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応募の絶えない採用サイト 9のポイント

応募の絶えない採用サイト 9のポイント

WEB制作会社に採用サイトの構築を任せきりにした結果、自社の魅力が伝わらず、応募がない(少ない)という課題をお持ちの方は多いのではないでしょうか?自社の採用サイトも商品やサービスを販売するように、マーケティング視点を取り入れることで、応募者を増やすことも応募者とのマッチ度を上げることも可能と言われています。

この記事では、マーケティング戦略に基づくWEB構築の第一人者である株式会社ベイジ代表 兼 クラスメソッド株式会社 CDOの枌谷力氏とプロフェッショナルバンクで共催した【ヒト・コト ゼミ】のセミナー内容をまとめ、人事担当者が押さえておきたい「採用サイトをつくる上での9つのポイント」として解説していきます。

企業は採用サイトに力を入れるべきなのか?

転職サイトやメディアが数多く存在し、お金のかからないリファラルやソーシャルリクルーティングなども含め、多彩な手法が存在する昨今においてもコーポレートの採用サイトに力をいれるべきなのか?と考える人事の方はいるかと思います。

確かに現代は採用に関した情報を発信するプラットフォームが数多くあるため、必ずしも採用サイトを作らなくともやっていける企業はあるでしょう。中には、予算の都合や自社で制作する余裕のない企業は、まず外部のプラットフォームで情報発信をすることで、コストをかけずに人を集めるケースもあります。 ただ、そういった例を除いても、自社採用サイトを持つ価値は下記2つの理由から大いにあると考えられます。

1点目は、外部のプラットフォームに掲載しているだけでは、自社以外の企業も掲載されているため、有名な企業だけにクリックが集中してしまう傾向(力関係)があるからです。特に知名度の低い企業や、自社ブランディングが確立されていない企業にとっては、自社オリジナルの情報発信を採用サイトでしていくことが有効になります。

2点目は、自社採用サイトは情報発信の方法に制約がない点です。外部のサイトは企画内容やプランによって掲載内容や量の制限がかかりますが、自社のサイトなら載せたいと考えたコンテンツを、載せたいだけ載せることができます。「採用戦略も踏まえて、他者との差別化をしていかなければいけない」ということは、「自社のサイトを有効活用しなければいけない」ということでもあります。

また、転職サイトやエージェントを活用している場合でも、自社に興味を持った人材は高い確率で自社サイトへ訪問する傾向があります。その為、転職サイトやエージェントでの効果を引き出すためには、採用サイトの充実化が重要ではないかと思います。

一般的な企業の採用サイトの課題は何か?

採用サイトを成功に導くためには、「マーケティング視点」を取り入れたサイト作成が重要です。ただし、「マーケティング視点が必要だ」と言うと、抽象的になったり、「採用はマーケティングじゃない」という意見が出たりするかもしれません。

ただ、多くの企業の採用サイトでは、「求職者の視点でサイトを作ることができていない」「企業目線で作ってしまい、機能しない」というエゴイスティックな傾向が見られます。

また、採用サイトにはエントリーを念頭に置くユーザーだけでなく、さまざまな属性の人々が様々なタイミングで訪れます。そのため、各々のニーズに応えるコンテンツを提供することが重要です。

情報設計や導線設計も重要であり、ユーザーは必ずしもトップページから入ってくるわけではないため、下層ページから訪れたユーザーを他のページに誘導する方法も考える必要があります。これらの視点を取り入れることは、マーケティングの視点を活かすことにつながります。

採用サイトを成功に導く9つのポイントとは?

それでは、上記のようなマーケティング視点を取り入れながら、成功に導くための採用サイトの9つのポイントとは何なのでしょうか?
それは、

1.募集要項を一番目立つ場所に置く
2.不安解消系コンテンツを先に見せる
3.企業理念などの美学を最初に押し付けない
4.無名企業が有名企業の真似をしない
5.企業にとって都合の悪い話も正直に載せる
6.転職サイトを上回る量と質のコンテンツを置く
7.派手な演出で誤魔化さない
8.抽象的なポエムを書かない
9.社員や職場の日常を伝える写真を使う

になります。
この後、それぞれのポイントを紐解いていきますが、大前提としてお伝えしておきたいことがあります。それは、まずは根本的にユーザーを知る・求職者を知ることが大切だということです。

