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キャリアアンカーとは?8つのタイプと診断方法やキャリア選択時の活かし方を解説!

キャリアアンカーとは?8つのタイプと診断方法やキャリア選択時の活かし方を解説!

「リモートワークの普及」「AIの発達」「年功序列や終身雇用の撤廃」などの時代背景に合わせ、個人の働き方やライフスタイルがますます多様化する現代の日本。働き手にとっては、自分の意志で自分のキャリアを形成していくことが求められる時代、自分の意志でキャリアを形成していくことが求められる時代になりました。

そこで重要視されるのは「キャリア選択における軸や価値観の明確化」ではないでしょうか。本記事では、キャリア形成において譲れない価値観である「キャリアアンカー」について、その診断方法やキャリア選択にあたっての活用方法を解説します。

キャリアアンカーとは?

キャリアアンカーとは、個人がキャリアを形成する際に最も大切にする価値観や欲求のことを指します。

船において「錨」を意味する「アンカー」が船体を安定させるように、キャリアにおけるアンカーを把握することで、自分が仕事や人生に求めるものを明確にし、納得のいく働き方を選びやすくなるとされています。

MIT(マサチューセッツ工科大学)のエドガー・シャイン教授(組織心理学者)が1970年代に提唱したキャリア形成の概念で、英語では「career anchor」と表記されます。

注意しておきたいのは、キャリアアンカーは「周囲の変化や年齢にかかわらず不動なものである」ということです。例えばいま30代の方の場合、今後40代、50代とキャリアを重ね、職場や一緒に働くメンバー、あるいは家族のライフステージ等に変化があったとしても、一貫してブレない軸のことを指します。今だけ、その一瞬だけ大切にしたい価値観や考え方はキャリアアンカーに該当しないものとされています。

キャリアアンカーと間違えやすい/混同しやすい用語

世の中には「キャリア〇〇」「ワーク〇〇」のような言葉が溢れており、キャリアアンカーと似た意味を持つ用語もたくさんあります。ここでは類似の用語との違いについて解説します。

ワークバリュー

ワークバリューは、仕事において重要視する価値観や信念を指します。これはキャリアアンカーと非常に近い概念ですが、以下のように区分できます。

・キャリアアンカー:キャリア全体を捉えた価値観や考え方。仕事人生そのものにおける本質的動機や深層の価値観を指す。
・ワークバリュー:仕事そのものに焦点を絞った価値観や考え方。業務内容、労働環境、人間関係など、キャリアアンカーと比べミクロ視点での価値観や考え方を指す。

キャリアビジョン

キャリアビジョンは、長期的な視点で見た場合の理想的な職業像やキャリアの全体像を指します。キャリアアンカーは、このビジョンを形成する際の基盤となる価値観や動機のことを指します。

キャリアサバイバル

キャリアサバイバルは、キャリアアンカーの延長線上にあるような考え方で、働き手が仕事に対して求める価値観や「これだけは譲れない」という要件と、雇用者が従業員に期待する役割やスキルを調和させることを意味します。言い換えれば、個人と組織のニーズを一致させるためのアプローチです。

キャリアアンカーの重要性

キャリアアンカーを理解しておくことは、今後のキャリア選択や普段の日常業務においてどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、キャリアアンカーを知ることの重要性とメリットを解説します。

キャリアアンカーはなぜ重要なのか

自己分析を通じて自身のキャリアアンカーを理解することは、現在の仕事で更なる価値を発揮すること、あるいは転職活動で自身の適職を見つける上で非常に重要だと言われています。

キャリアアンカーは「どんな仕事/環境においてパフォーマンスを発揮しやすいか」や「モチベーションを高く維持できる仕事/環境はどんなものか」を間接的に表してくれます。

例えば現職の上司あるいは同僚に自身のキャリアアンカーを理解してもらうことができれば、よりパフォーマンスを発揮しやすい環境整備や業務へのアサインを検討してもらえる可能性も高まるでしょう。キャリアの棚卸しの質も向上するため、これまでの自分が何をもって意思決定をしてきたのか、今後どう意思決定をしていけば良いかが明確化され、転職活動時にも納得感のある決断ができるようになります。

現職においても将来においても、漠然とした不安を解決してくれる一つの要素がこのキャリアアンカーであると言えるでしょう。

キャリアアンカーの3要素

キャリアアンカーを考える際には、「コンピタンス」「動機」「価値観」の3つの要素を深掘りすることが重要です。これらの要素が重なる部分をキャリアアンカーとすることで、仕事に対するモチベーションが向上したり、現在の仕事への納得感や満足感を得られたりするなど、 多くのメリットが期待できます。以下に、それぞれの要素について詳しく解説します。

コンピタンス(できること・能力)

