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「仕事は人並みで十分」という意識にどう向き合うか

「仕事は人並みで十分」という意識にどう向き合うか

公益財団法人「日本生産性本部」が定期的に行っている新入社員の意識調査の結果が、2016年7月に発表されました。それによると、「働き方は人並みで十分だ」と考える新人は60%近くにも達しています。年を追うごとに変化する「働くことへの意識」に対して、どのように向き合うべきなのでしょうか。

毎年度行われる新入社員の意識調査

企業がその組織力を存分に発揮するためには、さまざまな要素が関係します。例えば中長期的なビジョンや目標を示すことで、組織が進む方向を明確にすることは大事ですし、ワークフローを見直し業務の効率を高めることも欠かせません。そして何より、企業を構成する社員一人ひとりのモチベーション、仕事に対する意識というものは、組織全体の力を左右するほど大きなものです。
ですから、人事担当者はもちろんのこと、部下を管理するマネージャークラスの方にとって、社員の意識を知っておくことは、日々の業務の中で欠かせない作業です。
今回取り上げたのは、日本生産性本部によって行われた「平成28年度 新入社員『働くことの意識』調査結果」です。これは昭和44年度から毎年行われており、この種の調査としては国内で最も歴史のあるものです。それだけに、これまでの調査結果の推移を見てみると、その時々の世相や景気動向が反映された、実に興味深い内容となっています。

労働への意識は二極化が進んでいる

今回の調査結果のポイントはいくつかあります。まずひとつは、働くことの目的として「楽しい生活をしたい」という回答が過去最高の41.7%を記録したことです。

■「働く目的」の調査結果
・楽しい生活をしたい 41.7%
・経済的に豊かになる 27.0%
・自分の能力をためす 12.4%
・社会に役立つ 9.3%

1980年代半ばから2000年頃までは、「楽しい生活をしたい」「経済的に豊かになる」「自分の能力をためす」という3つの回答は、ほぼ同程度で推移してきました。ところが2000年度の調査で「楽しい生活をしたい」が急増し、さらに増加傾向をたどります。そして今回の調査では、過去最高の41.7%という結果が出ており、今後も上昇するものと見られています。

もうひとつのポイントは、「仕事は人並みにできれば、それで十分」と考える人が、こちらも過去最高に達したことです。しかも「人並み以上に働きたい」という回答とのポイント差が、調査開始以来最大の24.1ポイントにまで広がっています。

■「人並みで十分」か「人並み以上に働きたい」かの調査結果
・人並みで十分 58.3%
・人並み以上に働きたい 34.2%

この項目は、その年の景気や就職活動の状況によって、大きく変動するようです。近年の状況を見ると、5年ほどまえから「人並み」が急増し、逆に「人並み以上」が急速に減少しています。働くことへの意識の二極化が起こっているといえそうです。

社員の意識は簡単には変えられない

この意識調査では、ほかにも「今の会社を選んだ理由」や「どのポストまで昇進したいか」という項目もあります。これらの結果とともに、先にお話しした2つのポイントをまとめてみると、最近の新入社員の傾向として、「生活を楽しめる余裕がある程度に、仕事はそこそこにできれば良い」ということになりそうです。脇目も振らずに仕事に邁進して、バリバリ働き、どんどん稼ぐというような、エネルギッシュな姿はそこにはありません。
このような新入社員の意識について、中高年の幹部や経営者は「おもしろくない」と感じるかもしれません。「まったく、最近の若い者は覇気がない」「小さく収まってしまって、エネルギーを感じない」。そのような愚痴も漏れることでしょう。
ですが、仕事に対する意識は人それぞれに違いますし、時代背景も無視できません。「俺の時代はこうだった」「人の3倍働くくらいの気概を持て」などと説教したところで、本人は白けるばかりでしょう。
ならば、彼らに接するこちら側が、考え方を変えてみることです。

社員の意識に寄り添い、組織力を高める

ビジネスマンにとって、仕事は生活の一部です。職場の同僚と話す時間は、家族と語り合う時間よりも長いかもしれません。その仕事の時間を「楽しい時間」に変えることができれば、それはすなわち毎日が「楽しい生活」になるということです。
ほとんどの新入社員にとって、会社というのは未知の世界です。新鮮ではありますが、不安も大きいものです。仕事の中に楽しみを見出すことは難しいかもしれません。ですが、業務に慣れてくれば、そうした「楽しみ」は見つかるものです。上司が定期的に話を聞くなどして、サポートするのもいいでしょう。日々の業務の中に、本人が楽しいと感じる要素や、将来役立つと思える要素を見つける手助けをするのです。
もちろん、人事における「適材適所」は不可欠でしょう。本人の資質や意識を見極め、その人材が最も活きる場所や、特性を発揮できるポジションに置くのです。
人の意識は簡単にコントロールできるものではありませんし、時間とともに変化していくものです。ですから、社員の意識には常に気を配り、必要なケアやサポートを行うことが必要です。これは、組織力の地力を押し上げることになりますし、人材を自社につなぎ止めておく有効な手段にもなるはずです。

■公益財団法人日本生産性本部 – 平成27年度 新入社員「働くことの意識」調査結果
http://activity.jpc-net.jp/detail/lrw/activity001445.html

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