どの企業でもできる方法として、入社2〜3年目くらいの方に社内アンケートを取ることがおすすめです。そういった方たちは、直前まで採用活動をしており、数年会社にいることで、会社に辛辣なことも言えるからです。

アンケートでは主に、

・自社の採用サイトはどう見えていたのか
・就職活動・採用の際にどこの会社と比べたのか
・採用サイトのどこが良いポイントだったか
・他社の採用サイトの良いところ

などを聞いていきます。これらのアンケートで把握するべきこと、それは「ターゲットの心理や行動を知ること」です。採用サイトを制作する際には、人事の方の想像と制作会社との議論で採用サイトを作っているケースが多いのですが、このアンケートから「求職者の目線をもう少し取り入る」ことが可能になってきます。

①募集要項を一番目立つ場所に置く

「募集要項を一番目立つ場所に置く」というポイントは、一見、当たり前の様に感じますが、意外にもやれていない企業が多いものです。

※募集要項誘導のイメージ(実在する採用サイトではありません)
募集要項誘導イメージ

なぜ募集要項を重視するのかというと、様々な調査や経験に基づいたユーザー行動を考慮しているからです。多くのユーザーは採用サイトを訪れた際に、まずは募集要項を確認します。その後で、「自分の考えに近い」と感じたり、理解できた後に他のコンテンツを見たりすることが多いものです。

この観点から考えると、

・募集要項がない
・募集要項が見つけにくい
・募集要項があるが、募集要項という名前で掲載されていない

といった状態だと、ユーザーが困惑してしまい、最悪の場合は潜在的なユーザーを逃してしまう可能性があります。最も目につきやすい箇所に、ついつい会社のことをアピールしたくなる気持ちはわかります。一般的な例として、「企業理念」や「みなさまへのメッセージ」といったコンテンツを最初に提示しようとする傾向がありますが、ただそれは、ユーザーの視点から考えると、適切ではありません。

一方で、この問題には少し複雑な側面もあります。特に多くの職種を募集している企業では、1つの募集要項だけでは十分ではない場合もあります。

※募集職種が多い企業のイメージ(実在する採用サイトではありません)
募集職種が多い企業のイメージ

そう言った場合、上記サンプル画像のような「どこを見ていけば募集要項にたどり着けるか」がわかりやすい構造にしていくことが必要になります。採用サイトに入る→職種一覧が掲載されているという流れがあるので、ユーザーは自然と「職種をクリックすれば募集要項を確認できるかも」と誘導することができます。

この様に数多い募集要項がある場合、「募集要項が探しやすい入口を提供する」という考え方もあります。

②不安解消系コンテンツを先に見せる

※不安解消系コンテンツのイメージ(実在する採用サイトではありません)
不安解消系コンテンツのイメージサイト

企業サイトによく見られる「こんなに私たち素晴らしいよ」というアプローチではなく、「数字でわかる○○○○株式会社」、「○○○○株式会社で働くメリット」、「私たちの強み」、「職場環境」といったコンテンツを掲載することで、求職者が不安に感じるであろう点に対して具体的に解消策を提供していきます。

企業がウェブサイトを作成する際、ついキラキラとしたポジティブな要素に焦点を当てがちですが、実際に求職者は転職や就職に関して不安を抱えることが圧倒的に多いのです。

「この会社本当に安定しているのかな?」、「業績は良いけれど、労働条件はブラックじゃないのか?」といった不安もあるでしょう。就職は自身の人生やキャリアに深く関わる重要な決断ですから、尚更そういった不安は大きくなります。企業はまず、「みなさん、安心してください」という姿勢を示すことが重要だと考えます。

不安解消に関連するコンテンツが必要な理由は、面接の際にはなかなか聞きづらい話題だからです。求職者は実際に聞きたいことがあるにもかかわらず、なかなか口に出せないこともあります。採用サイトでは、心の奥にある悩みや不安に対して答えを提供することが重要です。

③企業理念などの美学を最初に押し付けない

一概に否定はできませんが、最初に企業理念などの美学を押し付けることは避けるべきです。

もちろん、サイトにたどり着くまでにさまざまなフェーズがあるため、「絶対にやってはいけない」とは言えませんが、求職者にとっては「これは何だろう?」と思ってしまうことがあります。ユーザーが企業の美学に触れるのは最終的な段階だと感じます。実際に、こういったサイトも多く見られます。

