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PEファンドとは?激務?高年収?VCとの違いや転職先としての魅力を解説

PEファンドとは?激務?高年収?VCとの違いや転職先としての魅力を解説

ハイキャリア人材の転職先としてコンサルティングファームや事業会社の経営・事業企画、M&Aに並んで人気があるのがPEファンド。今回は、PEファンドって何?という方から転職を目指す方まで、PEファンドの語源や種類、業務に年収、将来性などをわかりやすく解説します。

PEファンドとは?

PEファンドは、プライベート・エクイティ・ファンド(Private Equity Fund)の略称であり、「Private」は「非公開」を意味し、「Equity」は「株式」や「企業の所有権」を指します。つまり、PEファンドは非公開市場で企業の株式や所有権を取得することに特化した投資ファンドです。

これらのファンドは、未公開企業や公開企業の非公開化を目的として投資を行い、企業の経営改善や成長支援を通じて企業価値を高め、その後、高いリターンで売却することを目指します。PEファンドは主に機関投資家や富裕層から資金を集め、一定期間(通常は5年から10年)経営に関与し、投資回収を行うという構造を持っています。

PEファンドの種類

PEファンドにはいくつかの種類がありますが、ハイキャリア人材の転職では特にベンチャーキャピタル(VC)とバイアウトファンドが注目されます。それぞれに異なった投資対象と投資戦略がありますので簡単にまとめます。

ベンチャーキャピタル (VC)

VCは、成長が見込まれるスタートアップや早期段階の企業に対して資金を提供します。これらの投資は高リスク・高リターンが特徴で、革新的な技術やビジネスモデルを持つ企業に焦点を当てています。VCは通常、数%~30%程度の株式を保有し(マイノリティ投資)、企業の成長をサポートするための資源やネットワークを提供します。

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バイアウトファンド

バイアウトファンドは、成熟した企業に対して大規模な投資を行い、その企業の過半数の株式を取得して経営権を掌握します(マジョリティ投資)。このアプローチにより、企業の経営改善や戦略の再構築を実施し、企業価値を増大させることを目指します。安定した収益を生み出す企業をターゲットにするため、比較的リスクは低めですが、大きな資本が必要とされます。

バイアウトファンドは大規模な資金を動かし、しばしば業界内で注目を集める大きな取引を行うため、PE業界全体のイメージや認知に大きな影響を与えています。そのため、バイアウトファンドが「狭義のPEファンド」として特に認識される一因となっています。ここでは、狭義のPEファンド、主にバイアウトファンドを中心に詳しく解説していきます。

PEファンドの業務の本質は量か質か?

PEファンドで颯爽と業務をこなすコンサルタント
PEファンドの業務は一般的に知られておらず、想像もつかないため「激務では?」とか周りから「PEファンドはやめとけば」と言われたりする場合もあるようです。

実際のPEファンドの仕事は確かに多忙です。ただ、その挑戦を前向きに捉えることで、仕事の充実感は非常に大きいものでもあります。ここで重要なのは、この業界での「多忙さ」が単なる時間の長さや作業量の多さではなく、求められる作業の「質」と「戦略的思考」にあるという点です。

PEプロフェッショナルは、投資先の企業価値を向上させるために、深い分析と賢明な判断を要求されます。このような高品質の業務は、確かに一定の時間と労力を必要としますが、それによって得られる成果と満足感は、単純な作業量では得られないものです。

例えば、バイアウトファンドの人材が、買収した企業の新市場への進出を支援する場合を考えてみても、このようなプロジェクトでは、徹底した市場調査、競合分析、そして現地でのパートナーシップ構築などが求められます。新市場での成功は企業の成長を大きく加速させ、その結果、ファンドのリターンも大幅に増加します。

また、投資先企業との信頼関係を築く過程も重要で、例えば、バイアウトファンドの人材が定期的に経営陣と戦略会議を行い、企業の成長戦略についてディスカッションしながら、具体的なアクションプランを共に策定することがあります。このような質の高いコミュニケーションを通じて信頼を築くことができれば、経営陣はファンドからのアドバイスやサポートをより積極的に受け入れ、実行に移すことができます。そして質の高い業務により、結果として時間的な負担感を軽減し、より戦略的で意味のある仕事へと導くのです。

したがって、PEファンドでの仕事は、「量」よりも「質」に重きを置いたアプローチにより、多忙であると感じることが少なくなるかもしれません。つまりこの業界での成功は、時間をいかに効率的に使うか、そしてどれだけ質の高い成果を出せるかにかかっていると言えます。

PEファンドにおける高年収の実態と本音

PEファンドでの業務は高度な専門性と戦略的思考を要求されますが、その分、収入も非常に高いレベルであることが一般的です。例えば、アナリストやアソシエイトといった初級職でも年収は数千万円に達することがあります。さらに、シニアアソシエイトやディレクター、パートナーになると、年収は一般的な企業の役員クラスを大きく超えることが多く、数千万円から億単位の報酬を得ることも珍しくありません。

PEファンドの収入が高い理由は、投資先企業の価値向上に直接的に貢献し、その成功がファンドの利益に直結するためです。ベース年俸がアソシエイトでも1000万円クラスであるのに加えて、売却後利益の成功報酬やパフォーマンスベースのボーナスが大きな割合を占めるため、実績に応じて高額な報酬を得ることが可能です。

