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企業の制度事例に学ぶ福利厚生の目指すべき未来

企業の制度事例に学ぶ福利厚生の目指すべき未来

社員が健康で楽しく暮らし、仕事へのモチベーションを維持していくために欠かせない福利厚生。ですが近年の福利厚生は、従来型からの方向転換を迫られているといわれています。どこにどのような課題があり、どのような方向へと舵を切れば良いのでしょうか。

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福利厚生は、企業の成果や業績に直接関わるものではありません。営利組織である企業として見れば、業務の本筋から離れた存在ともいえます。当然ながら、そこにかけるコストや人員には限りがあります。高度経済成長の時代、あるいはバブル景気に沸いたころなら、会社が自前の保養施設を持つこともできましたが、昨今の経済状況ではそうはいきません。

さらに、目まぐるしく変わる市場の変化に対応し、グローバルにビジネスを進めていくためには、コストも人材も必要な時期に、必要な場所へ投下していく必要があります。そうなれば、収益に直接結びつかない福利厚生は、二の次、三の次となりがちです。

経営スタイルの変化ということも、福利厚生に大きな影を落としています。終身雇用制度が当たり前だった時代なら、「会社は一家、社員は家族」という思想も通用したでしょう。社員旅行や運動会などで社員同士の親睦を図り、組織全体の結束力を高めようという発想もありました。ですが現代は、社員側の意識も変化しており、より個人に近い部分でのケアを求める方向へとシフトしています。「大掛かりな社員旅行を企画するくらいなら、個人旅行に補助金を出してくれたほうがいい」というわけです。

どのような施策を打ち出すべきか

このように、福利厚生はそれ自体がいくつもの課題や問題を抱えています。とはいえ、適切な福利厚生は、社員相互のコミュニケーションを促進して組織力を高めたり、個人的な問題を解決・予防することで、社員の就労意欲を強固にしたりすることができます。それを思えば、ないがしろにできるものではありません。では、限られたコストと人員で、より効果的な施策を打ち出すには、どうすれば良いのでしょうか?

まずひとつには、自社に合った独自性を持たせることです。例えば社員の男女比や年齢構成などは、施策を考える上で大いに参考になります。女性が多ければ女性に優しい施策を、年配の社員が多いのならそれに合わせたメニューを用意するのです。「新しもの好き」「部署間の垣根が低い」など、社内の文化や気風も考えれば、社員に喜んで活用してもらうことができるでしょう。

また、利用する人としない人とのあいだで、不公平感が出てこないように配慮することも必要です。福利厚生は基本的に全社員を対象にしたものですが、利用者は偏りがちです。ですから、できるだけ多くの社員に活用してもらうにはどのようなメニューがいいのか、広報も含めてしっかり考えたいところです。

ユニークな福利厚生制度あれこれ

ここで、ユニークな福利厚生の実例について、いくつか見ていくことにしましょう。企業の規模やその文化には違いがありますから、すぐに自社で実践できるものではないかもしれませんが、大いに参考になるはずです。

・個人旅行支援金制度
本人の旅費の一部を会社が負担する制度です。この会社の社員は多くが20代で、頻繁に旅行に出掛ける資金が乏しいので、旅費を補助して、仕事以外の場面で刺激を受ける機会を増やそうという狙いがあります。

・学び休暇制度
3年に一度、自分の好きなことを学ぶために1ヵ月の有給休暇が取れる制度です。個人の学習意欲を満たし、リフレッシュするとともに、そこで得た知識や経験を業務に活かす狙いがあります。

・家族休暇制度
家族や家庭の事情に合わせ、必要なときに必要なだけ、最長6年まで休業できる制度です。家族の急な入院や親の介護など、必要に迫られたときに柔軟に使えます。

・業績連動型退職金制度
30歳から積み立てを始めて、40歳からは業績と連動した営業利益の一定割額を受け取ることができる制度です。

・バーゲン半休
バーゲンの初日に半休を取ることができるユニークな制度です。心ゆくまでショッピングを楽しんでもらって気分転換を図るのはもちろん、市場や消費者動向を肌で直接感じ取るなど、マーケティングに役立ててもらう狙いもあります。

このほか、失恋したときに数日の休みを取れる「失恋休暇」、恋人や家族の誕生日が有給になる「LOVE休暇」など、ユニークな福利厚生を実施している会社は意外なほどに多くあります。

今後の福利厚生をどう考えるか

前項でお話ししたようなユニークな施策は、どの会社でもできるものではないかもしれません。ですが、これらの施策はいずれも社員からの評判が良く、大いに活用されているようです。そうした施策にゴーサインを出す会社の気風に惹かれて入社を希望する新卒もいるといいますから、「業務の本筋ではない」と軽視してはいけないのかもしれません。

いずれにせよ、福利厚生はより多くの社員に利用してもらうことがポイントです。それには、「カフェテリア形式」を採り入れるのも良いでしょう。これは、社員全員にポイントを付与していき、そのポイントに応じて好きなメニューを選ぶというスタイルです。社員にとっては、自分に最も必要なサポートを得ることができますから、メリットは大きいでしょう。

また、コストと人員の問題が大きな障害になっているのなら、福利厚生を丸ごとアウトソースするというのもひとつの方法です。実際のところ、こうした動きは近年ますます増えていますし、それとともにサービスを提供する側も、低コストで魅力的なメニューを多くそろえています。

さらに、個人主義・成果主義の弊害が表面化してきた反省を踏まえ、社内運動会や社員旅行を復活させるケースも見受けられます。組織の結束を固めるには古典的な手法ではありますが、やはり「社員一丸」のイベントにはそれだけの効果がある、ということなのでしょう。

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