ビジネスのイニシエーションとは?意味と心理学から紐解くサポート体制を解説!

ビジネスのイニシエーションとは?意味と心理学から紐解くサポート体制を解説!

近年、採用や人事配置において「イニシエーション」というビジネス用語が注目されています。各分野で使われる用語ですが、ビジネスにおけるイニシエーションはどのような意味を持つのでしょうか。

今回は、イニシエーションの意味を明確にして、適切なサポートができるよう心理学に基づいた解決方法を紹介します。イニシエーションを意識したサポート体制を構築できると、社員のモチベーション向上や組織活性化が期待できますので、経営者や人事担当者は必見の内容です。

イニシエーションの意味

英語ではinitiationと書き、直訳すると「加入」「入門」という意味になります。そこから、イニシエーションは「新たに加入する組織に承認されるための儀式」を意味するようになりました。もともとは宗教的な意味合いが強く、人を現在の状態から新しい状態に変えるために必要とする「通過儀礼」のことをイニシエーションと言いました。

また、各分野によって使われ方は異なります。医療分野では「発がんの初期ステップ」、心理学においては「精神が心理的ショックを克服して成熟に向かうこと」を意味します。たとえば、“失恋”という心理的ショックを経て大人へ成長していく様を表しており、2015年に公開された映画「イニシエーション・ラブ」では、恋愛におけるイニシエーションの意味についても触れられています。この物語におけるイニシエーション・ラブとは、「恋愛は子どもから大人になるための通過儀礼である」と表現されています。

このように、「通過儀礼」を起点として様々な意味を持つイニシエーションですが、近年ではビジネス分野においても活用されているのです。

ビジネスにおけるイニシエーションとは?

ビジネスで使われる際のイニシエーションは、「新たな組織・環境に適応するために必要な通過儀礼」を意味します。

ビジネスシーンでもイニシエーションが注目されている背景には、終身雇用制度の崩壊が影響しています。多様な働き方が認められキャリアの幅も広がったことで、年齢を問わず転職や人事異動が活発になり、新天地への移籍も増えてきました。それに伴い、イニシエーションを経験する頻度は急増し、組織や仕事に馴染めないというトラブルも増えていった訳です。そのため、日本企業でもイニシエーションに配慮する必要性が高まっています。

アメリカの産業組織心理学者D・フェルドマンによると、ビジネスにおけるイニシエーションには、「グループ・イニシエーション」と「タスク・イニシエーション」の2種類あると提唱しています。

グループ・イニシエーション

グループ・イニシエーションとは、新卒社員や中途入社者が新たに加入する組織に忠誠心や協調性を示して、周囲から組織の一員として受け入れられることを意味します。

グループ・イニシエーションの中でも、代表的な通過儀礼として「歓迎会」「クレドの共有」「部署全体での定例ミーティングの実施」が挙げられます。ビジネス上のイニシエーションでは、業務時間外でのコミュニケーションよりも、仕事上の信頼関係構築に重きを置いて実施するのが望ましいでしょう。

タスク・イニシエーション

タスク・イニシエーションとは、新卒社員や中途入社者が新たな組織に加入した後に成果を出すことで、周囲から認められることを意味します。

新入社員にとっては今までとは違う環境ですから、最初から1人でタスクを遂行するのは困難です。成果を上げられるように、組織で協力しながら仕事に向き合うことで、お互いを信頼し合いながら課題を克服していくことができるでしょう。

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想定される3つのイニシエーションの場面

ここまでは、ビジネスにおけるイニシエーションの意味をお伝えしました。
では、実際どのような場面がイニシエーションに該当するのでしょうか。本章では、ビジネス上で「通過儀礼」が必要とされる代表例を紹介していきます。

■採用

新卒採用と中途採用では、新入社員にとっては新たな環境に飛び込むことになります。そのため、企業は新しいメンバーが組織に馴染みやすく、業務を円滑に遂行できるようにサポートする必要があります。

新入社員はすべてが初めてのことになるため、同僚や先輩社員、上司が密にコミュニケーションをとり、組織として受け入れる体制が求められます。職場の人とお互いに理解が進めば、新入社員がイニシエーションを乗り越えやすくなるでしょう。研修を行うときは、中途採用の社員と新卒採用の社員で内容を変えることもポイントです。

■出向

人材不足により、企業間での人材共有として出向する機会も増えています。同グループ内や提携企業であっても、異なる企業・部署という新しい環境で働くことは、イニシエーションシーンにあたります。

出向先では人間関係も業務内容も変化するため、出向社員にかかるプレッシャーやストレスは大きいものです。出向社員がこれまでと同様に成果を出せるよう、円滑な人間関係構築や業務遂行のサポートをしましょう。出向先でも、コミュニケーション力のある人をサポート役に立てるのが好ましいといえます。

■部署異動

部署異動は、ビジネスにおいて最も頻発するイニシエーションシーンです。企業全体では大きな変化ではありませんが、環境に変化のあった本人や周囲にとっては少なからず影響があるでしょう。新たな部署での新しい業務に馴染めるよう、企業側のサポートが求められます。

ただし、部署異動の場合は社内の雰囲気やルールを把握しているため、グループ・イニシエーションは乗り越えやすいでしょう。したがって、重要になるのはタスク・イニシエーションです。また、サポートする社員はマネジメントの経験を積めるため、管理職候補の人材をサポート役に付けるのが望ましいです。

早期離職を防ぐイニシエーションの重要性

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人は誰しも、新たな環境に身を置くときにはリアリティショックを受けます。本章では、このリアリティショックによる早期離職を防ぐためのイニシエーションの重要性を解説します。

リアリティショックとは?