コンピタンスとは、「自分はいったい何が得意なのか」といった仕事における専門性や強みを示す要素です。これを知っておけば、自身の価値が発揮されやすい仕事や環境を見極めることができます。また仕事に対するモチベーションにも直結するような要素です。近年では人間の根源的な特性を意味する「コンピテンシー」という概念も注目を浴びています。

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動機(やりたいこと・欲求)

動機とは、自分のやりたいこと、関心のあることに対する強い欲求のことを指します。これに沿った仕事をすることで、「今自分は自分のやりたいことを実行できている」という感覚を味わうことができ、大きな達成感ややりがいに繋がります。

価値観(やるべきこと・義務)

価値観とは、自分が本当に大切にしたい信念や、何においても優先したいものを指します。例えば「20代のうちは仕事一筋で頑張るべきだ」と「20代のうちは仕事以外にもいろいろな経験をすべきだ」、これらは全く異なる価値観ですが、どちらが正解というものはありません。仕事においては「裁量の有無が大事」「メリハリのつけられる職場環境が大事」「報酬が大事」など人それぞれの価値観があり、これに沿う仕事を選ぶことで納得感のある意思決定ができます。

キャリアアンカーの8つのタイプ

キャリアアンカーの概念や考え方について解説してきましたが、実際に自身のキャリアアンカーを知るためにはどのようなアプローチが必要なのでしょうか。もちろんキャリアアンカーは個人によって多少の違いはありますが、実はその傾向によって8つのタイプに分類されています。

専門・職能別能力(Technical/Functional Competence)

「この分野では誰にも負けないと言える専門性やスキルを身につけたい」というエキスパート志向の方が該当します。

経営管理能力(General Managerial Competence)

「企業経営やマネジメントに携わりたい、組織をリードしたい」というマネージャー志向の方が該当します。

自律・独立(Autonomy/Independence)

「ルールや規律に縛られることなく、自由に働きたい」など、自分のワークスタイルを貫きたい思いの強い方が該当します。

保障・安定(Security/Stability)

「安定的・長期的に就業できる環境に居たい」など、とにかく安定した職場を好む方が該当します。

起業家的創造性(Entrepreneurial Creativity)

「何か新しいことをしたい、世の中に新たな価値を届けたい」という創造的な考え方を好む方が該当します。

奉仕・社会貢献(Service/Dedication to a Cause)

「世の中、社会に対して貢献したい」という思いの特に強い方が該当します。

純粋な挑戦(Pure Challenge)

「難しいことを敢えてやりたい、高いハードルを乗り越えたい」という、困難を克服すること自体に価値を感じる方が該当します。

生活様式(Lifestyle)

「仕事も大事だが、もちろんプライベートも充実させたい」という、ワークライフバランスを重視したい方が該当します。

キャリアアンカーの診断方法

考えごとをするビジネスマン

では、自分がキャリアアンカーの8つのタイプのうちどれに当てはまるのか、その診断のしかたにはどのようなものがあるのでしょうか。 診断方法には、「自己分析をする」「診断ツールを使う」の大きく2つの手法があります。それらについて解説していきます。

自己分析

就職活動や転職活動時に実施が推奨されている「自己分析」ですが、キャリアアンカーの理解にも大きく寄与します。市販の自己分析本に沿って分析を進めてみたり、これまでの業務の棚卸しをしてみたりといったことを通じて「やりがいを感じたこと」「楽しかったこと」「二度とやりたくないと思ったこと」「大切にしたいと思ったこと」などを洗い出ししてみましょう。

例えば「新規サービスの事業開発に携わり、困難を打ち破って収益化できた」という経験に大きなやりがいや達成感を感じた方であれば、キャリアアンカーは『起業家的創造性』や『純粋な挑戦』に限りなく近い、あるいは両方を兼ね備えていることが想像されます。他にも「大手企業でそれなりのポストに就き、仕事だけでなく家族との時間も大事にしている」という状態に心地よさや安心感を抱く方であれば、キャリアアンカーは『保障・安定』や『生活様式』に該当するかもしれません。

このように自己分析から見えてくる自身の特性と、8つのタイプの重なる部分を明らかにしていくことで自身のキャリアアンカーを知るという手法は非常に効果的と言えます。

診断ツールを使う

もっと手軽にキャリアアンカーを診断する方法として、無料の診断ツールを使うという手もあります。例えば厚生労働省が公開している「マイジョブ・カード」は、自己理解を深めるツールとして有用です。

参考:厚生労働省「マイジョブ・カード」自己診断一覧
https://www.job-card.mhlw.go.jp/shindan

上記以外にも無料の診断ツールは数多く存在しますが、プロフェッショナルバンクもキャリアアンカーの「診断シート」を用意しています。40個の質問項目に回答していくだけで、ご自身のキャリアアンカーを診断することができますので、ぜひご活用ください。

キャリアアンカーの活用方法

自身のキャリアアンカーが理解できたところで、実際にどのように活用すれば効果が得られるのでしょうか。 本項では、キャリアアンカーの活用先について【日常業務】と【転職活動】の2つの場面に分け、それぞれの切り口から紐解いていきます。

