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【女性の社会進出】日本で「女性リーダー」を育てるためには

【女性の社会進出】日本で「女性リーダー」を育てるためには

株式会社リクルートホールディングスの研究機関、リクルートワークス研究所。人材が活きる企業経営と、一人ひとりが活き活きと働ける社会の実現を目指し、さまざまな調査研究活動を行っています。今回は同所が2013年に発表した提案書「提案 女性リーダーをめぐる日本企業の宿題」を紹介しながら、女性リーダーの育成について考えることにしましょう。

女性の進出、日本は先進国では最低レベル

女性の社会進出が日本で声高に言われ始めてから、すでに長い時間が過ぎています。1986年に施行された「男女雇用機会均等法」は、その後何度かの改正を経て、採用や昇進についての男女差が解消されてきました。2003年には、政府主導でビジネスシーンでの女性の活躍をさらに後押しするべく、指針を定めました。このときの目標は「2020年までに管理職の女性比率を30%にする」というもので、この目標値を達成するべく、官民一体となってのさまざまな活動がなされました。
こうした活動は、ある程度の成果を上げたようです。ですがそれは、当時の政府の想定から遥かにかけ離れたものでした。厚生労働省の「平成24年 賃金構造基本統計調査」によると、管理職に占める女性の割合は課長クラスで7.9%、部長クラスでは4.9%。長期的には増加傾向にありますが、「遅々として進まず」というのが現実です。
世界的に見ても、日本の立ち遅れは明らかです。男女格差を測る物差しとなる「ジェンダー・ギャップ指数」の数値は、先進国では最低レベル、2015年の時点で101位という低さです(内閣府男女共同参画局総務課調べ)。

ライフイベントを踏まえた育成プランが必須

女性管理職が増えていかない、育たない。その理由はいろいろ挙げられますが、最も大きな理由は「出産と子育てという女性のライフイベントに、職場が対応できていない」という点でしょう。
先にお話しした政府の指針に合わせ、これまでに多くの企業が女性の活躍推進に力を入れてきました。就労環境の整備、産休・育休制度の充実、その後の復帰をサポートするしくみ。そうした活動の成果として、女性が働く環境は間違いなく向上しているはずです。
ですが、そうした変化は「女性の『定着』を進めるものではあるが、『活用』を進めるものではなかった」と、この提案書では語られています。単に女性が働きやすい環境を作るだけでは、女性管理職、さらには女性リーダーを生み出すための力にはならないというのです。
考えてみれば、それは当然のことです。働きやすい職場にするために就労環境を整えたり、就業規則を見直したりすることと、「次世代のリーダーを育成する」ということは、まったく別の話です。ですから、女性リーダーを生み出すためには、女性のライフイベントを織り込んだ上で、成長を実現するしくみが必要です。そして、そのために何をすべきかを、この提案書は語っています。

企業努力に加えて、教育機関や政府との連携がカギ

この提案書は、その詳細がウェブ上で公開されています。ですから、具体的な内容は個々にご覧いただいたほうが良いでしょう。その一つひとつの項目はどれも実際的であり、また大いに実効性が期待できます。ここに挙げられたすべての対応ができる企業というのは限られるでしょうが、その実現性について検討し、実践していくことはとても有意義なことだと思われます。
ただ、これは提案書の中で何度も触れられていますが、この提案を実践するには、かなりの困難を伴います。それだけに、そのしくみを用意する企業側はもちろん、成長していこうとする女性自身にも、それなりの覚悟は必要でしょう。10年、15年先を見据えた人生設計を立てて、そのビジョンに沿ってその時々の課題をクリアしていくことが求められるからです。
さらに、女性リーダー育成のためのこのしくみをより強固なものにするには、企業努力だけで完結することはできません。成長スピードを高めるために、就業前…つまり学生時代からリーダーシップ教育を受けておくことが望まれますし、法的規制を強化して労働時間の短縮化を図ることで、「残業ができない」という育児中女性のハンディキャップを取り外すことも必要です。
つまり、教育機関や政府も連携した大きな枠組みの中で実践してこそ、その成果をいっそう高めることができるのです。

現状を見直した上で確実な施策の実現を

女性リーダーを輩出するために、この提案書はいろいろな角度から有意義な提案をしています。そして最後に、「共働きを前提とした社会への脱皮が必要」という提言をしています。
例えば郵便局や役所は、平日の昼間しか開いていません。子供の学校行事やPTAの集まりなども同様です。つまり、世の中のしくみ全般が、「お母さんは家事・育児担当で、平日の昼間はいつも家にいる」という前提なのです。そして、これこそが女性リーダーの増加を阻害していると提案書は断じています。
これは日本での歴史的、あるいは文化的な背景から生まれた慣習ですので、今すぐ変えることは難しいでしょう。長い時間をかけて根付いた文化というものは、一朝一夕に変えられるものではありません。たとえ何かしらのルールを作ったところで、それに人々を従わせるのは簡単ではないはずです。
同じことは企業にも当てはまります。就労環境を整え、規則を直したとしても、その企業文化の中に女性の進出に消極的な要素があれば、実効性は上がりません。そこから改善しようとするなら、企業文化や従業員の意識から見直し、再検討する必要があります。その上で、この提案書で語られた施策をしっかり実現していくことです。それによって初めて、女性リーダーが育っていく環境が作られていくものと思われます。

■提案 女性リーダーをめぐる日本企業の宿題
http://www.works-i.com/research/jyosei.html

■リクルートワークス研究所
http://www.works-i.com/

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