リアリティショックとは、新たな環境に身を置く前に持つ“理想”と加入後に経験する“現実”との差異が及ぼす心理的衝撃のことを指します。

たとえば、「仕事内容・仕事量に対するギャップ」「人間関係に対するギャップ」「他者の能力に対するギャップ」「自身の評価に対するギャップ」など、理想と現実の差異は様々ですが、この「想像と違う」という感覚を心理学では“リアリティショック”と呼びます。

リアリティショックがもたらす影響

リアリティショックがもたらす影響は、ネガティブな一面だけではありません。理想と現実のギャップを受け入れて上手く順応しようとする社員にとっては、自己成長を加速させる起爆剤となることもあります。

一方で、リアリティショックが問題視されているのは、理想と現実のギャップが大きかったり、蓄積されたりすることで、組織構成を揺るがす悪影響をもたらす可能性があるからです。

組織に馴染めず良好な人間関係を構築できないと、業務に集中することができません。結果的に、業務へのモチベーションが低下したり、企業に対して不信感や無力感を抱いてメンタル不調に陥ったりします。リアリティショックによってモチベーションが低くなり、業務での成果が出ないと、企業側もその社員を信頼することができません。そのため、社員のモチベーションが更に低下し、早期離職にもつながってしまいます。

イニシエーションへの配慮による離職防止

リアリティショックによる早期離職を防ぐためには、イニシエーションへの配慮がカギを握ります。
グループ・イニシエーションを早期に克服することで、相談しやすい環境を作り出せるため、リアリティショックを和らげることができます。そして、成果を出しやすい組織的な協力体制を構築しタスク・イニシエーションも乗り越えやすくすることで、リアリティショックによる早期離職の防止につながります。
優秀な人材が能力を存分に発揮できるよう、企業としてサポート体制を整えることが重要です。

企業が取り組むべき心理学的サポート

社員がイニシエーションと上手く付き合い、新たな組織で信頼関係を築くには、本人の立ち振る舞いや努力と併せて、企業からのサポートも必要です。イニシエーションは心理学上の精神状態に大きく影響を及ぼします。そのため本章では、企業が取り組むべき心理学的サポートを紹介していきます。

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ラポール形成による信頼関係の構築

ラポール形成とは、心理学用語でセラピストとクライアントの相互の信頼関係を意味する言葉です。ラポール形成によって信頼関係を構築するためには、心が通じ合い、互いを尊重し、相手を受け入れる寛容さを持つことが重要です。

このラポール形成は、ビジネスシーンでも活用されています。新しいメンバーがイニシエーションを乗り越えやすくするためには、信頼関係を築きやすい環境づくりが必要です。先輩社員や上司の働きぶりから信頼できる組織だと認知してもらえれば、イニシエーションの成功にもつながるでしょう。

心理的安全性を確保した人材育成環境

組織を活性化させるためには、職場の「心理的安全性」を確保することが重要とされています。心理的安全性が確保された状態とは、他者が自分の発言を拒絶したり罰したりせず、自分の意見や気持ちを誰にでも安心して発言できる状態を指します。2015年にGoogle社が立ち上げたプロジェクト・アリストテレスという取り組みで、効果的なチームの条件はメンバー構成よりもチームの協力体制であると提唱し、中でも圧倒的に重要なのが「心理的安全性」であると結論付けたことで話題になりました。

つまり、職場の心理的安全性を確保できれば、チーム全体がストレスを感じることなく人材を育成することができるということです。新しく入ったメンバーも、質問や相談することに対して抵抗を感じにくくなり、イニシエーションの成功に役立ちます。

関連記事としてこちらも併せてご覧ください

心理的安全性とは?組織にもたらすメリットと実践方法について

イニシエーションを成功に導く手法や制度

イニシエーションが想定される場面において、各社それぞれの研修方法や歓迎方法があると思います。ここからは、日本でも多くの企業が取り入れている研修方法とイニシエーションの関連性を紹介します。組織活性化の手段として参考にしてください。

グループ・イニシエーションに適した手法と制度

★コーチング

コーチングとは、自発的行動を促進するコミュニケーション手法です。「問いかけて聞く」という対話を通じて、相手自身から様々な考え方や行動の選択肢を引き出して成長を支援するため、必然的にコミュニケーションの量と質が上がります。これにより、本人の成長実感に伴って組織にも馴染むことができ、グループ・イニシエーションを克服するきっかけになり得るでしょう。

★メンター制度

上司以外の年齢の近い先輩社員が“精神的”なサポート役として成長を支援するメンター制度。年齢が近いことで相談しやすい環境を作ることができ、イニシエーションでは重要指標となるラポール形成がしやすくなります。身近な先輩社員と信頼関係を築くことで、悩みや不安を都度解消することができ、グループ・イニシエーションを乗り越えやすくなります。

タスク・イニシエーションに適した制度

★OJT制度

OJT制度とは、実際の業務を通じてマンツーマンで指導を行う育成方法です。成果に直結する実務を経験しながら成長を支援することができるため、タスク・イニシエーションを乗り越える研修方法として適しています。

★エルダー制度

先輩社員による“仕事面”に重きを置いた成長支援のことを、エルダー制度と言います。業務上での悩みを相談できる相手がいることで、タスク・イニシエーションを乗り越えやすくなるでしょう。また、仕事面に重きを置くとはいえ、メンタルケアも同時に行うため、リアリティショックの解消につながり、早期離職のリスクも減らすことができます。

まとめ

組織に新たに加入するメンバーがイニシエーションを克服できれば、優秀な人材が本来の力を発揮できるにとどまらず、組織としての結束力や人材の定着率を上げることができます。
人材不足と言われている時代だからこそ、採用のその先を見据えなければなりません。経営戦略を成功に導くためにも、イニシエーションへの配慮は今後も続けていく必要がありそうですね。

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