ただし、求職者にとっては美学だけでは惹かれません。むしろ、価値観を押し付けられているように感じてしまう場合があります。最悪の場合、抽象的な美学ばかりが掲載され、必要な情報がまったくわからない状態になってしまうこともあります。

④無名企業が有名企業の真似をしない

有名企業は理念ベースのメッセージを出していたり、抽象的な価値を訴求をしたりすることが多いです。ただ、それはあくまでも、有名企業(みんなが知っている会社だから)だからこそ刺さる部分があり、無名企業が言っても刺さらないということがあります。

※有名企業の採用ページトップのイメージ(実在する採用サイトではありません)
有名企業の採用ページトップイメージ

画像は世界展開する大手アパレル企業にありそうな採用サイトのサンプルです。「美と独創性の融合、世界に響くあなたの物語がここから。」というフレーズも大手アパレル企業だからこそ「おお、格好良い」となるのであって、知名度の低い企業が謳っていてもピンとこないですよね。

実際に、採用サイトを作る際には、このような有名企業のフレーズを参考にする方が多いです。しかし、ユーザーにとっては「よくある綺麗事のフレーズだな」とスルーされてしまう可能性もあります。

また、企業としては実際に泥臭い仕事をしているにもかかわらず、応募者が綺麗ごとでキラキラしたサイトのイメージだけを持ってくることがあります。そうなると、企業と求職者とのギャップが生まれてしまい、応募者が増えたとしても意味がありません。会社の本当の姿を伝えることが重要です。採用は「中長期的に見て、本当に良い判断とは何か」ということも考えなければなりません。

⑤企業にとって都合の悪い話も正直に載せる

※都合の悪いコンテンツ例(実在する採用サイトではありません)
都合の悪いコンテンツの例

先ほどの続きになりますが、社内で行われるアンケートでは、「綺麗事ばかり書かれていて、正直な悪い面も知りたい」という意見がよく出てくるものです。そのため、他の企業では普通は載せないような内容を提案することも多くあります。もちろん、限度はありますが、向き合わなければならない都合の悪い事実を率直に伝えるのです。

「私たちも失敗することがあります」とか、「実際は地味な仕事です」とか、「実際はこのくらいの残業が発生します」といった内容を適切に掲載します。

これらは一般的なコンテンツとは異なる部分ですが、差別化やプロモーションの意味でも良い影響を与える可能性があります。このような企業は信頼できる印象を与えることもあります。キラキラしたことばかりを載せている企業よりも魅力的に映ることもあります。

⑥転職サイトを上回る量と質のコンテンツを書く

※フッターメニューの例(株式会社ベイジ:https://baigie.me/job/
フッターメニューの例

せっかく自社のサイトで、フッター(サイトの下部)なども自由に使えるので、「他の媒体では見られない情報を載せた方が良いのでは」と思います。それなりの文章と図を使って丁寧に説明することも大切です。上記の画像くらいの情報量があるとベストなイメージです。

コンテンツにおける傾向として、コロナ禍以降はリモートワーク環境に対する説明はかなり必要な印象です。東京にある会社だけど、地方採用できる場合のことなどは積極的に掲載してください。これからの採用サイトは、勤務状況や働く環境に関するコンテンツを厚めに載せていかないといけないですね。

⑦派手な演出で誤魔化さない

※一見採用サイトらしくないコンテンツ例(実在する採用サイトではありません)
一見採用サイトらしくないコンテンツ例

デザインや演出にだけ注力したサイトを見ても、「これは本当に採用サイトなのか?」、「求人募集をしているのかな?」、「具体的にどの会社なのかわからないな」と疑問に思うことがありませんか?

