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コンピテンシーとは?意味や活用シーン、評価方法を明快解説!

コンピテンシーとは?意味や活用シーン、評価方法を明快解説!

近年企業経営において「コンピテンシー」という、人間の根源的な特性を意味する概念が重要視されています。
本記事では、コンピテンシーの定義から歴史的な背景、関連語との違いや活用されるシーン、メリットや企業において導入する上でのポイントをご紹介します。

コンピテンシーとは?基本概念と重要性

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コンピテンシーとは、個人が職務を遂行する上で必要な能力を包括的に表したものであり、職務遂行に必要なスキルや能力を効果的に表現し、組織が求める人材を評価するための基準となる概念です。

コンピテンシーの定義とは?

コンピテンシーは、1982年にアメリカの心理学者であるボヤディズ教授によって以下のように定義されました。
「特定の職務において効果的な高業績または結果として優れた行動に結びつけられる個人の特性」

現代においては、個人が職務を遂行する上で必要な能力を包括的に表したもので、知識や技能、態度、行動、価値観などの要素を含んだ広い概念として普及しています。

コンピテンシーが生まれた背景と歴史

コンピテンシーの発端は、1970年代のアメリカに遡ります。

1973年に、ハーバード大学の心理学の教授であったマクレランド氏がMcBer社とともに、学歴や知能レベルが同等の外交官に業績の差が出るのはなぜかを研究し、知識、技術、人間の根源的特性を含む広い概念として発表しました。

その後、先述した1982年にボヤディズ教授によって明確に定義づけされたことをきっかけに広く世界中に普及していき、1990年代に日本でも導入する企業が増加していったのです。
元々は、個人のパフォーマンスを評価する従来の方法が職務遂行に必要な全体的な能力を評価できない、という問題がありコンピテンシーという概念が誕生しました。

なぜコンピテンシーが重要なのか

コンピテンシーが重要とされているのは、高いパフォーマンスを示す人々の特性を基に、組織が求める人材の能力を明確に定義できることから、人事評価を中心に人材採用、社員教育や研修の計画立案に役立てられることにあります。

とくに近年では、成果や業績を重視する企業が増えており、個人の能力も評価の対象に含めるようになっているため、コンピテンシーを明確にすることで、個人の能力をより正確に評価できるようになるという点でも重要視されているのです。

また、企業は自社の利益を最大化するためには、生産性を向上させる必要がありますが、コンピテンシーに基づいた企業経営を行うことで、これらを最適化し、生産性向上につなげることも可能となります

コンピテンシーと関連語・類語

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コンピテンシーとよく似た言葉として「コア・コンピタンス」、「スキル」、「アビリティ」が存在します。

それぞれどういった意味で異なるのか、解説します。

コア・コンピタンスとの違い

コア・コンピタンスは、企業が競争優位を得るために、その企業が持つべき基本的な能力や技術のことを指します。
一方でコンピテンシーは、個人が職務を遂行する上で必要な能力を包括的に表したものであり、個人の能力を評価するための基準となります。

コア・コンピタンスは「企業が持つべき能力」であり、コンピテンシーは「個人の能力を表すもの」という違いがあります。

スキルとの違い

スキルは、ある特定の業務を遂行するために必要な知識や技能のことを指します。
一方でコンピテンシーは包括的な概念であるため、スキルだけでなく個人の態度や価値観なども含まれます。

スキルは「コンピテンシーの一部」であり、「より包括的な概念」としてコンピテンシーが存在しています。

アビリティとの違い

アビリティは、個人が持つ特定の能力のことを指します。
一方でコンピテンシーは、職務遂行に必要な全体的な能力を表したものであり、アビリティだけでなく、個人の態度や行動なども含まれます。

アビリティもスキルと同様に「コンピテンシーの一部」です。

コンピテンシーが活用される3つのシーン

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実際のビジネスシーンにおいて、コンピテンシーはどのように活用されるのでしょうか。
3つのシーンをご紹介します。

人事評価

企業内での人事評価において、コンピテンシーは、個人が職務遂行に必要な能力を評価するための基準として活用されています。
例えば、企業内のキャリアアップに必要な能力を明確に定めることで、職務遂行に必要な能力に対して社員がどれだけ習熟しているかを評価することができ、公正な人事評価が可能となります。

採用、面接

採用、面接においては、応募者が求める職務に必要なコンピテンシーを明確にすることで、それに応じた選考を実施し入社後のミスマッチを防ぐことができます。
また、自社が求める能力的な要件を満たした人材を獲得しやすいため、将来の戦力となる人材を採用できるというメリットもあります。

人材教育・能力開発

企業内での人材教育・能力開発においては、個人が必要な能力を身につけるための目標を設定するための指標としてコンピテンシーが活用されます。
社員が身につけるべき能力を明確にし、その能力に対して不足している部分を補完するために最適な研修や教育を受けることで、効率的に必要な能力を伸ばすことが可能です。

コンピテンシー活用のメリット

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企業がコンピテンシーを活用することで、以下のように3つのメリットが存在します。

生産性の向上

コンピテンシーを活用することで、社員が最適な職務を担当することができ、仕事の効率が向上し企業全体の生産性の向上に寄与します。
また、企業内の社員のスキルや知識を正確に評価することで、適材適所の人材配置が可能になります。

