採用広報とは?重要性、メリット、実践内容、成功のポイント、事例を紹介!

現代の企業において、優秀な人材を採用し、定着させることは成長に欠かせない要素です。だからこそ、激化する人材獲得競争の中で、企業が求める人材を引き付けるためには、戦略的な採用広報が不可欠です。
本記事では、採用広報の意味と重要性、実践内容、成功するためのポイントを簡潔に解説しています。さらに、成功企業の事例も紹介するので、あなたの採用広報戦略に新たなヒントを見つけてください。
目次
採用広報とは?
“広報”という言葉はよく聞きますが、“採用広報”はあまり聞きなれない言葉です。まずは、この違いを整理しておくと理解が深まります。
広報(Public Relations)は、組織や企業が一般の人々や関係者に対して、情報やメッセージを伝える活動全般を指します。広報の目的は、組織のイメージや評判を向上させること、信頼関係を築くこと、関係者の意識や理解を高めることなどです。
具体的には、報道関係者とのメディアリレーション、プレスリリースの配信、イベントの企画・実施、ソーシャルメディアの管理などが含まれます。広報は、一般の人々やマスメディアを通じて組織の情報を広く発信する役割を果たします。
一方、採用広報は、組織が新たな人材を募集し、採用活動を行うために行う広報活動です。採用広報の目的は、組織の魅力や文化をアピールし、優秀な人材を吸引することです。
具体的には、求人広告の作成・掲載、キャリアサイトやSNSを活用した採用情報の発信、キャリアイベントや合同企業説明会の開催などが含まれます。採用広報は、組織の採用活動を支援し、適切な人材を獲得するために、主に求職者や就職活動中の人々に向けて情報を発信します。
要約すると、広報は組織全体の情報発信やイメージ向上を目指す一方、採用広報は組織が求める人材を募集すること、そして求職者との共感形成を目的とする活動となります。

