージの低下が起きる可能性もあるでしょう。

こうしたハラスメントだけでなく外国人、LGBT社員に対する差別問題など、人権に関する問題の発生もリスクとして捉え未然防止に努めなければなりません。社内に専門部署を設置して相談窓口を開設する、十分な教育研修を実施するなど、的確な対策を施す必要があります。

リスクマネジメントの具体的なプロセス

リスクマネジメントのプロセスは大きく分けて「リスクアセスメント」と「リスク対応」「社内環境の構築」の3つに分けられます。「リスクアセスメント」では、リスクの「特定」「分析」「評価」を行い、リスクの把握や優先的に対応すべきリスクの検討を行います。

次は「リスク対応」です。リスク対応にはリスクの「回避」や「低減」のほか、他者とリスクを分散する「共有」、何も対策をしない「保有」があります。リスクの発生頻度や影響の大きさなどを考慮して対応方法を決定します。

また、「リスクアセスメント」と「リスク対応」を行い、リスクマネジメントを運用していく前提として、意思決定やモニタリング、監査を行うための組織を社内に構築しなければなりません。

こうしたリスクマネジメントを実行できる方針と体制を固めたのちに、実際にPDCAを回していきます。モニタリングにより適切な評価とフィードバックを行い、社内外の経営環境の変化に柔軟に対応していくことが重要です。

会社に安定をもたらすリスクマネジメント

リスクマネジメントを行うことによって、企業は多種多様なリスクを把握し、リスクに備えることができるようになります。リスクに備えていれば、実際に現実化したときにリスク発生による被害を最小限に抑える、迅速かつ適切な対応を取りやすくなることでしょう。

このような体制の構築は経営に安定感をもたらし、従業員一人ひとりが安心して仕事を行い、利益を追求できる体制を整えることに寄与していきます。リスクマネジメントは、現代的経営において重要な役割を果たしているのです。

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