日常業務における活用方法

キャリアアンカーを普段の業務に活かす上で最初に考え得ることとして、「自身の価値観や強みに沿った業務に携わる」ことが挙げられます。とは言っても、例えば現在営業職の方がいきなりエンジニア職に転向する、といった大胆なキャリアチェンジは困難が予想される為、まずは現職の主担当業務を遂行しつつ新たな選択肢を模索することをお勧めします。

例えばキャリアアンカーが『専門・職能別能力』の方であれば、自身の業務をさらにレベルアップできるような社内勉強会に積極参加したり、同僚の中でも高い専門性を持つエキスパートの方とコミュニケーションの回数を増やしたりといったことが挙げられます。『起業家的創造性』の方であれば、新規事業を立案し経営層に提言していくといったことから、今までの当たり前を覆すような全く新しい業務フローを考案・実践するといった細かな業務に至るまで、「新たな価値を生み出している」と実感できそうなことを片っ端から試してみるのも良いでしょう。

社内公募制度の活用

現職に「社内公募制度」のような制度があれば、新たな選択肢を検討する手段の1つとして活用してみることをお勧めします。社内公募制度とは、会社内で部署ごとに人材を公募し人事異動を行う制度のことです。一般的な社内異動とは異なり個人の意思が反映される制度のため、キャリアチェンジやキャリアの幅を広げる上で有効と言えます。

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転職活動における活用方法

現職の業務範囲では叶えられない「やりたいこと」「成し遂げたいこと」がある場合、或いは抱える課題が短期~中期的に見て解決できそうにない場合など、転職して違う道を歩むという選択肢が頭をよぎることもあるでしょう。転職活動においても基本的な考え方は変わらず、「自身の価値観や強みに合致する企業/職場環境を選ぶ」ことが大切です。

求める条件に優先順位をつける

転職先を検討するにあたり、「求める条件全てを満たす転職はかなり難易度が高いため、優先順位付けが必要である」ということをまず理解しておきましょう。

例えば「職場で耐えがたいハラスメントに遭っている」方であれば「人間関係でストレスを感じづらい職場」、「両親の介護のため実家に帰る必要がある」方であれば「実家から通いやすく業務量を調整しやすい仕事」といったように、やむを得ない理由での転職を迫られている場合にはその解決が第一優先になります。そういったやむを得ない理由はないものの、何らかの現職課題を解決すべく転職を検討するケースにおいては、現職でのキャリアを振り返り、「何が良くなれば転職しないのか」という観点から次の職場に求める条件に優先順位をつけていきましょう。

キャリアアンカーを掛け合わせて考える

上記診断シート等を用いて浮かび上がってきた自身のキャリアアンカーは、求める条件のうち優先順位の高いものと重なる(類似する)部分が出てくるはずです。キャリアアンカーは必ずしも1つとは限らないため、例えば診断シートを用いた方であれば、点数の高い上位3つを基本として、転職を検討している企業の「経営者や同僚の志向性、向いている方向」「職場の風土、雰囲気」「仕事内容」等を照らし合わせて検証します。

例えば自身が『起業家的創造性』タイプなのに、移籍してみたら経営者がワンマン気質で社員が委縮しており、出る杭は打たれるような職場環境だった、といった事態は避けなければなりません。また別の例として、『自律・独立』タイプの方がリモートワークやフレックス制度があるという求人票の記載を見て応募・入社に至ったところ、制度として存在するものの実態としては利用しづらい雰囲気がある(そもそも利用者が少ない)というミスマッチも最近では度々耳にします。こうした事態を未然に防ぐために、志望している企業の内情は細かく研究しましょう。

とは言え、転職先の社内環境や風土を自力で調べるのには限界があるため、転職エージェントの利用についても検討することをお勧めします。求人票に記載されないような企業の深い内情を知ることができたり、自身の価値観やキャリアアンカーに照らし合わせた求人の紹介を受けられたりと、自力で転職活動をするよりもマッチ度合いの高い企業に出会える可能性が高まります。

まとめ

ビジネスマンの後ろ姿

本記事では、自身のキャリアアンカーを知る重要性やメリット、診断のしかたや活用のしかたについて触れてきました。現職業務においても転職先の検討においても、キャリアアンカーを理解しておくことは長期的視点でのキャリア形成に役立ちます。

前述の通り、自身のキャリアアンカーを理解できたとしても、転職先を検討する上でその会社が自分にとって合う会社か否か、会社の深い内情を把握することは非常に難しいです。そこで、転職エージェントとの対話を通じ、さらに自己理解を深めたり、転職検討中の企業の情報収集をより細かく行ったりすることを推奨します。

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・企業の窓口は経営層や現場/人事の管理職層が殆どで、企業の奥深くまで入り込み内情を理解している
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