現代ビジネス環境で採用広報が欠かせない理由
採用広報が必要とされる時代や社会的背景は、下記のようなものがあります。
労働人口の減少
日本では、少子高齢化や出生率の低下により、労働力不足が深刻化しています。そのため、企業は競争力を維持するために、自社に合った優秀な人材を集める必要があります。
限られた優秀人材層を獲得するには、求人情報だけでは足りず、企業の魅力を継続的に発信することで「知ってもらう機会」を増やしていくことが必要になります。採用広報は、求職者から選ばれる存在になるための重要な戦略なのです。
情報収集の多様化
インターネットやSNSなどのデジタルメディアが普及し、求職者は自分に合った企業や仕事を簡単に探すことが可能となっています。企業もそれに対応して、オンライン上での情報発信やコミュニケーションを強化する必要があります。
企業ブランディングとの一体化
採用広報は、「採用活動の一環」という考え方よりも、「企業ブランディング戦略の延長」という考え方で取り組む企業が増えています。企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と採用広報で発信する情報には一貫性が欠かせないため、広報担当とマーケティング組織と人事組織の3分野が連携したブランディング設計が求められているのです。
以上が、なぜ採用広報が現代の企業にとって必要なのかの要点です。採用広報を活用することで、企業は競争力のある人材を獲得し、成長につなげることができるのです。
採用広報のメリットと効果
それでは、次に採用広報のメリットをご紹介しましょう。
採用広報には多くのメリットと効果がありますが、その中でも最も特長的な4つのポイントをご紹介します。
1. 企業が求める人材と応募者のミスマッチを防ぐ
2. 企業の活動や制度をPRできる
3. 採用費用を抑えられる
4. 従業員エンゲージメントが向上する
1.企業が求める人材と応募者のミスマッチを防ぐ
採用広報の活動では、求人広告や面接だけでは伝えきれない「現場のリアル」を伝えることができます。たとえば、実際の仕事内容や職場環境、トッププレイヤーの従業員インタビュー、1日の仕事の流れ、社内イベントの様子などを発信することで、求職者は自身が働く姿を具体的に想像しやすくなり、企業理解や仕事理解を深めることができます。
結果、自社が求める人材にマッチする人材を採用することができます。また、採用広報を行うことで、入社後のミスマッチを最小限に抑え、離職率を下げることができます。
採用広報を実施することで、採用活動が「入社させる」取り組みではなく、「入社に導き、入社後も活躍してもらう」ための土台となっていることが分かっていただけたかと思います。
2.企業の活動や制度をPRできる
採用広報は、消費者や顧客、取引先などに向けた企業広報とは異なり、自社を就職先として選んでもらうための関係構築を行います。そのため、企業のビジョンや文化、社会貢献などをアピールすることや、自社独自の制度や従業員からの評価が高い福利厚生等をアピールすることで、応募者に自社に興味を持ってもらい、採用の成功率を高めることができます。
3.採用費用を抑えられる
採用広報は、応募者に対して積極的にアプローチするだけでなく、応募者を増やすことや採用を成功させることが目的です。一見すると、広報にコストをかけるのは負担と感じるかもしれませんが、そうではありません。採用広報は長期的には採用コストを下げる有効投資になり得ます。
まず、自社発信による“オーガニック応募”が増加します。SNSやブログを通じて自社への興味を醸成できた求職者が増え、求人広告(費用投資)や転職エージェントの紹介(報酬支払)に頼らない応募が増加してくるでしょう。“応募の前からファンにして自社への移籍を促進する”という取り組みです。
そして、企業理解の深い応募者が増えることで、書類選考や面接選考での時間的コストも効率化できるでしょう。また、人材紹介会社や求人媒体、転職ポータルサイトへの依存度も徐々に減っていき、採用コストの最適化に繋がっていくのです。
4. 従業員エンゲージメントが向上する
採用広報の効果は社外だけではなく、社内にも波及します。従業員としては、自身がインタビューに登場したり、ブログで自身の仕事のやりがいや仕事観を発信したりすることで、「自分が会社の魅力を作っている」という自覚が生まれます。
これにより、従業員エンゲージメントの向上に繋がります。組織への愛着や貢献意欲が高まり、さらに、社外への発信を通じて自社文化を再確認できるため、“社内ブランディング”にも一役買う取り組みに位置付けられているのです。
以上、採用広報には多くのメリットと効果がありますが、その中でも最も特長的な4つのポイントをご紹介しました。
採用広報の具体的取り組み5選
採用広報では、具体的にどのような取り組みを実践するのでしょうか?ここでは、昨今の採用広報で重要とされる順に5つご紹介していきます。
その① 採用ブログやSNSの開設・運用
その② 採用ホームページの企画・制作
その③ インターンや会社説明会の企画・実施
その④ 就活ナビサイトへの求人掲載
その⑤ 交通広告やテレビCMなどでの認知拡大
その① 採用ブログやSNSの開設・運用
Wantedly、note、Twitterなどの採用ブログやSNSを開設して運用します。採用ブログやSNSは、自社の仕事内容や職場環境、従業員の声などを発信することで、応募者に対して自社の魅力や特徴を伝えることができます。また、応募者とのコミュニケーションや関係構築にも役立ちます。
ブログやSNSを始めるときのポイントは以下です。
ブログ管理・執筆担当者を決める
ブログの記事管理や執筆担当者を明確にすることで、ブログの方向性や更新頻度を統一することができます。また、従業員の意見や感想を集めることで、ブログのネタや内容を豊富にすることができます。
ブログに書くべきテーマやネタを決める
採用ブログでは、自社の仕事内容や職場環境、従業員の声などを発信することがおすすめです。そこで応募者に対して自社の魅力や特徴を伝えることができます。また、応募者の興味や関心に合わせて、ブログのテーマやネタを変えることも効果的です。
採用サイト内でブログを開設する
採用サイト内でブログを開設することで、応募者がブログを読んだ後にすぐに応募できるようにすることができます。また、採用サイトとブログのデザインやトーンを統一することで、応募者に対して一貫した印象を与えることができます。
たとえば、弊社プロフェッショナルバンクでは、採用サイト内に「ヘッドハンターの独り言」というブログを展開しています。

その② 採用ホームページの企画・制作
採用ホームページは、応募者が最初に訪れる場所であり、自社の採用情報や求人内容をわかりやすく伝えることが重要です。また、応募プロセスやエントリー方法も明確にすることで、応募者の行動を促すことができます。
採用ホームページでも、作成するときに抑えておきたいポイントがあります。
採用ホームページの目的やターゲットを明確にする
採用ホームページは、自社の採用情報や求人内容をわかりやすく伝えることが重要です。そのためには、採用ホームページの目的やターゲットを明確にすることが必要です。たとえば、どのような人材を求めているか、どのようなメッセージを伝えたいか、どのようなアクションを促したいかなどを考えることができます。
採用ホームページに取り入れたいコンテンツを決める
採用ホームページには、応募者に対して自社の魅力や特徴を伝えるコンテンツを取り入れることがおすすめです。
たとえば、自社のビジョンやミッション、仕事内容や職種別の特徴、代表者メッセージ、従業員の声やインタビュー、福利厚生や研修制度などが挙げられます。また、コンテンツは応募者の興味や関心に合わせて、写真や動画などの視覚的な要素も加えることも効果的です。

