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人工知能が変える組織マネジメント

人工知能が変える組織マネジメント

コンピューター関連の話題の中では、今一番ホットなAI(人工知能)。それは私たちの企業活動そのものを、大きく変える可能性を持っています。先般、野村総研から発表されたレポート「ロボット・人工知能がもたらす産業への影響」を読み解き、今後の組織マネジメントのあり方について考えてみることにしましょう。

進化し続ける人工知能

このところ、AIに関する研究が急速に進展しています。そもそもAIは、蓄積されたデータと、自分自身の経験を学習することでその機能を高めていくものですが、近年ではより進化した「ディープラーニング」によって、新たな局面を迎えたと見られており、今後もさらなる進歩を見せることでしょう。
それに伴って、企業内での業務のあり方にも変化が訪れるはずです。ですが、情報処理や分析といった作業は、元々AIの得意分野です。PCが普及したときと同じように、そうした「機械の得意分野」は機械に任せればいいでしょう。それによって生まれた余裕を使って、人間にしかできない作業を行えばいい、ということになります。
リーマンショックを経験した世界では、今も不透明な将来しか見えていません。この先、いつ何が起こるかわからないのです。そのような状況の中では、変化に即応できるスピードは強力な武器となります。ひとつの出来事に対して起こりうる複数の未来を予測し、その対応策を用意する。そのプロセスを迅速に可能にするのがAIなのです。その機能を有効に使うことで、競合相手に対して大きなアドバンテージを得ることができるでしょう。

変革が求められるマネージャー

さらにAIは、ロボット技術や「IoT」との連携によって、相乗的な進歩を強めていくと見られています。ことにIoTとAIとの組み合わせは、私たちの日常生活からビジネスシーンまでを、大きく変える可能性を秘めています。
IoTにより、あらゆるモノがネットワークでつながり、それぞれがお互いをコントロールし合う。それを高度な学習機能を持ったAIが管理する。それが実現すれば、私たちは公私にわたって優秀な個人マネージャーを持つことになります。それによって生まれる余裕をどう使うかは、プライベートだけでなくビジネスシーンにおいても重要な課題になるでしょう。
例えば、社会経験の浅い若いスタッフであれば、自分の成長のためのスクーリングにその余裕を使うことができるでしょうし、中堅クラスのメンバーならスキルアップのために使ったり、新たな企画を組み立てたりということに使うこともできます。マネージャーであれば、自分のチームの結束を固めるために使うこともできるはずです。
ビジネスの現場にAIが導入されたとき、一番大きな業務上の変革が起こるのは、おそらくマネージャークラスの人々ではないでしょうか。

人とAIの作業範囲を切り分ける

野村総研の提言では「どれほどAIが進化したとしても、人間にしかできない作業はあるし、すべてをAIの判断に委ねてはいけない」という点が、念押しされています。確かにそのとおりではありますが、その境界線をどこに引くのかとなると、運用する企業次第ということになります。業界によっても、その線引きの位置は異なるでしょう。
ですが、いずれにしても、どこまでをAIに任せて、どこから人間が扱うのか、その区分を明確にしておくことは必須です。その上で従来の業務フローを見直し、再構築することが求められてきます。
こうなると、組織の中で求められる人材についても、そのニーズが変化してきます。その変化が顕著に表れるのが、判断し決定を下すマネージャークラスのチームリーダーです。
機械的な作業やデータを元にした検討や判断はAIが担当するとしても、その結論に対してリーダーがどのように評価し、どのように最終判断を下すかという点が、これまで以上に重要になってきます。
また、人が機械の判断に素直に従うのは、簡単なことではありません。AIの出した結論が正しいと判断できても、実際に現場のメンバーを動かしていくためには、人間であるリーダーの働きが不可欠となるはずです。スタッフ一人ひとりを理解した上で動かしていく人間的な力が、リーダーにはこれまで以上に求められるということです。

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AI時代に求められる人材とは

AIは、すでに数十年という時間をかけて研究され、少しずつ進歩してきました。それが近年になって、急速な成長を見せています。ロボット技術との融合は産業界に大きな変革をもたらすでしょうし、IoTとの連携が深まれば、私たちの生活そのものが大きく変わっていくことになります。
もちろん、ビジネスシーンへの影響も大きなものがあります。それがどれほどの変化になるのか、まだその全貌は見えません。ですが、ディープラーニングを手にしたAIはすでに実用化されており、しかも着々とその能力を向上させています。
それでも、AIが人間の判断力に取って代わることは、まだまだないようです。そうなると、いかにAIを使いこなし、人間ならではの作業を効率良く行えるかという点が、ビジネスパーソンに求められるスキルとなるでしょう。
日進月歩で成長していくAIですが、それをどのように使いこなすかは、それを管理する人の能力にかかっています。AI化、機械化のトレンドはこれからますます加速していくと見られますが、それをどのようにビジネスに活かし、効率化と高速化を図っていくのか。それができる人材こそが、今後の世界で求められる人物像だといえそうです。

■ロボット・人工知能がもたらす産業への影響
https://www.nri.com/~/media/PDF/jp/opinion/teiki/it_solution/2016/ITSF1605.pdf

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