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働き方自由自在!「フレキシブル・ワーク」

働き方自由自在!「フレキシブル・ワーク」

朝は定時に出社して、夕方5時まで仕事。それでも片付かない業務は残業して帳尻を合わせる…。これが、日本の大多数の労働スタイルです。私たちは長らく、こうした働き方が当たり前のものだと思ってきました。ですが、その「働き方の常識」に、変革が起こりつつあります。

「20世紀型労働環境」からの脱却

近年、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉をよく耳にするようになりました。同じような意味を持つものとして「ファミリー・フレンドリー」という言葉もありますが、働き方の変革を促すための枕詞として、よく使われています。これまで私たちの多くは、固定された働き方の中に閉じ込められていました。同じ時間、同じ場所に集まって仕事をする。それで仕事が終わらなければ残業する。ほとんどの企業がそうしたスタイルで業務を行ってきました。

ですが、人は仕事をするために生きているわけではありません。知的興味のために学校で学んだり、家族とともに過ごす時間を持ったりすることも、その人の人生をより豊かなものにするために必要なことです。ですが、固定化された働き方に縛られていては、ワーク・ライフ・バランス…仕事と人生のバランスを良好に保つことができません。

では、どうすればいいのか?そうした課題を解決してくれるのが「フレキシブル・ワーク」なのです。これまで常識とされてきた働き方のスタイルを捨て去り、新しい働き方を摸索する動きは、すでに多くの企業で見られています。それはまさしく、「20世紀型労働環境」からの脱却ともいえます。

インフラの進歩で実現したフレキシブル・ワーク

1980年代の後半、労働基準法の改正によって、フレックスタイム制が導入されました。これは「従来型の働き方からの脱却」という流れを、多くの人々が意識し始めた出来事でしょう。もっとも、当時の労働環境では社内外とのコミュニケーションがうまくいかず、難しい面もあったようです。

ですが、情報通信インフラが格段に進歩した現在では、そのような不便はほとんどありません。ノートPCやタブレット、それにネットに接続できる環境があれば、どこでも仕事ができます。各種資料や成果物といったデータは、クラウドに保管しておけばプリントアウトする必要もなく、紛失といったセキュリティ面でも安心です。社内外のメンバーとは、メールのほか各種チャットツールが便利ですし、遠隔地のクライアントとはビデオ通話サービスを使って会議や商談を行うこともできます。

こうした環境の整備とともに、ここ数年で時間や場所の制約を受けない「テレワーク」が普及してきました。この方法なら、例えば自宅で育児や介護をしながら仕事をすることができますし、浮いた通勤時間を自分のために使うこともできます。仕事のために自分の生活を犠牲にすることなく、仕事と生活の両立を、高度な水準で実現することができるのです。

フレキシブル・ワークの具体例

フレキシブル・ワークは、欧米の先進各国で積極的な取組みが行われています。その具体的な内容は国によってさまざまですが、国情を反映した上で、法整備などとともに着実な歩みを進めているように見えます。日本でも、フレキシブル・ワークを積極的に採用する企業が増えています。フレキシブル・ワークは、IT企業やベンチャーとの親和性が高いようですが、それ以外の業界でも、さまざまな形で柔軟な就労環境の整備に向かっている企業はあります。

生保業界のある企業では、一般職を対象として「仕事も給料も半分にする」という制度を導入しました。他のスタッフの半分しか仕事をしないが、その代わり給料も半分というわけですから、短時間勤務にありがちな「肩身の狭さ」がありません。

また、通信系のある企業では、社員が自分のデスクを持たず、空いている席で自分のノートPCを広げて仕事をする「フリーアドレス」を導入して成果を上げています。部署ごとに区切られていた仕切りを取り払うことで、部署間の交流が活発化し、刺激となって、これまで以上に多くのプロジェクトが立ち上がるようになったといいます。

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ライフイベントを妨げず、生産性向上を実現

フレキシブル・ワークは、一見すると福利厚生の一環ととらえられがちです。確かにそうした面もあるのですが、それ以上に企業にとっては、人事戦略のひとつの方法なのです。

人の一生にはいくつものライフイベントがあります。結婚、子育て、親の介護…。さらに女性には、出産という最大級のイベントがあり、少なくとも数ヵ月間はフルタイムでの勤務が難しい状況に置かれます。もし、その女性が有能な人材であったら、彼女のライフイベントをサポートする環境が用意されていなかったばかりに、企業は彼女を失い、有能な人材を一人、野に埋めさせることになってしまうのです。少子化の話を持ち出すまでもなく、これは企業にとって大きなマイナスでしょう。

前項の例にも見られるように、フレキシブル・ワークによって生産性を高めることも期待できます。時間や場所に縛られることがなくなれば、余暇が増えます。そこで心身を休めれば、新たなアイディアが生まれるかもしれません。また、余暇を使って知識や技術を習得すれば、仕事の質をより高めることにもつながるでしょう。働く人それぞれが多様性を持ち、その多様性がぶつかり、混じり合うことで、新たなものが生まれてくるのです。

フレキシブル・ワークは、働き手にだけメリットがあるしくみではありません。ワーク・ライフ・バランスを良好に保ち、それによって生産性を高めることができる、企業にとってもメリットがあるしくみなのです。

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