公平性の維持や納得感が高い

コンピテンシーの活用によって社員に対する評価基準が明確になるため、人事評価やキャリアアップの選考の際に、公正性や透明性が高まります。
社員が自分の能力に応じた職務に配属されることにより、社員の納得感が高まりモチベーションの向上に繋がります。

人材育成の効率化

企業内での人材育成や能力開発において、コンピテンシーの活用によって必要な能力やスキルが明確になるため、不足している部分を補完するための研修や教育を効率的に行うことが可能です。
他にも、社員が身につけるべき能力が明確になるため、教育や研修を効率的に行うことができるでしょう。

コンピテンシー活用の課題・デメリット

一方で、コンピテンシーを企業が活用する場合には、以下のような課題やデメリットも存在します。

コンピテンシー導入のハードルが高い

コンピテンシーを導入するには、新しい概念や制度の導入は既存の評価体制に影響が出るため、社員の抵抗感や不安が生じる場合もあり、導入自体のハードルが高くなります。
また、導入に際しては評価基準を明確に設定することが必要になるため、専門的な知識やツールの導入のためにコストがかかる懸念もあります。

業務・経営などの環境の変化に対応するのが難しい

コンピテンシーの活用によって、社員のスキルや知識を正確に評価し、適材適所の配置が可能となる一方で、業務や経営などの環境が変化する可能性もあり、社員がその変化に対応することが難しいという側面も存在します。

変化に対応するためにも、コンピテンシーをいきなり導入するのではなく、以下のようにしっかりとした手順を踏んだ上で導入しましょう。

コンピテンシーの導入方法やポイント

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コンピテンシーを導入する場合、何も考えずにいきなり導入しようと思っても失敗してしまうでしょう。

以下の手順に従って導入することで、より確実に導入することができます。

1.ハイパフォーマーへのヒアリング

まずはハイパフォーマーと呼ばれる、優秀な成績を収めている社員に対して意見や考えを聞くことが重要です。
ハイパフォーマーは、業務の中でどのような能力やスキルを必要としているかを把握しているため、コンピテンシーの定義や評価基準を策定する上で貴重な情報源となります。

2.実際にコンピテンシーモデルを作成する

次に、コンピテンシーモデルを作成する必要があります。

コンピテンシーモデルとは、企業が求める人材像や能力像を示すものであり、企業のビジョンや戦略、業務内容に合わせて作成されます。
コンピテンシーモデルを作成するためには、社員や上司、ハイパフォーマーなどから意見を集め、それを踏まえて策定することが重要です。

また、コンピテンシーモデルには以下の3種類のタイプが存在します。

理想型モデル

理想型モデルは、企業のビジョンや戦略を実現するために必要な理想的な能力・行動を示したコンピテンシーモデルです。
将来の戦略的ニーズに基づいて作成され、必要な能力を持つ人材を採用・育成することが目的となります。

実在型モデル

実在型モデルは、現在の業務や組織に必要な能力・行動を示したコンピテンシーモデルです。
組織内で実際に業務を担当する人々の能力を評価するために作成されるため、具体的な能力の不足や必要性を把握することが目的となります。

ハイブリッドモデル

ハイブリッドモデルは、理想型と実在型の要素を取り入れたコンピテンシーモデルです。
将来的なニーズと現在のニーズを両方考慮し、ビジョンや戦略の達成と現在の業務の遂行に必要な能力を示すことが目的となります。

3.評価項目を作成

コンピテンシーモデルが作成できたら、評価項目を作成します。
評価項目は、コンピテンシーを評価するための項目であり、コンピテンシーモデルに基づいて作成されます。
具体的な業務内容に合わせて作成されるため、評価者が判断しやすいように明確な基準を設けることが大切です。

4.コンピテンシーレベルを設定

評価項目が作成できたら、最後にコンピテンシーレベルを設定します。
コンピテンシーレベルは、評価項目に対して、どの程度の能力やスキルが必要とされるかを示す指標です。主に、それぞれの社員の業務内容や経験、役割に応じて設定されます。
評価項目と同様に、判断が曖昧にならないように明確に設定しましょう。

コンピテンシーの向上と人材開発

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コンピテンシーを向上させるために必要な点や、人材開発に活用するためのポイントについてもご紹介します。

効果的な教育研修やメンタリングプログラムの導入

コンピテンシーを向上させるためには、社員に対して効果的な教育研修やメンタリングプログラムを導入するといいでしょう。
社内の教育だけでは不十分な場合もあるため、外部の人材教育会社が提供している教育研修や、メンタル面のケアをするプログラムを導入することで、コンピテンシーの向上が図れます。

社員のキャリアパスの設計と支援

コンピテンシーに従って社員の人材開発を行うためには、一人ひとりに対してキャリアパスの設計や支援が重要です。
社員に対して、評価をフィードバックするにあたって今後の働き方やキャリアパスをどのようにしていきたいのか、指針を提示し導くことで社員にとって最短ルートでキャリアアップを図ることができるでしょう。

また、希望するキャリアパスを実現するために研修や読書が必要な場合は、セミナーの参加費や書籍の購入費用を会社として負担するという支援も必要になります。

コンピテンシーを活用して会社の生産性を高めましょう

変化が激しい現代社会においては、会社は生産性を高め企業としての生存競争を生き残っていく必要があります。
そのためにコンピテンシーを導入し活用することで、人事評価や採用、人材教育や人材配置が最適化され生産性を向上させることができます。

本記事で紹介した手順を参考に、コンピテンシーを社内に浸透させ生産性を高めていきましょう。

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