採用ホームページのデザインやレイアウトを工夫する
採用ホームページは、応募者が最初に訪れる場所であり、自社の印象を決める要素のひとつです。そのためには、採用ホームページのデザインやレイアウトを工夫することが必要です。
たとえば、自社のブランドカラーやロゴなどを使って統一感を出すことや、見出しや段落などを使って情報を整理すること、応募プロセスやエントリー方法などを明確にすることなどが挙げられます。
採用ホームページについてもっと知りたい方はこちら
その③ インターンや会社説明会の企画・実施
インターンは、学生に自社の仕事内容や社風を体験してもらうことで、興味や関心を高める採用手法です。インターンの種類や期間、内容は企業によって様々ですが、一般的には夏休みや冬休みなどの長期休暇中に行われます。
会社説明会は、学生に自社の事業内容やビジョン、働く環境やメリットなどを紹介する採用イベントです。会社説明会では、パワーポイントなどの資料を用いてプレゼンテーションを行うことが多く、学生からの質問にも回答します。
インターンや会社説明会の実施には、以下のポイントをさせえておくと良いでしょう。
説明会の目的を明確にする
企業の魅力をアピールするだけでなく、参加者に企業理解や仕事理解を深めてもらうことが目的です。
参加者に合わせた内容を用意する
参加者の学年や学部、興味分野などに合わせた内容を用意し、参加者に興味を持ってもらえるようにします。
参加者とのコミュニケーションを大切にする
質問や意見交換など、参加者とのコミュニケーションを大切にし、参加者が企業理解や仕事理解を深めることができるようにします。近年では、従来の「説明会型」で一方通行のコミュニケーションではなく、カジュアルトークイベントに代表されるような「ブランド体験型」へとイベント内容が進化しています。
動画やライブ配信を使った採用に注目
動画やライブ配信は、文章や写真よりも魅力的に情報を伝えることができます。また、求職者とのコミュニケーションも取りやすくなります。たとえば、オンライン説明会や社内見学、従業員インタビューなどを動画やライブ配信で行うことは有効です。
その④ 就活ナビサイトへの求人掲載
就活ナビサイトとは、学生が就職活動に必要な情報を提供するウェブサイトのことです。代表的なサイトは「マイナビ」と「リクナビ」で、2万社以上の企業が求人を掲載しています。
就活ナビサイトへの求人掲載で留意する点、うまくいくポイントは以下の通りです。
- 掲載する求人情報は、自社の事業内容や強み、働く環境や条件などを具体的かつ分かりやすく伝えるようにする
- 掲載する写真や動画は、自社の雰囲気や従業員の様子をリアルに表現するものを選ぶ
- 掲載する求人情報は、定期的に更新し、最新の情報を提供する
- 掲載する求人情報は、学生の興味や関心に合わせてカスタマイズし、多様なニーズに応える
その⑤ 交通広告やテレビCMなどでの認知拡大
交通広告やテレビCMなどは、オフライン上で自社の存在感や知名度を高めることができる施策です。応募者以外にも消費者や顧客などにもアピールすることができます。
交通広告やテレビCMなどでの認知拡大を行う際のポイントは以下の通りです。
- 広告には自社の事業内容や強み、社風などを分かりやすく表現する
- 広告には自社の採用サイトやSNSなどへ誘導する
- 広告には学生の興味や関心を引くキャッチコピーやキャラクターなどを使用する
また、理想の体験設計としては、以下のような行動が挙げられます。
- 「新幹線で地方出張から帰ると、駅で●●社の広告を見た」
- 「インパクトのあるメッセージだったので、気になってその広告企業のSNSをフォロー」
- 「SNSから採用サイトに遷移したら、従業員のnoteをみて共感!」
- 「応募してみようと思い、エントリーをクリック」
以上が採用広報で実施する内容でした。
採用広報で成功している企業に共通しているのは、発信チャネルを“区別”して設計するのではなく、“接続”して設計していることです。上記で挙げた取り組みを個別最適化するのではなく、全体を以下のように統合的に繋げています。
- SNS ➡ 採用サイト ➡ 応募フォーム
- 採用イベント ➡ 従業員インタビュー ➡ 採用サイト ➡ 応募フォーム
採用広報と一言でいっても多岐に渡りますから最初からすべてを完璧に実施するのは難しいでしょう。本章では現代の採用広報で重要と思われる順に記していますので、まずはブログやSNSから1歩ずつ始めてみてはいかがでしょうか。
採用広報の成功ポイント
採用広報を成功させる要素は数多く存在しています。また、上記の実践する取組み単位で捉えると、さらに多くの要素が出てきます。そのため、ここでは採用広報全体を捉えた時に最低限おさえておきたいポイントを3つに絞ってご紹介します。
1.自社の理念や想いへの理解と共感
2.ターゲットの明確化と適切な媒体の選択
3.PDCAサイクルによる効果検証と改善
1.自社の理念や想いへの理解と共感
採用広報に関わる人は、自社のビジョンやミッション、文化などを深く理解し、それを伝えることができる人である必要があります。
会社のビジョンやミッションに共感しておらず、文化にも馴染んでいない担当者がつくり笑顔の説明会でのスピーチをしても、PRとなる個人的な体験や思いが、本音が学生に届くことはないでしょう。応募者や学生にも自社の理念や想いに共感してもらえるように、広告やコンテンツに反映させることが大切です。
採用広報を「人事の仕事」に留まらせることなく、経営戦略と従業員のホンネが一体となった発信にすることで、求職者の心に沁みるメッセージになるでしょう。