このように、PEファンドでの職務は高いリスクとプレッシャーを伴いますが、それに見合った、またはそれを上回る報酬が期待できるため、多くのプロフェッショナルがこの分野に魅力を感じています。

PEファンドでの業務の流れ

投資先が成長しバリューアップする様子
PEファンドの役割は投資先企業をバリューアップさせて売却することです。
その結果、報酬的に高いリターンを得られわけですが、その業務は大きく分けて、ターゲットの選定、詳細なデューデリジェンス、投資実行、そして投資後の管理という流れで進みます。以降のセクションで、これらの各ステップについて詳しく解説します。

Deal Sourcing(投資先の発掘)

このフェーズでは、投資対象となるターゲット企業を見つけ出します。企業の財務状況や業界動向、成長見込みなどを考慮しながら、適切な投資先を探します。

Due Diligence(詳細調査)

投資対象企業が見つかったら、その企業の詳細な調査を行います。財務状況、業績、経営陣の能力、市場環境など、様々な視点から企業を評価します。

Negotiation & Contracting(交渉・契約)

デューデリジェンスで問題がないと判断したら、企業との交渉を開始します。買収価格や条件などを決定し、契約を結び投資実行となります。

Portfolio Management(ポートフォリオ管理)

企業を買収した後は、その経営に関与し、企業価値を上げるための改善策として戦略策定、実行・モニタリング、パフォーマンス改善、リスク管理を実行します。それぞれを簡単に紹介します。

*戦略策定*

・成長戦略:新規市場への進出、新製品開発、M&Aなどを通じた成長戦略を策定します。
・再構築戦略:事業の再編、組織の再構築、コスト削減などを通じた再構築戦略を策定します。

*実行・モニタリング*

・戦略実行:策定した戦略の具体的な実行を進めます。これにはM&Aの実施も含まれます。
・パフォーマンスモニタリング:定期的なレビューやKPIの設定と追跡を行い、戦略の進捗をモニタリングします。

*パフォーマンス改善*

・パフォーマンス分析:モニタリングの結果を基に、パフォーマンスの改善が必要な領域を特定します。
・改善策実行:具体的な改善策を実行します。これには、経営改革、事業再編、コスト削減などが含まれる可能性があります。

*リスク管理*

・リスク評価:投資対象企業のリスクを定期的に評価します。
・リスク対策:リスク評価の結果を基に、必要なリスク対策を実施します。

Exit(エグジット)

企業価値が上がったと判断したら、企業を売却します。売却方法は、株式公開(IPO)、他の企業への売却(トレードセール)、他の投資ファンドへの売却(セカンダリーセール)などがあります。

PEで働く魅力とは何か?

PEファンドで働きがいを持つコンサルタント
PEファンドでの勤務は、マジョリティ投資により企業の経営権を持つことができ、直接的に経営改善や戦略の再構築に関与することが可能です。例えば、よく転職先候補として比較されるコンサルティングファームではクライアント企業に対するアドバイスを提供しますが、実際の経営決定や実行には直接関与しません。

PEファンドでは、投資した企業の価値を直接的に向上させることで、その成果が自身のキャリアや報酬に直結するため、大きな達成感とプロフェッショナルとしての成長を実感できるでしょう。

国内外の有力PEファンド

PEファンドには多くの有力なプレイヤーが存在します。特に外資系ファンドは、そのグローバルなネットワークと資金力を活かして多岐にわたる投資活動を行っており、業界全体の発展に大きく寄与しています。一方、日系ファンドも独自の強みを持ち、国内外で数多くの成功事例を生み出しています。以下に、代表的で有名な外資系および日系のバイアウトファンドを紹介します。

◆外資系バイアウトファンド

The Blackstone Group

アメリカに本拠を置く世界最大のプライベートエクイティファームの一つで、多様な産業にわたる企業買収で知られています。

KKR (Kohlberg Kravis Roberts)

同じくアメリカの巨大PEファームで、1980年代のレバレッジド・バイアウトの波を牽引したことで有名です。

Carlyle Group

グローバルな投資を行うアメリカのPEファームで、防衛、航空、エネルギー分野など幅広いセクターに投資しています。

◆日系バイアウトファンド

産業革新機構(INCJ)

日本政府が支援するファンドで、革新的な技術やビジネスモデルを持つ企業への投資を行い、産業の競争力強化を目指しています。

ユニゾン・キャピタル

日本を拠点とするプライベートエクイティファームで、中堅・中小企業の成長支援を通じて、長期的な企業価値の向上を図る投資を行っています。

アドバンテッジ パートナーズ

日本のPEファームとしては先駆け的存在で、多くの成功したバイアウト案件を手掛け、日本国内外の企業の成長支援を行っています。

まとめ

PEファンドでの成功は、単なる技術的なスキル以上のものを要求されます。圧倒的なリーダーシップ、粘り強い交渉力、そして厳しい状況下での冷静な判断力が必須となるでしょう。さらに、未知の問題に対して革新的な解決策を見出す能力と、高いストレス状況においても目標に向かって突き進む執着心が求められます。これらの資質を兼ね備えた人物だけが、PEファンドの厳しい競争を乗り越え、顕著な成果を収めて高い報酬を得ることができるのです。

プロフェッショナルバンクではPEファンドの案件はもちろん、PEファンドの投資先で経営者として従事するポジションまで豊富に案件を保有しています。PEファンドでの仕事に興味を持たれた方はぜひ、ご相談ください。

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