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採用成功率を高めるオファーレターとは?候補者を口説く交渉術も紹介。

採用成功率を高めるオファーレターとは?候補者を口説く交渉術も紹介。

採用成功率を高めるオファーレターとは、どのような工夫がされているでしょうか?ヘッドハンティングでは、まずターゲットを選定して本人にアプローチし、企業側との面談を設定します。そして企業側と一緒になって口説き、内定、入社までフォローします。ここまで来れば最終段階ですが、安心はできません。候補者に最後の決断を促すためには、もう一押しの工夫が必要です。そこで注目したいのが、候補者に出す「オファーレター」です。

候補者の背中を押すオファーレターの役割

オファーレターを提示するという事は、まさに採用プロセスのクライマックスです。我々ヘッドハンターにとっても、オファーレターが出たということはマッチングがうまくいったという事ですから、非常に喜ばしいことです。しかし、手放しで喜ぶわけにもいかないというのが正直なところです。

なぜなら、採用のゴールは「入社」であるため、候補者がオファーを承諾しなければ成立しません。中途採用において、候補者は複数企業の選考を進めているケースがほとんどです。他社のオファーに勝るためのラストアクションが必要になります。オファーレターを提示するタイミングでは、ある程度の条件交渉は終えているはずです。提示後にオファー面談として、候補者側から交渉の場を依頼されるケースもありますが、エージェントを介していれば事前に希望条件は把握して選考を進めているのが一般的でしょう。個人応募やダイレクトリクルーティングであっても、面接の中で一度も条件面に触れずにオファーレターを提示するケースはほとんどないはずです。

ただ、候補者の希望条件をすべて受け入れたオファー設定も容易なことではありません。どの会社にも採用基準や採用予算、年収レンジはある為に、それを逸脱する希望を受け入れると社内でのあつれきを生む可能性もあります。その点で候補者にとって百点ではない条件でオファーを出す必要もあるわけで、条件交渉に頭を悩ます人事担当者は多いと思います。しかし、オファーを出すからには、最後の候補者の「承諾」を期待しているのは揺るがぬ事実でもあるはずです。

そこで、候補者に「この会社に転職しよう」と決断してもらうためには、「最後の一押し」が必要になるケースもあるのです。企業としても優良だし処遇にも不満はないのですが、人は数字や理屈だけで動くものではなく、最後に決断を促し、踏ん切りをつける何かが必要になります。そこで重要な役割を果たすのが、実はこのオファーレターなのです。

オファーレターと労働条件通知書の違い

そもそもオファーレターは、一般的に労働条件通知書と同じ意味を持ちます。労働条件通知書とは、雇用者と被雇用者との間で取り交わされる、労働条件を明確にした文書です。契約期間、勤務地、業務内容、労働時間や給与条件、その他雇用と業務に関する様々なことが細かく記載されたもので、労働基準法第15条が根拠となっています。

人事担当者ならご存じのとおり、労働条件のうち法定項目については書面での交付が義務付けられているため、この文書が発行されます。発行しなければ罰則の適用がありますし、発行していても法定項目の記載がなければ、同じく罰則を科されることもあります。それだけ、労使双方にとって重要な文書ということになりますが、これはあくまでも雇用の条件を明記しただけのものに過ぎません。「雇用条件・労働条件を明記したもの」、それが労働条件通知書です。内定を通知する際には、下記のような労働条件通知書(オファーレター)を候補者に提示することが義務付けられています。

一般的な労働条件通知書の雛形例

労働条件通知書
1. 入社日●●年●月●日
2. 雇用形態正社員
3. 契約期間期間の定めなし
4. 試用期間入社日より●ヶ月間(但し、場合により短縮、免除または延長の可能性有り)
※給与及び手当等の条件変更なし
5. 就業場所株式会社●●●●●
▲▲県▲▲市▲▲▲町〇―〇―〇〇
6. 所属/職務●●部●●チーム
7. 勤務時間始業9時00分~終業17時30分(休憩60分)
8. 休日・休暇土曜・日曜・祝日
年次有給休暇(入社6ヶ月継続勤続後付与、初年度●日)、特別休暇(●日)
年末年始休暇(12/30~1/4)、その他の休暇(結婚、忌引、育児、介護、産前産後等)
9. 退職定年制あり(満60歳)
自己都合退職については、30日前までに届け出ること
10. 給与及び手当基本           :    円
みなし残業手当(20時間分)  :    円