派手な演出だけでは、求めている情報が伝わらないのです。企業のサービスサイトと混合していることも多いのですが、採用サイトは、採用を迷っている人に向けて作られており、求人に関する情報提供を重視するべきです。普通のウェブサイトでは情報をわかりやすく表示することが求められており、過剰な演出や派手なデザインはおすすめしません。

求職者が採用サイトで求めているのは演出ではなく情報です。自然なUIデザインやビジュアルで、この会社で働くことの実態が伝わるような情報提供が求められています。普通のウェブサイトと同じく見やすく、素直なデザインが重要です。

⑧抽象的なポエムを書かない

「企業理念を書かない」に似ていますが、ポエムを書いてしまっているサイトも多い印象です。大手有名企業で知名度があって、一定の理解は得られるのであれば印象的なのですが…。何の会社かわからないところがやっても、「意味がわからない」で終わってしまいます。まだ知名度が低い会社は、組織や、評価制度など、ちゃんとしたことをまずは伝えましょう。

例えば、大手自動車メーカーの採用サイトのトップで「革新と挑戦の交差点で、未来へのドライバーとなれ!」のようなキャッチコピーを使っていたとしましょう。先ほどと同じ様な話になりますが、これは大手自動車メーカーだから成り立ちます。

どの様な会社であって、どの様な活動をしているかがわかっている上で、こういったメッセージを求職者に投げかけることは理解ができるからであり、印象的になるのです。

一方で無名企業がポエムばっかりになってしまうと、サイト自体が見られなくなってしまうケースに陥る恐れもあります。抽象的な情報だけでなく、企業の評価制度や待遇や組織としてのちゃんとした情報・コンテンツを中心にするべきですね。

⑨社員や職場の日常を伝える写真を使う

※社員の日常写真の例(株式会社ベイジ:https://baigie.me/job/
採用サイトに社員の日常写真を使用した例
採用サイトでは、極力撮影した写真を使用し、それを掲載します。文字の重要性は認識していますが、文字だけでは伝えきれないことが多いのです。

求職者の視点からすると、「自分が働く環境や雰囲気はどうなのか」という情報が一番知りたいと考えられます。演出のある写真よりも、日常的な仕事の風景が良いですね。最低でも30枚程度の写真を使用することをおすすめします。

実際、転職サイトでも写真のクオリティが高いと、応募数が増える傾向が確認されています。素人がiPhoneなどで撮った写真はおすすめしません。構図やディレクションなど、細かな指示をしてくれるプロのカメラマンに依頼することをおすすめします。

まとめ

今回は、採用成功に結び付きやすい採用サイトのポイントをご紹介してきました。繰り返しになりますが、採用サイトは自社の考えやイメージの押し付けではなく、採用サイトに訪れる候補者の気持ちになって、つまりマーケティング視点で作成していくと良い結果が生まれるのではないかと思います。採用サイトの新規構築やリニューアルをお考えの企業様はぜひ参考になさってください。

※当記事は、2022年1月に実施した【ヒト・コト ゼミ】のセミナーの内容をコラム形式に編集して記載したものです。

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話し手:枌谷 力 氏 

株式会社ベイジ代表/クラスメソッド株式会社CDO

1997年大学卒業後、NTTデータ入社。4年間の営業経験の後、Webデザイナーに転身。Webディレクターなども兼務した後、2007年にフリーランスとして独立。2010年にweb制作株式会社ベイジを設立。現職はBtoBマーケティング、戦略コンサル、UXデザイン、アクセス解析を得意分野とするデザイナー兼経営者。
2021年クラスメソッド株式会社 CDO就任。Twitte等のSNSで日々有益な情報を発信し、同フォロワーは7万人を超える。

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聞き手:高本 尊通 

株式会社プロフェッショナルバンク 取締役常務執行役員

1995年大学卒業後、株式会社パソナ入社。大手特別法人営業グループ責任者を経て、営業/事業/新規事業企画、アライアンス、社内業務改革等担当し、同社の経営ブレーンとして活躍。
2004年株式会社プロフェッショナルバンク設立に携わる。これまで約7,000人あまりのキャリアに携わり、2012年にビズリーチ 社の「日本ヘッドハンター大賞」、同年から2年連続で「リクナビNEXT AWARD MVA」を受賞するなどし、2017年にはビズリーチ社のヘッドハンターオブザイヤー(年間MVP) を受賞。現在、ヘッドハンターとして活動しながら、取締役常務執行役員として人事/経営企画/経理/財務などのバックヤードを管掌。

▽関連する対談形式の記事はこちら

マーケティング視点を取り入れた、応募の絶えない採用サイトとは?(ヒト・コト ゼミ)

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