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年収増だけがヘッドハンティングではない?オファー時の年収相場

年収増だけがヘッドハンティングではない?オファー時の年収相場

ヘッドハンティングによる転職と聞くと「現状の収入や待遇よりもアップ」したオファーをもらうイメージが強いと思います。しかしながら、このイメージから外れ、年収ダウンが伴う転職を決断するケースも一定の割合で存在しています。今回はプロフェッショナルバンクのヘッドハンティング採用で候補者にオファーをする年収額の相場や年収がダウンしても移籍を決意する人材についてのお話です。

年収アップが82.5%、年収ダウンは17.5%

直近2か年のヘッドハンティング成約実績より候補者の前年収額と移籍先企業のオファー年収額を比較すると、年収がアップしていた人材は82.5%、ダウンしていた人材は17.5%となっていました。過去の統計でもおおよそ8:2あたりの比率で推移しており、ヘッドハンティングとはいえ、年収ダウンの提示でも成功するケースが多々あることが分かります。

弊社のフルサーチ型ヘッドハンティングは30代、40代を中心としたミドル層を得意としており、移籍先の企業が出した年収オファー額の平均もまた750万円とその相場はミドルクラスとなっています。内訳は、年収アップした人材も年収ダウンした人材も平均は750万円程度で同水準でした。

年収アップの提示差額平均は87万円、年収ダウンの提示差額は144万円

前職年収額とオファー年収額の金額差についてですが、年収アップを提示した案件は平均87万円の増額オファーとなっていました。現職(前職)企業の給与レンジとの兼ね合いもありますが、82.5%の大半の人材は、移籍後の方が好条件という傾向はイメージ通りかと思います。

一方でオファーの年収額が前職よりもダウンした場合については、平均すると144万円の減額オファーとなっており、増額平均の87万円より随分と差額が大きい状況です。

背景として、一部の高給取りだった人材が大幅年収ダウンを受け入れて移籍していることが要因としてあげられます。若干名ではありますが、外資系企業出身のエンジニアや法人営業のトップセールスマンがインセンティブにより前職で相当な高年収を得ていたケースがありました。ヘッドハンティングした企業のオファー額は数百万円から千万円台 のダウン提示でしたが、そのオファーを受けたことで減額幅の平均が大きくなったようです。

お金以外の大切なポイントとは?

上記のような数百万円から千万円台の年収ダウンの他にも、数千円から数十万円の年収ダウンを受け入れてオファーを承諾した人材が複数いるわけですが、これらの人材にとって「お金以外の大切なこと」とは、いったい何でしょうか?3つの主な要素を挙げてみたいと思います。

1.自分の希望を実現できるか、自分の能力を活かし続けるか

自分の実力を存分に発揮して、やりたいことができる環境というのは、誰にとっても魅力的なものです。ある程度、経験を積んだミドル層にとっては、お金に換えることのできないものでしょう。また、長時間勤務などの過酷な労働条件や成果に対する過度なプレッシャーなどで、この先の20~30年を考慮し、自分の能力を継続的に活かし続けられそうな環境を求める場合もあります。

2.十分な裁量権が与えられているか

前項とも関連しますが、やりたいことをやり切るには、それだけの権限が必要です。上司や部下、他部署との連携をとりつつも、大きな権限を与えられれば、のびのびと仕事に打ち込むことができます。また、研究職、開発職などの技術者は、給与よりも開発予算や権限が大きくなことを好む場合もよく見られます。

3.企業理念や経営者への共感

「この会社に身を置きたい」「この社長といっしょに働きたい」。こうした感情的な共感は、人を動かす大きなモチベーションになります。特に大企業から中小企業に移籍する場合には、不可欠な要素です。当社が以前に行ったアンケート調査でも「会社のビジョン、経営の方針に対する満足度」が低いと転職意欲が高まりやすいという結果が出ています。

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このほかにもさまざまなポイントがありますし、実際のヘッドハンティングの現場では、ヘッドハンターが候補者のフックポイントを捉えて企業とも交渉するのですが、それでも共通するのは「やりがい」のようです。自分の能力や知識、経験が求められており、それを存分に使うことで組織の成長に役立ち、さらに社会にも貢献できる。それを転職によって実現できるのであれば、少々年収がダウンしてもかまわない。20%ほどの方は、こうした考えで転職に踏み切っているのです。

世代によって異なる「転職を決断する理由」

転職を決断する際に重視する要素は人それぞれでありますが、何を重視するかの傾向は年代によって多少異なるようです。例えば、30代であれば自分の将来を正確に見通せないだけに、「能力を磨いてさらに成長したい」という意欲が強い一方で、就労環境や条件も向上させたいという意識もあります。

しかし、スキルを身に付け、経験を積んだ40代以上のミドル層であれば、定年までのキャリアを想像できますから、現職の将来性によっては「たとえ収入は下がっても、転職して“やりがい”のある仕事をしたい」という意識が芽生えてくることもあるのです。

まとめ

ヘッドハンティングを活用しての採用を検討しようと思った際、「自社の年収レンジが低いから」とか「同業他社のA社は給与水準が高いから」だから候補者を口説くのが難しいのではないか?との思いは、一旦、払拭したほうが良いと我々ヘッドハンターは思っています。これまで記したように候補者が持ち合わせる移籍へのフックポイントは報酬とは限らないからです。依頼元企業の経営者のビジョンや経営の方針、仕事の任せ方、就業環境等の貴社で働く際の「やりがい」が候補者にとっては魅力的に映ることがあるためです。その魅力をこちらから積極的に届け、可能性を探り高めていくのがヘッドハンティングだと思っています。

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