●●手当         :    円

月給           :    円

但、20時間/月を超える残業分は、別途支給(変動給)

11. 賞与年2回(6月・12月)
基本賞与:平均月給●ヶ月分/年(評価により増減)
12. 基本年収    円
13. 給与締切日月末日
14. 給与支払日当日25日
15. 支払い方法銀行振り込み
16. 昇降給年1回(6月)
17. 社会保険健康保険、厚生年金、雇用保険、労災
18. その他福利厚生サービス『●●』加入
選択制確定拠出年金制度有(任意)

※上記以外の労働条件は就業規則により定めます。
※ここに記す条件については、現時点で提示された経歴に基づくもので、その内容に誤りがある場合、採用及び当該条件の見直しを行うものとします。
※当通知書に記載する条件は変更となる場合があり、この場合、事前に説明を行い、通知した上で、当該条件を変更するものとします。

このサンプルのように、候補者が必須でチェックする確認事項は、労働条件通知書にすべて記載されていますが、人の心を突き動かすようなパワーは、労働条件通知書にはありません。ですから、これだけをもって「オファーレター」と呼ぶには、少々無理があります。少なくとも我々ヘッドハンターの世界ではそうです。紋切り型の条件通知書だけでは候補者の心を掴めないシーンも出てきます。

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内定通知書とは?法的効力から注意点、記載項目まで解説!

効果的なオファーレターとは

オファーレターは、雇用条件の提示と併せて、それを読んだ候補者が心を動かし「ぜひこの会社で働きたい」「この人たちといっしょに仕事をしたい」と思えることが理想です。それには、候補者を口説く心のこもったメッセージが必要になります。

入社後、どのような役割やポジションが期待されているのか。また、どのようなミッションが用意されているのか。こうしたことは、紋切り型の労働条件通知書では伝わりにくいものです。面談時に言葉で伝えた内容は、その場では覚えていても時間が経つにつれて忘れてしまうもの。特にその後に他社のオファー面談で同じことが起これば、記憶はアップデートされてしまいます。ひと手間ですが、候補者への思いを改めて文書にすることで、相手により強く伝わるはずです。

候補者をどのような理由で選定したのか、どのような実績を評価したのか。そうした部分も含めれば、「自分のこうした部分が期待されているのだな」ということが明確になり、転職後のイメージも作りやすくなります。入社後の上司や経営者など、しかるべき役職者からのメッセージも添えれば、なお効果的でしょう。パソコン打ちではなく、情熱のこもった手書きの手紙で、その思いを伝えるのも効果的です。自分を評価してくれる人や企業に対しては、誰でも好意的になるものですし、企業側としても、どうしても必要な人材であれば、これくらいの手間はわけもないことでしょう。

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ヘッドハンターは、いかに最後まで候補者を口説けるかを常に考えています。その差別化としてオファーレターを紋切り型の労働条件通知書以外の「思いを伝える武器」と置き、重要視しているのです。

全てを実践できなくとも、何か変化を加えられるポイントはあるかもしれません。続いては、これまで何人もの優秀人材の意思決定に携わり、企業の採用課題を解決してきたヘッドハンターが実際に経験した「効果的なオファーレター」の例をご紹介していきます。

実際にあった思いを伝えるオファーレター

ビデオレターで心を揺さぶる

最近、増えてきたのが動画によるオファーレターの案内です。スマートフォンでも簡単に動画が撮影できる時代ですから、ビデオレターをうまく活用すると効果的です。

伝えたい内容は、概ね手紙と同じ内容になりますが、動画の場合は面接をした担当者それぞれからメッセージを送ることが出来ます。社長、配属先の責任者、同僚となる社員などです。それぞれが直に面接をしての感想やなぜ一緒に働きたいのか?を動画で伝えることで候補者の心は揺さぶられるでしょう。例えば、同条件で同じくらいのプライオリティだったA社とB社で転職先を悩んでいたとしたら、決定的な差になると思いませんか?

