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「コンピテンシー面接」で企業が求める人材を客観的評価で採用するための成功法

「コンピテンシー面接」で企業が求める人材を客観的評価で採用するための成功法

優秀だと判断して採用した多くの人材が、期待したほどの成果を出せないという課題を抱える企業があります。その原因として、面接担当者が企業に合わない人材を採用している可能性が考えられます。「コンピテンシー面接」はこのような状況を効果的に変える可能性を秘めている採用手法です。自社にあった行動特性の把握を目指すコンピテンシー面接は、多くの企業で導入が進んでいます。

コンピテンシー面接とは行動特性の把握に注目した面接方法

「コンピテンシー」とは「ある仕事や役割において優秀な成果を残す人に共通する思考や行動特性」のこと。コンピテンシー面接は、この行動特性の把握に焦点を当てて面接を行う手法です。自社におけるコンピテンシーを把握したうえで、採用面接の場で活かすことができれば、自社で活躍できる人材を発見・獲得しやすくなります。

従来の志望動機や第一印象を重視する採用手法では、面接を行う採用担当者や役員の「直感」や「経験」といった主観的な判断が大きな力を持っていました。主観では、自社で活躍できる力とは別の側面から応募者の合否が判断されることもあり、精度の高い人材採用に課題を残していました。

コンピテンシー面接を導入すれば、従来の主観が中心の面接から客観的な評価基準を設定したより根拠のある科学的な面接に移行できるため、自社で活躍できる人材をより高い確率で獲得できます。

現在、コンピテンシー面接は、東京海上日動やAIU保険の採用試験、国家公務員試験、聖マリアンナ医科大学医学部試験などに導入されており、一定の成果を上げているようです。

コンピテンシー面接の設計とメリット

コンピテンシー面接を行うためには、事前の準備が必要です。求人を出す職種職責に応じて、自社で成果を上げている同じ立場の人材がどのように考えて行動しているのか、その価値観や行動特性の調査を行い把握しておかなければなりません。

この作業を通して判明する「自社で成果を上げる人材の価値観・行動特性」が、コンピテンシー面接での主な評価基準となります。

コンピテンシー面接の考え方や実践方法が紹介されている『コンピテンシー面接マニュアル』(川上真史・斎藤亮三著 弘文堂 2005)によると、コンピテンシーはレベルに応じて、以下の5段階評価で行われます。

*レベル1 受動行動
主体性や思考の一貫性が感じられないその場しのぎの行動

*レベル2 通常行動
誰でもそうするだろうという普通の行動を行えるが独自の意図は感じられない

*レベル3 能動・主体的行動
最善策を選択し、実行できる。行動の背景に自分なりの意図や判断がある

*レベル4 想像・課題解決行動
状況を改善していく独創的なアイデアを出し高い成果を生み出せる

*レベル5 パラダイム転換行動
既成概念を覆すアイデアを出し、新しい価値を生み出せる

レベルの高いコンピテンシーを発揮できる人材ほど、より成果を生み出しやすいと考えられています。

質問では「過去に取り組んだことの具体的な状況、そこでどのように考えて行動したのか、成果は出たか」ということを深く掘り下げていきます。そこで得られた回答から、あらかじめ決められた評価基準に沿って、コンピテンシーレベルを段階的に評価し、自社で成果を上げられる人材と似ているかどうかを判断していくのです。

以上のような特性から、コンピテンシー面接には、「評価基準が明確に示されているので、獲得後の人材の動向を見て、その後の面接の採用基準にフィードバックできる」「客観的な採用基準が示されているため、面接の評価にばらつきが出にくく面接しやすい」というメリットもあります。

コンピテンシー面接の質問例

面接での具体的な質問例を見ていきます。コンピテンシー面接は、具体的には応募者のひとつのエピソードを深く掘り下げるかたちで行われます。再び『コンピテンシー面接マニュアル』を参考にすると、基本的なコンピテンシー面接は以下のステップを順に踏んでいくものです。

*ステップ1 取組み課題、テーマの特定
*ステップ2 第1プロセスの特定
*ステップ3 第1場面の特定
*ステップ4 行動事例の列挙、確認
*ステップ5 第1場面での工夫点
*ステップ6 第2場面の特定

※ステップ6以降は、ステップ4,5の繰り返し

少しわかりにくいので、各ステップ別の質問例を見てみましょう。

<ステップ 質問例>
ステップ1 今まで、自分が最も活躍できたシチュエーションと立場を教えてください。
ステップ2 その立場のなかで具体的にはどのような仕事に取り組まれたのですか、具体的な課題や成果は?
ステップ3 愚痴的にあなたが行ったのは、どんなことでしたか?いつどこで誰と行いましたか?
ステップ4 その成果を上げるあたって、具体的にはどう行動しましたか、何が成果に結びついたと思いますか?
ステップ5 どのような考えから、そのような行動をしたのですか。また工夫したポイントは?
ステップ6 その次に、何を行いましたか?

このように、コンピテンシー面接では、掘り下げたいテーマ(具体的な活動や実績)を設定し、テーマがどのような状況で行われたのか(具体的な状況や応募者の立場、そのときの課題など)を確認し、そのテーマのなかで応募者がどのような考えに基づいて具体的な行動を行い、課題を解決してどのような達成を得たのかを質問から把握し、能力を見極めていきます。

ひとつのテーマを深堀していくため、その場しのぎの回答は通用しません。第一印象や受け答えの印象を排除した形で、応募者の能力をより客観的に高い精度で評価できるのです。

コンピテンシー面接で企業を変える

コンピテンシー面接を効果的に活用するためには、コンピテンシーを把握するための自社のモデル社員の特定作業や面接時の質問の仕方が非常に重要ですが、基本的な方法が決まっているので、難しくはありません。コンピテンシー面接の導入は従来の方法とは違った人材の獲得を促し、企業が変わるきっかけとなる可能性を秘めています。

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