2.ターゲットの明確化と適切な媒体の選択
採用広報では、どのような人材を求めているか、どのようなメッセージを伝えたいかを明確にし、それに合った媒体を選択することが重要です。たとえば、若い世代にアピールしたい場合は、SNSや動画などの活用をより重視すると効果的です。また、媒体ごとの特徴や強みを理解し、それに沿った広告やコンテンツを作成することも必要です。

3.PDCAサイクルによる効果検証と改善
採用広報では、目的やKPIを設定し、実施した広告やコンテンツの効果を定期的に測定し、分析することが求められます。また、その結果をもとに、改善点や課題を見つけ、次の施策に反映させることで、採用広報の品質を高めることができます。
KPI(主要指標)の例
| 目的 | KPI指標例 |
| 認知拡大 | SNSインプレッション数、ページビュー数、クリック数 |
| 興味醸成 | サイト滞在時間、サイト直帰率、動画再生回数 |
| 応募促進 | 応募数、応募経路別コンバージョン率 |
| 定着支援 | 内定承諾率、入社後6ヶ月の継続就業率 |
数値の良いコンテンツや時間帯を分析して、単なる“運用”ではなく、採用を成功に導くための数字的根拠のある“改善”と位置付けて、採用広報を進めていくことが採用力の強化に直結します。
全従業員でマネしたい採用広報事例を紹介!
以下に、日本の企業が実践する採用広報でぜひ、参考にしてもらいたい事例をご紹介します。
株式会社SmartHR
SmartHRは、セールス部門やカスタマーサポート部門、マーケティングなど様々な部門の従業員がnoteのブログで仕事の進め方やノウハウ、経験談などを時には生々しく、時には非公開にした方が良いようなスキルまでを紹介しています。
リアルに描かれているので、ついつい読み込んでしまうのですが、『●●の仕事(各部門)に興味を持って下さった方は、ぜひ下記リンクよりご連絡ください!』という採用ページへの誘導もしっかり設置しています。自分が今携わる仕事、これから携わりたい仕事を調べていたうちにSmartHRのブログに行き着き、ついつい読んでしまって採用ページも見てしまった。というユーザーは多いのではないかと思います。
≪SmartHRのnote≫
https://note.com/smarthr_co/

求職者コミュニケーションの最前線にある採用広報
採用広報は自社の魅力や働くイメージを求職者に伝える重要な活動です。相手と向かい合いながら実践することもあれば、顔が見えない相手にひたすらメッセージを投げかけることもあるでしょう。いずれにしても言えるのは、自社の魅力を理解し、方針に共感し、そして採用戦略や目標に合わせた効果的なメッセージを創造して届けることが重要ということです。
採用広報は領域が広いですし、多くの企業が取り組んでいますから、採用広報の事例やノウハウについては、インターネットで検索してみると参考になるかと思います。