家族をも巻き込み、味方につけるべし

このように、効果的なオファーレターは雇用条件を明記したビジネスレター的な本体の部分と、自社の思いを伝える別紙部分の、二部構成で作るのがポイントです。本体の部分である雇用条件内容についてはできるだけ詳しく、また、初年度だけでなく次年度以降の昇給のイメージや賞与の算出根拠などについても、言及しておくと良いでしょう。ここは通常、ざっくりした記述で終わりがちですが、あえて詳しく記載することで信頼も得られます。

別紙部分のメッセージについては、候補者本人だけでなく、家族が見たときにも効果的な内容であることが望ましいでしょう。そうすることで、家族も巻き込んで入社を推し進めることができるからです。転職への家族の抵抗で採用に失敗することは実はよくあります。大企業からベンチャー企業へ、転居を伴う、給与のダウン、など。

こうなるとメッセージの内容についてもあれこれ悩んでしまうところですが、決して上手な文章や内容である必要はありません。「我が社はこうした未来をビジョンとして持っている。その実現のために、ぜひ力を貸してほしい。待っています」というような、シンプルなものでも構いません。いわばラブレターなのですから、言葉を飾るよりも、ありのままの思いを伝えることの方が重要です。

オファーレターを活用した企業側の交渉術!

さて、オファー承諾に向けて、人事はどのような事をすべきでしょうか。
最も大事なことを先にお伝えします。それは、候補者側からの条件交渉に同じ土俵で立ち向かわない事です。譲れないものは譲らず、今後の期待役割や候補者への思いを伝えるのが最も効果的です。それが口頭でのやり取りならば、どの企業も行うこと。いかにオファーレターをただの条件通知書面ではなく、1つの強力な「武器」に出来るかが勝負の分かれ目です。人間、最後はヒトに動かされます。特に転職活動においては、それが顕著に表れる局面です。

また、口頭での内定通知から書面での正式なオファーレターの提示に時間がかかると、候補者は現職との退職交渉が進められず、せっかくの前向きな転職意向も下がってしまう可能性があります。口頭での内定通知から正式なオファーレターの提示はスムーズに行えるような体制を整えましょう。

そのうえで、候補者側がオファーレターを貰った際に確認している項目を見ていきます。
①給与条件
②入社日
③オファー回答期限
上記3つが、主に候補者側から条件交渉される項目として挙げられます。これは言い換えれば、候補者が交渉の余地があると認識している項目という事です。特に注目すべき項目は①給与条件です。前述した通り、どの会社にも採用基準や採用予算、年収レンジはあります。すべての条件を受け入れられるとは限りませんから、条件面以外の部分でもしっかり訴求していく事が重要なポイントです。

例えば、書面情報だけで意思決定するのは候補者にとってもリスクがあるため、オファー面談をセッティングするケースは多くあります。この場では、書面内容を確認、業務内容の擦り合わせ、条件交渉に加えて、なぜ採用したいのか、どんな期待役割があるのか等、企業側が候補者に対して訴求できるポイントを伝えます。しかし、これはどの企業も行うことであり、決定的な差別化にはなっていないのが現実です。そのため、書面でも思いを伝える事で、いつでも見返せる、家族にも伝えられる等、ほんのひと手間が採用成功に導く決定打となるのです。他社との差別化の1つとしてオファーレターの活用を検討してみてください。

まとめ

他社よりもネームバリューが低いために採用がうまくいかない、という企業は少なくありませんが、オファーレターを工夫するだけで、採用成功率を高めることは可能です。逆にこれまで採用が順調であった企業も、いつライバルが現れるか分かりません。最後まで油断禁物、少しの手間と1つの工夫で採用人数が劇的に変わります!「オファーがうまくいかない」とお悩みであれば、まずここに着目してみてはいかがでしょうか。

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